動物病院で行う便検査とは?便検査でわかることや準備などを併せて解説

動物病院で行う便検査とは?便検査でわかることや準備などを併せて解説

便検査は、ペットの健康状態を把握し、病気の早期発見や治療につなげる大切な検査です。動物病院では、腸内環境や寄生虫の有無、消化不良の状況などを詳しく調べることができます。

本記事では、動物病院で行う便検査について以下の点を中心にご紹介します。

  • 動物病院で行える便検査とは
  • 動物病院の便検査でわかること
  • 便検査を受ける前に準備しておいた方がよいこと

動物病院で行う便検査について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。

ぜひ最後までお読みください。

動物病院で行う便検査

動物病院で行える便検査とはどのような検査ですか?
動物病院で行われる便検査は、便の状態を詳しく調べることで、消化器系の健康状態や潜在的な異常を把握するための検査です。

この検査では、便の色・臭い・形状などの肉眼で確認できる要素に加え、顕微鏡や特殊な検査機器を使用して、寄生虫や細菌、原虫などの病原体の有無を調べます。また、腸内細菌のバランスや、便中の赤血球、脂肪分、消化不良の痕跡、異物や出血の有無も確認します。

便検査は、下痢や軟便、血便、便秘といった消化器症状が現れた際に行われることが多いとされていますが、健康診断の一環としても実施されることがあります。
また、子犬や子猫を新たに家庭に迎えた際にも、寄生虫や母動物からの感染リスクを確認するために推奨される検査です。

便検査を行うことで、外見ではわからない内臓の異常や病気の重症度を推定できるため、ペットの健康維持において重要な役割を果たします。
特に便の異常が続く場合には、早めに動物病院で検査を受けることが大切です。
動物病院の便検査でわかることを教えてください
動物病院での便検査は、さまざまな病気や異常を早期発見するための重要な手段です。

便の色・形・臭いを観察し、異常な状態(粘液便、血便、黒色便など)がないか確認します。顕微鏡を用いた観察では、寄生虫や細菌、炎症細胞、出血の有無を調べます。

寄生虫感染については、浮遊法などで小さな寄生虫卵を確認し、犬回虫や鉤虫、コクシジウム、条虫類などの有無を判断します。

さらに、細菌検査では腸炎を引き起こすクロストリジウムやカンピロバクターの異常増殖がないか調査します。

また、微生物抗原検査やPCR検査では、ジアルジアやパルボウイルス、腸コロナウイルスなど特定の病原体の感染を精密に確認できます。染色試験では消化不良の程度や脂肪、炭水化物の消化異常を判定します。

便に異物が混入している場合は誤食が疑われ、便に混ざった異物の確認が重要です。

便検査は、寄生虫感染や消化器疾患の診断に役立つほか、健康管理の一環として定期的に実施されることが推奨されます。
動物病院で便検査が必要になるのはどのような場合ですか?
動物病院で便検査が必要となるのは、主にペットの健康状態に異常が見られる場合や健康診断の一環として行われます。

具体的には、自宅に子犬や子猫を迎えた際や、下痢、軟便、血便、または便に虫が混じるなど、普段と明らかに異なる便の状態が見られる場合が挙げられます。
また、便が真っ黒でドロドロしている場合も、早急な検査が必要です。

一方で、便に異常が見られなくても、嘔吐や体重減少などの症状がある場合には、内臓疾患やホルモン異常、小腸の病気などが隠れている可能性があります。そのため、飼い主の観察や情報提供が診断を進める上で大変重要となります。

例えば、便の異常がいつから続いているのか、排便回数や量の変化、新しい食べ物やフードの変更があったかどうかなど、詳細な情報が診察に役立ちます。

便検査を通じて異常が発見された場合、早期治療が可能になるため、普段から愛犬や愛猫の便をよく観察し、気になる変化があれば速やかに動物病院で相談することをおすすめします。

動物病院で行う便検査の方法

動物病院で行う便検査の方法を教えてください
動物病院では、ペットの健康チェックの一環として便検査が行われます。主な方法として”肉眼での観察” ”直接法” “浮遊法”があります。

肉眼での観察では、便の色、硬さ、匂い、粘膜の状態などを確認します。例えば、血便は大腸の出血、黒色便は上部消化管の出血、白色便は胆嚢や膵臓の異常を示唆することがあります。ゼリー状の便は大腸の炎症が疑われます。

直接法では、少量の便をスライドガラスに広げ、顕微鏡で腸内細菌のバランスや活性、消化不良の有無を調べます。また、ジアルジアやトリコモナスなどの原虫も確認できます。

浮遊法は、便を飽和食塩水で溶かし、比重差を利用して寄生虫卵を検出する方法です。犬回虫や鞭虫、一部の条虫の虫卵の発見に推奨されており、直接法では見つけにくい寄生虫を確認できます。

これらの検査を活用し、消化器疾患や寄生虫感染の早期発見につながります。
異常が見られた際には、速やかに受診しましょう。
より詳しく便を検査する方法はありますか?
動物病院では、基本的な便検査に加えて、より詳しい検査を行うことも可能とされています。特に寄生虫や細菌、ウイルス感染が疑われる場合に役立つ検査が以下の方法です。

PCR検査(ポリメラーゼ連鎖反応法)では、糞便中のDNAを抽出し、病原体の遺伝子を検出します。これにより、顕微鏡では発見が難しいジアルジアやトリコモナスといった寄生虫、サルモネラ菌やカンピロバクター菌などの下痢を引き起こす細菌を正確に検出することが可能といわれています。
外部機関で行われるため、結果が出るまでに1週間程かかることがあります。

抗原検査では、ELISAや専用キットを用いて病原体の持つ抗原を検出します。
この方法は、ジアルジアや犬パルボウイルスなどの診断に用いられます。特にジアルジアは新鮮な便でないと検出が難しいため、専用のキットが迅速でよりしっかりとした診断に役立ちます。
犬や猫に腸炎を引き起こすパルボウイルスの感染も抗原検査で診断可能とされています。

これらの詳細な検査は、早期に感染症や寄生虫を特定し、迅速な治療につなげるための重要な手段となります。状況に応じて利用を検討するとよいでしょう。

動物病院で便検査を行うための準備

動物病院で便検査を行うためにはどうすればよいですか?
ペットの便検査を動物病院で行う際には、正しい方法で採取し、新鮮な状態で持参することが重要です。

家庭で採取する場合、親指の先くらいの量を目安にします。便はティッシュペーパーではなく、水分を吸収しないラップやビニール、密封容器に包んで持参しましょう。

採取後はできるだけ早く病院に持っていくことが望ましいですが、時間がかかる場合は冷蔵庫や保冷剤を使って4度程度に保冷し、雑菌の増殖を防ぎましょう。

下痢便や水下痢の場合、すべてを採取するのが難しい場合は、できる範囲で拾ってください。ペットシーツに排便した場合は、シーツごとビニール袋に入れて持参しても問題ありません。

また、便の最初や最後など、血や粘膜が付着している部分を重点的に採取すると、診断の助けになります。

動物病院では採便棒を用いた採取も行われ、痛みを感じにくいとされています。
ジアルジアやトリコモナスといった運動性の原虫は新鮮な便でないと検出が難しいため、採取後2~3時間以内の持参が理想的です。

正確な診断のため、新鮮な便を適切な方法で持ち込みましょう。
便検査を受ける前に準備しておいた方がよいことは何ですか?
便検査を受ける際には、正確な診断に役立つ情報や物を事前に準備しておくことが大切です。以下のポイントを参考に準備を整えましょう。

1. 排便の様子を記録する
日頃からペットの排便の回数、量、色、形、硬さ、血便の有無などを観察し、異常があればメモしておきましょう。また、症状が出た時期や、食事の変更など生活環境の変化も記録しておくと、診断の重要な手がかりになります。

2. 嘔吐物や排泄物を持参する
便だけでなく、嘔吐物や排尿の異常がある場合は、それらも持参することで、診断や検査がよりスムーズに進みます。持参する際は、水分を吸収しないラップやビニール袋を使用し、できるだけ新鮮な状態で持ち込むようにしましょう。

3. 症状の動画を撮影する
咳や震え、痙攣などの症状が出ている場合は、動画を撮影して獣医師に見せると、診断が早まりやすくなります。

4. 過去の医療記録をまとめる
転院の場合や治療を継続する際には、過去の検査結果や治療経過、ワクチン接種歴、服用している薬の情報を持参するとスムーズです。これにより、無駄な検査や投薬を避けられます。
  
これらを準備しておくことで、的確な診断や治療につながる可能性が高まります。日頃からペットの状態を観察し、記録する習慣をつけましょう。

編集部まとめ

ここまで動物病院で行う便検査についてお伝えしてきました。

動物病院で行う便検査をまとめると以下のとおりです。

  • 動物病院での便検査は、消化器系の健康状態を把握し、寄生虫や病原体の有無、腸内細菌のバランスを調べる重要な検査である。健康診断や消化器症状がある際に行われ、早期の異常発見に役立つ
  • 動物病院の便検査では、寄生虫や細菌、病原体の有無、腸内環境や消化不良の状況を調べる。健康診断や消化器症状の診断に役立つ重要な検査である
  • 便検査を受ける際は、排便の記録や嘔吐物・排泄物を新鮮な状態で持参し、症状の動画や過去の医療記録を準備するとよい

便検査はペットの健康管理や病気の早期発見に欠かせない重要な検査です。異常を感じたら早めに動物病院で検査を受け、適切な診断と治療で大切なペットの健康を守りましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献