野良猫を保護した際、「まず何をすればよいのか」と戸惑う方もいらっしゃるのではないでしょうか。外で暮らしている猫は、病気や寄生虫を持っている可能性があるため、保護後はできるだけ早く動物病院を受診することが大切です。
本記事では野良猫を保護したら動物病院へ連れて行くべきなのかについて以下の点を中心にご紹介します。
- 野良猫を保護したら動物病院へ連れていくべきなのか
- 野良猫を動物病院へ連れて行くときにかかる費用
- 野良猫を飼えない場合の対処法
野良猫を保護したら動物病院へ連れて行くべきなのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
野良猫の保護する前にやるべきこと

野良猫を保護する前にやるべきことがあります。やること別にそれぞれ解説します。
猫の飼い主さんがいないか確認する
野良猫を保護する前には、その猫に飼い主や世話をしている方がいないか、まず確認することが大切です。
首輪がない場合でも、迷子になった飼い猫だったり、地域住民やボランティアによって世話されている地域猫である可能性もあります。誤って地域猫を保護してしまうと、トラブルや所有権の問題に発展することもあります。
保護する前に、近所の方に尋ねたり、警察署や保健所に”迷い猫の届出”が出ていないかを確認しましょう。また、地域猫であれば、世話をしている方に保護の意向を伝えることも重要です。
正しい手順を踏むことが、猫にも人間にも優しい保護につながります。
保護した後のことを考える
野良猫を保護する前に”その後どうするか”を考えておくことが大切です。
保護猫を飼うのか、野良猫の譲渡先を探すのか、それとも譲渡が難しい場合には自身で一生お世話をするのか。あらかじめ方向性を決めておくことで、保護後の対応に迷うことがなく、猫にもストレスを与えにくくなります。
なかでも、成猫の保護は注意が必要です。子猫であれば人間に慣れやすく、里親が見つかりやすい傾向にありますが、野良で長く生活してきた成猫は人間に慣れるまでに時間がかかることや持病がある場合が多く、譲渡も簡単ではありません。
一時的な感情だけで動くのではなく、保護後の生活や責任を見据えたうえで行動することが、保護猫にとってよい選択につながります。
飼育環境を整える
野良猫を保護して家に迎える前には、猫が安心して過ごせる環境づくりが欠かせません。外で暮らしていた猫にとって、室内はまったく異なる世界です。まずはケージを用意し、トイレや食器、水皿、寝床、おもちゃなどを揃えて落ち着けるスペースをつくりましょう。
トイレには、慣れた匂いの土や砂を混ぜるとスムーズに排泄してくれることがあります。また、室内では誤飲や誤食のリスクもあるため、小物やゴミはきちんと片付けておくことが大切です。
野良猫を保護したら動物病院へ連れていくべき?

野良猫を保護したら、できるだけ早く動物病院へ連れて行くことが大切です。感染症やノミやマダニ、消化管内寄生虫などの有無を調べ、健康状態をしっかりチェックしてもらいましょう。その結果、今後のケア方針を立てやすくなるほか、先住猫がいる場合には感染予防にもつながります。
また、体が冷えている場合は、タオルなどで包んで体温を保ちながら動物病院へ向かいましょう。新しい飼い主を探す予定がある場合にも、健康状態が明らかになっていることは重要な情報となります。
不安な点があれば、受診前に電話で確認してアドバイスを受けるのもおすすめです。
動物病院で行われる野良猫の検査や処置

ここでは、動物病院で実際に行われる野良猫の検査や処置について解説します。
実施される検査
動物病院では、以下のような検査が行われます。
身体検査
まずは全身の状態を確認するための身体検査が実施されます。ノミやマダニの寄生、耳の中の耳ダニの有無など、皮膚や耳の健康状態をチェックします。野良猫は外で生活しているため寄生虫のリスクが高く、駆除薬が処方されます。さらに、外傷や脱水、衰弱の有無も確認されます。
糞便検査
便を調べることで、消化管内の寄生虫感染がないかを確認します。野良猫はネコ回虫や猫鉤虫、マンソン裂頭条虫などに感染しているケースが多く、発見された寄生虫の種類に応じて駆虫薬が処方されます。正確な診断が今後の治療方針を決めるうえでも重要です。
ウイルス検査
猫同士で感染するFIV(猫エイズ)やFeLV(猫白血病ウイルス)についても検査が行われます。これらは発症すると命に関わる感染症で、治療法が確立されていないため、早期の確認と管理が必要です。先住猫がいる場合や譲渡を予定している場合には特に欠かせない検査です。
受けられる処置
野良猫を保護した後、健康状態に問題がなければ、動物病院での処置として混合ワクチンの接種を検討しましょう。猫用ワクチンには複数の種類があり、今後の飼育方針や生活環境に合わせて選ぶ必要があります。
基本となるのは”3種混合ワクチン”で、猫伝染性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症・猫汎白血球減少症を予防します。これは室内飼いでも推奨される標準的なワクチンです。
さらに”4種混合ワクチン”では猫白血病ウイルス(FeLV)への対策ができ、外での感染リスクがある猫に推奨されています。”5種混合”や”7種混合”は、猫クラミジアや追加のカリシウイルス型に対応しています。
どのワクチンを選ぶべきかは猫の年齢や体調によって異なるため、獣医師と相談しながら、無理のない範囲でぴったりな接種内容を決めることが大切です。
野良猫を動物病院へ連れて行くときにかかる費用

野良猫を動物病院へ連れて行く際には、初診料や検査費などがかかり、初期費用の目安は8,000〜15,000円程度です。内訳としては、初診料が1,000〜3,500円、ノミ・マダニ駆除が1,200〜2,000円、糞便検査が500〜1,500円、猫エイズ・猫白血病のウイルス検査が4,000〜8,000円程度となります。
また、ワクチン接種には3,000〜8,000円、不妊手術は雄で2〜3万円、雌で3〜4万円程度が相場です。あらかじめ動物病院へ問い合わせ、費用や処置内容を確認しておくとよいでしょう。保護猫の診療に理解のある病院や、自治体の助成制度を活用できるケースもあるため、情報収集も欠かせません。
野良猫を保護して飼うときの注意点

動物病院での検査や処置が終わり、実際に野良猫を飼うときにはどのような点に注意すればいいのでしょうか。注意点別に解説します。
根気よく向き合う
保護した猫が子猫であれば、人間に慣れるまでにあまり時間はかからないかもしれません。しかし成猫の場合は、警戒心が強く、なかなか環境に馴染めないこともあります。室内という限られた空間に不安を感じ、物陰に隠れたり食事をとらなくなってしまうこともあるでしょう。
また、トイレのしつけにも時間がかかることがあります。初めは粗相をしてしまっても、叱らずに根気よく対応することが大切です。猫のペースに合わせて少しずつ距離を縮めていくことで、信頼関係を構築できます。
先住猫との接触を避ける
先住猫がいる場合は、感染症をうつしてしまうリスクがあるため注意が必要です。猫エイズや猫白血病などの検査が済み、感染の心配がないと診断されるまでは、別の部屋で隔離してください。また、食器やトイレの共有は避け、換気や掃除にも気を配りましょう。
シャンプーやお風呂を避ける
野良猫だった猫は水やお風呂に慣れていないことが多く、シャンプーは強いストレスになる恐れがあります。そのため、汚れが気になっても、無理にお風呂に入れるのは体への負担が大きいため避けましょう。
まずは安心できる環境に慣れさせることが優先です。なお、ノミやマダニなどの寄生虫はシャンプーでは取り切れないことがあるため、動物病院で処方される駆除薬の使用が推奨されます。
避妊手術をする
野良猫を保護して飼う場合は、避妊手術を検討することが大切です。無計画な繁殖が進むと、多頭飼育崩壊など深刻な問題を引き起こす可能性があります。
たとえ単頭飼いでも、手術を行うことで発情によるストレスが軽減され、性ホルモンに関連する病気の予防にもつながります。
猫の健康と飼い主さんの負担を減らすためにも、望まない妊娠を防ぎ、発情時の鳴き声やマーキング行動の軽減を目的に、適正な時期に不妊手術を行うようにしましょう。
最後まで責任を持つ
野良猫を保護するということは、その命に責任を持つということです。猫との暮らしには日々の食事やトイレの管理だけでなく、病気や高齢期のケア、突発的な医療費への備えも求められます。
急な出費に備えて、ペット保険を検討しておくのもひとつの手段です。また、自身に万が一のことがあったときに備え、代わりに世話をお願いできる方がいるかも確認しておきましょう。保護したときの思いやりを忘れず、最期まで愛情をもってともに過ごす覚悟が大切です。
野良猫を飼えない場合の対処法

何か事情があり野良猫を飼えない方もいらっしゃるかもしれません。その場合の対処法について、以下で解説します。
動物病院に相談する
野良猫を保護したものの、住環境や家庭の事情により飼育が難しい場合は、まず動物病院へ相談してみましょう。
動物病院のなかには里親募集の掲示板やネットワークがあり、猫に関心を持つ方とつながるきっかけが得られる可能性があります。貼り紙を掲示してもらうことで、新たな飼い主が見つかるケースもあります。
一時的に動物病院に預かってもらうこともできます。ただし、健康状態によってはホテル代や処置費、入院費などが発生することもあるため、費用面は事前に確認しておきましょう。
安易に保健所へ連絡すると、引き取り手が見つからない場合に殺処分となるリスクもあるため、まずは地域の動物病院に相談することをおすすめします。
保護団体や保護施設に連絡する
野良猫を飼うことが難しい場合は、お住まいの地域にある動物愛護センターや保護団体への相談を検討しましょう。自治体の動物愛護窓口では、猫の収容や譲渡支援を行っているほか、地元のNPO法人などと連携しながら殺処分を減らす取り組みも進められています。
また、保護した猫が迷い猫でないかどうかの確認も重要です。保健所や警察署に迷子届けが出ていないかを確認し、必要に応じて”遺失物法”に基づいた届け出を行いましょう。特に乳飲み子など小さな子猫は保健所での対応が難しいため、保護団体に相談する方が現実的な選択肢となる場合もあります。
里親を探す
野良猫を飼うことが難しい場合、自ら里親を探す選択肢もあります。里親募集サイトやSNSを活用する際は、譲渡経験、掲載されている条件内容などをよく確認し、信頼できる媒体を選びましょう。
SNSで募集する場合は、「同居家族の同意があるか」「アレルギーの有無」「室内飼育が可能か」などの譲渡条件を明確に提示し、慎重なやり取りを心がけてください。なかには虐待や転売を目的とした悪質な応募者も存在するため、譲渡前に本人確認や生活環境の把握などを行いましょう。
安全性を重視するなら、保護団体を通じた里親探しもおすすめです。面談や家庭訪問などを通じて、猫にとって安心できる新しい家族を見つけられる可能性が高まります。
まとめ

ここまで野良猫を保護したら動物病院へ連れて行くべきなのかについてお伝えしてきました。
野良猫を保護したら動物病院へ連れて行くべきなのかの要点をまとめると以下のとおりです。
- 野良猫を保護したら、できるだけ早く動物病院へ連れて行き、感染症やノミやマダニ、消化管内寄生虫などの有無、健康状態をしっかりチェックしてもらうことで、今後のケア方針を立てやすくなるほか、先住猫がいる場合には感染予防にもつながる
- 野良猫を動物病院に連れて行く際の初期費用は8,000〜15,000円程度が目安となるが、検査や駆除、ワクチン、不妊手術などの費用がかかるため、事前に病院へ確認し、助成制度の有無も調べておくことが大切
- 野良猫を飼えない場合には、動物病院に相談する、保護団体や保護施設に連絡する、里親を探すなどして対応することが求められる
野良猫を保護する前には、飼い主や世話をしている方がいないかを確認し、保護後の対応についても事前に考えておくことが大切です。飼育を希望する場合は安心して過ごせる環境を整え、早めに動物病院で健康チェックを受けましょう。
ウイルス検査や寄生虫駆除、ワクチン接種も重要です。飼えない場合は、動物病院や保護団体に相談したり、信頼できる里親募集サービスを活用しましょう。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。