動物病院の入院費は?内訳やペットの種類別の目安を解説します

動物病院の入院費は?内訳やペットの種類別の目安を解説します

ペットの入院時に「費用はいくらだろう」と不安になる方も多いのではないでしょうか。近年は医療の高度化が進み、治療の選択肢が広がる一方で、入院費も高額になる傾向があります。この記事では、動物病院の入院費についてペットの種類別にわかりやすく解説します。

動物病院の入院費に含まれるもの

動物病院の入院費に含まれるもの

動物病院での入院費用は、入院中のケアや治療内容など、さまざまな要素で構成されています。具体的な費用を知っておくことで、いざというときに落ち着いて対応しやすくなります。ここでは、一般的に入院費に含まれる費用の項目をご紹介します。

入院費

ペットの入院費用には、入院料(いわゆるベッド代)と、基本的な看護費が含まれます。入院料には、ペットが過ごすケージやベッドの使用料が含まれ、清潔な寝床や必要な食事の提供も含まれます。また、基本的な看護費には、愛玩動物看護師による状態の見守り、投薬、点滴管理などのケアが含まれ、入院中のペットが安心して過ごせるよう支援する役割を担っています。ただし、入院費にこれらすべてが一律に含まれるかどうかは病院によって異なります。

診療や投薬、処置などの費用

診療、投薬、処置などの費用は通常、別途請求されます。入院中に注射や点滴などの治療処置、手術、特別な薬剤の投与が必要になった場合は、それらが追加費用として加算される形になります。

食事、ケージ管理など

入院費には食事代やケージの清掃、管理が含まれていることが多いです。しかし、病状に応じて療法食(特別な食事)が必要になる場合は、その費用が別途発生することがあります。

そのほかのオプション費

入院中の治療内容や病状によっては、基本的な入院費用に加えてオプション費用が発生する場合があります。例えば、重症のペットに対してICU(集中治療室)を使用する場合や、酸素投与が必要な場合には、通常の入院料とは別に使用料が加算されます。

追加で発生する可能性のある費用

入院中に病状が変化した場合の追加検査や処置、手術が必要になった場合の費用などが発生する可能性があります。

入院費用を左右するそのほかの要素

入院費用を左右するそのほかの要素

動物病院の入院費は、単に動物の種類や大きさだけでなく、さまざまな要素によって変動します。ここでは病院の規模・専門性、入院期間と症状の重症度、地域による費用差の視点から費用に影響を与える要素を解説します。

病院の規模や専門性(一般病院、専門病院、大学病院、夜間救急など)

MRIなどの高度な検査が必要な場合、大学病院などを紹介されることもあります。より詳しい診断や専門的な治療が受けられる一方で、検査費用が加わるため、全体の費用が高くなる傾向があります。また、夜間救急の動物病院では、時間外対応となるため、診察料が通常よりも高めに設定されていることが一般的です。例えば、日中の診察では初診料が1,000円〜2,500円程度の動物病院が多い一方で、夜間診察では初診料が5,000円〜18,000円程度まで料金が上がることがあります。

入院期間と症状の重症度

入院の期間が長くなるほど、また症状が重くなるほど、費用が高くなります。その理由は、治療や処置の回数が増えたり、検査や管理が複雑になったりするためです。かかることもあります。特に病状が悪化してICU(集中治療室)への入室が必要となった場合は、通常の入院費に加えて、ICU入室料として1日あたり2,000~5,000円程度の費用が発生するため、全体の入院費は高額になります。

地域による費用の差

地方と都市部を比較すると、都市部のほうが入院費が高い傾向があります。
例えば、小型犬の入院費は、日本獣医学会の全国調査では1日あたり約2,500円とされています。一方、東京都心部の相場は3,000〜5,000円程度と、全国調査の結果より高めの料金設定になっています。これは、都市部では人件費や賃料が高いためで、同じような入院内容でも地域によって料金に差が生じることがあります。

犬種別のよくある入院理由と入院費用の目安

犬種別のよくある入院理由と入院費用の目安

犬が入院に至る原因は、犬種や身体のサイズによってある程度の傾向があります。ここでは、小型犬、中型犬、大型犬の3つに分類し、よくある入院理由と費用を紹介します。

小型犬に多い疾患や怪我と、入院費用の相場

チワワやポメラニアンなどの小型犬に多い疾患には、骨折、気管虚脱などがあります。小型犬は身体が小さく骨も細いため、ちょっとした衝撃で骨折してしまうことも少なくありません。骨折の治療には、全身麻酔を使った手術や数日の入院が必要になることもあり、費用は約20~30万円かかる場合があります。

中型犬に多い疾患や怪我と、入院費用の相場

柴犬、コーギー、ビーグルなどの中型犬に多い疾患には、股関節形成不全、十字靭帯損傷などがあります。中型犬は活発で運動量が多い分、関節や脊椎疾患が目立ちます。例えば、膝の靭帯が切れると手術がほぼ不可欠で、前十字靭帯の手術費用は20~60万円ほどかかる場合があります。

大型犬に多い疾患や怪我と、入院費用の相場

ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール、シェパードなどの大型犬は体重が重く体力もある一方、胃捻転、股関節形成不全、骨肉腫などの大きな病気を患いやすく、入院費用も高額になる傾向があります。例えば、胃捻転では、15~40万円ほどかかる場合があります。

猫に多い病気や怪我と入院費用の目安

猫に多い病気や怪我と入院費用の目安

飼い猫が病気やケガをしてしまうと、飼い主さんとしては普通に心配になりますよね。
いざというときに慌てないためにも、猫に多い病気やケガに分けて、代表的なケースとその治療費の目安をご紹介します。

猫に多い病気と入院費用の相場

猫に多く見られる病気のひとつが、泌尿器系のトラブルです。なかでも尿道閉塞は入院が必要になる場合もあります。軽度であれば短期入院で済むことが多いですが、症状が重い場合には会陰尿道置換術と呼ばれる外科手術が必要になることもあります。結石で詰まってしまった尿道の一部を切除し、残った尿道を皮膚に縫い付けて排尿路を確保する外科手術です。この場合、手術費用は130,000~300,000円程度かかります。また、慢性腎臓病が悪化して入院が必要になった場合、1回の入院で約7万円かかることがあります。

猫に多い怪我と入院費用の相場

猫は自由に動き回る性質があり、思わぬケガで入院することも少なくありません。代表的なのが、高所からの落下による骨折です。このような外傷では、整形外科手術が必要になることも多く、数日間の入院治療が必要になります。ペット保険会社アニコムの調査では、後ろ足の骨折で手術を受けた場合、入院費用も含めて約20万円かかると報告されています。

小動物や鳥類などの入院費用の目安

小動物や鳥類などの入院費用の目安

小動物や鳥類は、犬や猫とは異なる専門的な知識や技術が必要なため、診察、入院に対応できる動物病院は限られています。ここでは、種類ごとに、入院費用の目安をご紹介します。

うさぎやハムスターなどの小動物

ウサギやモルモット、フェレットなどの小動物は、診療に対応している病院が限られているだけでなく、入院費も動物病院ごとの差が大きいのが特徴です。目安は1日あたり約3,000円〜8,000円で幅があります。

インコやオウムなどの鳥類

インコやオウムなどの鳥類は、種類や身体の大きさによって入院費が異なる場合があります。目安は小型の鳥類で1日あたり2,000〜8,000円大型の鳥類では3,000〜8,000円程度とされています。

トカゲや蛇などのは虫類

は虫類の入院費は、1日あたり2,000~6,000円程度が相場ですが、このような情報をホームページなどに掲載している動物病院は多くありません。そのため、診療を受ける前に費用や対応内容を事前に確認することが大切です。

入院をすすめられた際に獣医師に確認すべきこと

入院をすすめられた際に獣医師に確認すべきこと

ペットに入院が必要と診断されると、不安で頭が真っ白になってしまう飼い主さんも少なくありません。しかし、そうしたときこそ冷静に、獣医師からしっかりと説明を受け、気になる点や疑問は遠慮せず確認しておくことが大切です。ここでは、入院前に獣医師に確認すべき内容について解説します。

推定される入院期間と総費用の目安

入院が必要になったら、獣医師に入院期間と費用の目安を確認しておきましょう。正確な日数を断言するのは難しい場合もありますが、治療計画に応じたおおよその入院期間と費用の目安を教えてもらえます。

入院費用の内訳

基本的には入院基本料、治療処置費、薬代、検査費などの積み上げになりますが、病院によってパッケージになっている項目もあります。例えば、入院料に食事代やケージ管理費を含む場合もあります。獣医師には入院費に含まれる項目別料金になる項目を尋ねることをおすすめします。

治療計画と予後について

入院中にどのような処置や投薬をするのか、どのような経過をたどるのかを確認しておきましょう。また、説明を受ける際は、生存率や後遺症の可能性など予後(回復の見込み)も質問しておきます。予後を把握しておくと、生活への影響や介護の必要性など、治療後を見据えた準備がしやすくなります。

面会時間やペットの様子に関する報告頻度

動物病院によって、面会の可否や時間帯、面会頻度などのルールが異なります。多くの病院で面会は可能ですが、治療の妨げになる場合や感染対策のために、制限や禁止をしていることもあります。特に入院直後や緊急治療中は、安静を優先して面会できない場合もあります。さらに、面会時にペットに触れてよいか、差し入れとして持ってきてもよい物があるかあんど、面会時の注意点についても、あらかじめ獣医師に確認しましょう。
また、入院中の様子をどのくらいの頻度で連絡してもらえるか、飼い主側から連絡してよい時間帯はあるかなども聞いておくと状況を把握しやすくなります。

動物病院での入院費用の一括払いが難しいときの対処法

動物病院での入院費用の一括払いが難しいときの対処法

動物病院での入院費用は高額になることもあり、請求額を見て「一括ではとても払えない」と困ってしまう飼い主さんも少なくありません。あらかじめ利用できる支払い方法を確認しておくことで、万が一のときにも落ち着いて対応しやすくなります。ここでは、一括払い以外の支払い方法について解説します。

クレジットカード払いの有無を確認する

多くの動物病院でカード払いに対応していますが、なかには現金のみの動物病院もあります。事前にカードが使えるかどうかを確認しておきましょう。

分割・後払いサービスの有無を確認する

入院費は原則として当日に全額を支払う必要があります。そのため、分割や後払いを希望する場合は、事前に動物病院に支払い方法を確認しておく必要があります。実際に「後払いや分割払いはできません」と、明記している動物病院もあります。

ペット保険に加入している場合は補償範囲や利用方法を確認する

ペット保険では診察、治療、投薬などの診療費に加えて、入院中の宿泊費もカバーされるのが一般的です。また、保険金の請求方法には後日精算窓口精算の2種類があり、この精算方法を選択するかで、動物病院の窓口での支払い金額が異なります。

  • 後日精算の場合
    後日精算は、いったん飼い主さんが動物病院で全額を支払い、後から領収書などを保険会社に送って保険金を請求する方法です。保険会社に提出する書類は、主に保険金請求書や診療明細書(領収書)ですが、保険会社ごとに必要書類が異なります。そのため、事前に確認しておくことで手続きがスムーズに進みます。
  • 窓口精算の場合
    窓口精算は、病院の窓口でペット保険の保険証を見せることで、その場で保険が適用され、自己負担分だけを支払えば済む方法です。ただし、すべての動物病院が窓口精算に対応しているわけではないため、対応しているかどうかを確認しておくとスムーズに対応できます。

まとめ

まとめ

動物病院での入院を検討する際は、事前の確認が欠かせません。入院期間や治療内容に応じたおおよその費用をあらかじめ確認し、基本入院料や検査費、薬代などの内訳に入院費の内訳に不明な点があれば、獣医師に確認しましょう。また、支払い方法やペット保険の利用可否も確認しておくことで落ち着いて対応できます。

参考文献