ペットホテルでは投薬してくれる?預けるときの注意事項や接種したいワクチンも解説

動物病院で獣医師に診察を受ける猫と女性

持病のある愛犬や愛猫に定期的な投薬をしている飼い主にとって、ペットホテルの投薬対応は重要な問題です。

投薬が必要なペットを安心感を持って預けるために、法的な制約や施設選びのポイントを理解しておくとよいでしょう。

本記事では、ペットホテルの投薬対応の実情と法的背景、預ける際の注意点などを解説します。また、ペットホテル利用に必要なワクチンについても詳しく説明します。

ペットホテルで投薬はしてくれる?

猫を抱えた獣医の上半身

事業としてペットホテルで投薬を行うときは、獣医師または獣医師の指示下の愛玩動物看護師に限られます。

環境省は、経口投与を含む投薬を診療の補助に位置づけています。愛玩動物看護師は獣医師の指示の下でこの補助を実施できますが、無資格者による反復継続的な投薬は法律で禁止されています(獣医師法第17条)。

そのため、投薬対応が可能なのは獣医師や愛玩動物看護師が在籍するペットホテルのみです。

動物病院併設のペットホテルや、動物病院運営の施設では、専門的な医療ケアとして投薬サービスを提供している場合があります。

投薬対応を明示するペットホテルもありますが、対応可否や体制、料金は施設により異なるため事前の確認が大切です。

ペットホテルで投薬が難しい理由

手でバツを作る男性医師 禁止のイメージ

ペットホテルで投薬が困難な理由は法的制約です。獣医師法第17条では、獣医師でない者は診療を業として行ってはならないと規定されています。

愛玩動物看護師法では、愛玩動物看護師は獣医師の指示下で診療の補助を行うことができるとされています。

投薬は獣医師および愛玩動物看護師(獣医師の指示下)の業務であり、反復継続的な無資格者による実施は認められていません。

これは、適切な医学的知識を持たない者による薬剤の取り扱いが、ペットの健康に重大な影響を与える可能性があるためです。

薬剤には相互作用や禁忌事項があります。薬剤の取り扱いには正確な用量や投与方法、副作用の観察など専門的な知識と技術が必要です。

ほかの薬剤や食品との組み合わせによって効果の変化や、副作用が増強される場合もあります。

投薬による事故や副作用が発生した場合、無資格者では適切な対応ができず、ペットの生命に関わる重大な事態を招く可能性もあるでしょう。

投薬が必要なペットをホテルに預ける場合の注意事項

動物病院で猫を診察する獣医師(嫌がる)

投薬が必要なペットをペットホテルに預ける際は、事前の準備と情報共有が不可欠です。

ここでは、ペットの安全性を重視し健康を守るため、投薬が必要なペットをホテルに預ける場合の注意事項を解説します。

薬の種類と用量を正確に伝える

処方薬の詳細情報を文書で作成し、ペットホテルに提出します。薬剤名や1回の投与量、1日の投与回数を明記します。

また、錠剤や粉薬、液体など薬の形状も正確に伝えましょう。実際の薬剤を持参して確認してもらうことも大切です。

複数の薬剤を服用している場合は、それぞれの薬剤の詳細な情報を整理し、混同を避ける工夫が必要です。薬剤の色や大きさ、特徴的な形状なども記載し、視覚的にも識別しやすくします。

薬剤の保存方法も詳しく説明しましょう。冷蔵保存が必要な薬剤や直射日光を避けるべき薬剤、湿度管理が重要な薬剤など、それぞれの保存条件を明確に伝えることで薬剤の品質を保持できます。

薬剤に関する注意事項も併せて記載します。ほかの薬剤との飲み合わせで注意すべき点、アレルギー反応の既往歴、過去に副作用が現れた薬剤があれば詳細な報告が大切です。

服薬時間や投与方法、食事との関係を伝える

遠くを見る猫

正確な服薬スケジュールと投与方法の共有が重要です。食前や食後、食間など食事との関係を詳しく説明します。

薬剤によっては食事と一緒の摂取で吸収がよくなるものや、空腹時の服用が必要なものがあります。

投薬のタイミングは治療効果に直接影響するため、朝8時と夕方6時などの具体的な時間を明記し、前後何分程度の誤差なら問題ないかも併せて伝えましょう。

投薬方法についても具体的に説明します。錠剤をそのまま飲ませるのか、粉砕して食事に混ぜるのか、液体薬剤の場合は希釈が必要かなど普段行っている方法を詳しく伝えます。

ペットが薬を吐き出してしまった場合の対処法や、再投薬の判断基準も共有しておくことが重要です。

かかりつけ動物病院の情報を共有する

緊急時の迅速な対応のため、かかりつけ動物病院の詳細情報として、以下の内容が記載された資料を用意します。

  • 病院名
  • 住所
  • 電話番号
  • 担当獣医師名
  • 診療記録のコピーや血液検査の数値
  • 過去の病歴や手術歴
  • アレルギー情報

現在の治療方針や病状なども簡潔にまとめ、緊急時の連絡がスムーズに行えるよう準備します。

緊急連絡先を伝える

スマートフォンを使いアドバイスする女性

ペットの体調変化時に即座に連絡が取れるよう、複数の緊急連絡先を用意します。

携帯電話や勤務先、家族の連絡先など、基本的に連絡が取れる番号を複数準備して優先順位を明確にしましょう。

不在時間や連絡困難な時間帯も事前に伝え、その場合の対応方針を話し合います。家族や親族の連絡先を登録する際は、ペットの状況を理解している人物を選ぶことが重要です。

ペットの性格や普段の様子、投薬の重要性を理解している家族であれば、飼い主さんの代わりに的確な判断を下すことができます。

どの程度の医療処置まで許可するのか、費用の上限はあるのかなど、具体的な方針を事前に決めておきましょう。

ペットの健康状態を把握しておく

預ける前にペットの現在の健康状態を詳細に把握します。

直近の食欲や排泄状況、睡眠パターンなど、日常の様子を記録して普段と異なる変化がないか確認します。

薬の副作用として現れる可能性のある症状も調べ、ペットホテル側と情報共有することで、異常の早期発見につながるでしょう。

ペットの性格や行動パターンなどを詳しく伝えます。ストレスを感じたときの行動や体調不良時の兆候、普段と異なる行動を示すときの意味など、ペットの個性を理解してもらうとよいでしょう。

投薬しやすいようにしつけをしておく

日頃から投薬に慣れるしつけを行うことで、ペットホテルでの投薬がスムーズです。

薬を嫌がらずに飲む練習や、お口を開けることに慣れる練習を日常的に行います。薬を食事に混ぜる場合は好みや効果的な方法を把握し、その情報をペットホテル側に伝えます。

投薬のしつけは段階的に行うことが重要です。まず、お口の周りを触られることに慣れさせ、次にお口を開けることに慣れさせます。その後、実際に薬を飲む練習を行います。

薬を隠して与える方法も練習しておくとよいでしょう。好きな食べ物に薬を混ぜる方法、薬用のおやつを使用する方法など、用意しておくのがおすすめです。

投薬対応ペットホテルを選ぶポイント

どちらにするか迷う女性

投薬が必要なペットを安心感を持って預けるため、適切な施設選びが重要です。ここでは、投薬対応ペットホテルを選ぶポイントを確認します。

獣医師または動物看護師が在籍しているか

法的に投薬を行えるのは獣医師または愛玩動物看護師のみであるため、まずは有資格者の在籍状況を確認しましょう。

動物病院併設のペットホテルや、有資格者が常駐している施設を選ぶと安全性は高いです。施設見学時にスタッフの資格を直接確認し、投薬対応の可否を明確にします。

有資格者の勤務体制も詳しい確認が重要です。常勤なのか非常勤なのか、勤務時間帯と夜間や休日の対応体制など、投薬が必要な時間帯に有資格者がいるかを確認します。

獣医師が在籍している場合は、その獣医師の専門分野や経験なども質問するとよいでしょう。ペットの疾患に適した専門知識を持つ獣医師がいるかは重要な判断材料です。

愛玩動物看護師が投薬を行う場合は、獣医師の指示体制の確認が必要です。投薬に関する獣医師からの具体的な指示書があるか、緊急時に獣医師と連絡が取れる体制が整っているかを確認します。

投薬記録を残してくれるか

適切な投薬管理には詳細な投薬記録が不可欠です。投薬時間や薬剤名、用量などを記録して、飼い主に報告してくれる施設を選びます。

これらの記録は継続的な治療で重要な情報となり、かかりつけ動物病院での診療にも役立ちます。

投薬記録の提供タイミングも確認しましょう。毎日決まった時間に報告してもらえるのか、お迎え時にまとめて提供されるのかなど、情報共有の頻度と方法を明確にします。

追加料金やサービス内容が明確か

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投薬サービスは追加料金がかかる場合が少なくないため、料金体系とサービス内容を事前に確認します。

1回あたりの投薬料金や、1日複数回の場合の料金設定、緊急時の対応料金など詳細な料金体系を把握しておくとよいでしょう。

どこまでのケアが含まれているかも明確にし、追加サービスが必要な場合の対応も確認します。

基本的な投薬料金に含まれるサービス内容の詳しい確認も必要です。投薬作業のみなのか、投薬前後の健康観察も含まれるのか、記録作成費用は別途必要かなどの料金に含まれる範囲を明確にします。

緊急時の対応に関する料金も重要です。夜間や休日の緊急投薬、獣医師の往診、緊急搬送など通常の投薬以外の対応にかかる費用を事前に確認しておきます。

キャンセルポリシーの確認も大切です。投薬が必要なペットの場合、急な体調変化でキャンセルもあり得ます。キャンセル料の発生条件、返金の可否などを確認します。

預けている際の様子を教えてもらえるか

投薬後のペットの様子や体調変化の定期的な報告をしてくれる施設を選びます。

食欲や活動量、排泄状況など、日常的な観察項目を報告する体制が整っている施設は信頼性が高いでしょう。

写真や動画での報告サービスがある施設では、より詳細にペットの様子を把握できます。

報告の頻度と内容を具体的に確認しましょう。毎日決まった時間に報告があるのか、変化があったときのみ連絡があるのか、どの程度詳細な情報を提供してもらえるのかを事前に話し合います。

報告方法についても重要です。電話やメール、SNSなど、どのような方法で情報を受け取れるのかを確認します。

異常時の対応基準も明確にしておきます。どのような状況で緊急連絡があるのか、軽微な変化でも報告してもらえるのか、判断基準を共有しておくとよいでしょう。

24時間体制か

24時間営業のイメージ

投薬が必要なペットの場合、しっかりとした経過観察とケアが望ましいです。

夜間や早朝の投薬が必要な場合や急な体調変化に対応できる体制が整っているか確認します。夜間の緊急時に獣医師への連絡体制が確立されているかも重要なポイントです。

24時間体制の場合は、具体的な内容を詳しく確認しましょう。スタッフが常駐しているのか、定期的な巡回なのか、監視カメラによる遠隔監視なのかなどの監視体制の詳細を把握します。

ペットホテルに預ける前に接種しておきたいワクチン

予防接種をするヨークシャテリア

ペットホテル利用時には1年以内の狂犬病ワクチンおよび混合ワクチンの接種証明書の提示を求められることがあります(法定義務ではなく施設ルール)。証明書が必要な施設が少なくないため、事前に各施設の条件を確認しましょう。

犬の場合、狂犬病予防法により生後3ヶ月以降のすべての犬に年1回のワクチン接種が義務付けられています。

狂犬病は発症すると致死率が高い危険なウイルス感染症で、人間を含む哺乳類全般に感染する人獣共通感染症です。

犬用の混合ワクチンには5種や6種、7種などがあります。8種や10種のワクチンも使用されており、ジステンパーやパルボウイルス感染症、パラインフルエンザなどの重篤な感染症の予防効果が高まります。

猫の場合も3種または5種混合ワクチンの接種が一般的です。猫汎白血球減少症や猫カリシウイルス感染症、猫ウイルス性鼻気管炎などの疾患に対する予防効果が期待できます。

混合ワクチンの接種は法的義務ではありませんが、病気への予防効果が期待できます。ペットホテル利用の有無に関わらず、ペットの健康管理の観点から接種を検討することが大切です。

ワクチン接種後は、接種当日の長距離の散歩や激しい運動は避け、疲労回復を優先します。ペットホテル利用時は、ワクチン接種から1〜2週間程度経過し、十分な抗体ができてからの利用が推奨されます。

まとめ

犬と女性

ペットホテルでの投薬対応は法的制約により獣医師または愛玩動物看護師が在籍する施設のみとされています。

一般的なペットホテルでは無資格者による投薬は法律で禁止されているため、投薬が必要なペットを預ける際は事前に確認をしましょう。

投薬対応可能な施設を選ぶ際は、有資格者の在籍状況や投薬記録の管理体制、緊急対応の可否などを総合的に判断することが重要です。

また、薬の詳細情報の正確な伝達、かかりつけ動物病院の情報共有など事前準備を怠らないことが大切です。

ペットホテル利用には一般的に狂犬病ワクチンと混合ワクチンの接種証明書が必要となるため、利用前に適切なワクチン接種を済ませておきましょう。

料金面では、投薬サービスには追加料金があるのが一般的です。基本料金に含まれるサービス内容や緊急時の対応費用について事前に確認し、予算計画を立てておくことをおすすめします。

適切な準備と施設選びにより、投薬が必要なペットも安心感を持ってペットホテルを利用できます。

飼い主とペットの双方にとって安全性があり、快適な宿泊となるように、事前の情報収集と準備を十分に行いましょう。

参考文献