犬のてんかん発作が起きたらどうする?原因と対処法、受診の目安などを解説

犬のてんかん発作が起きたらどうする?原因と対処法、受診の目安などを解説

愛犬が突然けいれんを起こしたり、意識を失ったように倒れたりする姿を目にすると、不安を感じる飼い主さんは少なくありません。犬のてんかんは特別な病気ではなく、適切な対処と継続的なケアによって日常生活を問題なく送ることも可能です。ただし、症状や原因はさまざまで、対応を誤ると命に関わることもあります。本記事では、てんかん発作の特徴や原因、対処法、予防の工夫について、飼い主さんが知っておきたいポイントを整理してお伝えします。

犬のてんかん発作

犬のてんかん発作

まず最初に犬のてんかん発作の特徴や原因、見分け方などの基礎知識を解説します。

てんかん発作とはどのような症状ですか?
てんかん発作とは、脳内の神経活動が一時的に異常をきたすことで起こる発作性の症状を指します。犬では突然倒れてけいれんを起こす、手足を硬直させる、よだれを垂らす、排尿・排便を伴うなどの全身的な症状がみられます。また、よだれを垂らす、顔面の一部がぴくぴくする、ぐるぐると歩き回るといった部分的な発作が見られる場合もあります。発作中は意識がない場合もあり、飼い主さんの呼びかけに反応しないことも特徴です。多くの発作は数十秒から数分で自然におさまりますが、発作後に一時的な混乱やふらつきが残ることもあります。
てんかん発作の主な原因を教えてください
犬のてんかん発作には、大きく分けて特発性てんかん、構造的てんかん、反応性発作の3つがあります。特発性てんかんは、遺伝的要因が疑われますが正確な原因の特定は難しいことが多く、若い犬に多く見られます。構造的てんかんは、脳腫瘍や脳炎、水頭症、外傷など、脳の器質的な異常によって引き起こされる発作です。反応性発作は、低血糖や肝性脳症、中毒など、脳以外の一時的な全身性異常が原因で起こるものです。発作のタイプによって治療方針が異なるため、原因を正しく見極めるための診断が欠かせません。
てんかんを発症しやすい犬種はありますか?
はい、てんかんの発症リスクが高いとされる犬種は複数あります。遺伝的要因が関与すると考えられており、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、シェットランド・シープドッグ、ボーダー・コリー、ビーグル、トイ・プードル、ダックスフンド、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどが挙げられます。これらの犬種では特発性てんかんの報告が多く、1〜5歳の若齢期に発症する傾向があります。ただし、どの犬種でもてんかんを発症する可能性はあるため、犬種に関係なく異変に気付いたら早めに動物病院で相談することが大切です。
てんかん発作とほかの失神や震えなどとの違いを教えてください
てんかん発作は、脳の異常な電気活動によって突然起こるけいれんや意識消失などの症状が特徴です。発作中は飼い主の呼びかけに反応しないことが多く、発作後に混乱やふらつきが残ることがあります。一方、失神は心臓疾患などが原因で一時的に脳への血流が減少し、意識を失う状態で、意識は早く戻り、けいれんを伴わないといわれています。また、震えは寒さや不安、痛みなどの身体的・心理的な要因によるものが主たるもので、意識は保たれています。見極めには、発作の様子を動画で記録することが診断の手がかりになります。

犬のてんかん発作が起きたときの対処法

ここでは、犬のてんかん発作が起きたときに、飼い主さんが取るべき具体的な行動を解説します。

てんかん発作が起きたときの対処法を教えてください
てんかん発作が起きた際は、まず飼い主さんが落ち着いて行動することが大切です。犬を無理に抑えたり揺さぶったりせず、周囲の障害物をどけて事故防止に努めましょう。発作の様子をスマートフォンで記録しておくと、診断時に具体的な参考情報になります。発作は通常1〜2分で治まりますが、5分以上続く場合や何度も繰り返す場合はてんかん重積と呼ばれ、命に関わる恐れがありますので、すぐに動物病院へ連絡し、必要な場合は受診してください。また、発作の継続時間や様子、頻度などを記録しておくことで、診断や治療方針の判断材料になります。
犬が舌を噛まないように何かくわえさせた方がよいですか?
発作中の犬に何かをくわえさせるのは、絶対に避けるべき行為です。人の場合、舌を噛まないようにタオルなどをお口に入れるという誤った対処法が知られていることがありますが、犬に対しても同様の行動を取ると、飼い主が噛まれてケガをする恐れがあります。実際には、犬が舌を噛んで重篤な損傷を負うケースはとてもまれです。発作中の犬には触れず、ゆったりできる場所に移動させるだけで十分です。むしろ、落ち着いて発作の様子を観察・記録することの方が、正確な診断や治療に役立ちます。
てんかん発作が収まった後の対処法を教えてください
発作が収まった後の犬は、混乱やふらつき、眠気などの回復期と呼ばれる状態になることがあります。この時期は普段とは違う行動をとることもあるため、無理に動かしたり声をかけ続けたりせず、落ち着くまで静かに見守りましょう。水を飲ませるのは落ち着いてからで構いません。また、発作の継続時間や様子、前兆の有無などを記録しておくと、動物病院での診断に役立ちます。発作後すぐに回復しない、頻繁に発作を繰り返す、異常な行動が長く続くといった場合は、早めの受診をおすすめします。発作の経過を記録しながら、飼い主さんが冷静に様子を見守ることが大切です。

犬のてんかん発作で動物病院へ行くタイミング

犬のてんかん発作で動物病院へ行くタイミング

ここでは、犬のてんかん発作において動物病院を受診すべき具体的なタイミングを解説します。

受診を急ぐべき危険な発作の目安はありますか?
てんかん発作が5分以上続く場合はてんかん重積と呼ばれ命に関わる緊急状態です。短時間に複数回の発作を繰り返す群発発作も注意するべき発作になります。特にてんかん重積の場合は、呼吸や体温調節の異常によって、脳や身体に深刻なダメージを及ぼす可能性があるため、すぐに動物病院を受診する必要があります。また、発作後に意識が戻らない、身体に麻痺が残る、歩行が困難になるなどの異常が見られる場合も危険な兆候です。また、初めての発作や、いつもと明らかに異なる発作が見られた場合も、注意が必要です。迷ったときは、速やかに獣医師へ相談することが大切です。
動物病院で行われる主な検査内容を教えてください
てんかんの診断では、ほかの病気や異常の有無を確認するための検査が行われます。主なものとしては、血液検査や尿検査、神経学的検査などがあり、感染症や代謝異常、中毒の有無などを確認します。必要に応じて、MRI(磁気共鳴画像)やCTなどの画像検査で、脳に構造的な異常がないかを確認することもあります。また、脳脊髄液検査が行われることもあり、炎症や腫瘍の有無を調べるのに役立ちます。これらの検査結果を総合的に判断することで、特発性てんかんなのか、別の病気が原因なのかを見極めます。

てんかん発作のある犬の日常生活のケア

ここでは、てんかん発作を抱える犬のための日常生活の工夫をご紹介します。

てんかん発作を予防する生活環境の作り方を教えてください
てんかんの犬がトラブルなく過ごせる生活環境を整えることは、発作の予防や重症化の防止に大いにつながります。まず、大きな音や強い光、急な刺激を避けることが重要です。テレビやスマートフォンの音量や明るさにも配慮しましょう。また、発作時にけがをしないよう、滑りやすい床にはカーペットを敷く、家具の角にクッションをつけるなどの工夫も有効です。生活リズムの乱れも発作の引き金となるため、毎日の食事・睡眠・散歩の時間はなるべく一定に保つよう心がけましょう。落ち着いて過ごせる環境づくりが、発作の予防と症状の安定に役立ちます。
毎日の運動量はどのように調整すればよいですか?
てんかんのある犬でも、適度な運動は健康維持やストレス解消に役立つため大切です。ただし、過度な興奮や疲労は発作の引き金となることがあるため、運動量には注意が必要です。散歩は短時間でも構わないので、毎日決まった時間に無理のないペースで行うことが推奨されます。ドッグランなどで激しく遊ばせるよりも、静かに歩く散歩や、知育トイを使った軽い遊びなどもおすすめです。天候が悪い日などは、室内での遊びで心身の刺激を与えるのも効果的です。運動の強度や頻度については、かかりつけの獣医師と相談しながら個々に合わせて調整することが大切です。

編集部まとめ

犬のてんかん発作は突然起こることが多く、飼い主さんの冷静な対応が重要です。発作の原因や症状を正しく理解し、適切な対処や生活環境の工夫を行うことで、犬のQOLを保ちながら健やかに暮らすことが可能です。発作が長引く場合や頻発する場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。てんかんは継続的なケアが求められますが、多くの犬が治療とともに安定した生活を送ることができます。飼い主さんの理解と支えで愛犬との健やかな生活を目指しましょう。

【参考文献】