犬の咳やいびき、息が荒いといった小さな変化は、放っておくと生活の質に影響します。まずは落ち着いて、いつから、どのような場面で起きるかをメモしましょう。本記事では、呼吸器に詳しい動物病院での受診の進め方をやさしく整理します。受診の目安、検査から治療までの流れ、伝え方のコツを知り、愛犬愛猫の呼吸を少しでも楽にする第一歩を、今できることからいっしょに踏み出しましょう。
呼吸器専門の動物病院の特徴

呼吸器に詳しい診療体制を備えた動物病院の探し方と、診療の特色・受診時のポイントをつかみます。
- 呼吸器専門の動物病院とはどのような施設ですか?
- 呼吸器専門の動物病院は、咳やいびき、呼吸困難などの診療に特化した診療体制を整えた施設です。内科と外科が連携し、胸部レントゲンや超音波、内視鏡(気管支鏡)、CT、酸素室、気道の機能評価機器などをそろえ、問診と身体検査を起点に原因部位を絞り込みます。紹介状が必要な場合や、予約制を基本とすることが多く、急な悪化時は救急対応の可否を事前に確認します。犬猫それぞれの体格や品種の違いにも配慮があり、検査は無理のない順序で進行。診断結果をもとに、治療方針や日常で気をつけたい点、再受診のタイミングまで、ていねいに説明されます。
- 一般的な動物病院との違いを教えてください
- 一般的な動物病院は、幅広い症状を一次診療で受け止め、必要に応じて検査や治療を施しながらほかの科や二次施設へ紹介します。呼吸器専門は、呼吸の異常に焦点を当て、問診で発症時期や誘因、音の種類を細かく整理し、画像検査や内視鏡、酸素管理、機能評価を組み合わせて原因部位を早く絞り込みます。気道確保や鎮静の基準が整い、短頭種や高齢の子にも負担を抑えた検査手順を組み立て、在宅ケアや再診計画まで一貫して伴走します。一般外来では設備や人員に限りがあり、麻酔下検査や入院の体制が常時整わない場合があります。専門では、内科外科の合同カンファレンスで方針を共有し、紹介元との連携記録も詳細です。
呼吸器専門の動物病院で診る主な疾患
犬猫でよく見られる呼吸器疾患のタイプと特徴をつかみ、受診時の診断に役立てます。初期対応の考え方も確認します。
- 呼吸器専門の動物病院ではどのような病気を診療していますか?
- 呼吸器専門では、鼻から肺・胸腔までのトラブルを幅広く診ます。鼻炎や副鼻腔炎、咽喉頭の炎症や喉頭麻痺、短頭種気道症候群。気管虚脱や気管支炎・慢性気管支炎、気管支拡張症。肺炎や誤嚥性肺炎、肺水腫、気胸や胸水、腫瘍なども対象です。猫では気管支ぜんそくも少なくありません。子犬・子猫の感染症、高齢の心疾患に伴う呼吸の悪化、アレルギー体質による咳など、年齢や体質で現れ方は変わります。問診と聴診に画像・内視鏡・機能評価を組み合わせ、原因を特定し、負担の少ない治療と在宅ケアにつなげます。突然のチアノーゼやぐったりした状態は緊急対応を要します。慢性的な咳や運動で悪化する息切れは、計画的に精査していきます。
- 犬と猫で多い呼吸器疾患の違いはありますか?
- 犬では、短頭種気道症候群や気管虚脱、慢性気管支炎、喉頭麻痺、誤嚥性肺炎などが目立ち、運動や興奮で悪化する咳、ゼーゼー音、失神に似たふらつきが手がかりになります。猫では、猫上部気道感染症、猫喘息、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭ポリープ、気管支炎が多く、鼻水、くしゃみ、咳、チアノーゼ、開口呼吸、お腹を大きく動かした呼吸が特徴です。年齢や体格、品種で傾向が分かれるため、観察記録と検査所見を突き合わせて診断を絞ります。猫は環境アレルゲンやストレスで悪化しやすく、犬は肥満や気管支拡張症の併発に注意します。いずれも急な悪化やチアノーゼは緊急受診の判断材料です。夜間や運動後だけ出る変化も受診時に共有すると見立てが進みます。
- 慢性的な呼吸器疾患にも対応しているのか教えてください
- 慢性的な呼吸器疾患にも対応します。慢性気管支炎や気管支ぜんそく、短頭種気道症候群の術後管理、気管虚脱、再発しやすい鼻炎などでは、症状日誌や動画をもとに薬剤と在宅ケアを調整します。吸入療法や環境整備、体重管理、再診の間隔設定、増悪時の連絡基準をあらかじめ共有し、季節や生活の変化に合わせて見直します。安静時呼吸数、咳の回数、運動後の回復時間など客観指標で経過を追い、併発しやすい心疾患や気道感染の鑑別も行います。検査の負担を抑える計画を立て、紹介元との情報共有やセカンドオピニオンにも柔軟に対応します。薬の副作用チェックや吸入器の使い方の練習、予備薬と緊急受診のサインも一緒に確認し、無理のない長期管理につなげます。
呼吸器専門の動物病院を受診すべき症状

呼吸の異変を見極め、受診の目安と緊急度の線引きを共有し、迷いなく次の一歩へつなげていきます。
- どのような症状が見られたら呼吸器専門の動物病院を受診すべきですか?
- 受診を検討する目安は次のとおりです。
・安静時の呼吸数が増え、息が荒くなる状態が続く
・口を開けて呼吸し、首を伸ばして座る姿勢が増える
・乾いた連続する咳、痰が絡む湿った咳が続く
・笛のようなヒューヒュー音やいびきが急に強まる
・飲み込みの後にむせ、声がれが目立つ
・運動後や夜間だけ息切れが悪化し、散歩や階段を避ける
・逆くしゃみに見える発作を繰り返す
さらに次の場合は急ぎ受診します。
・舌や歯茎が紫色に見え、ぐったりしている
・失神に似たふらつきや呼吸困難が突然起る
発症時期や頻度、悪化する場面、環境、使用中の薬、動画記録を持参すると、診断が速く、負担の少ない検査選択につながります。
- 咳や呼吸困難以外にも注意すべき症状はありますか?
- 咳や明らかな呼吸困難がなくても、次のような変化には注意を要します。
・運動を嫌がる、すぐ疲れて横になる
・食欲低下、体重減少、発熱が続く
・口を開けての浅い呼吸が増え、息が長くなる
・声がれ、鳴き声の変化、吠えにくくなる
・飲み込み時のむせ、よだれ、食べ物をもどす
・鼻汁やくしゃみ、鼻血、においに反応しにくくなる
・いびきや睡眠中の無呼吸が増える
・胸を触ると痛がったり咳き込む
・不安そうに落ち着かず、姿勢が固まる
これらが数日続く、悪化する、発作的に繰り返すときは受診を検討します。発生した場面や時間帯、動画を記録し、服薬や持病の情報と合わせて伝えると診断が速く進みます。
呼吸器専門の動物病院での検査と治療
ここでは各種検査の流れと、結果に基づく治療方法の選択の考え方をつかみます。
- 呼吸器専門の動物病院ではどのような検査を行いますか?
- 呼吸器専門では、問診と身体検査を起点に、聴診や呼吸数の確認、酸素飽和度の測定を行います。胸部レントゲンや超音波で気道や肺の状態を確認し、必要に応じて血液検査や動脈血ガスで全身の酸素状態を把握します。さらに詳しい評価にはCTや内視鏡(気管支鏡)、気管支洗浄による検査を組み合わせます。鎮静や麻酔が必要な場合は、安全性を十分に確認したうえで、年齢や体格に応じて順序や方法を調整します。動画や症状日誌の持参は検査選択の助けになります。呼吸機能検査や吸入療法の試行、酸素室での反応も評価に活かされ、重症時には安定化を優先しながら、段階的に精査を進めます。
- 呼吸器疾患の主な治療方法を教えてください
- 治療は原因と重症度に合わせて組み立てます。内科では抗菌薬、抗炎症薬、気管支拡張薬、去痰薬、吸入ステロイド、ネブライザー、酸素療法を症状に応じて併用し、ぜんそくや慢性気管支炎は吸入中心の長期管理を行います。外科は短頭種気道症候群の手術、喉頭麻痺の整復、気管虚脱のステント、腫瘍や胸水の処置などが対象です。在宅ケアとして体重管理、アレルゲン対策、加湿や室温管理、睡眠時の体位調整、咳の引き金の回避、散歩量の調整を行います。吸入器の使い方指導、予備薬、緊急受診のサインを共有し、安静時呼吸数や咳の回数の記録、副作用チェックで治療を微調整します。
編集部まとめ
小さな咳や息づかいの変化に気付いたら、まず落ち着いて観察を続けましょう。発症のきっかけや続く時間、悪化する場面を記録すると、受診時の大きな手がかりになります。呼吸器に詳しい病院では、無理のない検査と治療で原因を探り、在宅ケアの工夫まで一緒に考えてくれます。動画やメモは診療を支える心強い味方。今日からできることを一つずつ始めて、家族で息のしやすい毎日を守っていきましょう。
