猫が尿石症にかかりやすいとよく聞くものの、実際にどのような病気なのか詳しく知らない方もいるでしょう。
尿石症は症状を見逃して適切な治療が遅れると、命に関わる状態にまで悪化することもある病気です。
猫は体調不良を言葉で伝えられるわけではありません。そのため、飼い主が日頃から様子をよく観察し、異変に気付くことが重要です。
ここでは猫の尿石症の原因や症状、治療方法、予防法を整理してわかりやすく解説します。大切な家族である猫を守るための参考となれば幸いです。
猫の尿石症の種類

猫は膀胱や尿道に関連する猫下部尿路疾患にかかりやすく、猫の尿石症もその代表的な疾患の一つです。
猫の尿石症は、腎臓・尿管・膀胱・尿道のいずれかに結晶や結石が形成される病気で、代表的なものは以下の2つです。
- ストルバイト結石症
- シュウ酸カルシウム結石症
ここでは、特に多くみられる2種類について解説します。
ストルバイト結石症
ストルバイト結石は、尿に含まれるマグネシウムやリン酸塩、アンモニウムなどのミネラル成分が結晶化してできたものです。
1~6歳に発症することが多く、アルカリ性尿で形成されやすい点が特徴です。
体質の関与に加え、飲水量不足による濃い尿や細菌感染が発症のきっかけになることもあります。特に猫は水をあまり飲まない動物のため、注意が必要です。
食事療法や投薬治療により結石を溶かすことはできます。ただし、再発しやすい病気のため、継続的な管理が求められます。
シュウ酸カルシウム結石症
シュウ酸カルシウム結石は、シュウ酸カルシウムが結晶化してできます。主に7歳以上の中高齢の猫が発症することが多いといわれています。
ストルバイト結石症と同様に、尿の濃さや水分不足、Ca/Pバランスが影響を与える病気です。
シュウ酸は、ほうれん草や大豆、イワシ、サツマイモ、アスパラガス、豆腐などに多く含まれる成分です。そのため、これらを過剰に含む食事は避けることが推奨されます。
シュウ酸カルシウム結石は溶解できないため、手術により摘出する方法が一般的です。再発しやすいため、食事療法による長期的な管理が重要です。
猫の尿石症の原因

猫の尿石症は、さまざまな原因が関わっています。ストレスや細菌感染に加え、水分摂取量や排尿量、食事やおやつの内容が発症リスクを高めるとされています。
飼い主が原因を理解することで、予防しやすい環境を整えることができるでしょう。
ストレス
猫は強いストレスを受けると下部尿路疾患を発症しやすく、結果として尿石症の発症につながることがあります。ストレスの要因にはさまざまなものがあります。
猫を外に出している場合、猫にとってリスクが多いため注意が必要です。例えば交通事故や迷子でパニックに陥ったり、怪我で動けなくなったりする可能性があります。
縄張り争いやメスを巡る争いなどでケンカに発展することにもつながりかねません。室内でも、運動不足や猫が好む環境でない場合や、多頭飼育の環境によってはストレスになることがあります。
猫を飼育する際は、猫が快適に過ごせる環境を知り、整えることが大切です。
細菌感染
細菌感染は尿石症の原因の一つです。
膀胱炎のような細菌感染が起こると尿素がアンモニアに分解され、膀胱内のpHがアルカリ性に傾くため、ストルバイト結石が形成されやすくなります。
そのうえ感染によって膀胱粘膜が傷つくと結晶が付着しやすくなり、結石形成をさらに促進することがあるため、注意が必要です。
水分摂取量が少ない

水分摂取量が少ないと、尿石症にかかりやすくなります。特に寒くなる冬は飲水量が減るため、尿量も減り、おしっこが濃くなります。
その結果、結晶やタンパク質も濃くなり尿石ができやすくなるため、注意が必要です。このように尿が濃縮されることで、結石の材料となるミネラルが過飽和状態になりやすい傾向にあります。
排尿が少ない
排尿が少ないと、膀胱内におしっこが溜まっている時間が長くなり、尿中のミネラル濃度が高くなります。その結果、尿石の形成につながります。
猫は清潔なトイレを好むため、毎日きれいに掃除して猫が排尿しやすい環境を整えることが重要です。
排尿間隔が延びることで、膀胱内で結晶が成長しやすい時間が増えることも原因の一つとなります。
食事やおやつの内容
食事やおやつの成分が尿のpH値を左右します。
ペットフード安全法では添加物に関する規制が限定的で、飼い主が原材料由来のミネラルと添加物として加えられたミネラルを見分けることは困難です。
そのため、総合栄養食を選ぶ際には、ミネラルバランス(マグネシウム量・リン量・Ca/P比)が適切に調整されているかどうかが重要なポイントであるといえるでしょう。
特定の成分が過剰または欠乏すると、尿石症が起こりやすくなるため、バランスのよい食事を与えることが重要です。
猫の尿石症の症状

猫の尿石症の主な症状は、以下のとおりです。
- トイレに行く回数が増える
- 尿量が少ない
- トイレでうずくまっている
- 血尿が出る
- 排尿時に痛がって鳴く
- 普段のトイレ以外の場所で排尿する
尿と一緒に砂状の結晶や結石が出ることがあります。一方、元気消失や食欲低下などの症状がある場合は、より注意が必要です。
加えて、排尿姿勢を取ってもまったく尿が出ない、嘔吐や腹痛などの症状が見られた場合は尿道閉塞の可能性があります。
特にオスの尿道はメスよりも細長くカーブしているため、尿道閉塞を起こしやすいとされています。命に関わる可能性があるため、早急に動物病院を受診することが必要です。
ストルバイト結石症とシュウ酸カルシウム結石症では、症状はほとんど変わりません。
猫砂やシートの表面がキラキラ光る場合は、結晶が含まれている可能性があります。上記の症状が出ていないか、猫の様子をよく観察しましょう。
猫の尿石症の診断方法

猫の尿石症は、尿検査や超音波検査、レントゲン検査などによって診断できます。
尿検査では尿のpHや結晶の有無、炎症所見、細菌の有無などを確認します。細菌が発見された場合は、細菌培養検査を実施することで、より詳しい診断が可能です。
レントゲン検査では、結石の有無を確認します。ただし、シスチンや尿酸、キサンチンなどレントゲン検査では発見することが困難な結石の種類や大きさもあります。
加えて、膀胱粘膜の肥厚や腫瘍の有無などは超音波検査により確認が可能です。
全身状態が悪い場合には、血液検査で腎臓の機能を調べることもあります。定期健康診断を受けて尿石症が見つかる場合もあります。
飼い主は元気な状態を把握し、定期健康診断を受けさせることが重要です。
猫の尿石症の治療方法

猫の尿石症と診断されたら、症状に合わせて治療を行います。主な治療法は、食事療法や投薬治療があり、症状によっては手術が必要になる場合もあります。
治療法を理解し、適切な選択ができるようにしましょう。
食事療法
猫の尿石症に対する治療法の一つが食事療法です。国内で流通する療法食は目的別に明確に分類されており、ストルバイト結石の溶解用や再発防止用、シュウ酸カルシウム予防用などさまざまな種類があります。
療法食のなかには量販店やインターネット通販で販売されているものもあります。しかし、獣医師の指導の有無が確認できないものも少なくありません。
症状に合わない療法食を与えると悪化する可能性があるため、獣医師の指示に従うことが重要です。
ストルバイト結石は適切な療法食により溶解が可能で、再発防止も期待できます。シュウ酸カルシウム結石は溶かすことはできませんが、再発予防ができるとされています。
食事療法は、獣医師が症状に応じて選んだ療法食を与えることが重要です。
また、飲水量を増やすことも効果的な予防法の一つです。ウェットフードは水分摂取量を増やせるため、尿石症予防の一環として広く推奨されています。
なお、一度ストルバイト結石症になった場合は再発リスクが高いため、療法食を勝手に中断しないように注意しましょう。
療法食以外のものは与えないことも重要です。
投薬治療

ストルバイト結石の場合、食事療法に加えて投薬治療も効果的です。尿のpHを酸性に変える尿酸化剤を投与することで結石を溶かすことが期待できます。
また、細菌感染によるものであれば、抗生物質による治療が可能です。
手術
シュウ酸カルシウム結石症は、療法食で溶かすことが困難なため、状況に応じて外科手術で摘出する必要があります。ストルバイト結石は食事療法や投薬治療が一般的ですが、手術が必要になる場合もあります。
主な手術適応となるケースは以下のとおりです。
- シュウ酸カルシウムのように溶けない結石
- 療法食を続けても改善しないストルバイト結石
- 結石が大きい場合
- 尿管閉塞や尿道閉塞を起こすリスクが高い場合
- 何度も血尿や膀胱炎を引き起こしている場合
- 尿道閉塞を繰り返している場合
尿道を通過できる大きさであればおしっこと一緒に排出されることもありますが、それ以上の大きさの場合は外科手術が必要です。結石ができる部位によって手術方法は異なります。
膀胱結石の場合は、麻酔下で膀胱を切開し、目視で結石を確認しながら取り除きます。
全身麻酔下で開腹し、結石を摘出する動物病院は少なくありません。一方で、動物病院によっては負担の少ない腹腔鏡を用いる施設もあります。
尿道閉塞を引き起こした場合は、尿道カテーテルを挿入し、尿道の詰まりの解消を目指します。
尿石症を放置すると、尿を排泄することができなくなり、症状が悪化して急性腎障害を引き起こす命に関わる危険な状態になりえるため注意しましょう。
そうならないためには、早期発見・早期治療・予防が重要です。
猫の尿石症の予防法

猫の尿石症は再発しやすい病気のため、予防法を適切に行うことが重要です。ここでは主な予防法を4つ紹介します。
大切な猫と長く過ごすために予防法を理解し、再発しないように努めましょう。
水分をしっかり摂らせる工夫をする
水は猫の体の60~80%を占めており、体に必要な水分のほとんどは飲み水やフードから摂取することが必要です。
フードの種類や過ごしている室内の気温、運動量によっても必要な水分量は異なります。特にドライフードは水分含有量が少ない傾向にあります。そのため、いつでも新鮮な水が飲める環境を整えることが重要です。
また、水分の多いウェットフードを与えることも、水分摂取に有効です。ただしウェットフードは品質の低下が早いため、放置することは避け、食べ残しはすぐに片づけましょう。
排尿をしやすい環境にする
猫は清潔なトイレを好むため、毎日きれいに掃除して猫が排尿しやすい環境を整えることが重要です。
部屋の静かで落ち着ける場所に、砂を入れた猫用トイレを設置しましょう。
ストレスを与えないようにする

猫の習性を理解し、ストレスの少ない環境を整えることが大切です。屋外には感染症や交通事故、ケンカ、迷子などさまざまなリスクがあるため、室内飼育をおすすめします。
猫は高いところや隠れる場所を好む動物です。外を眺め、動くものを見ることができる場所を設置しましょう。家具やキャットタワーなどが効果的です。
高い場所や狭いスペースは、猫が安心感をもって隠れられる落ち着いた環境だとされています。特に、多頭飼育の場合は隠れられる場所を増やすといった工夫が必要です。
また、猫は古い爪をはがしたり自分のにおいをつけたりする際に、爪をとぐ習性があるため爪とぎも用意しましょう。
猫にとって、飼い主とコミュニケーションを取り遊ぶこともストレス解消の方法の一つです。普段から触れ合う機会が多ければ、飼い主は元気がなくいつもと異なる猫の様子を見つけやすいでしょう。
運動不足にならないようにする
室内飼育でも十分に運動ができる環境を整えることは可能です。家具や段ボール箱、キャットタワーを設置していれば、猫が自由に上下運動や立体的な場所移動ができます。
誤飲に注意して安全性の高い猫用のおもちゃを用意すれば、一人遊びをする姿も見られます。飼い主と遊ぶことも、猫にとっては十分な運動ができる機会です。
運動不足により肥満になると、病気のリスクがあるため、体調管理は重要です。
まとめ

尿石症は、猫がかかりやすい病気の一つで、ストルバイト結石症とシュウ酸カルシウム結石症の2つが代表的な種類です。
ストルバイト結石症は主に食事療法や投薬治療で溶かすことができます。一方、シュウ酸カルシウム結石症は溶かすことが難しいため、手術が必要になることも少なくありません。
原因はストレスや細菌感染、水分摂取量、排尿量、食事やおやつの内容などが挙げられます。飼い主は、食事内容や水分摂取量、環境整備により、尿石症予防が期待できます。
普段から猫の様子を観察し、尿に関する症状がある場合は早めに動物病院を受診することで早期発見・早期治療が可能です。
特に、尿が出ない場合は命に関わる場合があるため、早急に動物病院を受診しましょう。
参考文献
