犬を飼ったら社会化の訓練が必要?しつけ教室の選び方やトレーニング内容、飼い主ができることも解説

犬を飼ったら社会化の訓練が必要?しつけ教室の選び方やトレーニング内容、飼い主ができることも解説

「どのようにしつけをしたらよいのかわからない」「犬に社会化の訓練って必要なの?」などに悩む飼い主は少なくありません。

家に訪問者が来るたびに吠える、散歩中に他人に唸るといった行動が見られる犬は、社会性の不足が原因かもしれません。

犬の社会化は、人間社会に順応する力を養うことです。適切な社会化ができれば、どのような状況でもできる限り落ち着いて対応でき、飼い主との生活もスムーズになるでしょう。

本記事は、犬に合ったしつけ教室の選び方やトレーニング内容、飼い主ができることを詳しく解説します。

愛犬との暮らしをより豊かにするために、参考にしましょう。

犬の社会化の基礎知識

おすわりしてじっと見つめるチワワ

犬が家族の一員として幸せな生活を送るためには、さまざまなルールを知ることが必要です。そのなかでも社会化期は、犬が人との暮らしについて学びやすい時期といわれています。

まずは犬の社会化の基礎知識を身に付けましょう。

犬の社会化とは何か

犬の社会化とは、犬が人間社会に順応する力を養うことを指します。社会化されている犬は、見知らぬ方や物音などに対して過度に反応せず、落ち着いて行動できるようになります。

特に生後3〜14週頃の子犬は、外の世界に対して好奇心が旺盛で受け入れやすい時期のため、社会化を学ぶのによい機会です。

犬は生涯を通じて社会化を続けることが可能です。ただし、成犬よりも子犬の時期の方が、自然に社会化しやすいと考えられています。

社会化期を過ぎた成犬でも社会化は可能です。時間がかかるため焦らずに時間をかけて環境に慣らしていきましょう。

人間社会のさまざまな刺激が犬にとって怖いものでなく、安心感を持って生活できることを、社会化トレーニングを通して覚えます。

社会化で、楽しい経験をたくさんさせましょう。

子犬の社会化期の重要性

子犬にとって社会化期は重要です。子犬は母犬や兄弟犬などほかの犬とのふれあいにより、噛む力の調節や遊びのルール、ほかの犬との距離の取り方など犬社会での基本的な行動を学ぶことが必要です。

環境省令では、社会化のために適切な期間は親や兄弟姉妹と一緒に飼育することが義務付けられています。生後56日を経過するまでは販売や、販売のための展示が禁止されています。

そのため、ペットショップやブリーダーから幼齢犬を自宅に迎え入れる際は、一般的に生後2ヶ月以降がほとんどです。なお、このルールは、動物の健全な発達を守るために設けられています。

それまでに社会化ができれば、見慣れないものや生活音などさまざまな刺激が考えられる新しい環境でも、落ち着いて生活を送れるでしょう。

ただし、社会化は環境に慣れることが目的であり、強いるものではありません。社会化トレーニングで怖がった場合は、無理強いしないことが重要です。

飼い主は犬が恐怖や抑圧を受けたり、精神的な苦痛や不安を感じたりしないように、注意しましょう。社会化トレーニングは、楽しい体験を積ませることが目的です。

犬にとって社会化が重要な理由

ポメラニアン

犬と人間が快適に過ごす環境は同じではありません。基本的に犬は周囲の変化に敏感に反応しやすい動物で、社会化できないと問題行動や不安行動につながる恐れがあります。

ここでは犬にとって社会化が重要な理由を詳しく説明します。

犬は警戒心を抱きやすい

犬は警戒心を抱きやすい動物です。そのため、安心感のある飼い主以外の方が視界に入ると緊張します。雷や花火など大きな音も、犬は何の音かわからないため不安を覚える可能性があります。

警戒心や不安などから吠える犬に対して「うるさい」と叱ることは控えましょう。犬は吠えることで危険を知らせています。叱ってもその理由が伝わらないため、逆効果になる可能性があります。

吠える理由を理解したうえで、対策を検討することが重要です。社会化すれば、人間やほかの犬、車などに慣れるために必要以上に警戒することが少なくなるでしょう。

社会化できないと問題行動や不安行動につながる

犬は社会化できないと、問題行動や不安行動につながります。問題行動とは、ほかの犬や人間などに吠えたり噛んだりなどの行動を指します。不安行動は、震えたり逃げたり唸ったりなどのことです。

チャイムや車の音に怯えて吠えることもあるでしょう。あまりにも問題行動が多いと、近所の方とのトラブルにもなりかねません。

実際に、周辺住民から鳴き声に対する苦情を受けるケースがあります。周囲の方と心地よく過ごすために、犬は社会化トレーニングを受けることが必要です。

しつけ教室で行う犬の社会化トレーニング

犬の世話をする女性

犬の社会化に重点を置いたしつけ教室があります。ここでは、そのトレーニングの内容を詳しく解説します。

人とのふれあいに慣れさせる

社会化トレーニングは、人間とのふれあいに慣れさせ、犬に楽しいと学んでもらうことが目的の一つです。その方法は以下のとおりです。

  • 年齢や服装、性別などが異なる人間とふれあう
  • スキンシップの時間を作る
  • 人の手から直接フードを与える

特定の人間だけでなく、男性や女性、作業着や白衣を着た方などさまざまなタイプに慣れる必要があります。フードをもらう経験を通じて、人間に対してよい印象を持つようになるでしょう。

また、優しい声をかけたり触ったりなどスキンシップの時間を作ると、さらに人間に慣れやすくなります。

臆病な子犬は、好奇心旺盛で友好的な子犬と一緒にしておくと、徐々に近づいてくることがあります。

状況に応じて、子犬の集団心理を利用することも効果的です。

警戒心を抱きステンレスケージから出てこない子犬には、無理に触らず、徐々に距離を縮め根気よくフードをあげることが重要です。

人間が近づいてくると、よいことが起きるという印象づけられれば、慣れさせることができるでしょう。

部屋にある物や音の刺激に慣れさせる

インターホン

犬が見慣れない物や音の刺激にも慣れさせる必要があります。こうした未知の刺激が近づいても落ち着いていられたらフードを与えます。

そうすることで、新しい刺激は怖いことではないという印象を犬に与えられるでしょう。犬は過度に反応せず、情緒が安定することが期待できます。

またインターフォンや子どもの声、サイレンなどの生活音に対する刺激にも慣れる必要があります。

最初から大きな音を出すことはせず小さな音量から聞かせるため、音の刺激に慣れやすくなるでしょう。

犬同士のふれあいを行う

犬同士のふれあいによって、犬として必要なことを学びます。例えば、どの程度の強さで噛むと相手の犬に拒否されるかといった噛む加減の学習や、犬同士の挨拶の仕方などを学ぶことが重要です。

犬はもともと集団生活を送る動物です。そのため、複数の犬と一緒にいることで精神的に安定します。犬同士の遊びでストレスも発散できるでしょう。

人だけでは教えきれない犬同士のルールを、ふれあいのなかで学ばせることが大切です。

外の刺激に慣れさせる

外の刺激に慣れさせることも重要です。外に連れて行ったときに歩かない場合は、無理に歩かせず、抱き上げて落ち着かせましょう。

安心感のある状況を作り愛犬が落ち着いたらフードを与え、外の刺激とよいことを結びつけるとポジティブな印象を与えられます。こうした積み重ねが、外の環境への慣れにつながります。

犬のしつけ教室の選び方

リビングでスマホを見る若い女性

犬のしつけ教室は、飼い主が快適に暮らせるためのマナーやルールを学ぶ場です。特に子犬のうちから通うことで、ほかの犬や人との関わり方を学び、社会化を促す大切な場とされています。

犬が社会のなかで落ち着いて過ごすためには、適切な時期に社会化を学ぶことが必要です。

しつけ教室は動物病院やペットショップ、ペットホテル、犬の幼稚園などで行われています。

また個人ドッグトレーナーによる訪問指導や、自治体の保健所などが開催する講座もあります。しつけの方針や施設の衛生面だけでなく、社会化を重視した環境かどうかも注目してしつけ教室を選びましょう。

しつけ方針が合っているか

しつけ教室によって、しつけ方針が異なります。例えばほかの犬や人との交流を楽しく経験させる教室や、褒めて伸ばすしつけトレーニングを実践している教室、愛犬の個性に合わせたオーダートレーニングなどがあります。

社会化を目的とした場合は、愛犬が安心感を持って人間や犬と楽しく関われているか、無理のないしつけを行っているかなどを確認しましょう。

また、犬と飼い主が一緒に学ぶタイプと、犬だけがトレーニングを受けるタイプの教室があります。目的に合ったものを選ぶことが大切です。

なお、しつけ教室によっては見学や体験レッスンができる場合があります。トレーナーの犬への接し方や犬の様子などを確認しましょう。

衛生管理ができているか

教室の衛生管理が行き届いているかどうかも、教室選びの重要なポイントです。清潔な環境は犬の健康を守るだけでなく、犬が落ち着いて過ごせる環境づくりにもつながります。

しつけ教室では、混合ワクチン接種や狂犬病ワクチン摂取など、証明書の提示が求められます。こうした条件があることで、安心感を持ってほかの犬とふれあえるでしょう。

料金が明瞭で適切か

お金と財布で家計や支払い

料金体系も重要な検討ポイントです。しつけ教室によって回数制や月額制、1日預かり、合宿型などさまざまです。また、犬の大きさによっても料金は異なります。

例えば、月4回通う場合の料金例は以下のとおりです。

  • 小型犬:24,000円(税込)
  • 中型犬:26,000円(税込)
  • 大型犬:28,000円(税込)

料金が明瞭に提示されているか、内容やサポートに見合っているか確認しましょう。

また、丁寧なカウンセリングやアフターフォローにも対応しているかも重要な判断材料です。単に価格の安さだけでなく、トータルの満足度で判断することをおすすめします。

しつけ教室の一日の流れ

1週間のスケジュールを考えましょう

実際にしつけ教室を検討する場合、一日の流れが気になる飼い主もいるでしょう。ここでは、預かりの場合の例を紹介します。

  • 07:00~09:00:起床、しつけ、ケア管理
  • 08:30~09:00:朝食
  • 09:00~10:30:昼寝および昼休憩
  • 10:30~13:00:運動や散歩、しつけ、ケア管理
  • 13:00~15:00:昼寝および休息
  • 15:00~19:00:運動や散歩、しつけ、ケア管理
  • 22:00:点検見回り、トイレ、就寝

このように、一日に複数回の運動や散歩があると、犬のストレス発散やリフレッシュになります。しつけ教室によっては、写真や動画で愛犬の様子を知らせるサービスがあります。

なお預かり型のしつけ教室を選ぶ際は、24時間スタッフが常駐しているか、個室かどうかも確認しましょう。

飼い主が自分でできる犬の社会化訓練

犬を抱く女性・ブリーダー

犬の社会化訓練は、しつけ教室だけでなく、飼い主が自分でもできることがあります。ここではその訓練を一つずつ解説します。

成長段階に合わせた飼育環境を用意する

犬の成長段階に合わせて適切な飼育環境を用意することが重要です。犬が社会化できずにそのままでいると、成犬になっても音や環境に怯え、引きこもりや逃走の恐れがあります。

掃除機や洗濯機、ドライヤーなど日常的な音やものに少しずつ慣れさせることで社会化できるでしょう。

愛犬の様子を確認しながら、無理のない範囲で経験させることが重要です。

身体を触られることに慣れさせる

身体を触られることが苦手な犬もいるため、急に触るのではなく、フードを活用して慣らしていきます。

フードを鼻先に近づけて犬が夢中になっている間に、犬の身体のさまざまな部分を触ってみます。ただしお口もとや足先、耳、尻尾は苦手な犬が多いため注意が必要です。

身体を触る時間を徐々に伸ばします。触られると褒められ、フードがもらえるという流れを犬が理解すると、スキンシップにも慣れていくでしょう。

人の手に慣れておくことで、日々のケアがしやすくなり、身体の異常にも早く気付きやすくなります。また、そうした接触は犬のストレス軽減にもつながります。

家族以外の人に慣れさせる

愛犬を家族以外の方に慣れさせるようにしましょう。犬は、飼い主には深い愛着を持ちますが、他人には警戒心が強い動物です。しかし、家族以外の人間に慣れていないと、他人に向かって吠えたり噛んだりする恐れがあります。

散歩中に会った方に突然吠えたら、トラブルになることが考えられます。そのため、家族以外の人間と触れ合うことが必要です。

優しく声をかけながらフードを与えたり、撫でてもらったりすることで徐々に慣れるでしょう。重要なポイントは、無理のない範囲で少しずつ慣らすということです。

急に近づいたり無理に触ろうとしたりすると、犬が不安を感じて攻撃的になる可能性があります。

家族以外の方に慣れていない状況だと理解し、冷静にふれあわせることが重要です。

子犬のうちは抱っこして散歩に連れていく

飼い主に抱っこされるチワワ

一般的に、子犬は生後数週間ごとに数回のワクチン接種を受け、免疫をつけるワクチンプログラムが行われます。

このプログラムが完了するまでは、伝染病の感染予防の観点から、外を歩かせるのは控えることが推奨されています。

できる限り抱っこして散歩に連れていくことが必要です。担ぎ上げられていても外の雰囲気や空気、音などの外の刺激に触れ、徐々に慣れさせることができます。

今後自分の足で散歩させるトレーニングとしても抱っこでの散歩は効果的です。散歩は楽しいものだと犬が認識するようにしましょう。

ほかの犬の存在に慣れさせる

犬は、群れ社会を形成して生活する動物です。そのため、ほかの犬との交流を通じて、犬社会のコミュニケーションやルールを学ぶことが必要です。

日常の散歩やドッグランでほかの犬の存在に慣れさせるようにしましょう。ただし社会化を身に付ける前に急に犬同士を近づけると、ほかの犬に愛犬がとびかかって怪我をさせたり、今まで以上に警戒したりする恐れがあります。

社会化ができていない現況を説明して飼い主やほかの犬に協力してもらい、少しずつ近づいて慣らします。

ドッグランでは最初からノーリードにしないことが重要です。最初は利用者が少ない時間帯にリードを付けた状態で、フェンス外からほかの犬の様子を見せる程度にしましょう。

環境に慣れて落ち着いて行動できるまでは、リードを外さないことが必要です。

まとめ

愛犬と遊ぶ男女

犬が人間社会に順応して幸せな生活を送るためには、社会化は重要です。特に3~14週頃にさまざまな刺激に慣れておくことで、成犬になってからよりもスムーズに適応しやすいとされています。

警戒心を抱きやすい犬は、この時期に十分な経験を積めないと、吠えや噛みつきなどの問題行動や不安行動につながることがあります。

社会化訓練は、過度に吠えたり噛んだりしないように人間や犬同士のふれあいを行い、見慣れないものや音の刺激には徐々に慣れさせることが重要です。

自分でも社会化訓練は行えますが、動物病院やペットショップなどでのしつけ教室の利用をおすすめします。しつけ方針や衛生管理、料金設定が適切かを確認して、しつけ教室を選ぶことが重要です。

周囲とのトラブル回避のためにも、犬の社会化を目指しましょう。

参考文献