オウムと暮らす飼い主さんや、これからオウムをお迎えしようと考えている方は、オウムの診療をしてくれる動物病院をどうやって探すか迷ってしまうこともあるでしょう。本記事では、オウムに向いている病院選びの方法や、オウムを受診させた方がよい状況などを解説します。なお、オウムとインコの違いは頭に冠羽と呼ばれる羽があるかどうかです。オカメインコのように、名前にインコとついているオウムもいます。本記事ではオウムのなかでも、日本のペットに多い、オカメインコ、モモイロインコ、タイハクオウムなどを中心とした内容となります。
オウムの動物病院を探す方法と選び方

オウムの診療を希望する際、どのように動物病院を探せばよいのでしょうか。本章では、オウムの診療が可能な動物病院の探し方や、特にオウムの診療が得意なオウム向けの動物病院の見つけ方などをお伝えします。
オウムを診療できる動物病院の探し方
オウムの診療に対応している動物病院を探すときは、インターネットで、『動物病院 オウム』『動物病院 鳥』『動物病院 エキゾチックペット』などと検索してみましょう。できる限り自宅から近い病院を探すために、検索ワードに地域名を含めるのもよいでしょう。
検索して出てきた動物病院の公式サイトを確認して、オウムの診療が可能であることが明記されていればオウムの受診が可能です。
ただし、動物病院によっては、オウムの診療は曜日が限られていることもあります。ホームページで確認するか、念のために動物病院に直接問い合わせるとよいでしょう。
オウム向け動物病院の選び方
飼い主さんとしては、オウムの診療が可能な動物病院のなかでも、できるだけオウム向けの病院を選びたいですね。
オウムに向いている動物病院は、鳥類専門の動物病院や、小鳥専門の動物病院です。これらの動物病院には、オウムの扱いに慣れた獣医師やスタッフが在籍していて、専門的な獣医療を提供するだけでなく、きめ細かい飼育指導も実施しています。
インターネットの検索で、『動物病院 鳥類専門』『動物病院 小鳥専門』などの検索ワードで動物病院を見つけましょう。
さらに、獣医師紹介のページがあれば、在籍している獣医師がどのような学会の会員なのかをチェックしてみましょう。鳥類臨床研究会や日本獣医エキゾチック動物学会などの会員獣医師であれば、専門性を磨いていることが期待できます。
動物病院でのオウムの診療内容

動物病院でのオウムの診療にはどのようなものがあるのでしょうか。本章では、代表的な怪我と病気を挙げて、動物病院での診療内容について解説します。また、オウムの健康診断についてもご紹介します。
代表的なオウムの怪我
身体の小さいオウムは、思わぬことで怪我をすることがあります。怪我の程度によっては、緊急の受診が必要なこともあるため、オウムが怪我をしたら自己判断はせず、すぐに動物病院に相談しましょう。ここでは代表的な怪我の原因を5つご紹介します。
- パニックによる外傷
オカメインコのオカメパニックに代表されるように、オウムは恐怖や不安を感じると、突然激しく動くことがあります。ケージ内でパニックを起こすとケージの金網などに羽をぶつけて怪我をすることもあります。動物病院では、こうした外傷に止血などの応急処置を行い、必要であればできる限りパニックを起こさない飼育方法をアドバイスします。 - 骨折
オウムの骨折のよくある原因としては、放鳥時にうっかり飼い主さんが踏んでしまう、ドアに挟んでしまう、ものが上から落ちて下敷きになるなどの事故が挙げられます。骨折の治療は、部位や程度によりさまざまですが、レントゲンなどで詳細な検査をした後で、包帯で巻いて固定したり、場合によっては麻酔をかけて手術をしたります。 - 爪の引っかけや深爪
爪も怪我をしやすい場所です。爪が伸びていると、カーテンやカーペットなどに爪をひっかけることがあります。また、飼い主さんが爪を切ろうとして深爪して血が止まらなくなって受診するということもあります。動物病院では、爪の破損の程度によって止血をしたり、中途半端に残っている爪を取り除いたりするなどの治療を行います。 - 同居のペットによる事故
同居の犬や猫などほかの動物に咬まれて怪我をすることもあります。普段は仲良く過ごしていても、なにかに驚いたり興奮したりした拍子に、犬や猫がオウムを咬んでしまうこともあるため、放鳥時は目を離さないようにしましょう。動物病院では、傷の程度によって消毒を行い、抗生剤の投与などを行います。 - 火傷
放鳥時に、キッチンのフライパンに飛び込んできてしまったり、アイロンで火傷をしたりすることもあります。小型のオウムでは、飼い主さんが飲んでいるコーヒーやお茶などのマグカップに落ちてしまうこともあります。火傷の治療は程度によってさまざまですが、動物病院では火傷の部分を冷やし、炎症を止める薬や点滴の投与で脱水を防ぐなどの処置を行います。
代表的なオウムの病気
オウムの場合、まったく餌を食べない、うずくまって動かないなど、はっきりとした症状が出ているときは、命に関わる状態であることが少なくありません。普段と様子が違うと感じたら、すぐに動物病院を受診しましょう。ここでは代表的なオウムの病気を解説します。
- 感染症
PBFD(オウム類嘴羽毛病)などのウイルス感染症や、カンジダ症やマクロラブダス感染症などの真菌(カビ)の感染症、さまざまな細菌による感染症、トリコモナス症などの寄生虫による感染症が挙げられます。動物病院では、原因となる病原体を追求し、適切な投薬を行います。 - 中毒
ご家庭で特に注意が必要な中毒が、鉛中毒とPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ガス中毒です。鉛中毒は、放鳥中にカーテンウェイトなどをかじって発症することがあります。PTFEガス中毒は、テフロン加工されたフライパンの空焚き、新品の電子レンジなどを初めて使用する際におこりやすいです。中毒の場合、突然死することも多いため対処が難しいこともありますが、動物病院では獣医師がオウムが不調をおこした状況などを詳細に聞き取り、原因を追求します。 - 卵塞(卵詰まり)
日光不足、カルシウム不足、卵の産みすぎなどさまざまな要因で、卵ができているにも関わらず産卵できなくなる状態です。動物病院では、保温やカルシウムなどの投与によって自力産卵を促したり、外科的に卵を取り出したりする処置を行います。 - 肝臓や腎臓の疾患
オウムには、肝臓や腎臓の疾患が少なくありません。原因が判明しないこともありますが、動物病院では血液検査などで肝臓や腎臓の障害の程度を確認し、投薬や食事管理などのアドバイスを行います。 - 動脈硬化
オウムの動脈硬化は、治すことは難しく、早期に発見して食事制限や投薬によって少しでも進行を遅らせることが重要です。動物病院では血液検査などで動脈硬化の可能性があると判断した場合、投薬のほかに、体重や食事の管理方法のアドバイスを行います。
オウムの健康診断
オウムの健康診断の一般的な項目は、視診、触診、糞便検査、そのう検査です。必要に応じて血液検査、レントゲン検査、遺伝子検査などを行うこともあります。
- 視診
獣医師は、まずはオウムの羽、くちばし、爪などを含めた全身をみて、羽の色に異常はないか、嘴や爪が伸び過ぎていないか、血斑が出ていないかなどを調べます。歩き方や止まり木のつかみ方なども確認して全身の健康状態を評価します。 - 触診
肥満でないか、そのうや腹部の膨らみは正常であるか、体表にできものなどがないかを調べます。オウムの触診は熟練した獣医師でないと難しい検査だといえます。 - 糞便検査
糞の色や形をチェックした後、顕微鏡で未消化物や病原体の有無を検査します。糞の状態は餌との関連も強いため、普段与えているフードを答えられるようにしておきましょう。 - そのう検査
そのうというのは、鳥類特有の消化器官で、食道の一部が膨らんで餌を一時的に貯留する部分です。そのう内の、そのう液という液体を調べ、病原体や、白血球、赤血球などの有無を確認します。
オウムを動物病院に連れて行った方がよい状況

オウムと暮らしていると、動物病院に連れて行けばよいのか、様子をみてもよいのか迷うこともあるでしょう。本章では、動物病院に連れて行った方がよいケースを解説します。ただし、これ以外でも飼い主さんが異常を感じるときは迷わず受診しましょう。
オウムを飼い始めたとき
オウムを飼い始めて少し落ち着いたら、動物病院を受診しましょう。健康状態の把握ができるだけでなく、飼育方法のアドバイスをもらえます。
また、動物病院では、一部の感染症の保有状況も調べられます。タイハクオウムを含む白色大型オウムは、PBFDを24.2%という高確率で保有しているというデータがあります。獣医師と相談して、必要な場合は感染症の保有状況も検査するとよいでしょう。
オウムの羽毛が乱れているとき
羽が膨らむ、ボサボサしている、艶がないなどは、体調不調のサインです。羽を膨らませ、かつ、地面に下りてじっとうずくまっている、食欲がないなどの場合は、命に関わる不調の可能性があるため、すぐに受診することをおすすめします。
オウムに食欲不振がみられるとき
オウムを含む鳥類は、血糖値が哺乳類よりも2倍以上も高い動物です。頻回の食事によって、この高い血糖値を維持しているため、食欲不振は血糖値の低下を招き、さらなる体調不良の原因となります。食欲不振がみられる場合は、原因が何であれ、速やかな是正が必要です。できるだけ早く受診しましょう。
オウムが下痢をしているとき
オウムを含め、鳥類は水分を大切にする生物のため、下痢をすることはまれです。飼い主さんが下痢だと思っている状態が、下痢ではなく多尿の場合も少なくありません。排泄物に異常がみられたら、できるだけ実物や写真などを持参して、本当に下痢かどうかの判断を含めた診療をしてもらいましょう。
オウムの目や鼻に異常がみられるとき
目を閉じ気味、片目をいつも閉じているなどの場合は、目の問題だけでなく、上部気道に感染がおきている可能性があります。また、鼻が腫れている、鼻の周囲が汚いなどのケースは、副鼻腔炎や吐いた後の可能性もあります。これらの場合も早めの受診をおすすめします。
オウムのくちばしが開かないとき
オカメインコには、特有のロックジョー(開口不全症候群)という病気があります。これは特に2週齢~10週齢の幼若鳥で発症しやすく、くちばしが開かず食事が難しくなるなどの症状が出ます。確立した治療法がないものの、さまざまな対症療法によって生活の質を維持できるケースもあります。
オウムの体重が減少しているとき
ダイエットをしていないにも関わらず、体重が減り続ける場合、元気そうにみえてもなんらかの病気が潜んでいる可能性があります。動物病院で相談するとよいでしょう。反対に、体重が増え続けている場合も要注意です。
オウムが動物病院を受診する際にかかる費用の目安

オウムの受診に関する費用は、病気や怪我の種類や治療方法、入院の有無、動物病院の方針などにより一概にはいえません。詳細はその都度動物病院に問い合わせる必要がありますが、本章では目安としての治療費や、健康診断の費用をご紹介します。
病気や怪我の通院、治療にかかる費用
一般的な病気や怪我の治療の場合、重症度や入院の有無によって数千円~数万円と幅が広い傾向にあります。ただし、手術を行う場合は、100,000円を超えることもあります。初めて受診する場合は別途初診料が必要で、2,000円~3,000円程度が目安です。
健康診断にかかる費用
受ける項目にもよりますが、10,000円前後~数万円程度が一般的です。初めて受診する際は、初診代に、そのう検査を含めて、数千円で行うというケースもあります。
オウムを動物病院に連れて行く際の準備と注意点

はじめてオウムを動物病院に連れて行くときは、何を持って行けばいいのか、気を付けるべきことは何なのかなど、心配ごとも多いでしょう。本章では準備や注意点などについて解説します。
オウムを動物病院に連れて行く際に必要なもの
動物病院に連れて行く際は、あらかじめ予約が必要な病院かどうかを確かめておきましょう。鳥類専門の病院などは、予約が必須なケースも少なくありません。受診のために必要なものは下記です。
- キャリーケース
- 動物病院の診察券
- 排泄物など(必要な場合)
- オウムの症状がわかる動画、写真、メモなど
- 寒い時期は保温のためのカイロや湯たんぽなど
オウムの診察前に飼い主が整理しておくべき情報
診察室に入ると緊張してうまく話せなくなってしまうという飼い主さんもいます。あらかじめ伝えたいことを整理してメモを作っておくと便利です。特に、
- 体調不良の具体的な内容(食欲がない、元気がないなど)
- 常に続いている不調か、時々出る症状か
- 餌や環境(新しいペットをお迎えした、引っ越ししたなど)に変化があったか、あったならいつ頃か
などの情報は診療に役立ちます。
オウムを動物病院に連れて行くときの注意点
移動のストレスができるだけ少ないように、オウムをキャリーケースに入れて目隠しをします。冬は寒さ、夏は暑さへの配慮も忘れてはなりません。公共交通機関はオウムがストレスを感じやすいため、可能な限り自家用車を使うことをおすすめします。
オウムが動物病院から帰宅したときに気を付けること
帰宅したら、まずは静かに休ませましょう。餌は動物病院の指示にしたがって与えても構いませんが、帰宅後すぐは避け、落ち着いて普段の様子に戻ってからがよいでしょう。もしも、いつまでもぐったりしているなどの不調がみられたら、動物病院に連絡しましょう。
まとめ

本記事では、オウムの飼い主さんやこれからオウムと暮らすことを考えている方に向けて、動物病院の選び方や、オウムの代表的な病気、動物病院を受診すべき状況などを解説しました。オウムの健康のためには、オウムと飼い主さんができるだけストレスなく通える動物病院を見つけることが大切です。獣医師と飼い主さんの信頼関係も重要なので、気になることがあれば積極的に聞いてみて、説明に納得できるかどうかも病院選びの決め手のひとつとしましょう。
参考文献
- できる!小鳥の臨床 小嶋 篤史 著 interzoo
- イヌネコ家庭動物の医学大百科 改訂版 公益財団法人 動物臨床医学研究所編
- わが国におけるオウム嘴羽病の疫学調査
- 岐阜大学比較生化学研究室
- オカメインコの開口不全症候群の 微生物学的・病理学的所見