「平日は仕事で忙しく、ペットの通院が難しい」や「休日に急な体調不良が起きた」という飼い主にとって、土曜診療を行う動物病院は心強い存在でしょう。
しかし、病院が開いているからといって、平日と同じ診療が受けられるとは限りません。
なぜなら、外部検査機関の集荷スケジュールやスタッフ体制など、休日ならではの制約が少なからず存在するからです。
この記事では、土曜受診のメリット・デメリットや失敗しない病院の探し方を解説します。
大切なペットの命を守るため、土曜診療の正しい活用法をぜひ知っておきましょう。
動物病院の土曜日診療とは

多くの飼い主の方は、土曜日に開院しているのだから、平日と同じようにすべての検査や手術ができるはずと考えてしまいがちです。
しかし、獣医療の提供体制において、土曜日は平日とは異なる特殊な環境下に置かれるケースが多くあります。
例えば、検査機関の物流が停止していたり、スタッフ数が平日より少なかったりする病院も珍しくありません。
また、近年なぜ土曜日に診療を行う動物病院が増えているのか、その背景にある飼い主のライフスタイルの変化や病院側の事情についても触れていきます。
平日診療との違い
平日と土曜日の大きな違いは、検体検査の物流にあります。
詳細な血液検査などは外部機関へ委託されますが、日曜・祝日は集荷がなく、土曜日の集荷も午前中などで終了することが一般的です。
そのため、土曜午後の検査結果は週明けの火曜日以降になるケースが少なくありません。
さらに、働き方改革により、土曜日は院長不在で代診獣医師のみが対応するケースも増えています。
高度な手術や難症例の判断ができる責任者が不在の場合、平日なら即日対応できた処置が、応急処置のみにとどまる可能性もあります。
土曜日に診療を行う動物病院が増えている理由

かつては土曜午後・日曜休診が一般的でしたが、近年は土日診療を行う病院が増えています。
これらの背景には、飼い主のニーズと病院側の変化があります。共働きや単身世帯が増えた現代には、休日に受診したいという要望は切実です。
これに応えることは、地域で選ばれるための重要な要素であり、実際に集患や経営安定化につながっています。また、医療従事者の労働環境改善も背景の一つです。
これにより、病院は診療を続けつつスタッフは休日を確保できるため、利用者と医療者の双方にとって持続可能な仕組みが構築されつつあります。
土曜日に動物病院を利用するメリット・デメリット

平日は仕事や家事に追われ、なかなかペットを通院させられない飼い主にとって、土曜日も診療を行っている動物病院は大変心強い存在です。
しかしその利便性の一方で、前述したような検査物流のストップやスタッフ体制の縮小といった医療提供体制の制約が存在することも忘れてはなりません。
土曜日診療ならではの利点とリスクの双方を正しく理解しておくことは、受診時のトラブルを防ぐために不可欠です。
これらを知っておくことで、より納得のいく受診ができるでしょう。
【メリット】仕事などの休みの日に利用できる
多くの飼い主の方にとって、平日の日中に時間を確保することは容易ではありません。
仕事終わりや休憩時間を削って無理に通院しようとすると、どうしても時間に追われ、精神的な余裕もなくなってしまいがちです。
その点、お仕事が休みであることの多い土曜日であれば、自身のスケジュールに合わせて無理なく受診計画を立てることが可能です。
これにより気になっていた些細な変化についても質問するゆとりが生まれます。また、平日は仕事で同席できない家族も、土曜日なら一緒に通院しやすい傾向にあります。
治療方針などの重要な決定を、家族全員で共有や相談ができることは、納得のいく医療を受けるうえで大きなメリットといえるでしょう。
【メリット】急な体調変化でも利用できる

ペットの急な体調変化に対し、月曜日の開院まで丸二日間待つことは、疾患によっては致命的なリスクを伴います。
土曜日診療を行っている動物病院は、この週末の空白を埋める重要なセーフティーネットとして機能します。
土曜日の段階で受診し獣医師による診察を受けることで、様子見でよいのか、即座に入院や処置が必要なのかのトリアージ(緊急度判定)を受けることが可能です。
たとえ本格的な検査結果が週明けになるとしても、専門家の判断を仰げるだけで飼い主の不安は解消されます。
また早期発見と早期治療介入により、ペットたちのその後の経過が改善する可能性も高まるでしょう。
【デメリット】待ち時間が長くなりやすい
土曜日は、平日に来院できない患者さんが集中する傾向があります。
特に午前中の診療時間は、予防接種などの軽症例から重篤な急患まで多くの患者さんが押し寄せ、需要が供給を大幅に上回ることがあります。
その結果、受付から診察まで1時間から3時間程度の待ち時間が発生することも珍しくありません。
動物病院では受付順ではなく、命の危険がある動物を優先する治療を行っています。そのため、予約をしていても順番が前後したり、診察が中断したりすることがあります。
土曜日は予定通りに進まない可能性があるとあらかじめ想定しておく心の余裕が必要です。
【デメリット】診療内容に限りがある可能性
前述した検体検査の物流問題に加え、土曜日は診療体制自体を縮小している病院も多くあります。
具体的には、土曜日は午前のみ診療や、午後は予約手術や継続治療の患者さんのみといった運用です。
例えば、日本獣医生命科学大学動物医療センターでは土曜日は画像診断科のみで一般外来は休止しており、北海道大学動物医療センターも平日のみの診療科が多くなっています。
つまり、大きな病院に行けば土曜日でもあらゆる高度医療が受けられるとは限りません。MRI検査や特殊な手術が必要な場合でも、土曜日は対応できないことがあります。
月曜日以降の対応や、他院への転院が必要になるケースがあることを理解しておきましょう。
動物病院を土曜日に受診する場合の注意点

土曜日の動物病院は、平日と同じ感覚で受診しようとすると、思わぬトラブルに見舞われることがあります。
例えば受付時間が終わっていた、予約がないと診てもらえないといった場合です。
せっかく病院まで足を運んだのに診察を受けられず、体調の悪いペットに余計な負担をかけてしまうことは避ける必要があります。
ここでは、土曜日受診で失敗しないために、飼い主が押さえておくべき事前確認のポイントと心構えについて解説します。
診療時間と最終受付時間の確認
まず確認すべきは、診療終了時間と受付終了時間の違いです。多くの病院では、診療終了時間の30分から1時間前に受付を締め切ります。
特に土曜日は患者数が多く、診察時間が延びる傾向があります。そのため、混雑状況によっては受付終了時間を早める措置をとる病院も少なくありません。
また、初診の場合はカルテ作成や詳細な問診が必要となるため、「初診の方は終了1時間前までにお越しください」といった独自のルールが設定されていることが一般的です。
インターネット上の検索結果やGoogleマップに表示される営業時間は、必ずしも新しい情報とは限りません。
公式サイトのお知らせを確認するか、出発前に電話で最終受付時間を問い合わせることを推奨します。
予約の有無の確認

動物病院の予約システムはさまざまです。時間帯予約制や順番受付制、あるいは完全予約制など、病院によって異なります。
特に土曜日は混雑回避のために、平日とは異なる完全予約制や予約優先制に切り替えている病院が増えています。
予約制の病院に事前連絡なしで来院すると、診察枠は埋まったことでと断られてしまうかもしれません。あるいはキャンセル待ちとなるため、数時間待たされることになりかねません。
事前に病院のWeb予約システムを確認し、予約が必要かどうか、空き状況はあるかを把握しておきましょう。
検査や処置が後日になる可能性
土曜日に受診できたとしても、検査や処置の内容によっては当日は治療ができないと判断されることがあります。
例えば、鎮静や全身麻酔を必要とする処置は、人員が不足しがちな土曜日には実施しないことがあります。
これは、万が一の事態に対応できる十分なスタッフ数を確保し、安全性を優先するための措置です。
「今日すぐに結果を知りたい」や「今日処置をして不安を解消しておきたい」という希望がある場合は、受診前に電話で確認することが重要です。
土曜日に診療している動物病院の探し方

いざというときに慌てないために、正しい情報の集め方を知っておくことが大切です。
特に緊急時は冷静な判断が難しくなりがちですが、検索サイトや地図アプリの情報だけに頼るのはリスクがあります。
情報更新のラグにより、行ってみたら休診だったという事態になれば、一刻を争う状況で致命的なタイムロスとなりかねません。
こうした失敗を防ぐためには、複数の手段で裏付けを取ることです。ここでは具体的な方法を紹介します。
公式ホームページや診療カレンダーを確認
病院検索のポータルサイトは便利ですが、情報の更新が遅れている場合があります。臨時休診や診療時間の変更、担当獣医師のスケジュールなどが変わることも十分考えられます。
新しい情報は、病院の公式ホームページにあるお知らせや診療カレンダーで確認しましょう。
一部の病院では、公式InstagramやX(旧Twitter)、LINE公式アカウントなどで当日の混雑状況や急な休診情報を発信していることもあります。
特に第2・4土曜のみ午後休診や祝日のある週の土曜は変則対応など、複雑なルールを設けている病院もあるため、カレンダーでの確認をおすすめします。
電話で診療内容を事前に確認

受診前に一本電話をかけ、ペットの症状を具体的に伝えることも有効な手段です。電話口で「ぐったりしていて呼吸が荒い」といった症状を伝えることをおすすめします。
受付スタッフが獣医師に確認し、受診の緊急度について判断を仰ぐことができます。
無駄足を防ぐためにも、出発前に行く予定の病院へ電話を入れる習慣をつけるとよいでしょう。
これは、病院側にとっても緊急患者の受け入れ準備ができるため、双方にとってメリットがあります。
かかりつけ病院を決めておく重要性
土曜日の受診をスムーズにするためのポイントは、平日のうちに信頼できるかかりつけ医を作っておくことです。
過去のカルテデータ(平時の血液検査値、既往歴など)があることは重要です。これにより土曜日の短縮診療や初対面の代診獣医師であっても、診断の精度とスピードが上がります。
また、一部の病院では、夜間や休日などの対応を制限している場合があります。これは、限られたリソースを自院の患者さんに優先的に配分するためです。
いざというときに初診はお断りといった対応をされてしまうリスクを避けるよう準備をしておきましょう。
ワクチン接種やフィラリア予防などの急がない診療を平日に利用し、病院との関係を作っておくことが重要です。
土曜日でも早めの受診が必要な症状

「土曜日は混んでいるから」や「月曜日になればよくなるかもしれない」という自己判断が、場合によっては、取り返しのつかない事態を招くことがあります。
特に幼齢や高齢のペット、または持病がある場合は、症状が急変する速度は想像以上に早いため、数時間の判断の遅れが命取りになることも少なくありません。
迷わず受診するか、かかりつけが閉まっている場合は救急対応を行っている病院へ相談しましょう。
自己判断で様子をみるのではなく、専門家の判断を仰ぐことが、大切なペットの命を守るための選択です。
食欲不振や元気がない状態が続いている
なんとなく元気がないという状態は、実は痛くて動けないあるいは発熱してだるいというサインである可能性があります。
特に体力のない子犬や子猫、シニア期(高齢)のペットの場合、食欲不振は低血糖や脱水へと急速に進行するため、半日から1日の経過でも緊急性が高い状態です。
単なる選り好みなら様子を見てもよいケースもありますが、水も飲まず大好きなおやつも見向きもしない場合は、土曜日のうちに受診を検討すべきでしょう。
食べる元気がないというのは、動物にとって生命の危機であり、楽観視することは大変危険です。
嘔吐や下痢、歩き方の異常がある
嘔吐や下痢はよくある症状ですが、警戒すべきは頻度と内容です。
また、頻回嘔吐はおもちゃなどの異物誤飲による腸閉塞を起こしている可能性もあり、早急な外科手術が必要となる場合があります。
「後ろ足が急に立たなくなった」などの歩行異常も注意が必要です。ダックスフンドなどに多い椎間板ヘルニアや、猫の大動脈血栓塞栓症(ATE)の可能性があります。
これらは発症から治療開始までの時間が、麻痺が残るかどうかの予後を左右するため、明日まで様子見が許されない状態といえます。
明らかな痛みやケガが見られる
動物は言葉で「痛い」と言えません。 その代わりに荒い呼吸や震え、隅に隠れて出てこない、または抱っこを嫌がるといった行動の変化で痛みを訴えます。
特に注意したいのが呼吸状態です。 安静にしているのに呼吸数が1分間に40回を超えている、あるいは開口呼吸の場合、呼吸困難のサインです。
またおしっこが出ない場合も、尿道閉塞による急性腎不全のリスクがあり、24時間以内の処置が必要です。
これらの症状は一刻を争います。土曜日の午後だから、夜間だからとためらわず、ただちに救急病院への連絡をおすすめします。
まとめ

土曜日の動物病院は、多くの飼い主にとって利便性が高く、頼りになる存在です。
しかし平日とは異なる診療体制や検査物流の制約、そして混雑による待ち時間の発生などがあり、いくつかの注意点があることも事実です。
診察の際は、飼い主自身が土曜日は平日と同じではないという前提を持ち、事前に診療時間や予約の有無を確認しましょう。
また緊急性が高い症状を見逃さず、迷ったときは電話で専門家に相談する勇気を持つことが、大切なペットの命を守ることにつながります。
平日のうちに信頼できるかかりつけ医との関係を築き、いざというときにスムーズに受診できる体制を整えておくことが大切です。
愛するペットとの健やかな暮らしを守るため、土曜診療を賢く利用しましょう。
参考文献

