旅行や出張などで大切なペットを預けるとき、「家族と同じように丁寧にケアをしてもらいたい」「できれば、滞在そのものを楽しんでほしい」と考える飼い主さんは多いのではないでしょうか。
そんな希望を叶えてくれるのが、上質な空間と行き届いたおもてなしを提供する高級ペットホテルです。
この記事では、高級ペットホテルと通常のペットホテルとの違いや高級ホテルの主なサービス内容、宿泊料金の目安とホテルを選ぶ際のポイントを解説します。
高級ペットホテルの定義

高級ペットホテルの明確な定義はありませんが、一般的には、飼い主さんの大切な家族であるペットがより快適に、上質な環境で過ごせるように設計された宿泊施設を指します。
安全面と衛生面の配慮はもちろん、設備、サービス、スタッフの質などあらゆる面でこだわりがみられる点が特徴です。宿泊料金は通常のペットホテルと比べて高い傾向ですが、その分、ハイクオリティな空間や体験を提供しています。
施設によっては、高級、極上、ラグジュアリーやプレミアムといった言葉でホテルの特徴を表現しています。信頼できる環境で、ペット一頭一頭に寄り添った細やかなケアでおもてなしする点が高級ペットホテルの魅力です。
高級ペットホテルと通常のペットホテルの違い

通常のペットホテルでは、愛犬や愛猫が健康で安全に過ごすための基本的なサービスが提供されます。具体的には、食事、運動、清掃などです。
一方、高級ペットホテルではそうしたケアに加えて、ペットの生活の質を高めるための滞在空間とサービスを提供しています。
例えば、ケージではなく広い個室での宿泊や、ペットの個性や健康状態に合わせた散歩や遊びなどの個別ケアです。ほかにも、ホテルに滞在中の様子を写真を添えた宿泊レポートやwebカメラで確認できるなど、飼い主さんに寄り添ったサービスが受けられるホテルもあります。
さらに、高級ペットホテルでは、施設ごとにコンセプトを掲げている店舗も多く、家庭で過ごすような安心感、贅沢な体験など、個性豊かに差別化されています。飼い主さんの要望やペットのライフスタイルに合わせて、適切なホテルを選べます。
高級ペットホテルの代表的なサービス内容

高級ペットホテルでは、単にペットを預かるだけでなく、快適で上質な滞在体験を提供するさまざまなサービスが用意されています。
ここでは、高級ペットホテルならではのサービスを詳しく解説します。
個室や広いケージがある
ペットホテルにおけるケージの大きさは動物愛護管理法によって最低限の基準が定められています。通常のホテルでは、この基準に沿ったケージでの預かりが一般的ですが、高級ペットホテルでは基準を上回る広々とした個室やハウスを備えています。
ホテルによっては、デラックスルームやスイートルームといった名称が使われており、開放感のある空間でゆったりとくつろげる環境が整えられています。さらに、人間のホテルのように、部屋のグレードを選択できる場合もあります。
こうしたゆとりのある設計により、ペットのストレスが軽減され、快適な滞在が実現できます。
参照:『第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令(令和3年環境省令第7号)』(環境省)
ドッグランなどペットが自由に過ごせるスペースが用意されている
高級ペットホテルでは、ペットの運動不足の解消やストレス軽減のために、屋内外ドッグランやフリースペースを併設している施設が多くみられます。スタッフの見守りのもと、のびのびと遊べる時間が設けられています。
また、オーダーメイドスケジュールを導入しているホテルもあります。オーダーメイドスケジュールとは、事前のカウンセリングを通して、ペットの性格はもちろん、食事や散歩、遊びなどを把握し、滞在中は普段の生活に近い過ごし方ができるよう配慮されたサービスです。これにより、散歩の回数や時間を調整し、ペットの習慣に合わせて柔軟に対応してもらえる場合があります。
質の高い寝具やおもちゃを用意している
ホテルによっては、ペット専用のマットレスやベッドを採用しているところもあります。高級ブランドや一流メーカーの寝具がペットの上質な眠りをサポートしてくれます。
おもちゃや知育玩具を豊富に取り揃え、スタッフが一緒に遊んでくれるホテルもあり、ペットが飽きずに滞在を楽しめるさまざまな工夫がなされています。
このように、高級ペットホテルでは、質の高いおもちゃや寝具の導入により、ホテルライフに付加価値を生み出している点も特徴です。
こだわりの食事を提供している
ペットにとって環境の変化は大きなストレスです。食事はできるだけいつもと同じものが望ましいため、多くのホテルが食事の持ち込みを推奨しています。
一方で、ペットホテルのなかには、滞在をより楽しめるように手作りのフードやおやつを用意している施設もあります。
いつもと同じ安心感を保ちながら、特別な空間でちょっとした贅沢を楽しめるのは、高級ペットホテルならではの魅力です。
スタッフが24時間常駐している
高級ペットホテルでは、スタッフが24時間常駐している場合があります。夜間が無人になる施設でも、監視カメラを設置し、常にペットの様子を確認できる体制が整っているホテルも多くあります。そのため、急な体調の変化やトラブルがあった際にも迅速な対応が可能です。
動物看護師やトレーナーなどがスタッフとして在籍している
動物看護師や愛玩動物飼養管理士、ドッグトレーナーなど動物関連資格の保有者が在籍しているのも高級ペットホテルの特徴です。なかには、すべてのスタッフが資格保有者であるホテルもあります。
また、通常のホテルでは預け入れが難しいシニア世代のペットや持病のあるペットの受け入れに対応している施設もあります。個体に応じた体調管理など、医療面にも配慮したサポートが行われるため、健康に不安のあるペットでも安心して預けられます。
写真や動画、配信などの共有サービスが充実している
高級ペットホテルでは、ペットのケアだけでなく、飼い主さんの心配を和らげるサポートにも力をいれています。なかでも代表的なものが写真や動画による共有サービスです。
滞在中の様子をスタッフが写真や動画付きで報告してくれるほか、ライブカメラを設置し、飼い主さんがリアルタイムでペットの様子を確認できる施設もあります。
施設によって共有方法や頻度、内容が異なるため、自身の希望に合ったサービスを提供しているホテルを選びましょう。
送迎サービスがある
ホテルのなかには、送迎サービスを実施している店舗があります。送迎サービスの利用により、安全かつスムーズなチェックインが可能です。
送迎サービスの料金は施設によって異なりますが、距離に応じて設定されている場合が多い傾向です。ただし、自宅とホテルの距離によっては利用できない場合もあるため、送迎を希望する場合は、事前に確認しておきましょう。
高級ペットホテルの選び方

高級ペットホテルを選ぶ際は、設備やサービスの豪華さだけでなく、ペットの性格や健康状態に合っているか、飼い主さんにとって利用しやすいかといった条件を踏まえて検討する必要があります。
ホテルごとに提供サービスは異なります。複数の施設を比較し、安心して預けられる環境を見つけましょう。
預けたいペットが受け入れ可能条件を満たしているか
多くのペットホテルでは、ワクチンの接種証明書やノミ、ダニ対策の提示が求められます。また、発情中の犬や猫、攻撃的な性格の子は受け入れが制限される場合もあるため、事前の確認が必要です。
さらに、ホテル独自の利用規約として、マナーウエアの着用やチェックイン、チェックアウト時間の指定などがある場合もあります。
ペットを預ける際には、これらの条件を確認し、ホテルのルールに従うことが大切です。
立地や送迎サービスなどの利便性が高いか
ペットホテルの利用には、施設やサービスの質だけでなく、飼い主さんにとって利便性の高い立地にあるかどうかも見逃せないポイントです。
素晴らしいホテルでも自宅から数十キロも離れていては急な宿泊は困難です。飼い主さんにとって利便性の高い立地にあることは施設利用の前提といえるでしょう。
また、長距離の移動はペットにとっても大きな負担です。希望の条件をすべて満たすホテルが近隣にない場合は、送迎サービスを活用するか、一般的なペットホテルを一時的に利用するのも選択肢のひとつです。
サービス内容がペットの性格に合っているか
高級ペットホテルは、施設ごとにコンセプトや特徴が異なります。非日常のリゾート空間を演出しているホテルもあれば、自宅のような居心地の良さを重視した施設もあります。
例えば、社交的で遊ぶのが好きな子には、フリースペースやドッグランを併設したホテルが向いています。静かに過ごしたい子には広い個室を備えたホテルがおすすめです。ペットの性格や過ごし方に合ったサービスを提供する施設を選びましょう。
スタッフの対応や雰囲気がよいか
信頼できるスタッフがいるかどうかは、ホテル選びの重要な要素のひとつです。いくら設備が整っていても、スタッフの対応が不十分であれば大切な愛犬や愛猫を安心して預けることができません。
高級ペットホテルでは、スタッフの対応にも力を入れています。そのため、手厚いケアやパーソナライズされた対応が期待できます。
初回利用時には短時間のお試し預かりをお願いして、スタッフの対応やペットとの相性を確かめるのもおすすめです。
高級ペットホテルの料金相場

高級ペットホテルは通常のホテルに比べて宿泊料金が高めに設定されている傾向ですが、実際にどのくらいの費用がかかるのでしょうか。高級ペットホテルと通常のペットホテルの料金相場を比較して紹介します。
| ホテルタイプ | 小型犬 (平日1泊) | 中型犬 (平日1泊) | 猫 (平日1泊) |
|---|---|---|---|
| 通常のペットホテル | 約4,000〜7,500円 | 約5,500〜8,000円 | 約3,000〜4,500円 |
| 高級ペットホテル | 約8,000〜15,000円 | 約9,000〜17,000円 | 約5,000〜17,000円 |
このように、高級ペットホテルは通常のホテルに比べ、2倍近い宿泊料金がかかることがわかります。その分、個室や広いハウスに加え、専門スタッフによる手厚いケアなど、価格に見合った充実したサービスを受けることができます。
なお、週末や祝前日、年末年始やお盆などの繁忙期に割増料金が設定されているホテルが多くあります。ホームページの情報が古い場合もあるため、正確な料金を知りたい際は、ホテルへの確認をおすすめします。
高級ペットホテルに預ける際の注意点

高級ペットホテルに預ける際には、飼い主さんによる事前の確認や準備が必要です。施設見学やカウンセリング、ワクチン接種や持ち物のチェックなどを漏れなく行えば、離れている間もお互いに心配なく過ごせます。
実際に宿泊する際に気をつける主なポイントは下記のようなものがあります。
| 注意点 | ポイント |
|---|---|
| 事前見学 | ホームページやSNSだけではわからない施設の雰囲気や衛生状態、スタッフの対応を直接確認する。 |
| カウンセリングと予約 | 連休や繁忙期、注目のホテルや部屋数の少ないホテルは早期に満室になりやすい。予定が決まったら早めに予約を入れる。 カウンセリングが必須のホテルもあるため、スケジュールに余裕を持つ。 |
| ワクチン接種と害虫対策 | 混合ワクチンや狂犬病ワクチンの接種証明書の提示、ノミやダニの予防対策が必須のホテルが多い。 ホテルの利用規約に沿って事前に準備をしておく。 |
| 持ち物の確認 | ホテルによって持ち込み物のルールが異なるため事前に確認する。 フードは一食分ずつ小分けにしておくと便利。毛布やおもちゃは清潔な状態で持ち込む。 |
高級ペットホテルは手厚いおもてなしが受けられる反面、飼い主さん側にも事前の準備が求められます。
特に初めて利用する場合は飼い主さんもペットも不安を感じやすいものです。気になることや不安な点は遠慮なくスタッフに相談しておきましょう。
まとめ

高級ペットホテルは、ペットに快適で上質な滞在を提供する施設です。個室や広いハウス、オーダーメイドプランや専門スタッフの常駐など、さまざまなサービスが揃っています。
ただし、手厚いサービスを受けるためには、飼い主さん側の事前準備も欠かせません。カウンセリング、ワクチン接種や害虫対策、持ち物の確認など、あらかじめ確認しておくことで、ペットも飼い主さんも安心して滞在を楽しめます。
ペットの性格やライフスタイルに合ったホテルを選び、快適で特別な時間を過ごさせてあげましょう。
参考文献
