ペットのトリミングに鎮静剤は必要?使用するメリットや副作用も解説

ペットのトリミングに鎮静剤は必要?使用するメリットや副作用も解説

ペットのトリミングは、清潔を保ち健康を守るために欠かせないケアのひとつです。一方で、ペットにとっては慣れない音や動きに囲まれ、不安や恐怖を感じる時間でもあります。

特に触られることに敏感だったり、過去に嫌な経験をしたりしたペットは、トリミング中に激しく暴れたり咬みつこうとしたりすることもあるでしょう。

そうした場面で検討されるのが鎮静剤の使用です。動きを抑えて施術を進めるための選択肢として、動物病院やペットサロンで提案されることがあります。

一方で、本当に必要なのか、身体への影響はないのか迷いや不安を感じる飼い主も少なくありません。この記事ではトリミング時に鎮静剤を使用する理由やメリット、気を付けたい副作用について解説します。

大切な家族であるペットにとって、よい選択ができるような判断材料としてお役に立てれば幸いです。

トリミング時の鎮静剤の必要性とメリット

診察中のヨークシャテリア

ペットのトリミングで危険が伴うときには鎮静剤が必要ですか?
トリミング中にペットが極度に興奮したり、暴れたりすることで怪我のリスクが高まる場合、鎮静剤の使用が検討されることがあります。
特にハサミやバリカンを使う工程では、小さな動きでも事故につながる可能性があるため、安全性確保の手段として鎮静が必要になることもあります。
また持病や高齢によって身体の負担が大きい場合には、無理な拘束よりも短時間で静かに終えられる選択肢として有効です。ただしあくまでも獣医師の判断に基づいて慎重に用いるべき処置であり、すべてのケースに当てはまるわけではありません。
トリミングで使用する鎮静剤は麻酔薬とは違うものですか?
トリミングで使用される鎮静剤は、全身麻酔とは異なります。鎮静剤は意識を保ったまま緊張や不安を和らげ、動きを落ち着かせる目的で使用される薬です。
一方、麻酔は意識を完全に失わせ痛みも感じなくするため、外科処置などに用いられます。トリミングにおいては、少ない量で済む鎮静剤が選ばれるのが一般的です。
過剰なストレスや暴れる危険がある場合のみ、獣医師が状態を見極めて投与を判断します。どちらの方法にもリスクがあるため、使用は慎重に検討されるべきです。
トリミング時に鎮静剤を使用するメリットを教えてください。
トリミング時に鎮静剤を使用することで、ペットの不安や興奮を抑え安全性を高めることで施術を進めやすくなります。暴れてしまうペットに無理な力を加えると、思わぬ怪我や事故につながるおそれがあります。
鎮静剤を用いることで身体の動きが穏やかになり、トリマーが安定した状態で作業を行えるのが大きな利点です。
またペット自身のストレスも軽減されやすく、嫌な記憶が残りにくくなる可能性もあります。施術の効率を保ちつつ、双方のストレスを減らせる手段のひとつといえるでしょう。
鎮静剤はどこのペットサロンでも使用できますか?
鎮静剤はすべてのペットサロンで自由に使用できるものではありません。実際には獣医師の管理下のみで使用が認められている薬剤です。
したがって一般的なトリミングサロンでは、スタッフが独自の判断で鎮静剤を投与することは法律上できません。
動物用の医薬品を扱えるのは獣医師に限られており、動物用医薬品取扱資格や診療施設の許可を持っていないサロンが勝手に使用するのは動物愛護管理法に違反する行為となります。
実際に鎮静処置が必要とされた場合、動物病院併設のトリミング施設や提携している獣医師がいる施設での対応となります。また鎮静剤の使用にはペットの体重や年齢、過去の投薬履歴などを考慮する必要があるため、獣医師の診断と同意が不可欠です。
サロン側が必要性を感じた場合でも、まずは飼い主に相談し、獣医師に引き継ぐのが一般的な流れです。つまりどこのペットサロンでも鎮静剤を使用できるというのは誤解であり、鎮静剤の使用は医療行為に該当することを理解しておく必要があります。

トリミング時の鎮静剤のデメリットと副作用

予防接種をするヨークシャテリア

トリミング時に鎮静剤を使用するデメリットを教えてください。
トリミングで鎮静剤を使用する場合、いくつかの注意点があります。まずは薬の影響で体調を崩すリスクがあることが挙げられます。特に高齢や持病のある動物では慎重な判断が必要です。
また鎮静によって動きが鈍くなりすぎると、意識がはっきりしないまま施術を受けるためペットにとっては負担となる可能性があります。
また繰り返し使用することで薬への耐性や依存が生じるおそれも否定できません。安全性確保のためには、獣医師の診断と適切な管理が不可欠です。
鎮静剤を使用すると副作用が出ることはありますか?
トリミング時に鎮静剤を使用した場合、副作用が出る可能性はゼロではありません。代表的なものとしては以下が挙げられます。
  • ふらつき
  • 過度な眠気
  • 呼吸が浅い
  • 体温の低下

投与後に興奮状態になるケースもあり、逆効果となることもあるでしょう。また心臓や肝臓に既往症のある動物では、薬の代謝が遅れることで影響が長引く恐れがあります。
さらに体温調節機能が鈍くなり、低体温を引き起こすこともあります。特に小型犬や子犬、高齢のペットでは注意が必要です。
重篤な例では呼吸抑制や意識低下といった深刻な症状が見られることもあり、緊急の処置が必要になります。このため鎮静剤の使用は獣医師の判断と経過観察のもとで行われるべきであり、安易な処置は避けなければいけません。
使用後もペットの状態をよく観察し、異常があればすぐに相談できるよう備えておくことが大切です。

鎮静剤を使用したトリミングの費用や注意点

くっついて並ぶミニチュアダックスフンド

ペットのトリミングにかかる費用を教えてください。
ペットが鎮静剤を使用する場合のトリミングにかかる費用は、動物の種類や大きさ、施術内容によって異なります。
犬の場合、小型犬は基本的に10,000円(税込)前後が相場です。中型犬は12,000円(税込)前後、大型犬になると18,000円(税込)を超えることも珍しくありません。
猫のトリミングは扱いが難しいため、犬よりも高額になる傾向があり、8,000円(税込)以上かかるケースが少なくありません。
基本的にはシャンプーやカット、爪切りや耳掃除などが含まれますが毛玉の処理やノミ取りなど必要な場合は、追加料金が発生します。
例えば毛玉が重度の場合、1,000円〜3,000円(税込)ほど加算されることも。また暴れる傾向がある子や高齢の子などは、安全性確保のために追加の人手や時間が必要となり別途対応費用を請求されるケースもあります。
全体の費用構成を把握し、事前に確認しておくとよいでしょう。
トリミングで鎮静剤を使用すると追加料金がかかりますか?
トリミング時に鎮静剤を使用する場合、基本料金とは別に追加費用が発生するのが一般的です。鎮静剤の投与は、獣医師の管理下で行う医療行為に該当するためです。
対応可能な動物病院併設の施設や動物病院であっても、鎮静に関する診察料や薬剤費、処置が個別に請求されます。
具体的には初診料が1,000円〜2,000円(税込)、鎮静剤の注射で3,000円〜5,000円(税込)、状態によってはモニタリング代などが別途必要になることもあるでしょう。
また鎮静剤の使用にはリスクも伴うため、事前に健康チェックを行うことが推奨されており、その検査費用も別途必要になることがあります。
一部のペットサロンでは鎮静剤が必要だと判断された場合、提携している動物病院への同行を求められるケースもあり、費用と安全性の両面から施術前に詳細な説明を受けたうえで納得して進めることが重要です。
トリミングで鎮静剤を使用する場合に持って行った方がよい物はありますか?
トリミング時に鎮静剤を使用する場合、持参するとよいものがいくつかあります。まず、動物病院で処方された鎮静剤がある場合は、それを必ず持参しましょう。
サロン側が用意できないケースやかかりつけ医の判断で処方された薬の方が適切とされることもあります。
次にワクチン接種証明書も忘れずに用意しておきましょう。鎮静剤を使う施術では衛生面と安全性がより重視されるため、サロンによっては提示を求められます。
さらに普段使っているタオルやお気に入りのおもちゃがあると、ペットの不安を和らげる手助けになります。
持病がある場合は、薬のリストや通院記録なども一緒に提示するとトリマーや獣医師が状況を把握しやすくなるでしょう。
こうした準備をしておくことでトリミング中にトラブルを減らし、安全性の高い施術につなげることが可能です。
鎮静剤使用後のペットのケアについて注意することがあれば教えてください。
トリミングで鎮静剤を使用した後のペットには、慎重なケアが必要です。まず帰宅後は、無理に動かそうとせずに静かな場所で休ませるとよいでしょう。
鎮静剤の効果は数時間続くこともあり、ふらつきや眠気が見られる場合もあります。また足元が不安定になることもあるため、階段や段差のある場所には近づけないようにしましょう。
さらに水を飲みたがる様子があっても、一気に与えるのではなく少量ずつ様子を見ながら与えるようにします。しばらくは食欲が戻らないこともありますが、無理に食べさせようとせず数時間ほど様子を観察しましょう。
目の動きや呼吸に異変が見られたり、嘔吐やけいれんが起きたりする場合は、すぐに動物病院に連絡を取りましょう。事前にトリミングを担当した施設と連絡先を共有しておくと、なにかあったときにもスムーズに対応が可能です。
またペットの回復を見守る飼い主の姿勢が大切だといえます。

編集部まとめ

愛犬と遊ぶ女性
トリミング中のストレスや危険を減らす手段のひとつとして、鎮静剤の使用は有効な選択肢です。ただしペットの体調や性格によってはリスクも伴うため、安易に判断するのは避けましょう。

大切なのは飼い主が正しい情報を知り、獣医師と相談しながらペットに合った方法を見つけることです。不安なくトリミングを受けることは、ペットの健やかな生活にもつながります。

参考文献