動物病院にある検査機器の種類|検査費用や準備内容、アフターフォローについても解説

動物病院にある検査機器の種類|検査費用や準備内容、アフターフォローについても解説

動物病院では、大切なペットの健康状態を正確に把握するため、さまざまな検査機器が使われています。

レントゲンや超音波検査に加え、血液検査機器やペット用CT・MRIを備える病院も増えています。それぞれの検査の目的や費用を知りたいと感じる飼い主も多いでしょう。

飼い主がこれらの検査機器の役割や目的をあらかじめ知っておくことは、安心して治療を選択するためにも役立ちます。

この記事では、動物病院の主要な検査機器の種類とそれぞれの費用・準備・検査後のフォローについて解説をします。

動物病院にある主な検査機器の種類

子猫を診察している

動物病院では、言葉を話せない動物たちの状態を正確に把握するため、さまざまな検査機器が活躍しています。血液検査機やレントゲン、超音波検査機などは、多くの病院に導入されています。

これらの代表的な医療機器が体の何を見るものなのか、それぞれの特徴や役割について具体的に見ていきましょう。

医療用エックス線装置

医療用エックス線装置は、動物病院で画像による診断を行うための基本的な検査機器です。エックス線を当て体の内部を写し出し、体を傷つけずに状態を調べます。

骨折や関節の様子の確認、心臓の大きさや肺の状態の評価、お腹のなかの誤飲したものや石の発見、いろいろな臓器の大きさや形の変化を見るために広く使われます。

素早く広い範囲を調べられるため初期の全体的なチェックとして役立ちますが、エックス線は安全性の高い管理が必要です。

病院では安全性の高い部屋を設け、スタッフは防護服を着るなど動物と人間の両方の安全が守られています。

超音波画像診断装置

超音波画像診断装置はエコー検査と呼ばれる機械です。

人間ドックなどでも使われるものと同じで耳には聞こえない高い周波数の音を体に当て、臓器などから跳ね返ってくる音の反射を読み取って画像にします。

この検査の利点は動物に痛みを与えず、体のなかの様子を詳しく見られることです。

超音波検査はお腹のなかの肝臓、腎臓、腸、膀胱といったやわらかい臓器の内部の構造や小さな変化を見つけます。

また、心臓が正しく動いているかをリアルタイムの動画として観察したり妊娠しているかお腹の赤ちゃんの様子を確認したりするためにも使われます。

理学診療用器具

猫に注射をするところ

理学診療用器具とは、動物の健康状態を調べる際に使う基本的な検査道具のことです。

高価な機械を使う前に、まずこれらの器具と五感を使って体に異常がないかを丁寧に調べます。

代表的なものに聴診器があり、これで心臓の音のリズムや肺の呼吸の音、腸が動く音などを聞くことができます。

そのほかにも、体温を測る体温計や耳の中を照らして鼓膜まで観察する耳鏡、検眼鏡などが一般的な理学診療用器具です。

これらを使って集めた情報は病気の診断や、次に血液検査やレントゲン検査のようなより詳しい検査に進むかどうかの判断に役立てられます。

内視鏡

内視鏡は先端に高性能な小型カメラが取り付けられた細い管です。胃カメラと同様に、お口や肛門から挿入して食道・胃・腸などの消化管の内部を直接モニター画面に映し出して観察します。

この検査によりレントゲンや超音波検査では分かりにくい消化管の粘膜の荒れや色の変化、腫れなどを詳しく調べることが可能です。

観察するだけでなく間違って飲み込んでしまったおもちゃや骨などの異物を見つけ、そのまま鉗子という道具でつかんで取り出す処置も行います。

開腹手術と比べて、動物の体への負担が少ない点が大きな利点です。ただし、動物が安全に検査を受けられるよう全身麻酔をかけて行う必要があります。

血液検査用器具

血液検査は、言葉を話せない動物の健康状態を詳しく知るために欠かせない検査です。動物病院にはこの検査を院内で迅速に行うための検査機器がそろっています。

代表的なものに血液に含まれる細胞の数を数える血球計数機があり、体を守る白血球や酸素を運ぶ赤血球の数を測定し貧血や体内の炎症の有無を調べるのに役立ちます。

また、血液の液体成分を分析する血液生化学検査機も重要です。この機械で肝臓や腎臓といった内臓が正常に働いているかを示す数値を調べることができます。

血液を高速で回転させて成分を分ける遠心分離機や血液細胞を直接見て形を確かめる顕微鏡なども正確な診断のために欠かせない機器です。

動物病院の検査にかかる費用

犬の置物とお金

動物病院の検査費用は自由診療が基本です。動物には公的な健康保険制度がないため、検査や治療にかかる費用は各病院が独自に設定しています。

同じ血液検査やレントゲン検査でも、病院によって金額が異なるため、動物病院のWebサイトで料金表を確認するか電話で直接問い合わせましょう。

費用負担を軽減するためには民間のペット保険の利用も選択肢の一つです。検査を受ける前には、獣医師からおおよその費用見積もりを提示してもらい内容についてしっかりと説明を受けましょう。

特に複数の検査が提案された場合には、それぞれの必要性や優先順位を確認し、納得のうえで検査に進むことが大切です。

検査の目的や内容によっては、同じ費用でも得られる情報量が大きく変わることがあります。不明点がある場合は、遠慮せずに獣医師へ質問したうえで進めましょう。

安全に検査を行うために動物病院が行っていること

猫の診察

動物病院での検査は動物たちの健康を守るために欠かせません。しかし、慣れない環境や検査自体が動物にとって大きなストレスや不安を与えることも少なくありません。

検査は動物の命に関わる重要な判断材料となるため、病院では機器の点検や衛生管理も徹底しています。

スタッフ全員が安全基準を理解し、常に清潔で落ち着いた環境を維持することで動物が安心して検査を受けられる体制を整えています。

健康状態や年齢に合わせた検査内容を選択する

動物病院では安全な検査のため、動物一匹ごとの状態に合わせて検査内容の選択を慎重に行います。若くて元気な動物とシニア期の動物では推奨される検査内容が異なるのが通常です。

シニア期に入ると、年齢とともにリスクが高まる心臓病や腎臓病、腫瘍などの早期発見を目指し血液検査の項目を増やしたりレントゲンや超音波検査を加えたりするケースがみられます。

また、元気がなかったり食欲が落ちたりといった具体的な症状がある際はその原因を探るために必要な検査を優先的に実施するでしょう。

年齢や現在の健康状態、過去の病歴などを総合的に判断し、飼い主に検査の選択肢を説明したうえでペットに負担の少ない検査計画を立てることが自然の流れです。

必要に応じて麻酔を使用してから検査する

動物が検査中に動いてしまうと正確な結果が得られなかったり、ケガをしたりする危険があります。

特に精密検査では、動物がじっとしていることが不可欠です。動物病院ではストレスや不安を和らげ、正確に検査を行うために必要に応じて鎮静剤や麻酔薬を使います。

麻酔の前には健康状態をチェックし、検査中も心拍数や呼吸などを厳重に監視するなど安全に細心の注意を払うことが病院の重要な役割です。

動物病院で検査を行う前の準備

猫をゲージに入れる

動物病院での検査は、大切な家族であるペットの健康状態を詳しく知るために行われます。しかし、多くの動物にとって病院は慣れない場所であり不安や緊張を感じやすい環境です。

検査がスムーズに進むか、正確な結果が得られるかはペットがどれだけ落ち着いていられるかに左右されることがあります。

こで、飼い主さんが少し準備をしてあげることでペットのストレスを和らげ検査を円滑に進める手助けが可能です。

ここでは病院へ行く前に家庭でできる準備のポイントを解説します。

お気に入りのタオルやおもちゃを持参する

普段から愛用している毛布やおもちゃなどにはペット自身の匂いや家の匂いが染み付いています。

慣れない病院の環境であってもその匂いを嗅ぐことでペットは安心感を得ることができるでしょう。

特に待合室で待っている間や診察台にお気に入りのタオルを敷いてあげるだけでも緊張を和らげる効果が期待できます。キャリーケースのなかにあらかじめ敷いておくのもよい方法です。

ただし病院の衛生管理上、持ち込みが制限される場合もあるため事前に確認しておきましょう。おもちゃが持ち込めなくてもタオル一枚あるだけでペットにとっては心の拠り所です。

リードを付けておく

動物病院の待合室にはほかの動物や飼い主さんもいるので、慣れない場所やほかの動物の存在に興奮したり恐怖を感じたりしてペットが急に走り出そうとすることがあります。

万が一の逃走や、ほかの動物との接触による事故を防ぐためにも病院の敷地内に入ったらリードを装着しましょう。

小型の犬や猫の場合は、リードだけでなくキャリーケースに入れて連れて行くことが動物にとって安全性の高い方法です。

動物病院で検査を行った後のフォロー

犬を可愛がる

動物病院での検査が無事に終わり、ひとまず安心したものの帰宅後にぐったりしている様子を見てどう接したらよいのかと心配になる飼い主さんも多いでしょう。

慣れない環境での検査は、動物にとって大きな負担となることがあります。

この記事では、検査を頑張った動物のために飼い主さんができる検査後の具体的なフォロー方法として休ませ方とご褒美のあげ方のポイントを解説します。

適切なケアで、動物の心と体の疲れをしっかりと癒してあげましょう。

ゆっくりと休める時間を確保する

検査から帰宅した後は動物がくつろげる時間と場所を用意してあげることが大切です。

飼い主さんとしては、無事に終わって安心しつい声をかけたり体を撫でたりしたくなるかもしれません。しかし、動物が静かにしてほしい様子であれば無理に構うのは控えましょう。

検査後は普段よりも体力が消耗していることが多いため、静かな環境で十分に休ませることが回復につながります。

水分補給や体調の変化にも気を配りながら、安心できる空間でゆっくり見守ってあげましょう。

ご褒美をあげる

お皿を舐める犬

ご褒美を与えることは動物とのよい関係づくりに役立ちます。病院での経験が嫌な思い出だけで終わらないようポジティブな印象に変える工夫も大切です。

ただし、ご褒美をあげるタイミングや内容には注意が必要です。検査内容によっては帰宅後すぐに食事を与えてはいけない場合や消化のよいものだけにするよう指示されることがあります。

特に指示がない場合でも検査の緊張や疲れで消化機能が敏感になっていることがあります。ご褒美を与える場合は、普段から食べ慣れているおやつやフードを少量にとどめましょう。

動物病院を受診しやすいように気を付けるポイント

猫を抱く獣医師

ペットの健康を守るため動物病院での定期的なチェックや治療は大切です。普段から少し準備しておくだけでペットの負担を大きく減らすことができます。

病院との関係を良好に保つには診察以外のときにも相談できる雰囲気づくりが大切です。普段から体調の変化や行動の気になる点をメモして伝えることで、より的確な診断につながります。

また、病院のスタッフとのコミュニケーションも不可欠です。ペットの性格や特に怖がることを事前に伝えておくと病院側も配慮しやすくなりペットのストレス軽減につながります。

ここでは移動に必要な道具に慣れさせる方法と、病院に対する恐怖心を和らげる工夫についてわかりやすく解説します。

リードやケージに慣れさせておく

動物病院へ連れていくためにリードやケージは必要なアイテムです。しかし病院に行くときだけ使うと、ケージに入ると嫌な場所へ行くと学習し入ること自体を嫌がるようになることがあります。

そうならないためにも普段からケージを部屋のなかに置き、自由に出入りできる安心できる場所にしておくことが推奨されます。

お気に入りのおもちゃや毛布を入れたり、ケージのなかで食事やおやつを与えたりするのもよい方法です。

まずは扉を開けたままにし、慣れてきたら短時間だけ扉を閉めるなど少しずつステップアップして慣れさせていきましょう。

ペットが動物病院を怖い場所を思わないように気を配る

診察を受ける犬

ペットが動物病院を怖い場所と認識すると受診のたびにストレスがかかります。

原因としては病院特有の匂いやほかの動物の鳴き声、過去の注射や治療の記憶などが要因となることが少なくないでしょう。

恐怖心を和らげるためには、日頃から体のさまざまな場所を優しく触る練習をしておくと病院での診察や処置に対する抵抗感を減らせます。

飼い主さんが不安そうな態度を見せるとペットにも伝わるため、できるだけリラックスして接してあげるとよいでしょう。

まとめ

猫のコースターと聴診器

動物病院での検査は、言葉を話せないペットの健康状態を正確に把握し病気の早期発見と適切な治療につなげるために不可欠です。

血液検査やレントゲン、超音波検査といった基本的な検査機器に加え、高度な医療機器を用いることもあります。

さまざまな検査がある一方で、飼い主にとっては「費用はどれくらいか」「ペットへの負担やストレスはどうか」といった不安は少なくありません。

多くの動物病院では、ペットの状態や症状に応じて必要性や負担を考慮した検査を提案します。

飼い主は検査内容や費用、麻酔の必要性などについて獣医師から十分な説明を受け、不安な点は遠慮なく相談することが大切です。

日頃から小さな変化に気づき、早めに相談することでペットの健康を長く守り続けることができます。獣医師としっかり連携し大切なペットの健康を守っていきましょう。

参考文献