飼っている猫の耳が赤くなっていることに気付き、不安を感じていませんか?
「病気の可能性はある?」「すぐに病院に連れて行ったほうがいいの?」などの疑問を抱えていることでしょう。
本記事では、猫の耳が赤くなる原因として疑われる病気や動物病院を受診する目安を解説します。また、治療法や自宅でのケア方法についてもわかりやすく説明しています。
この記事を読めば、猫の耳が赤い場合に取るべき行動がわかるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
猫の耳が赤いときに疑われる病気

- 猫の耳が赤く見えますが、病気でしょうか?
- 猫の耳が赤く見える場合、耳の中や周囲に炎症が起こっていることが考えられ、何らかの病気のサインかもしれません。
一方で、病気ではなく、打撲や虫刺されによって一時的に赤みが出ていることも考えられます。
- 猫の耳が赤い場合に疑われる病気を教えてください。
- 猫の耳が赤い場合、もっとも頻度の高い病気として、外耳炎が考えられます。外耳炎とは、耳の外側から鼓膜までの部分である外耳道に、炎症が起きている状態です。
外耳炎は、炎症を起こしやすい環境にあることが一つの危険因子です。耳の中の湿度が上昇すると、炎症を起こしやすくなったり、皮膚のバリア機能が弱まって感染を起こしやすくなったりすることが考えられます。
このような危険因子があるところに、何らかの原因が重なって外耳炎を引き起こすと考えられています。
外耳炎の直接的な原因として主に考えられるのは、以下の5つです。
・寄生虫の感染
・異物
・腫瘍
・アレルギー疾患(食物アレルギー・接触アレルギー・環境アレルギーなど)
・自己免疫疾患
特に外出が多い猫の場合、寄生虫の一種である耳ダニの感染により外耳炎の症状がみられることがあるため注意が必要です。
外耳炎が悪化すると、鼓膜よりも奥に炎症や感染が波及し、中耳炎を引き起こす恐れがあります。また中耳よりもさらに奥まで炎症や感染が及ぶと、内耳炎を引き起こす場合もあります。
猫の耳が赤いときの受診サイン

- 猫の耳が赤いけれど様子に変化がない場合、受診すべきですか?
- 猫の耳が赤くても、食欲や活気があり、ほかに症状がない場合は数日様子をみてもよいでしょう。
ほかに症状がなくても赤みが持続している場合や、ほかに気になる症状があれば、受診することをおすすめします。速やかに検査をして原因を特定し、悪化を予防することが大切です。
- 猫の耳が赤い以外にどのような症状があったら受診すべきですか?
- 耳が赤い症状以外にも、以下のような症状がみられる場合は速やかに動物病院を受診しましょう。
・耳や頭を痒がる
・耳垢が普段より多い
・耳が臭い
・耳がただれている
・頭を床に擦り付ける
・頭をよく振る
上記の症状がみられるときは、外耳炎の可能性があります。外耳炎が悪化すると、中耳炎を併発する恐れがあります。中耳炎の代表的な症状は、首をかしげる・まっすぐ歩けなくなる・聴覚障害などです。
外耳炎を悪化させる前に、できるだけ早い段階で治療を開始することが重要です。
猫の耳が赤いときに病院で行われる検査

- 猫の耳が赤いときは、病院でどのような検査が行われますか?
- 猫の耳が赤いとき、病院にて行われる主な検査は以下のとおりです。
・問診
・視診
・全身状態の確認
・細胞診
・耳鏡検査
・画像検査(頭部レントゲン・CT)
続いて、一つひとつ詳しくみていきましょう。
【問診・視診・全身状態の確認】
問診にて確認される事項として、以下が挙げられます。
・耳が赤いのはいつからか
・その他の気になる症状
・既往歴・生活環境(外出や同居動物の有無など)
問診のほかに行うのは、耳の視診と全身状態の確認です。視診では、耳の腫れや分泌物の有無などを確認します。また全身状態の確認として、猫の活気・体温・心拍数・体重などもチェックします。
【細胞診】
耳垢や耳の表面の分泌物を採取し、顕微鏡で観察します。細胞診により、細菌・真菌・寄生虫の有無を確認できます。
【耳鏡検査】
耳鏡という医療器具を使って、耳道内を観察し、異物・腫瘍・炎症の程度や耳垢の量などを確認します。慢性化した外耳炎では、大量の耳垢によって耳道炎症が起こり、内腔が狭窄していることがあります。耳垢の種類や量も、診断の重要な手がかりの一つです。
【画像検査(頭部レントゲン・CT)】
耳道の腫れや肥厚により耳道内の観察が難しい場合には、頭部のレントゲンや腫瘍が疑われる場合などにはCT検査が行われることがあります。画像検査により、鼓膜の状態や中耳、内耳の状態を確認できます。
- 動物病院での検査と診察の流れを教えてください。
- まず問診と視診、全身状態のチェックを行います。必要に応じて各種検査を組み合わせて行い、詳しい検査を行うのが一般的な流れです。
注意点として、猫は耳の中を触られるのを嫌がることから、その子の性格によっては検査時に麻酔を使用する可能性があることを頭に入れておきましょう。
麻酔前は食事摂取を控える必要があります。食事は摂取させずに受診するようにしましょう。心配なときは、食事や飲水について受診前に動物病院に確認するのがおすすめです。
猫の耳が赤くなる病気の治療法と自宅でのケア

- 猫の耳が赤くなる病気には、どのような治療法がありますか?
- 外耳炎の治療において、まず耳の中を清潔にする処置を行います。耳垢や皮脂を除去するために、皮脂を溶かす薬や消毒薬などが使われることがあります。
多くの耳の病気は寄生虫や細菌、真菌による感染症です。そのため抗生物質が単独で処方されたり、抗生物質と抗炎症薬の合剤が処方されたりします。点耳薬として、抗生物質とステロイド薬の合剤が使われるのが一般的です。
さらに耳の奥まで感染や炎症が進行している場合は、内服薬や注射薬が全身的に投与されます。
アレルギー疾患や自己免疫疾患が基礎疾患として存在する場合は、それらの治療も同時に行います。腫瘍や異物が原因の場合は、外科的な処置が必要になることがあります。
特に慢性化した外耳炎は治りにくいため、根気よく動物病院に通院し、獣医師の指示にしたがって治療を行うことが大切です。
- 猫の耳が赤い場合に自宅でできるケアを教えてください。
- 自宅でできるケアとして、耳垢や皮脂を除去し、耳の中を清潔に保つことが大切です。
耳道内の皮膚を傷つけないよう、湿らせたやわらかい綿で、耳の入り口付近を優しく拭く程度で十分です。
耳の中に直接シャワーで水をかけたり、綿棒で耳道を強く擦ったりしないように注意しましょう。
自己判断での過度な耳掃除は、耳道を傷つけたり、炎症を悪化させたりする可能性があります。またその子の性格によっては、自宅での過度な耳掃除は、耳を触られることに拒否反応を示すようになってしまい、病院でも耳を触らせてくれなくなります。できるだけ早めに動物病院を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。
外耳炎の場合、獣医師の指示にしたがって点耳薬を正しく投与することが重要です。投与方法や回数を守り、治療を中断しないようにしましょう。
編集部まとめ

猫の耳の赤みは、放置すると悪化する可能性のある病気のサインです。よくみられる病気は外耳炎であり、寄生虫などの感染・アレルギーなどが原因の可能性があります。
耳の赤みに加え、痒み・耳垢の増加・悪臭などの症状が見られる場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。
動物病院における検査として、細胞診や耳鏡検査などが行われ、原因に合わせて点耳薬や内服薬が処方されます。適切な方法で点耳薬を投与し、自宅での過度な耳掃除は避けるようにしましょう。
飼い主さんは、日頃から猫の耳の状態を観察することが大切です。耳が赤いときは、ほかの症状や全身状態を注意深く観察し、気になる症状があれば早めに動物病院を受診しましょう。
参考文献