動物病院の夜間・救急診療ではどのようなことができる?準備のポイントや診療の流れを解説

動物病院の夜間・救急診療ではどのようなことができる?準備のポイントや診療の流れを解説

ペットを飼っていると、ときには緊急事態が発生することもあります。特に夜間や休日など、通常の診療時間外にペットが病気になった場合は、どうすればよいのでしょうか? いざというときに慌てないように、事前に対応方法を知っておくことが大切です。本記事では、動物病院の夜間・救急診療の内容や、緊急時に必要な準備、診療の流れを詳しく解説します。

動物病院の夜間・救急診療ではどのようなことができる?

動物病院の夜間・救急診療ではどのようなことができる?

動物病院の夜間・救急診療では、通常の診療時間外に急な病気やけがに対応するための診療を行います。夜間・救急診療の主な役割は以下のとおりです。

  • 急な体調変化に対しての検査や治療
  • けがをした場合に対する応急処置
  • 専門的な治療が必要な場合は専門医への紹介
  • 重症の場合は入院による継続治療

夜間・救急診療は通常の診療とは異なり、緊急性の高いケースが少なくないため、迅速かつ的確な対応が求められます。

また、ペットの苦痛を和らげることも夜間・救急診療の役割です。例えば、激しい痛みを伴うけがや病気で苦しんでいるペットに対しては、適切な鎮痛処置を施して回復を促します。

ペットの命を守るために、呼吸や心拍数、体温などのバイタルサインを定期的にチェックし、異変があればすぐに対応する体制が整っています。

緊急時には飼い主の精神的なサポートも必要です。夜間にペットが体調不良を起こすと、飼い主は心配で朝まで付きっきりになってしまいます。夜間・救急診療を受診し、ペットの状態や治療内容を専門家に任せることで不安を軽減できます。

動物病院の夜間・救急診療に連れて行くべき症状

動物病院の夜間・救急診療に連れて行くべき症状

動物は言葉を発することができないため、緊急事態を予測するのは難しい場合がほとんどです。そのため、日中は元気そうに見えても夜間に急に症状が進行するケースもあります。

夜間にペットの体調が悪くなると不安になりますが、朝まで様子を見て、通常の診療時間に動物病院を受診しようと考えることもあるでしょう。しかし、病気によっては迅速な治療が必要なケースも少なくありません。

夜間にペットが体調不良を訴えたときには、朝まで様子を見るべきかすぐに動物病院を受診するべきか、症状を見極めることが大切です。ここからは、早急に診察が必要な症状、命に関わる症状、迷ったときの対処法について説明します。

早急な診察が必要な症状

夜間でも以下のような症状が現れた場合は、救急診療の受診が必要です。

  • 血が混じった嘔吐や下痢がある
  • 真っ黒い便が出ている
  • 水のような下痢が続いている
  • 呼吸が速くて浅い
  • 息切れを起こしている
  • 反応が鈍くぐったりしている
  • 突如歩けなくなっている
  • ふらついている

これらの症状は、脳や神経の異常の可能性がありますので、迅速な対応が必要です。

動物が一度嘔吐することは珍しくありませんが、繰り返し嘔吐したり嘔吐後にぐったりしていたりする場合は注意が必要です。内臓からの出血により便の色が黒くなっている可能性があるため、見過ごさないようにしましょう。水のような下痢が続く場合は、急激に脱水症状を引き起こすことがあります。特に、小型犬や体の小さい猫、老犬老猫の場合は体内の水分量が少ないため症状が悪化しやすいです。

心臓や肺、脳神経系の異常は、重篤な病気の可能性があり、朝まで様子を見ていると急激に症状が進行する可能性があるため、夜間でもすぐに受診することが大切です。また、特定の箇所に触ると鳴いて嫌がる、逃げようとするなど、激しい痛みを訴える場合も救急診療の受診が必要です。

 命に関わる症状

けがをして出血が止まらない場合は命に関わります。すぐに救急診療を受診しましょう。

また、有害物質を摂取した場合は、体内に成分が吸収される前に処置が必要です。例えば、タバコや薬品の誤飲は気を付けなければなりませんが、アロマオイルやチョコレートなどもペットにとっては有害です。死亡例も報告されているため注意しましょう。典型的な中毒症状は、よだれをたらす、嘔吐、けいれん、呼吸困難、尿失禁などが挙げられます。

唇や舌、歯茎の色が青白い場合は、血液中の酸素不足によりチアノーゼという状態を起こしている可能性があります。呼吸器系や循環器系の疾患が原因となることがあり、放置すると呼吸困難に陥るため、チアノーゼが出たら即座に動物病院を受診しましょう。

 迷ったときの対処法

明らかな異常がある場合は夜間でも救急診療を受診が必要ですが、症状が軽いときは判断に迷うこともあるでしょう。

その際には、かかりつけの動物病院や夜間・救急専門の動物病院に電話をかけて状況を説明し、受診が必要かどうか確認するのがおすすめです。24時間対応のペット専門オンライン相談サービスを利用するのもひとつの方法です。利用には登録が必要ですので、あらかじめ登録しておくと慌てずに対応できるでしょう。もし、ペット保険に加入しているのであれば、24時間対応の相談サービスが利用できるケースもあります。加入している保険の特典を確認しておきましょう。

すぐに受診ができないときや夜間の緊急時に、専門家のアドバイスを受けられるのが不安の解消につながります。救急診療を受診すべきかどうか自分での判断が難しいときは、専門医の指示を仰ぎ、適切な対処を行いましょう。

動物病院の夜間・救急診療に行く準備のポイント

動物病院の夜間・救急診療に行く準備のポイント

動物病院の夜間・救急診療に行くときには、慌てず準備することが大切です。必要な持ち物を準備し、ペットの状態を正しく伝えられる状態にしておくことで、診察がスムーズに進みます。

病院に行く前に電話で確認する

いきなり動物病院に向かうのではなく、夜間・救急対応をしているか、診察を受けられる状況なのか事前に電話で確認をしましょう。

緊急事態のときは一刻を争う状況です。ペットが急に具合が悪くなったら、病院への確認が大切です。救急診療が受けられる場合は、電話でペットの症状を伝えます。夜間・救急診療をしている病院に向かう場合でも、あらかじめ電話で病院のスタッフに状況を説明しておくことで、到着後の対応がスムーズに進みます。

また、来院する前に病院側から応急対応に関する指示を受けることもあります。例えば、けがをした箇所を冷やす、寝かした状態で連れて来るなどの指示にしたがって、少しでもペットの負担を和らげられるようにしましょう。

24時間診療をしている動物病院は少ないです。あらかじめ、かかりつけの病院が夜間診療をしているのか確認しておくことも大切です。近くに夜間診療をしている動物病院がない場合は、かかりつけとは別に夜間・救急診療用の動物病院をピックアップしておきましょう。複数の動物病院を候補に挙げておけば、万が一の緊急時にも慌てずに対応できます。

ペットの基本情報をまとめる

ペットの名前、年齢、性別、品種などの基本情報は、獣医師が診断するのに必要な情報となります。普段の食事内容や生活習慣、過去の病歴などもメモしておくとよいでしょう。

これらの情報をバラバラに管理していると、必要な情報を提供するのに時間がかかってしまいます。一箇所にまとめて保管しておきましょう。

かかりつけ医の検査データや服用中の薬を持っていく

救急時のデータは、かかりつけ医で行った健康状態の検査データと照合することで、健康状態を正確に把握できます。

また、服薬中の薬を持参すれば、薬の相互作用や過去の治療歴を把握したうえでの治療が可能となります。救急診療の場合はかかりつけ医と異なる病院を受診することも少なくありません。普段の様子を知らない救急診療の獣医師にペットの状態を伝える方法として、かかりつけ医からの情報は大きな助けとなります。

特に、慢性的な病気やアレルギーを持っているペットの場合、服薬中の薬や定期的な検査データは大変重要です。こういったデータがあれば、救急診療の際に重複して同じ検査を行う必要がなくなり、ペットにかかる負担を軽減できます。

症状を詳しく説明できるようにしておく

ペットの症状を詳しく説明できるように準備しておきましょう。いつから症状が現れたのか、どのような状況で症状が悪化したのか、普段の行動との違いなどを具体的に伝えることが重要です。

嘔吐や便、尿に異常が見られた場合は検査を行うこともあるので、清潔な容器や袋に嘔吐物や便や尿を入れて持参するのもポイントです。獣医師が迅速に診断を行いやすくなります。

また、けいれんが起こっているときは、どのくらいの時間続いていたのか、突っ張るようなけいれんだったのか、バタバタ動いていたのか、失禁やよだれなどが出ていたのかなど、けいれんの様子をできるだけ詳しく伝えましょう。

けいれんの前後の様子も診断の手がかりになることがあります。いつもと変わった行動があったのか、初めての食べ物を食べていなかったのか、けいれんが落ち着いた後はどのような様子だったのかなどを説明できるようにしておきましょう。

また、食べてはいけないものを飲み込んでしまった場合は、誤食してしまったものと同じもの、成分がわかるものを持参してください。

 動物病院の夜間・救急診療の流れ

夜間や救急診療を行っている病院に電話で連絡して症状を説明します。

診察が可能な場合は、指定の病院にペットを連れて行きます。受付を行った後は、問診と診察が行われます。獣医師がペットの状態を確認して、必要な応急処置や検査をした後は、診察結果に基づいて、治療方針や費用の説明を受けましょう。

治療の方法や服薬の有無を確認した後で治療が開始されます。症状によっては、入院や手術が必要な場合もあるでしょう。急な入院や手術が決まると動揺もしてしまいますが、獣医師の指示にしたがって準備を行いましょう。

診察後の処置や治療の内容も獣医師としっかりコミュニケーションを取って、納得がいくまで説明をしてもらうことが大切です。治療方針や費用について質問があれば遠慮せずに確認しましょう。

ペットの健康を第一に考えて必要な情報をえることが大切です。診療後のケアについても獣医師から指示がある場合があります。薬の投与方法や自宅でのケアの方法について具体的な説明を受けておけば、よりペットの回復を促せるでしょう。

動物病院の夜間・救急診療を利用する際の注意点

動物病院の夜間・救急診療を利用する際の注意点

ペットの体調不良は急に発生するため、普段からなにか起こったときの心構えと準備をしておくことが大切です。

ペットの健康情報や緊急連絡先を整理しておいて、すぐにでも対応できるようにします。緊急時用に必要なものをまとめたバッグを用意しておくと、万が一のときも慌てずに対応できるでしょう。緊急時はペットもストレスを感じてしまいます。少しでも落ち着かせるために、普段使っているおもちゃや毛布を持参するなど、ペットのストレスを軽減する工夫をするのもよいでしょう。

また、夜間・救急診療は、通常の診療よりも費用が高くなる場合がほとんどです。事前に費用を確認してクレジットカードや現金を用意しておきましょう。ペットの医療費は、ペット保険に入っていない場合は治療費全額負担です。もしものときを考えて、ペット保険の加入についても検討しておくことをおすすめします。

まとめ

ペットは、夜間に体調が悪くなることも珍しくありません。ペットの健康を守るためには、早急に受診が必要な症状を見極め、適切な治療を受けさせることが大切です。ペットの基本情報や健康情報を整理し、症状を詳しく説明できるように準備しておくことで、迅速な診察と治療を受けることができます。また、治療にかかる費用やペットのストレス軽減にも注意を払い、ペットが不安なく診療を受けられる環境を整えましょう。

参考文献