老猫がなりやすい病気|症状や健康チェックポイント、飼育時の注意点を解説

猫と人

近年は動物医療が発達し飼育環境がよくなったことで、猫の平均寿命が伸びています。

猫は7歳を過ぎると人間の40歳代くらいになるので、加齢に伴い病気にかかりやすくなります。老猫のお世話をする機会が長くなることで、病気のケアをする機会も多くなるでしょう。

猫は加齢に伴い、体の内外にさまざまな変化が起こります。その変化に合わせてケアをし、病気の予防と早期発見をすることが大切です。

本記事では老猫がなりやすい病気や、健康チェックのポイント、飼育や病気予防のポイントを詳しく解説します。

老猫と判断されるのは何歳から?

猫

猫の年齢を人間で例えると、何歳か疑問に感じる方は少なくないでしょう。一般的に猫は7歳で人間の40歳台半ばくらいです。

猫は年齢や成長過程によって子猫期、青少年期、成猫期、中年期、高齢期、後期高齢期に分類されます。

年齢で分類すると、10歳を過ぎると高齢期といわれますが、7歳を過ぎる頃から老化のサインが現れる場合があるので注意が必要です。

猫の平均的な寿命

猫の平均的な寿命は近年伸びており、平均寿命は15歳ほどです。

平均寿命が伸びている背景には、動物医療の発達やペットフードの栄養向上、飼育環境の改善が挙げられます。

猫の寿命はさまざまな要因によって左右され、要因は以下のとおりです。

  • 品種による違い
  • 避妊、去勢手術の有無
  • 生活環境

寿命を左右する大きな要因に品種による違いがあります。品種によってかかりやすい病気があり、雑種では長生きするケースがあります。

避妊、去勢手術をすると子宮や精巣の病気のリスクを軽減でき、発情期のストレスやケンカの防止もできます。

また、外飼いの猫よりも完全室内飼いの猫の方が寿命が長い傾向にあります。外での事故やケンカ、感染症のリスクがなく、快適に過ごせることが影響しているでしょう。

快適な生活環境を整えることは、猫がストレスなく長生きすることにつながります。

老猫と判断される年齢

猫は10歳を過ぎると高齢期といわれますが、老化のサインが現れる年齢は体の状態によってさまざまです。

7歳頃から老化のサインが現れたり、10歳を過ぎても特に変化なく元気に過ごしたりと、個体差があります。老化のサインは以下のとおりです。

  • 活動量や運動量の低下
  • 食欲の低下
  • 毛並みの乱れ
  • 認知機能の低下

行動や外見が普段と違うなと感じたら老化のサインの可能性があります。老化による症状は病気によって現れる症状と似ているため、気になる症状があれば動物病院を受診するとよいでしょう。

老猫がなりやすい主な病気

家でエリザベスカラーをつけた猫

高齢期になると体の内外にさまざまな変化が現れます。老化によって体の機能や免疫力が低下するため、病気やケガのリスクが高くなるため注意が必要です。

定期的に動物病院で健康診断を受けると、早期発見につながります。老猫を飼育している方は健康診断を受けるようにしましょう。

老猫が特にかかりやすい病気は次のとおりです。

  • 慢性腎臓病
  • リンパ腫
  • 腫瘍
  • 甲状腺機能亢進症
  • 乳がん
  • 変形性関節症

以下で詳しく解説します。

慢性腎臓病

血液中の老廃物をろ過して、尿として排出するのが腎臓の役割です。腎臓の機能が低下した状態を腎不全と呼び、腎不全の状態が長期化している状態を慢性腎臓病といいます。慢性腎臓病は高齢の猫の多くが発症し、進行すると命に関わる病気です。

初期には多飲多尿が見られ、進行すると食欲不振や体重減少、けいれん発作、嘔吐などの全身症状が見られるようになります。

完治が難しい病気ですが、早期発見して早期治療をすることで進行を遅らせられます。

リンパ腫

リンパ腫とは、免疫に関わっているリンパ球が悪性化したものを指します。猫では多く見られる腫瘍のひとつです。リンパ球は全身に存在しているので、全身のどの臓器でも発症する可能性があります。

リンパ腫の症状は発生した部位によって症状が異なります。例えば、胸のなかで発生した場合は呼吸困難や咳などの症状が現れ、消化器で発生した場合は嘔吐や下痢、食欲不振などの症状が現れるでしょう。

リンパ腫の治療には化学療法や外科療法、放射線療法、食事療法があります。一般的には化学療法が選択されますが、症状によって治療法を組み合わせて治療効果を高めています。

腫瘍

動物病院で獣医師に診察を受ける猫と女性

猫にしこりやイボが見られたときは、腫瘍の可能性があるので動物病院を受診しましょう。腫瘍には良性と悪性があり、悪性の場合は命に関わる可能性があるので早期に治療が必要です。

症状は、腫瘍が発生した部位によって異なりますが、悪性腫瘍の初期症状は以下のとおりです。

  • しこりや腫れ
  • 元気がない
  • 体重減少
  • 下痢、便秘、嘔吐
  • 血尿や尿が出にくい
  • 傷が治りにくい

上記の症状が見られる場合は、動物病院を受診して検査を受けましょう。

治療は、外科療法や化学療法、放射線療法があり、腫瘍の大きさや種類、症状によって治療方法を組み合わせて治療します。

甲状腺機能亢進症

甲状腺は喉の近くにあり、代謝に関わる甲状腺ホルモンを分泌している器官です。甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、中高年の猫に多く見られます。

甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、代謝が促進されて体が活発になりますが、さまざまな症状が現れるでしょう。主な症状は食欲増加体重減少ですが、多飲多尿や攻撃的になる、よく鳴くなどの症状が見られることもあります。

治療は主に薬物療法と食事療法を行います。抗甲状腺薬を内服して、甲状腺ホルモンの合成を阻害します。この薬は甲状腺の異常の治療ではなく、甲状腺ホルモンを減らして症状を緩和させているので、一生涯内服を続ける必要があります。

食事療法では、ヨウ素制限食を摂取します。甲状腺ホルモンの元となるヨウ素を少なくしたフードを与えます。

薬物療法や食事療法を行っても改善が見られない場合や、薬によって好ましくない症状が見られた場合は手術を検討します。

乳がん

猫の乳腺腫瘍は悪性腫瘍の可能性が高く、乳がんと呼ばれています。乳がんはメスの中〜高齢の猫に多く発生します。猫の乳腺は8個あり、同時に乳がんが発生する可能性があるので注意が必要です。

乳がんは、ほかの臓器やリンパ節に転移するリスクが高いため、早期発見して治療を開始することが生存期間を延ばすことにつながります。

乳がんの早期発見のためには、動物病院で健康診断を受けたり、猫の胸をマッサージしてしこりがないか確認をしたりするとよいでしょう。また、早い時期に避妊手術をすると乳がんの発生リスクを軽減できます。

乳がんの治療は主に外科療法で、手術をして乳腺を取り除きます。手術の後に、再発や転移の予防のために化学療法を行う場合があります。

変形性関節症

変形性関節症とは、関節の中の軟骨がすり減ることで炎症が起きて、痛みや動きづらさが出てくる病気です。

加齢による関節軟骨の減少が原因ですが、肥満による関節への負荷や、過去のケガの影響も猫の変形性関節症の原因です。

初期症状は無症状なことが多く、ゆっくりと静かに進行していくので、気付いたときには進行してしまっているということがあります。日頃の様子を観察して、小さな変化を見逃さないようにすることが大切です。

治療では痛みを和らげたり、症状の進行を抑えたりするために、いくつかの治療方法を組み合わせて行います。治療の基本は適正体重を保つことです。体重が増えると関節への負担が増えるので、食事内容の見直しや適度な運動で体重管理をしましょう。

症状に合わせて痛み止めの薬や関節をサポートするサプリメントなどを使用します。

お家の環境の工夫も大切です。滑り止めマットを敷いたり、スロープやステップを設置するなど、工夫をすることで関節への負担を和らげることができるでしょう。

老猫の健康チェックポイント

キャットフードを餌皿に入れる女性

老化とは、体のさまざまな機能が加齢に伴って減退し、進行してもとに戻らないことです。

猫の老化のサインは以下のとおりです。

  • 食事量の変化
  • 体重変化
  • 爪や毛並みの変化
  • 排泄の変化
  • 睡眠時間の変化

猫と毎日一緒に過ごしていると変化に気付きにくいでしょう。日常の様子と少し違うと気付くことができると、早期に対処することができます。

以下で詳しく解説します。

食事量の変化

高齢期になると食が細くなり、痩せてくる傾向にあります。食事量だけでなく、今まで好んで食べていたフードを食べなくなることもあります。

老化のサインが見られたら、高齢期用のフードに変更するとよいでしょう。いきなりフードを変更すると、猫が戸惑ったり消化器官に負担がかかったりする場合があります。今食べているフードに混ぜて、徐々に変更していくとよいそうです。

歯や消化機能が弱っている場合は、小粒のフードやウェットフードなどに変更したり、ぬるま湯でフードをふやかしたりなど、負担が軽くなるように工夫をしましょう。

一回の食事量が少ない猫は、食事回数を増やして1日の必要量を摂取できるようにしましょう。持病によって食事に制限がある猫は、食事内容を獣医師に相談して決めるとよいそうです。

体重変化

猫 尻尾でお返事する寝ている猫

老猫の体重管理は健康維持のために大切です。加齢による運動量の低下や代謝の変化が見られ、筋肉量も低下します。そのため、高齢期の猫は体重が減少しやすい傾向にあり、少しの体重減少は老化のサインです。

急激な体重減少が見られる場合は、病気の可能性があるため獣医師に相談することをおすすめします。

体重減少を防ぐためには、食事内容を確認して適切な量と栄養を摂取できるように工夫することが大切です。そして、筋力を維持するために適度な運動をしましょう。

爪や毛並みの変化

猫の爪や毛並みにも老化現象が起こります。見た目が変化するので毛並みの変化で老化のサインに気付く方は少なくないでしょう。

毛並みにツヤがなくなったり抜け毛が増えたりすると老化のサインです。老化が進行すると毛づくろいをあまりしなくなるので、毛玉ができやすくなるでしょう。

また、老化に伴い爪研ぎの回数が減少したり新陳代謝が低下したりします。古い爪が残ってしまい、爪は厚くて太く巻き爪になりやすくなるのでケアが必要です。

爪が伸び過ぎてしまうと肉球を傷つけてしまったり、カーペットやカーテンなどに引っかかって折れてしまったりする可能性があります。

こまめに爪をチェックして爪切りをしてあげましょう。難しい場合は、動物病院に相談するとよいそうです。

排泄の変化

トイレをする猫

高齢期の猫の排泄の問題は、筋力の低下認知機能の低下病気などによって起こります。排便や排尿回数の変化や、トイレに間に合わないなどの変化があるでしょう。

筋力が低下してトイレまで歩けなかったり、トイレの段差をまたげなかったりする場合は、トイレの場所や段差を少なくする工夫をするとよいそうです。

認知機能の低下が見られる場合、トイレの場所が分からなくなったり、トイレとして認識できなくなったりします。室内で排泄しても心配ないように、ペットシーツや紙おむつを使用するとよいそうです。

排泄回数の変化は腎臓の病気が原因の場合があるので、心配な場合は動物病院に相談しましょう。

睡眠時間の変化

猫の睡眠時間は人間と比べて長く、成猫でも20時間以上寝る場合もあります。老猫が長時間寝るのは活動量の低下によるエネルギーの温存のためです。

以前よりも寝ている時間ウトウトする時間じっとしている時間が長くなったと感じたら、老化のサインでしょう。

寝てばかりで、食事や排泄に起きない場合は病気の可能性があるので動物病院に相談しましょう。

老猫を飼育するときに注意したいこと

猫のお世話

老猫が快適に過ごすためには、日々のケアや体の状態に合わせて飼育環境を整えることが大切です。

老化が進行すると、体のさまざまな機能が減退します。足腰が弱くなった場合は、滑り止めマットの使用や、段差を少なくする工夫をしましょう。消化機能が低下している場合は、フードを変更したり食事回数を増やすなどの工夫をするとよいそうです。

老猫は成猫のときと比べて変化が多く、飼い主さんは戸惑うこともあるでしょう。老化を止めることはできませんが、生活環境を工夫することで進行を遅らせることはできます。

老猫との生活で不安なことがあれば動物病院に相談しましょう。

老猫の病気を予防するためにできること

屋内で猫と遊ぶアジア人の女性

老猫は加齢に伴う病気のリスクがありますが、日々の生活の観察や工夫をすることで予防や早期発見ができます。病気を予防するためにできることは以下の4点です。

  • 健康管理
  • 食事と水分補給
  • 生活環境の整備と運動
  • 日々の体調変化の観察

定期的に動物病院で健康診断や予防接種を受け、体重が増え過ぎたり減り過ぎたりしないように食事や運動の工夫をしましょう。ベッドとトイレの位置を近くしたり、滑り止めマットを敷いたりして生活環境を整えることでストレスを軽減できたり関節への負担が少なくなります。

また、食欲や排泄、歩き方など日々の様子を注意深く観察することで病気の早期発見につながるでしょう。

動物病院での定期的な健康診断の重要性

動物病院で獣医師に診察を受ける猫と飼い主

老猫は加齢に伴って体力や免疫力が落ちてしまうので、病気にかかるリスクが高くなります。猫は症状や痛みを隠す動物です。症状を発見したときには病気が進行してしまっている場合があります。

動物病院で健康診断を受けることで、隠れている病気を発見することができ、早期に治療を開始できます。高齢期の猫は年2回は健康診断を受けることをおすすめします。

まとめ

猫と触れ合う若い女性

本記事では、老猫がかかりやすい病気や、健康チェックのポイント、飼育や病気予防のポイントを詳しく解説しました。

猫の平均寿命の延長に伴って、老猫と生活する時間が増えたり、病気の猫を看病したりすることも増えるでしょう。

老猫の特徴を知り飼育環境を工夫し、日々の様子を観察することで、老化のサインに気付き対応することができます。病気予防のために、定期的に動物病院で健康診断を受けましょう。

参考文献