大切な動物が泌尿器系の病気になったとき、どの動物病院でも診察してくれるか、不安になることはありませんか。
動物は人間のように、自分で痛かったり苦しかったりする部位や症状を訴えることができません。
本記事では、動物病院の泌尿器科で診察・治療が可能な泌尿器疾患や症状を詳しく解説します。本記事を読むことによって、動物が急な病気にかかった場合でも落ち着いて行動できるでしょう。
大切な動物と暮らしている方は、ぜひ一度本記事を読んでみてはいかがでしょうか。
動物病院で診療している泌尿器疾患について
- 動物病院で診療している泌尿器疾患を教えてください。
- 動物病院で診療している泌尿器疾患は、以下のとおりです。
- 細菌性膀胱炎
- 特発性膀胱炎
- 尿管結石
- 膀胱結石
- 慢性腎臓病
- 子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は、正確には泌尿器科ではなく生殖器科疾患です。しかし解剖学上泌尿器と隣り合わせにある臓器のため、今回取り上げています。2022年の調査によると、猫の泌尿器疾患による死亡率は29.8%で、死亡原因の1位です。泌尿器疾患による犬の死亡率は15.2%で、死亡原因は腫瘍・循環器に次いで3位に入っています。
ただし犬は、犬種の特性や飼育環境の違いによって、かかりやすい疾患や高い死亡原因が異なります。泌尿器疾患にかかりやすく、死亡原因の順位が高い傾向にある犬種は、以下のとおりです。- トイ・プードル
- ヨークシャー・テリア
上記の犬を飼っている方は特に、泌尿器疾患にかかりやすいことを理解し、日々の生活に気をつけましょう。
- 犬や猫の泌尿器疾患の治療はどの動物病院でもできますか?
- 犬や猫がかかりやすい泌尿器疾患の治療が可能な動物病院は、少なくありません。しかし、症状や医療設備によっては、治療が難しい場合があります。
獣医師は、代表的なペットである犬や猫だけではなく、さまざまな動物についての知識を大学で身につけるのが基本です。動物によって身体のつくりや状況が異なるため、幅広い知識が求められます。しかし治療・ケア・動物との向き合い方などを学んだうえで、獣医師免許を取得する獣医師にも、自分の得意な分野が人によって異なることでしょう。なかには、犬・猫などの動物や症状を限定して診療を行っている動物病院もあります。動物や症状・治療などを限定することによって、より適切な診療を行うことが可能になるためです。
受診に迷ったら、まずは動物病院で診療可能かどうかを確認しましょう。もし対応できなくても、対応可能な動物病院へ紹介してくれる場合があります。
- 動物病院ではどのような検査を行いますか?
- 疑われる疾患によって、検査内容は異なります。慢性腎臓病や猫下部尿路疾患を疑う場合に行われる検査は、以下のとおりです。
- 尿検査
- 血液検査
膀胱結石は、食事・体質・既往歴が原因に関わっていて、結石の種類によって治療方針が異なります。結石の種類は、以下のとおりです。
- ストラバイト
- シュウ酸カルシウム
- 尿酸アンモニウム
結石の種類を確認するために、検査は重要です。ストラバイトは、療法食により溶解できる可能性がある結石です。しかし、シュウ酸カルシウムの場合は、手術で結石を取り除く必要があります。尿酸アンモニウムの場合は、犬種や疾患によりかかりやすいとされているため、まずは基礎疾患の治療を適切に行い、日常生活にも注意が必要です。膀胱結石・尿管結石が疑われる場合に行われる検査は、以下のとおりです。
- エコー検査
- レントゲン検査
- 尿検査
- 血液検査
子宮蓄膿症が疑われる場合の検査は、以下のとおりです。
- 血液検査
- エコー検査
動物病院によって検査内容が異なる場合があります。検査を受ける前に、獣医師からの説明をしっかりと確認しましょう。検査や治療後の注意事項がある場合があります。大切な動物を守るために、不安・疑問点は動物病院で相談しましょう。
泌尿器疾患の症状
- 泌尿器疾患が疑われる症状や、受診の目安を教えてください。
- 動物に普段と異なる様子や気になる症状がある場合は、早めに動物病院を受診し、相談しましょう。飼い主さんが考えるよりも、何らかの症状がある場合、動物にはストレスがかかっていることがあります。疑われる疾患ごとに、症状を解説します。慢性腎臓病の症状は以下のとおりです。
- 初期:無症状・尿の色が薄い・多飲多尿
- 症状の進行後:食欲の低下や嘔吐
慢性腎臓病は高齢の猫がかかりやすいく、完治が難しい疾患です。失われた腎機能を回復させることができないため、慢性腎臓病自体の治療はできないことになります。慢性腎臓病にかかった場合、腎不全への進行を抑え、症状を緩和させる対症療法を行います。
初期症状は、症状がない・尿の色が薄いため、飼い主さんが気付きにくい場合があります。少しでも気になる症状がある場合は、動物病院を受診しましょう。膀胱炎は、犬と猫で原因が異なります。- 犬:細菌感染による膀胱炎
- 猫:原因特定が難しいとされている特発性膀胱炎
膀胱炎の症状は以下のとおりです。
- 頻尿
- 尿があまり出ない
- 血尿
- ぐったりしている
- 嘔吐
尿がまったく出ずぐったりしている・嘔吐がある場合は、緊急性が高いとされているため、できるかぎり早めに受診しましょう。膀胱結石の症状は、以下のとおりです。
- 血尿
- 頻尿
- 尿道に結石が閉塞した場合は尿が出なくなる
尿がほとんど出ていない・まったく出ていない場合は、体調が急変する可能性があるため、できる限り早めに受診しましょう。尿管結石の症状は、以下のとおりです。
- 普段よりも元気がない
- 食欲がない
- 嘔吐
尿管結石は、年齢に関係なくかかる疾患です。初めて尿管結石にかかる・片側の尿管のみ結石が閉塞する場合は、症状がわかりにくいとされています。しかし尿管の閉塞が続くと、慢性腎不全を引き起こす恐れがあるため、緊急治療が必要となる場合が少なくありません。
子宮蓄膿症は、子宮内に膿が溜まり、進行すると全身状態が著しく悪化し敗血症に至る疾患です。症状は以下のとおりです。- 普段よりも元気がない
- 食欲の低下
- 下痢
- 嘔吐
- 膣から膿が出る
進行すると死に至る恐れがあるため、できる限り早めに動物病院を受診しましょう。飼い主さんが、少しでも普段と異なる動物の様子を感じたら、動物病院の受診をおすすめします。
- 犬がかかりやすい泌尿器疾患にはどのようなものがありますか?
- 犬がかかりやすい泌尿器疾患は、以下のとおりです。
- 細菌性膀胱炎
- 膀胱結石
- 尿管結石
- 子宮蓄膿症
犬種や飼育環境によって、かかりやすい泌尿器疾患が異なる場合があります。
- 猫がかかりやすい泌尿器疾患にはどのようなものがありますか?
- 猫がかかりやすい泌尿器疾患は、以下のとおりです。
- 慢性腎臓病
- 特発性膀胱炎
- 膀胱結石
- 尿管結石
- 子宮蓄膿症
飼育環境・食事・運動不足・ストレス・加齢などの原因によって、かかりやすい泌尿器疾患が異なります。
泌尿器疾患の予防方法や再発予防
- 犬や猫の泌尿器疾患を予防する方法を教えてください。
- 泌尿器疾患によって予防方法が異なります。適切な生活環境を整えることで、泌尿器疾患の予防につながることが少なくありません。膀胱結石や特発性膀胱炎の予防方法は、以下のとおりです。
- 食事を療法食にする
- 適切な食事管理を行う
- おやつを与えすぎない
- 体質に合わない食べ物は与えない
- 水分をしっかりと摂る
- 安心しておしっこができるトイレ環境を整備する
療法食は症状に合わせて作られているため、健康状態に合わせて選ぶことが重要です。どのような療法食を選んだらよいか、獣医師に相談しましょう。膀胱に細菌が侵入することで感染する細菌性膀胱炎の予防方法は、以下のとおりです。
- 清潔な水を与える
- トイレを清潔に保つ
- 猫に合う猫砂に変える
- 猫砂の量を増やし、トイレのそこが見えないようにする
子宮内膜症は子宮内に膿が溜まる疾患のため、治療では手術で子宮・卵巣の摘出を行います。赤ちゃんを望まない場合は、避妊手術を行うことで予防となるため、検討してみてはいかがでしょうか。慢性腎臓病は、年齢とともにかかりやすくなる疾患で、適切な予防方法はありません。しかし、年に1~2回定期的に健康診断を受けることで、疾患を早期発見する可能性が高くなります。健康な場合でも、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
飼い主さんが気付かない症状や疾患を、動物病院の健康診断で発見することがあります。動物は人間よりも短命です。少しでも長く飼い主さんと動物が一緒に過ごすために、健康診断は重要です。
- 再発予防のために定期的に受診するべきですか?
- 再発予防のためには定期的な受診が重要です。疾患が治ったように見えても経過観察が必要な場合もあるため、自己判断しないようにしましょう。尿管結石や膀胱結石は、療法食で再発予防が可能です。獣医師の指示がある場合、療法食を適切に与えるようにしましょう。定期的に動物病院を通院し、適切な診療や健康診断を受けましょう。
編集部まとめ
犬や猫は、種類や飼育環境によってかかりやすい疾患が異なります。泌尿器疾患は死に至る場合もあるため、早期発見・治療が重要です。
基本的には、泌尿器疾患を検査・治療をできる動物病院は少なくありません。しかし、獣医師の経験・知識や医療設備によっては、動物が苦しんでいる疾患に対応できない可能性があります。
受診の前には、気になる症状を動物病院で相談してみましょう。また、泌尿器疾患は、再発予防ができる場合があります。大切な動物のために、再発予防を適切に行いましょう。
そのうえで、動物病院を定期的に受診したり、健康診断を受けたりするのが重要です。
参考文献