猫の目の色が変わるのはなぜ?疑われる病気や対処法、予防のためのポイントを解説

猫

猫の目の色が変わっていると感じたとき、飼い主として「何が起きているのだろう?」と不安になることはありませんか?

実際に成長過程や遺伝的要因、健康状態の変化が背景にあるため、単なる色の変化にも深い意味が潜んでいます。

特に子猫の頃は青かった目が、大人になると緑や黄に変わったというケースでは、遺伝的に発現した現象か病的な変化かの見極めが必要です。

この記事では、目の色のメカニズムや色が変わる可能性のある要因、そして飼い主として注視すべきサインを専門的知見に基づいて丁寧に解説します。愛猫と向き合いたい方にこそ、知っておいてほしい内容です。

猫の目の色が変わるのはなぜ?

クエスチョンマークの階段

生まれたばかりの子猫では、虹彩に含まれる色素であるメラニンがまだ十分に沈着しておらず、そのため典型的には青みを帯びたキトンブルーに見えることがあるでしょう。

成長に伴ってメラニン色素が徐々に増え、その量や種類、分布が定まることで緑や茶といった最終的な目の色が現れてきます。

さらに目の色は個体が持つ遺伝的な色素の量によって左右され、例えばメラニン色素が多ければ銅色から濃い茶、少なければ明るめの色や青系になる傾向があると報じられています。

そのため、子猫期のブルーから成猫時に別の色に変化するのは、成長や遺伝的決定という要素が作用しているためです。

猫の代表的な目の色の種類

猫の寝顔

代表的な猫の目の色は、猫の虹彩に含まれるメラニン色素の量や光の散乱などによって決まります。

例えばメラニンの量が少ないと青色の目になり、これは子猫期に多く見られるキトンブルー状態と関連します。メラニン量がやや中程度になると緑色系、さらにメラニン量が多めになると黄色といった色味が現れることがあるでしょう。

また虹彩が複数色に見えるヘーゼルや、左右で異なる目の色を持つオッドアイも代表的なパターンとして知られており、白猫に出現しやすいと報告されています。

以上のように、猫の目の色はメラニンの量や光の散乱によって多様に表れています。

猫の目の色の変化から疑われる病気

抱かれている猫のアップ

猫の目の色や輝きは、健康状態を映し出す重要なサインの一つです。普段と異なる色調の変化や濁りが見られるとき、それは個体差ではなく体調不良や目の疾患が隠れている可能性があります。

特に目の透明度や血管の状態、白目や虹彩の色味は、異変をいち早く察知する手がかりです。こうした兆候を見逃さずに早期に気付くためには、日常的に愛猫の目を観察する習慣を持つことが大切です。

ここからは、目の色や見え方にどのような変化が起きたときに注意すべきか具体的な症状ごとに解説します。

眼球が赤くなる

眼球が赤くなるという所見は、眼球やその周辺構造に何らかの病理が生じている可能性を示す重要なサインです。

特に白目の充血だけでなく、虹彩やぶどう膜など眼球内部の血管に変化が起きた場合も、赤く見える事例があります。また白目が赤くなっている際には結膜炎ではなく、眼圧上昇や前房出血、ぶどう膜炎など重篤な病態を含む可能性もあるでしょう。

このため眼球が赤くなっていることを確認したら充血の種類や異物感の有無などを飼い主が記録し、速やかに眼科的精査を受けることが推奨されます。

結膜が赤い

長毛サバトラの猫

結膜が赤くなることは、猫の眼科で頻繁に見られる所見の一つであり、感染性や非感染性いずれの原因でも起こりうる炎症反応である点が重要です。

主に結膜の血管拡張や分泌物の増加などが伴い、片眼発症か両眼発症か、若齢か多頭飼育環境かで原因の優先度が変わります。

代表的な病因としては、猫ヘルペスウイルス1型や猫カリシウイルス、異物やアレルギーによる刺激などが挙げられます。

猫ヘルペスウイルス1型は、潜伏感染と再発の性質を持ち、ストレスや免疫低下で再燃するため慢性化と反復性の結膜炎を引き起こしやすい点が臨床上の重要事項です。

診断は視診に加え、角膜染色で潰瘍の有無を確認し、必要に応じて細胞診や眼圧測定などで併存病変を確認します。

治療は原因に応じて局所抗菌薬や抗ウイルス薬、場合によっては全身療法を組み合わせるのが基本です。また、伝播性がある病原体では隔離と衛生管理が重要です。

眼球が白く濁る

猫の眼球が白く濁る状態は角膜や水晶体、硝子体など本来透明であるべき眼内構造に混濁が生じることで起こります。

角膜の浮腫や瘢痕、潰瘍によって前部が白く見える場合や、水晶体の蛋白変性による白内障では瞳孔内に白斑が現れることもあるでしょう。

国内の獣医眼科学資料によれば、猫では白内障の発症は犬や人に比べて稀であり外傷や炎症、代謝異常などに続発するケースがあると報告されています。

混濁の部位や範囲に応じて原因や治療方針が異なるため、白く濁りが見られた場合は速やかに専門獣医師による検査と診断を受けることが重要です。

白目が黄色く濁る

白目が黄色くなるのは、血中に蓄積した色素が粘膜や皮膚に沈着する黄疸の典型的なサインです。

猫では、赤血球破壊が亢進する前肝性黄疸や肝臓の機能低下による肝性黄疸、および胆管の閉塞などによる後肝性黄疸のいずれかが原因となることがあります。

こうした黄染が見られた場合、放置すると根本にある疾患が進行し、全身状態の悪化や命に関わるリスクを伴うため速やかな獣医師による総合検査が推奨されます。

このように白目が黄色く濁るという所見は、猫において眼科的な症状だけではなく、全身的な重大疾患のサインである可能性が高いでしょう。そのため早期に動物病院を受診する必要がある重要な疾患といえます。

眼球が緑色に見える

猫_リラックス

猫の眼球が緑色に見える場合、多くは角膜の浮腫や眼圧上昇によって光の屈折が変化し、瞳や眼球全体が緑がかって見える状態です。主な原因としては、房水の排出障害により眼圧が上昇する緑内障が挙げられます。

国内の獣医情報によると、緑内障では眼圧が30mmHgを超えることもあり、角膜浮腫や視神経障害を伴うことがあるとされています。こうした変化は放置すると失明に至るおそれがあり、早期の眼圧測定と治療が不可欠です。

黒くなる

猫の目が黒くなる主な要因としてびまん性虹彩メラノーマが、虹彩や眼球内部における色素沈着および腫瘍化の一形態として認められており、これにより目が黒く見える変化が外観として出現することがあります。

また別の疾患として角膜黒色壊死症が挙げられ、特にペルシャやヒマラヤン系で多く認められています。

そのため目が黒くなるという異変を観察した際には、角膜表面の重大な異常の可能性を含め、早期に獣医師による検査を受けるべきサインとしてとらえることが重要です。

目の色の変化のほかに観察したい目の症状

動物病院で獣医師に診察を受ける猫と飼い主

猫の目の色が変わるときはその変化だけでなく、ほかの目の異常サインにも注意を向ける必要があります。

特に涙の量や光に対する反応、まばたきの頻度などの微細な変化は、目の不調を早期に示す手がかりです。さらに猫がしきりに目を気にしたり、こすろうとしたりする行動を見せる場合は、痛みやかゆみが関係している可能性もあります。

こうした行動や分泌物の増加は、角膜や結膜の炎症、あるいは感染症の初期段階で現れることがあるため見過ごさない観察が重要です。

目の色変化とあわせてこれらの兆候を記録することで、診察時に正確な経過を伝えやすくなります。

涙が増える

涙が増える状態は、通常の涙膜や涙管からの排出機構が何らかの原因で破綻しているか、あるいは刺激や炎症によって涙液産生が亢進していることを示します。

流涙が著しい場合は涙液の流出による目周囲の皮膚湿潤や色素沈着のリスクがあるため、症状継続時には専門獣医師による眼部と涙道の検査を推奨します。

そのため猫の目の観察時には、涙のあふれ方や目尻近くの湿潤、鼻側の毛の変化などと併せて早期に眼科診察を受けることが望ましいでしょう。

光への反応の変化

猫_リラックス

光への反応が変わることは、角膜や結膜の表面疾患、ぶどう膜炎などの前眼部疾患だけでなく網膜や中枢神経の障害でも生じえる重要なサインです。

対光反射は網膜から動眼神経という経路で起こるため、この経路のいずれかに異常があれば瞳孔の縮小不良や左右差が観察されます。

早期に原因を特定することが視機能温存につながるため、こうした変化を見かけたら獣医眼科での評価が必要です。

目をこすろうとする

猫が目をこする行動は、癖ではなく目の健康に影響を及ぼす重要なサインです。爪や手足によるこすりで角膜上皮に傷がつくと赤みや痛み、涙の増加が起こりやすくなります。

また、結膜が刺激され炎症を起こすことで赤く腫れ、目やにの増加や目周囲の皮膚炎を併発することもあります。

こうした症状は角膜異物や感染症、アレルギーなど根本的な原因が背景にある場合があるため、頻繁に目をこする様子が見られたら早期に獣医師による診察を受けて原因を特定することが重要です。

目を細める

猫が目を細める行動は、目の痛みや刺激に対する防御反応として現れる重要なサインです。角膜炎や角膜潰瘍では角膜の損傷や炎症によって痛みが生じ、猫は無意識にまぶたをすぼめて目を守ろうとします。

また、眼瞼内反のようにまぶたやまつ毛が角膜を刺激する場合も、同様の行動が見られます。

こうした症状は角膜や眼表面の異常を示すことが多く、症状が持続する場合には角膜染色や眼圧測定などの検査を行い、獣医師による早期診断と適切な治療を受けることが重要です。

目やにが増える

目やにが増えるのは感染やアレルギー、角膜潰瘍や結膜炎などの多様な病態で起こりうる重要な所見です。観察時には色や粘度、片目か両目かを確認すると、原因のあたりをつけやすくなります。

診断ではフルオレセイン染色や結膜擦過による細胞診や培養、PCRによる病原体同定などを組み合わせて原因を特定し、治療はその結果に基づいて局所抗菌薬や抗ウイルス薬、必要時は全身療法を行います。

また黄色から緑色の膿様分泌物や角膜混濁、頻回のこすり行動や痛みの訴えがある場合は重症化の可能性が高く、速やかな獣医受診が必要です。

猫の目の色が変わったときの対処法

家でエリザベスカラーをつけた猫

成長期を過ぎた成猫で虹彩や眼球の色に変化が見られた場合、まず早期に動物病院などの専門機関の受診をおすすめします。

色の変化は良性の個体差ではなく、眼内出血やぶどう膜炎、緑内障などの重大な眼科疾患を示している可能性があります。診察時には色が変わった日や左右どちらの目かを記録しておくと、獣医師による診断がスムーズになるでしょう。

受診時には、スリットランプ検査や超音波検査などが必要となるため、眼科の専門の医師への紹介も選択肢の一つです。変化が見られたら放置せずに記録を残して専門家に迅速に相談することが、猫の視機能と生活の質を守るために重要です。

猫の目の病気を予防する方法

ペットの子猫と若い女性

猫の目の健康を保つためには、病気の早期発見と予防的ケアの両立が欠かせません。

目の異常は進行が早く、放置すると視力の低下や失明につながることもあります。そのため、日常のなかで小さな変化を見逃さず、普段から観察とケアを習慣化することが大切です。

特に、年齢や体質によってリスクが異なるため、成猫やシニア猫ではより丁寧なチェックが求められます。次に紹介する方法を参考に、家庭でできる予防の取り組みを確認していきましょう。

定期的に目の健康チェックを行う

猫の目の病気を防ぐには、日常観察と定期的な専門検査を両立させることが肝心です。

まず普段から色や光への反応、涙や目やにの有無などを記録し、異変があれば日時や併発症状をメモして獣医に伝えましょう。

定期検査では涙液量のシルマー試験や眼圧測定、眼底検査などで基準値を把握しておくと、後で比較して早期発見につながります。

特に高齢猫や既往のある猫は年1回〜年2回の眼科チェックを検討し、必要に応じて眼科の専門の医師への紹介を受けるとよいでしょう。

目のケアを毎日行う

毎日の目のケアは、愛猫の視機能を守るうえで重要な習慣です。まず、起床直後や就寝前など定期的なタイミングで目やにや涙の跡、目尻の湿りなどを確認します。

特に、乾いた茶色や黒っぽい目やにが目立つ場合は、濡らした清潔なコットンやガーゼで目頭から目尻に向かってやさしく拭き取りましょう。無理に剥がそうとせず、目の表面を傷つけない配慮が必要です。

ケア時には充血や左右差、光のまぶしさなどの異変サインを意識して、続く症状があれば速やかに獣医師へ相談することが望まれます。定期的な軽い清掃と日常的な観察は、眼疾患の早期発見と進行抑制につながる大きな要素です。

まとめ

診察を受ける猫

猫の目の色や目の健康は、飼い主が日常で気付きにくい変化のサインを示すことがあります。

色の変化や涙、光への反応の異常などは眼病の兆候である可能性があり、放置すると視力低下や生活の質の低下につながることもあります。

本記事では、こうした変化の原因や代表的な目の色や観察すべき症状、日常でできるケアや予防策を解説しました。

日々の観察と定期的な専門診察を組み合わせることで、猫の健康と快適な生活を支えることが可能です。

参考文献