猫を動物病院へ連れて行くべきケースとは?よくみられる病気と症状、受診する際の準備などを解説

猫を動物病院へ連れて行くべきケースとは?よくみられる病気と症状、受診する際の準備などを解説

猫は、弱みを見せた瞬間に狙われてしまうという自然界で生きる本能が残っているため、身体の不調や痛みがあっても隠そうとする習性があります。大切な家族の一員である愛猫の健康を守るためにも、普段の様子と違うことがあれば、飼い主が率先して病気を疑い、必要に応じて動物病院へ連れて行かなければなりません。

こちらの記事では、猫を動物病院に連れて行くべきケースをお伝えしたうえで、猫のよくある病気と症状や病院に行く準備などについて解説しているため、参考にしてください。

猫を動物病院に連れて行くべきケース

猫を動物病院に連れて行くべきケース

愛猫の健康を守り寿命を伸ばすためには、人間と同じく病気の早期発見・早期治療が欠かせません。飼い主としては、動物病院への受診が推奨される緊急性の高い状態とはどういう特徴があるのか知っておくべきです。

ここでは、猫を動物病院に連れて行くべきケースについて解説します。

【消化器】食欲不振や嘔吐・下痢などの症状が続く

食事に手をつけなかったり残したりする状態が続く場合、また食べたらすぐに嘔吐・下痢をしてしまう場合は、消化器系トラブルが起こっている可能性があります。

嘔吐・下痢が続く原因は、食物アレルギー、食べ過ぎ、ストレスの蓄積、運動不足、寄生虫の感染などさまざまあり、それぞれ治療方法が異なります。消化不良の状態を放置すると、脱水症状を引き起こし、子猫や高齢猫のように体力が落ちている場合は、命の危機にもつながるため要注意です。

動物病院では、便検査で出血の有無や細菌叢、寄生虫の確認のほか、レントゲン検査、血液検査など必要な検査をしたあとに点滴や抗生物質、整腸剤の投薬で様子をみます。

【呼吸器】呼吸が荒い、咳が止まらないなどの不調が見られる

普段よりも呼吸音が大きかったり発作的に咳をするようになった場合は、呼吸器系トラブルによる風邪や猫喘息の可能性があります。

呼吸や咳のほかにもくしゃみ、食欲低下、発熱、よだれなどの症状があればウイルス感染による風邪が考えられます。多頭飼いの場合、ほかの猫にも感染する恐れがあるため、早急に動物病院で診察を受け、必要に応じて別室での隔離治療が必要です。

猫喘息は、風邪によく似た症状が起こることが多いですが、次第にヒューヒューやゼーゼーとした音の呼吸をするようになります。呼吸困難や肺炎になるなどの深刻な症状につながる恐れもありますが、投薬やネブライザーなどの治療を受けることで症状を緩和できる可能性があります。

ぐったりして動きが少なくなる、元気がない

ぐったりとして動かずに元気がないときは、何かしら身体の不調を抱えている可能性があります。タンスや机など暗くて狭い場所に身を隠してでてこないときは、とくに要注意です。

元気がなくなる原因は、ストレスや怪我、気候の変化、老化などさまざまありますが、猫は1日のほとんどを寝て過ごすため異変に気付けないこともあるでしょう。「ただ寝ているだけかな?それとも体調が悪いのかな?」と悩んだときは、食事の量、呼吸や心拍数、体温などをみて、普段と違う部分がないかを確認します。

動物病院を受診すれば、必要な検査を行い不調の原因を突き止めて対症療法をおこなうことができます。

トイレに何度も行き少量しか排尿しない、排泄に変化がある

トイレに行く頻度が増えている割に排尿の量が少なかったり、尿の色やニオイに変化があった場合は、泌尿器系トラブルによる膀胱炎の可能性があります。

  • トイレの頻度が増加:膀胱炎、膀胱結石、尿道閉塞、腎臓病、糖尿病など
  • トイレの頻度が減少:脱水症状、体調不良、尿道閉塞など

飼い主として猫がトイレに行く回数を正確に把握するのはむずかしいですが、普段と違うように感じたら意識的にみてあげると病気の早期発見につながります。最近では、トイレの回数や排尿などのデータを管理するアイテムも増えているため、活用してみてください。

動物病院では、症状に合わせて尿検査や超音波検査、X線検査によって原因を突き止めて、投薬やストレスのかからない生活のアドバイスなどをおこないます。

猫によくみられる病気と症状

猫によくみられる病気と症状

猫の病気をいち早く発見するためには、そもそも猫がかかりやすい病気や症状を知っておくことが重要です。ある程度の特徴を知っておくと、もしものとき愛猫の変化に気付きやすくなるでしょう。

ここでは、猫によくみられる病気と症状について解説します。

化器系のトラブル

感染症や環境の変化などが原因になり消化器系のトラブルが起こることがあります。

消化器系のトラブルが起こると、嘔吐、下痢、血便、食欲不振、元気がないなどの症状がみられます。軽度の場合は様子を見て、2〜3日程度で自然に治癒する場合もあります。内服薬を投与してもよくならない場合は食事があっていない可能性もありますので、消化器トラブル用のフードに変更することでよくなることもありますので、獣医師に相談してみましょう。

ただし、消化器系トラブルの症状が短期間で再発したり、症状が長引く場合は、病気を抱えている可能性があるため動物病院の受診をおすすめします。

皮膚・被毛の異常

猫の皮膚・被毛のトラブルで多いのは痒みや脱毛です。特にカビによる感染症の中には人獣共通感染症も含まれており、愛猫から飼い主に感染するリスクもあるため早期発見・治療が欠かせません。

皮膚・被毛の異常は、アレルギー(花粉、ハウスダスト、食物など)やカビ、ストレスが原因になりやすく、脱毛、かさぶた、炎症、かゆみなどの症状がみられます。

様子を見ると悪化してしまうこともありますので、できるだけ早めに動物病院を受診しましょう。

尿にまつわる疾患

猫は、もともと砂漠地帯に生息する動物だったことから少ない水分をうまく利用する体のつくりになっています。そのため、泌尿器系のトラブルを起こしやすい可能性があります。

水を飲む量が少ないと尿路結石や膀胱炎になるリスクが高まるため、水飲み場をたくさん作るなど水を飲みやすい環境を整えやウエットフードを取り入れて様子をみましょう。一方で極端に水を飲む量とトイレの回数が増えている場合は、腎泌尿器疾患の初期症状の可能性があります。ほかにも同様の症状で糖尿病の可能性も考えられますので、極端に飲水量が変わった場合は必ず動物病院を受診しましょう。

動物病院では、血液検査や尿検査、エコー検査などを行います。疾患によって治療方法は異なりますが、内服薬、食事変更、点滴などの治療が組み合わされることが多いです。

動物病院を受診する際に必要な準備

動物病院を受診する際に必要な準備

ワクチン接種や定期検診とは異なり、病気の可能性がある猫を連れて行く際には事前に連絡したり、ウェブ予約の場合は症状を簡潔に記載しましょう。

ここでは、猫を動物病院に連れて行く際に必要な準備について解説します。

動物病院に電話で相談する

動物病院に行くと決めたら、まずは混み具合や診察してもらえるかどうかの確認のために電話で相談するようにしてください。呼吸困難や発熱などすぐに診てもらう必要がある場合、混雑状況によってはほかの動物病院を探さなければならないこともでてくるでしょう。

事前に連絡をして、ある程度の症状を伝えておくだけでも動物病院側が準備できるため、すぐに診察や治療をおこなってもらえます。このとき、持って行くべきものがあるかどうかも併せて確認しておきましょう。

状況を伝えられるようメモや動画を撮る

呼吸困難や咳、痙攣などの症状がみられた際は、念の為に動画や発症した時間帯・回数などをメモに残しておくと、獣医師が診察しやすくなります。

動画がなければいくつもの病気や怪我のリスクを想定して検査が必要になる場合もあり、診察費用はもちろん、愛猫のストレスも大きくなるかもしれません。動画やメモで細かく状況を説明できると、可能性のある病気を絞り込める場合もあります。

キャリーに入れて連れて行く

動物病院の待合室には、猫や犬などほかの動物もいるため、必ず逃げ出さないようにキャリーケースに入れて連れて行く必要があります。家の中で放し飼いされている猫は、キャリーケースに慣れていないため警戒することもあります。

キャリーケースに入れる際に暴れて病気の症状を悪化させないためにも、普段からキャリーケースに入る練習をさせておくとスムーズです。また、匂いのついたおもちゃや毛布などを一緒に入れてあげると不安を軽減させてあげられます。

症状によっては便や尿を持参する

症状によっては、動物病院側から便や尿を持参するようにいわれることがあります。

取り方注意点
便の場合ビニール袋やプラスチック容器に入れる下痢の場合はトイレットペーパーや猫砂が付着していると水分が吸収されて検査できなくなる
尿の場合引き出し式トイレの場合は、シートを外しておき尿を回収するそれ以外の場合は水切りカゴなどを利用する水分を吸収するタイプの猫砂を使うと検査できなくなる

鮮度は検査結果に影響するため、なるべく当日のものを用意してください。なお、尿を採取することが難しい場合や尿が取れなかった場合は動物病院に相談してください。

ペット保険などの条件を確認しておく 

ペット保険に加入している場合、精算方法や補償範囲を確認しておきましょう。

精算方法には、後から保険会社に請求する後日精算と、動物病院の窓口で自己負担額のみ支払う窓口精算があります。ペット保険に加入していても、まずは治療費を全額支払わなければならないケースもあるため、その場合はクレジットカードや現金などの用意が必要です。

また、保険会社やプランによって、夜間診療費や割増診療費が適用外だったり、過去にかかった病気の種類によっては保険が適応されない免責項目がある場合もあります。

動物病院での診察から治療までの流れ

動物病院での診察から治療までの流れ

ワクチン接種や定期検診以外で動物病院を受診するとなると「どのようなことをするのだろう」と不安を抱く飼い主もいるでしょう。緊急性や病気の種類によって異なりますが、基本的な流れは同じなため、事前にイメージしておくと安心です。

ここでは、動物病院での診察から治療までの流れについて解説します。

問診

動物病院に着いたらスタッフから渡される問診票を記入して、順番が回ってきたら診察室に入って獣医からの問診を受けます。猫は自分で「どこが痛い」「これが辛い」などと話すことができないため、飼い主がどのような症状がいつからあるのかを説明します。

うまく説明できなくても獣医から「食欲ありますか」「吐いたりしましたか」など質問してもらえるため、落ち着いて回答すれば問題ありません。このとき、呼吸困難や咳、痙攣などの動画があれば、獣医が状況を把握しやすくなるため提出しましょう。

検査・処置

問診後は、怪我や病気の原因が疑われる箇所を実際に触ったり目で見たりして診察します。

診察だけで判断できない場合は、血液検査やレントゲン検査、エコー検査など追加検査が必要です。これらの検査は、猫の負担が大きくなるため、想定される病気や怪我に応じて厳選して実施されています。また、動物病院に便や尿を持って行くと、顕微鏡で細菌や寄生虫の有無を確認してもらえます。

診断結果と治療計画の説明

検査結果がでたら病気や怪我の状態や進行状況について説明を受けます。「なぜこの病気(怪我)になったのか」「どういった治療や予防が必要になるのか」話があるため、わからないことがあれば、その都度質問しましょう。

症状に合わせて必要な治療を行います。重篤な状態やほかの動物・人間への感染リスクが高いと判断されればそのまま入院になるケースもあります。

治療後の経過観察とフォローアップ

治療後、自宅でどのように過ごすべきか、薬をどうやって与えたらよいかなどの説明を受けます。わからないことがあれば、この時点で確認しておきましょう。

なお、病気や怪我の状態によっては通院や経過観察のための再診が必要です。また救急病院を受診した際は、通いやすい動物病院や専門医の紹介をしてもらえる場合もあります。飼い主と愛猫が安心して治療を続けられる選択を模索しましょう。

まとめ

まとめ

猫は、体の不調や痛みを我慢して隠そうとする習性がある動物だからこそ、飼い主が異変に気付いてあげられるようにしなければなりません。小さな変化に気付くためにも、普段の食事量・運動量やトイレの回数などをよく観察するのがポイントです。

消化器や呼吸器、泌尿器などのトラブルは放置すると命に関わる病気につながる恐れもあるため、動物病院で状態をみてもらいましょう。動物病院に行く際には、事前に電話をして混雑状況や持参するものを確認しておくと安心です。

参考文献