犬のバベシア症とは?症状や原因、治療法などを解説

犬のバベシア症とは?症状や原因、治療法などを解説

犬のバベシア症は、マダニが媒介する寄生虫感染症で、重篤な貧血症状や発熱、食欲不振などさまざまな症状を引き起こします。バベシア症は、症状が悪化すると死に至る可能性もある恐ろしい病気です。この記事では、犬のバベシア症の原因、症状、治療方法、そして予防策を詳しく解説します。飼い主として、愛犬を危険な病気から守るために必要な知識を身につけましょう。

犬のバベシア症とは

犬のバベシア症とは

バベシア症は、バベシア属の原虫によって引き起こされる病気で、主にマダニを介して感染します。犬がマダニに刺されることで原虫が体内に入り、赤血球に寄生して破壊を引き起こします。バベシア症に感染すると、免疫反応により赤血球が破壊され、重度の貧血や高熱の症状が現れます。適切な治療が行われなければ生命に危険を及ぼすこともある病気です。

バベシア原虫にはいくつかの種類があり、日本ではBabesia canisとBabesia gibsoniの2種類が確認されています。Babesia canisは沖縄などの限られた地方で発生しているのに対し、Babesia gibsoniは西日本を中心として日本各地に分布しているのが特徴です。

バベシア症の原因

バベシア症の主な原因は、感染したマダニに刺されることです。

マダニはバベシア原虫を体内に持っており吸血時に宿主に伝播させます。特に湿度が高くて草木が生い茂る場所、家庭の庭などでマダニは活発になります。このような場所で過ごしている時間が長くなると注意が必要です。

日本国内では、特に西日本に棲息するマダニがバベシア原虫を保有していると推測されています。しかし、地球温暖化の影響によって暖かい場所を好むマダニやノミが全国に広がりつつあります。

バベシア症は基本的に犬同士の接触によっても感染することはありません。しかし、噛みつくことで感染したり、母子感染はあるため注意しましょう。また、春から秋にかけてマダニは活発になるので、この時期は特に注意が必要です。マダニは野生動物に付着することもあるため、犬が野生動物と接触する可能性のある場所での散歩にも注意しましょう。

また、感染した犬の血液がほかの犬の体内に入るとバベシア原虫が広がってしまうため、輸血を行う際には厳重な検査が必要になります。

バベシア症の症状

バベシア症は、感染してから2〜3週間後に症状が現れ始めます。バベシア症の症状は多岐にわたり、感染の進行状況や健康状態によって異なりますが、特徴的な症状のひとつに貧血があります。

バベシア原虫が赤血球を破壊することが原因となっています。さらに、急激な発熱や食欲不振が見られ、体重が減少してしまいます。疲労感も強くなるため、いつもより元気がなく、散歩に行くのを嫌がるなどの様子が見られます。さらに症状が進行すると、皮膚や目の白い部分が黄色く見える黄疸や呼吸困難を発症して、命に危険が及ぶこともあります。

バベシア症にかかったときのリスク

バベシア症にかかると赤血球を破壊されて重度の貧血が生じます。

貧血が進行すると体内の酸素供給が不足して、臓器機能に影響を与えてしまいます。また、バベシア症により免疫力も低下しますので、ほかの感染症にかかりやすくなったり、肝臓や腎臓などの内臓にダメージが蓄積してしまいます。

特に免疫力の弱い子犬や老犬は、重症化しやすい傾向があるため注意が必要です。母犬がバベシア症にかかっていると、胎盤を経由して子犬に感染する経胎盤感染も報告されています。

犬がバベシア症かどうか確認する方法

犬がバベシア症かどうか確認する方法

愛犬をバベシア症から守るためには、異常を早期に発見して治療を行うことが大切です。飼い主が初期症状を理解して、バベシア症が疑われる場合は早めに動物病院で診断を受けさせることで、重症化を防げることもあります。

飼い主が確認できる初期症状

バベシア症に感染すると以下のような初期症状が現れます。

  • 元気がなくなり寝ている時間が増える
  • 食事に興味がなさそう
  • 食べる量が減っている
  • 食欲不振が続くことで体重が減少する
  • 頻繁に水を飲む

バベシア症の初期症状は、ほかの病気と似ているため鑑別が難しいです。これらの初期症状以外にも、尿の色が濃く赤みを帯びている、歯茎や目の粘膜が白っぽくなるなど、目視で観察できる異常も出てきます。犬の行動や見た目にも変化がないか注意深く観察しましょう。

動物病院で診断を受ける

動物病院では、血液検査や顕微鏡検査を通じてバベシア症の診断が行われます。

血液検査では、赤血球の数や形状の異常、バベシア原虫の存在を確認することができます。さらに、PCR検査を用いることで、バベシア原虫の遺伝子を特定することも可能です。動物病院を受診し、バベシア症と診断が確定すれば、適切な計画を立てて治療を開始できます。重症化する前に治療を開始することで、回復の可能性も高まります。早期発見が治療の鍵となるため、定期的な健康チェックを行いましょう。

犬のバベシア症の治療方法

犬のバベシア症の治療方法

バベシア症の治療は、感染の重症度や犬の健康状態によって異なります。一般的には投薬による治療と、症状を緩和するためのサポートが行われます。

投薬による治療

バベシア原虫感染の拡大を防ぐために、アトバコンやアジスロマイシンなどの抗寄生虫薬や抗生物質を用いて治療を行います。治療は数週間にわたって行われ、定期的な血液検査を通じて治療効果を確認します。

薬剤によっては発疹や嘔吐、下痢などの副作用が現れることもあるため、獣医師の指示に従い、注意深く観察することが重要です。薬剤耐性が生じた場合は再発するケースもあります。獣医師の判断に基づいて薬剤治療を進めていきますが、適切に治療を行っても体内から完全に駆虫することは難しく、生涯にわたって再発を警戒しておく必要があります。

症状緩和のための治療

バベシア症の症状を緩和するための治療も並行して行います。

重度の貧血がある場合は、輸血を行い赤血球の数を増やすことで酸素供給を改善します。食欲不振により脱水症状や栄養不足が見られる場合は、点滴で体内の水分と栄養バランスを保ちます。炎症や痛みが強いときは、抗炎症薬や鎮痛剤を使用して症状を緩和します。

治療期間中は免疫力が低下しており、ほかの感染症にかかりやすい状態になっています。犬の体調を綿密に観察し、異常があればすぐに獣医師に相談しましょう。

バベシア症の再発と長期的な健康管理

バベシア症の再発と長期的な健康管理

バベシア症は、一度感染してしまうと完治することはありません。症状がなくなったとしても、バベシア原虫を体内に保持したままになるケースがほとんどです。免疫力の低下やストレス、ほかの感染症による体力低下などが原因で再発することがあるため、長期的な健康管理が欠かせません。動物病院による定期的な診察も再発を防ぐために有効です。

 健康観察を続ける

バベシア症から回復した後も、犬の健康状態を継続的に観察することが重要です。

元気がなくて食欲もない、体重が減少するなどの変化に気付いたときは、すぐに獣医師に相談しましょう。飼い主ができる健康観察方法として、犬の体温や呼吸数、心拍数などの測定があります。データを記録しておくことで異常を発見しやすくなります。

定期的に診察を受けて状態を確認する

愛犬の健康を守るために動物病院で定期的に診察を受けましょう。

血液検査ではバベシア原虫の有無の確認ができます。定期的な予防接種と寄生虫予防を行うことで、バベシア症の再発兆候を発見して、ほかの病気や寄生虫感染のリスクを軽減できます。中齢期の6歳頃までは、年に1回程度を目安に定期検診を受けましょう。それ以上の年齢になると、バベシア症だけでなくほかの感染症や病気のリスクも上がるため、半年ごとの検査が推奨されます。

子犬の頃からかかりつけの動物病院を作ることで、異常にいち早く気が付き早期に治療を開始できます。動物病院によっては、健康診断の内容がセット価格になっている場合もあるため、一度相談してみるのがおすすめです。

犬をバベシア症から守るためには

犬をバベシア症から守るためには

バベシア症の予防には、日常的なケアと環境管理が重要です。以下の方法で愛犬をバベシア症から守りましょう。

マダニとノミの駆除を行う

バベシア症の対策は、マダニとノミの駆除が大切です。犬の体に寄生虫が付かないよう、定期的にマダニとノミの駆除剤を使用しましょう。散歩やアウトドアなど屋外での活動をした後には、犬の身体にマダニやノミが付いていないか目視のチェックも有効です。

マダニの特徴と除去方法は、

  • 約1~10mmと大きくて目視で確認できる
  • 足が8本ありクモのような見た目をしている
  • 見つけても無理に取り除くのはNG
  • 動物病院に連れていき除去してもらう

マダニは、口下片と呼ばれる突起物を犬の皮膚に刺して血を吸っています。そのため、無理に引っ張って取ろうとすると、口下片が皮膚のなかに残ってしまい、化膿や炎症の原因になってしまいます。

マダニの体液は感染症を引き起こすリスクがあるため、かみついているマダニをつぶすのも避けましょう。マダニが吸血すると皮膚が膨れ上がって、小さなしこりのようなものができてしまいます。犬の身体を優しくなでて、異常がないかチェックしましょう。特に耳や首、足の付け根などは寄生虫が好む場所ですので重点的に確認してください。

春から秋にかけてはこれらの寄生虫の活動が活発になる時期ですので、予防薬を定期的に投与することもポイントです。加えて、庭や犬が頻繁に遊ぶエリアのお手入れもマダニの生息を防ぐ効果があります。例えば、庭の草木を定期的に刈り取ることでマダニの繁殖を抑制できます。

一方でノミの特徴と寄生しているかの確認方法は、

  • とても小さく素早いので目で見つけるのは困難
  • 被毛に黒いぶつぶつやフケのようなものがないかチェック
  • 被毛が禿げている部分がないか
  • 発疹やかさぶたがないか

犬が過剰に身体をかきむしったり、かんだりしている場合は、ノミに刺されたことによりかゆみが発生しているのかもしれません。ノミは水に弱いため、専用のシャンプーを使用することでノミを駆除できることもあります。

ノミやマダニは、バベシア症だけでなく、ほかの感染症の原因になることもあります。これらの寄生虫の発生が疑われるときには動物病院を受診し、適切に駆除することが大切です。

清潔な環境をキープする

寄生虫の発生を防ぐためには、犬が生活する環境を清潔に保つことも大切です。

犬が過ごす部屋や寝床を掃除しホコリや汚れを取り除きます。特にカーペットやソファーなど寄生虫が潜り込みやすい場所は重点的に掃除しましょう。おもちゃにも寄生虫が発生する場合があります。定期的に洗浄、消毒を行い、清潔な環境を保つことで寄生虫の発生リスクを軽減できます。

犬にマダニやノミが付いてからバベシア症に感染するまでは、36〜48時間程かかるといわれています。そのため、定期的なブラッシングやシャンプーを行い、犬の被毛を清潔に保つことも寄生虫予防には効果的です。特に、山や草原に遊びに行った後は入念に身体をチェックし、吸血する前にこれらの寄生虫を取り除けば、バベシア症に感染するリスクを下げることができます。

まとめ

犬のバベシア症は、適切な予防と早期発見が鍵となります。バベシア症を防ぐためには、飼い主として、日常的なケアと定期的な健康チェック、マダニやノミの駆除を怠らないことが大切です。犬の体調に異変を感じたときには、早めに獣医師による診断を受け、適切な治療を開始しましょう。バベシア症のリスクを抑え、早期の治療を開始するには定期的な検診も重要です。犬の健康管理をしっかりと行い、愛犬の健康を守りましょう。

参考文献