ペットの食欲がなかったり吐いたりする、呼吸が苦しそうだったり急に足を引きずったりするなど、異常が突然あらわれたら飼い主さんは心配でしょう。
動物は人と同じような救急外来があるのか、かかりつけの動物病院の診療終了後ならどうするのかなど、緊急時に対処可能な病院情報を知っているといざというとき困りません。
ここでは、動物病院の救急診療やすぐに病院へ連れて行く方がよいケース・連れて行くときに必要なもの・費用などについて解説します。
動物病院でも救急診療を行っている?
救急診療を行っている動物病院もあります。24時間診療で完全看護の病院や動物救急タクシーと連携している動物病院もあるため、緊急のときは利用しやすいでしょう。
またかかりつけの病院でも、ホームページに急患優先の記載があれば、救急診療を受けられます。診療時間内であれば、主治医の診察を受け、症状に適した治療を行える大学病院なども紹介してもらえます。
診療時間外の夜間には、夜間専門の救急外来を受け付ける動物病院があります。
その他にも一般動物病院のホームページには、時間外の治療を受け付ける夜間専門病院が記載されていることがあります。その場合は夜間専門病院とカルテを共有していることが少なくありません。
救急診療を受ける際の注意点として、犬・猫以外の動物を担当できる獣医師がいない可能性があるため、先に確認しておくとよいでしょう。
動物病院の時間外治療
一般動物病院は時間外治療をしないことがあります。ホームページに時間外の病院が紹介されているケースです。
時間外治療を行う病院でも、その病院にカルテがある患者さんに限る場合があります。初診の患者さんは時間外の治療をしてもらえないので、注意が必要です。
救急病院と謳っている病院では、カルテがなくても診療や治療を受け付けています。病院によっては往診も可能です。ただし救急でも電話で予約せず、いきなり病院へ行くと診療してもらえないので、電話予約は忘れないようにしましょう。
獣医師会の夜間動物病院
公益社団法人日本獣医師会は県や市に地方獣医師会があり、各地区のホームページで日曜・祝日・夜間など診療可能な病院が紹介されています。
自治体によっては救急や夜間可能な病院の紹介がないこともあるため、飼い主さんのお住まいの地域を事前に調べておきましょう。
日本獣医師会の会員救急病院でも、病院により診察可能な動物や治療費の支払い方法が異なるため前もって確認が必要です。ほとんどの病院で事前の電話予約が必要になります。
地域により未成年者だけの利用はできない、受診する動物は飼い主さんが扱える場合のみ、夜間の営業時間を過ぎるときは別途延長費用が必要などのケースもあります。
また救急病院のため、より緊急性が高い動物が優先されることもあり、夜間でも直ぐに診療してもらえるとは限りません。入院不可の病院もあります。
そのときの天候で病院が休診になることもあり、緊急でも事前確認をするようにしましょう。
救急対象となる動物の種類
犬・猫は基本的に可能ですが、ウサギやフェレットなどのエキゾチックアニマルや小鳥・爬虫類・魚類は、診療可能な病院が限られるため、ホームページで確認しておくことが大切です。
診療可能な病院でも、当日その獣医師が不在の場合は受け付けてもらえないので、必ず電話で確認しましょう。
診療可能な獣医師が不在なケースに備えて、複数の救急病院の情報を準備しておきましょう。
動物病院の救急ではどのような処置が行われる?
大まかには以下の流れになります。
- 飼い主さんへ問診
- 動物の診察
- 検査(身体検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査)
- 症状確定
- 緊急性や行う処置の説明
- 手術や処置
- 手術や処置の結果説明
- 主治医への引継ぎ
かかりつけ医での救急治療なら電話連絡時に動物の名前と状況を説明します。
初診の救急病院では、動物の分類(犬・猫・ウサギなど)・動物の具体的な種類(チワワ・ブルドッグなど)・年齢・性別・症状を伝えます。
病院に着いた後、獣医師からさらに詳しい症状やいつから始まったかなどの問診があるので、できるだけ詳細に伝えましょう。
問診と動物の診察で必要な検査が決められ実施されます。検査結果からり患している病気や怪我の状況を確定し、必要な処置が決められ飼い主さんに説明されます。
緊急度が高い場合、飼い主さんへの説明が短くなる場合があるかもしれません。
必要な処置や手術を実施し、現況や今後懸念されることなどを飼い主さんへ説明します。
救急専門の病院は継続して診療することはなく、主治医へ引継がれます。カルテ・検査結果・撮影データ・処置レポートなどは飼い主さんが持ち帰り、主治医へ渡すことで引継ぎは完了です。
救急治療をかかりつけ病院で受けたときは、この工程は不要です。
獣医師が一名のみや手術施設がないなど病院の規模により、手術は行わず一次治療で痛みや症状の緩和をするだけの場合もありますので、前もって確認しておきましょう。
救急で連れて行った方がよい症状
次のような症状や状況があったときは救急病院へ連れていきましょう。
- 誤食
- 嘔吐(吐出)・下痢
- 呼吸が苦しそう・長く続く咳やくしゃみ
- 発熱・低体温
- けが
- 動かなくなった
- 口腔粘膜が白い
- オス猫で頻尿なのにおしっこが出ていない
- 全身のけいれん・ひきつけ
誤食は異物でなくても、おやつのガムの塊を飲み込んで苦しそうにしていたら緊急性が高い状態です。食糞は病気ではなく、動物の自然な行動ですので救急対応は必要ありません。
嘔吐(吐出)・下痢のときは、その色や中身などを撮影するか現物を取って持っていくようにしましょう。
呼吸が苦しそうだったり、咳やくしゃみが止まらなかったりするときは、早急に診察をうけるようにします。心臓や肺、気管支などの疾患かもしれません。
ソファーや少し高いところから飛び降りた後、動かなくなったり足をつくのを嫌がったりするときは骨折を疑いましょう。
動かなくなったときの原因はさまざまです。発熱していたり、急激にお腹が張って立てないなど症状により、り患している病気は変わります。状況をよく観察して伝えるようにしましょう。
ほかにも口腔粘膜が白い・ふらふらして歩き方がおかしいなどの異常があれば救急のサインです。
誤食
床に落ちていたおもちゃの破片やガム・ジャーキーなどの塊を飲み込み苦しそうにしていたら、夜間でも救急病院に連れていくことをおすすめします。
また犬や猫が食べると中毒症状を起こすチョコレートやネギ類などを食べてしまったときも同じケースです。
動物がさかんに吐く動作をしていたり、苦しそうにしていたりするとき、誤食の可能性があります。
嘔吐で異物が出た場合でも、異物が体内からすべて排出されたとは限りません。胃のなかに異物が残っている可能性がありますので、救急病院で腹部超音波検査やレントゲン線検査などで確認することが重要です。
症状によっては緊急手術が必要なケースがあります。
嘔吐・下痢
吐く症状は次の2種類があります。
- 嘔吐
- 吐出
嘔吐は食べたものが胃から出たとき、吐出は食道から出たときをいいます。嘔吐と吐出では原因や病気が変わるので、注意深く観察しましょう。
飼い主さんの判断が難しいときは、動画撮影し救急病院へ持っていくと、獣医師が判断しやすくなります。
また吐しゃ物は写真撮影するか、現物を採取して持ち込むようにします。
嘔吐の特徴は主に次のとおりです。
- 吐く前に前兆がある
- 胃液を吐く
- 吐いたものが消化物
- 胆汁が混じることがある
嘔吐は胃が収縮し、吐く前にお口を開け音を立てて出そうとするような動作や、吐いているときお腹から絞り出すような動作をします。
吐出の特徴は主に次のとおりです。
- 吐く前に前兆がない
- 吐いたものが未消化物
- 突然吐く
吐出は前ぶれなく突然吐き、お腹から絞り出すような動作はありません。
嘔吐は消化器疾患の懸念があり、検査で原因を確定します。なかには緊急を要する腸閉塞も含まれます。
また嘔吐は消化器疾患以外、さまざまな病気で起きる症状です。嘔吐する前の様子や頻度、いつから始まったか、フードの種類や量を変更したかなども詳細に獣医師に伝えましょう。
嘔吐を繰り返すと体力が消耗したり脱水症状を起こしたりします。回数なども確認しておくことが必要です。
下痢は便が液体に近い状態です。腸の水分調整やぜん動運動に異常があるときに見られます。消化器以外の要因では、感染症・食物アレルギー・ホルモン分泌異常のケースもあります。
便の色や状態などを写真撮影するか現物を持ち込み、獣医師に確認してもらいましょう。
嘔吐と下痢が同時にある場合、胃腸炎や中毒症状の可能性があります。
一方、吐出は食道や口腔・咽喉疾患の可能性があります。
呼吸が苦しそう
呼吸が苦しそうな状態と一口にいってもさまざまな症状があります。ほかの症状を見逃さないようにしましょう。
- 咳が続く
- くしゃみの回数が頻繁
- 急にゼイゼイと呼吸する
- 呼吸が早い
- 舌の色が変わっている
咳やくしゃみが続く場合、鼻・気管・肺・心臓などの異常が懸念されます。
呼吸の乱れは激しい運動の後なら通常の反応ですが、安静にしているときにマズルを開いて早い呼吸をする場合は、直ぐに救急病院で診察してもらいましょう。
重度の貧血・胸水・腹水・心筋症・僧帽弁閉鎖不全症・肺動脈狭窄などが原因かもしれません。呼吸器系の疾患では、肺炎・肺水腫・気管支炎などの可能性もあります。
舌の色が変わるときはチアノーゼの可能性があります。急激な血中酸素濃度低下が疑われますので、すぐに診察を受けましょう。酸素吸入や酸素室で過ごし呼吸を安定させてから検査などを受けるようにします。
こちらも動画を撮影して、獣医師に見せると有効です。
発熱・低体温
動物が発熱や低体温かどうかは目視ではわかりにくいかもしれません。自宅で体温管理をするのが理想ですが、検温の方法が正しくなければなりません。
いつもより元気がなくぐったりしている・好きなおやつを食べない・食欲がない・好きな遊びをしない、など異常を感じたら救急病院へ連れて行きましょう。
発熱や低体温は何が原因かを特定する必要があるため、異常が出た前後の経過や熱以外にどのような症状があるかを詳細に獣医師に伝えると有効です。
けが
交通事故や散歩中の事故は一刻も早く救急病院へ連れて行きましょう。室内で何かに挟まれたり、高いところから飛び降りた後、足を引きずったり足を触ると痛がる・噛むなど異常があるときは、レントゲン検査で獣医師の判断を仰ぎます。
動かなくなった
動かなくなったときも、さまざまな症状があります。
- 急に立てなくなった
- お腹が張っている
- トイレでじっとしている
- ぐったりしている
- 歩けない
動かなくなったとき、原因は内科系・外科系・神経系などのどれにも疑いがあります。問診ではいつから、どのようなときになど詳細な情報を獣医師に伝えましょう。緊急手術の可能性もあります。
1時間前は元気だったのに急にお腹が張って立てなくなり虚脱状態の場合、胃捻転や腹水など内科系の疾患かもしれません。
トイレで尿が出ず苦しそうにじっとしている場合は、尿管・尿道の疾患かもしれないため、超音波検査などが必要です。
立てない・歩けない場合は脳外科・整形外科を含む外科系や神経系の疑いがあります。椎間板ヘルニア・脳腫瘍・脊椎損傷・水頭症など検査のうえ原因を確定してもらいましょう。
救急で動物病院に連れて行くときに必要な情報
動物の種類や名前、既往歴(過去の検査やワクチン歴)や現在飲んでいる薬やサプリは必須です。その他、飼い主さんの身分証明書やクレジットカード(有効期限の切れていないもの)も必ず持参しましょう。
嘔吐や吐出は吐しゃ物、下痢は便を、誤食した場合は誤食した物と同じものか成分がわかるものがあると診断が早く・正確になります。
ほかには、動物の異常を撮影した動画や写真なども持参しましょう。
家族・ペットの名前
かかりつけ医ではその病院の診察券を持って行きます。
初診だと問診票に記載するのと、飼い主さん自身の氏名・住所が記載された公的なもの、マイナンバーカード・運転免許証などの提示を求められることもあります。
ペットの名前は、問診票に記載しましょう。
現在の症状
現在飲んでいるお薬や直近の検査のデータを提示します。可能であれば、薬剤の名前と容量、どのような症状があり飲み始めたかも伝えたいところです。
過去にかかった病気
大きな手術を伴うものはもちろん、同じ症状で何度も病院に連れて行ったケースがあれば、それを伝えます。そのときの検査データがあれば、さらに分りやすくなります。
ワクチンなどの接種状況
ワクチンの接種時期と種類は、ワクチン接種証明書を持っていくとわかりやすく早いです。ここ数ヶ月内のもの、なければ前年のものを持参します。
動物病院の救急でかかる費用の相場
かかりつけ病院で救急を受ける場合なら、検査や処置・薬剤により費用は変わりますが初診料は基本的には通常と変わりません。夜間診療は別途料金が発生することもあります。
夜間専門の救急病院は、昼間の一般病院より初診料が高い傾向にあります。8,000円~10,000円(税別)程度が初診料です。
血液検査・レントゲン検査などの検査1項目ごと、注射1本から別料金となり、緊急手術は動物の大きさや難易度により費用は異なりますが100,000円(税別)前後になるケースもあります。
また診療終了時間を超過する場合、時間外料金がかかることもあります。
支払いは当日払いのみ、現金不可でクレジットカード払いのみの病院もあるので、電話で確認しておきましょう。
万一に備えてかかりつけの動物病院を持とう
救急病院で処置してもらった後は、通常かかりつけの動物病院へ引き継ぎをします。救急病院で引き続き経過観察や治療を行うことは稀です。
主治医を持っておくと、動物の品種・性別・年齢はもちろん、既往歴もカルテに保存されているので緊急時の対応が早くなります。
まとめ
家族の一員の動物が苦しんでいるのを見るのは、飼い主さんにとって大変辛いことでしょう。
かかりつけ医をもち、緊急時のために救急対応や夜間専門救急病院の情報を調べておくのは、大事なペットを守る第一歩です。また普段の予防も大切です。
参考文献