動物病院での透析治療が必要な病気や費用、治療の流れをわかりやすく解説

動物病院での透析治療が必要な病気や費用、治療の流れをわかりやすく解説

愛犬や愛猫の腎機能が急激に悪化すると、飼い主は強い不安に襲われます。

もう手遅れかもしれないと、諦めかけてしまう方も少なくありません。しかし現代の動物医療には、命をつなぐための透析治療があります。

透析治療は、機能しなくなった腎臓の役割を一時的に肩代わりするものです。実施できる施設は限られますが、回復の可能性を広げることができます。

本記事では、二次診療施設(高度医療専門の動物病院)での知見に基づき、透析の適応基準、具体的な費用、後悔しない病院選びのポイントまで詳しく解説します。

透析治療とは

腎臓の模型

腎臓は血液中の不要な物質をろ過し、尿として排出する重要な臓器です。このろ過機能が著しく低下すると、体のなかに毒素が溜まり続けてしまいます。

透析治療は機械や生体膜を利用して、人工的に血液を浄化する処置です。本来、腎臓が担う仕事を、外部から強力にサポートします。

透析治療は低下した腎機能を補い、全身状態を改善させることが目的です。

腎臓が自己修復し、再始動するまでの貴重な時間を稼ぐ手段となるでしょう。末期的な状況を打破する、現代の動物医療の選択肢の一つです。

体内の老廃物を除去する治療

健康な腎臓は、24時間休むことなく血液をきれいに掃除しています。ところが腎不全に陥ると、体内に有害物質が蓄積して尿毒症となるのです。

透析治療は血液中に溜まった尿素窒素などを、外部へ効率的に取り除きます。

さらに、心不全の原因となる余分な水分も同時に除去が可能となり、自力では調整できない体液のバランスを正常化させます。

命に関わるカリウムの異常数値も、透析治療ならば速やかに改善できるでしょう。苦痛を和らげつつ、腎臓が回復するための時間を稼ぐのが透析治療の目的です。

透析治療の種類

抱っこされる犬

動物の医療現場で行われる透析治療は、主に2つの手法が存在しています。

血液透析(HD)は、体外循環装置とダイアライザーと呼ばれる人工腎臓を用い、血液中の尿毒症物質を直接ろ過・浄化する高度な治療法です。

高い効率を誇り、短時間で劇的に悪化した腎機能の数値を改善させることが可能です。一方で大型の装置が必要なため、実施できる病院は限定されるでしょう。

腹膜透析は自身の腹膜を活用し、お腹に注入した液で毒素を回収します。血液を体外に出さないため、心臓への負担が軽いのが特徴です。

専用装置は不要ですが、1日4〜6回程度の無菌的な透析液交換が必要であり、入院下での24時間体制による厳重な管理が不可欠です。

透析治療を行う間隔

治療頻度は、病状が急性か慢性かによって大きく異なります。中毒や急な体調悪化の場合は、腎機能の回復を優先に考えます。

入院下で毎日もしくは1日おきに透析治療を行うのが一般的です。通常、1〜2週間ほど継続して実施します。

この期間に腎機能が自己回復し、尿排泄が再開されるのを待つ命の留保を作る処置です。

末期の慢性腎不全で維持を目的とする場合は、週に数回通院して実施します。しかし通院ストレスや血管の確保など、検討すべき課題も少なくありません。

現在は、あくまで急性の危機を乗り切るための実施が主流となっています。

透析治療が必要な病気

診察される犬

透析治療は、一般的な点滴治療では太刀打ちできない重症例に適用され、特に以下の病態では早期の介入が救命率を左右するでしょう。

中毒物質の摂取による急性腎障害は、透析治療が推奨されるケースです。

代表例はユリ科植物やブドウ、保冷剤(エチレングリコール)などです。これらは極少量でも腎細胞を破壊し、数日で死に至る恐れがあります。

速やかに毒素を排出するため、透析治療は極めて有効な手段です。レプトスピラ症などの細菌感染も、重度の腎障害を引き起こします。

抗生物質で菌を叩くだけでは、下がった腎機能をすぐには回復できません。体が菌と戦うための体力を温存するため、透析治療で生体内環境を整えます。

結石が尿路に詰まることで、腎機能が急停止する状態も危険です。尿路結石の治療は外科手術が必要ですが、術前は体調が極めて不安定な状態です。

そのまま麻酔をかけるのは危険なため、まずは透析治療で全身を安定させます。もともと腎臓が悪い動物が、脱水を機に一気に悪化する現象も存在します。

これを急性増悪と呼び、早急な処置を行わなければ命に関わるでしょう。一時的に腎機能を補うことで、元の安定した状態に戻せる場合があります。

動物病院での透析治療にかかる費用

計算する

透析治療を選択するうえで、費用の把握は飼い主にとって切実な問題です。自由診療の動物医療では、病院ごとに価格設定が大きく異なります。

技術料に加え、特殊な消耗品や薬剤の費用も加算される仕組みです。重症例では24時間の看護体制を敷くため、人件費も反映されます。

治療を開始する前に、概算の見積もりを提示してもらうことが重要です。

想定外の出費に驚かないよう、予備費を含めた資金計画を立てましょう。愛犬や愛猫の命を守る決断には、経済的な覚悟も同時に求められます。

透析治療の費用相場

血液透析の処置料は、1回あたり30,000〜170,000円(税込)と幅があります。処置料には人工腎臓フィルターや専用回路の費用が含まれます。

さらに初回のカテーテル設置に別途費用がかかります。加えて1日あたり5,000~15,000円(税込)ほどの入院費が発生する仕組みです。

血液検査なども頻繁に行うため、さらに費用は積み重なっていきます。7〜10日間の入院で透析治療を複数回行うと、数十万円(税込)となることも珍しくありません。

高度な専門医療のため、相応の準備が必要です。

ペット保険は使用できる?

ほとんどのペット保険では、透析治療は補償の対象に含まれます。ただし保険の契約内容により、支払限度額が設定されていることがほとんどです。

例えば、1日の上限額が10,000円(税込)のプランでは、100,000円(税込)の治療費がかかっても差額の90,000円(税込)は全額自己負担となります。

また手術としてカウントされるかどうかも、会社により異なります。

高額請求が予想されるため、事前に保険会社へ確認を入れるのが賢明です。窓口精算ができない場合は、一時的に全額を立て替える必要があります。

動物病院で透析治療を行うときの流れ

獣医師と犬

実際に透析治療を受ける際の手順を、飼い主の視点で詳しく見ていきましょう。刻一刻と病状が変化する状況下では、治療工程の把握が冷静な意思決定を助けます。

重篤な全身状態で進行する高度医療においては、獣医師との強固な信頼関係が不可欠です。

まずは問診と検査を行い、動物に適切な透析スケジュールを立案します。飼い主には同意書の記入とともに、費用の概算があらためて提示されます。

入院による全身状態の管理

獣医師と飼い主

透析治療が必要な動物は、すでに食欲がなく、ぐったりしていることが大半です。

まずは、24時間体制の入院管理下で心電図や血圧をモニタリングし、微細な異変を察知します。

重度の貧血や低血圧がある場合、透析治療の負荷で命を落とす危険があるからです。

さらに、超音波(エコー)検査を実施し、胸水や腹水の貯留状況を精緻に確認します。過剰な水分が肺に溜まっていると、呼吸困難を引き起こす恐れがあるためです。

着実に治療を開始できるコンディションか、獣医師が多角的に評価します。

体力が著しく低下している場合は、先に輸血や昇圧剤の投与を行うことが少なくありません。

透析用カテーテルの設置

血液を機械へ送るためには、大量の血流を確保する特別な管が必要です。

専用の太い管を、主に首の頸静脈などへ留置する処置を行います。

留置にはミリ単位の技術を要するため、基本的には鎮静剤や全身麻酔薬を使用します。血管の細い小型犬や猫では、血管確保が難しい作業です。

透析専用のダブルルーメンカテーテルを用い、血流の出口と入口を作ります。管が抜けると大出血を招くため、首回りには厳重な包帯が巻かれることが少なくありません。

設置後はレントゲンを撮影し、先端が正しい位置にあるか確認をします。

透析治療の実施

元気がない犬

装置が稼働すると、動物の体から少しずつ血液が抜き取られていきます。人工腎臓のフィルターを通り、浄化された血液が体内へ戻ります。

この間、動物は専用のケージや診察台で数時間過ごすのが一般的です。不安を感じやすい動物に対しては、看護師がバイタルサインを注視しながら常に寄り添います。

血液が回路内で固まらないよう、精密ポンプで抗凝固薬を継続して注入します。

また、急激な血圧低下を避ける目的で、血液ポンプの回転速度を数分単位で微調整することも重要です。同時に体温の低下を防ぐため、マットやヒーターで保温管理を徹底します。

治療後の状態を確認したうえで退院

透析治療が終了しても、すぐに楽観できるわけではありません。数時間後に腎機能が再び悪化しないかを、慎重に血液検査で追っていきます。

一度の透析治療で毒素を除去しきれない場合は、翌日も継続して実施します。尿が自力で生成され、腎臓が再始動した兆候が見られれば成功です。

食欲が戻り、自力で水分が摂れるまで数日間の経過観察が必要となるでしょう。体調が安定した段階でカテーテルを抜き、自宅療養へと移行します。

退院後もしばらくは、頻繁な通院と投薬による管理が欠かせません。腎臓への負担を軽減する目的から、専用の療法食への切り替えを同時に指導します。

透析治療のリスク

治療をする犬

命を救うための処置ですが、完全に保証された治療ではありません。副反応の可能性を理解し、納得したうえで同意することが重要です。

高度な専門医療には相応のリスクが伴うため、負の側面を正確に把握する必要があります。

動物の体調や既往歴によって、起こりうる合併症の程度は異なります。事前にリスクを正しく知ることは、適切なケアを行うための第一歩です。

獣医師と密に連携を取り、万全の態勢で治療に臨むことが求められます。

血圧の変動

透析回路に血液が移動すると、血管内のボリュームが一時的に急激に減少することも少なくありません。

体外循環による血管内容量の急変は、ショック状態を誘発するリスクを内包します。特に心疾患を併発している高齢の動物は、心臓への負担が増えます。

反対に、除水の影響で血圧が異常に上昇するケースもありますので、獣医師は昇圧剤などを準備し万全の態勢で不測の事態に備えます。

処置中は常に自動血圧計を作動させ、数分ごとの変動を監視し続けるのが大切です。異常を検知した際は、速やかにポンプの速度や流量を調整して対応します。

不均衡症候群

注射をされる猫

血液が急に浄化されると、血管内と脳細胞の間で濃度差が生じます。 これは脳の細胞内にのみ、毒素が取り残されてしまう現象です。

この濃度差によって脳がむくみ、神経症状を招く恐れがあります。 具体的には激しい痙攣などが起きるため、細心の注意が必要です。

重篤な場合は命に関わるため、予防処置を講じながら慎重に進めます。初回は意図的に透析効率を抑制し、数日をかけて緩やかに血中濃度を調整します。

脳圧を下げる薬を併用し、動物の意識状態を細かく観察して管理することも重要です。

出血リスクの増加

機械のなかで血液が固まると、回路が詰まって透析治療が継続できません。回路内の凝血を防ぐ目的で、抗凝固薬を持続的に投与しながら処置を進行します。

結果として、治療中や終了直後は止血能力が低下してしまうことも少なくありません。持病で胃腸が荒れている動物の場合は、消化管出血を誘発する恐れもあります。

傷口から血が滲みやすくなるため、処置後は安静に過ごすことが重要です。体質に合わせて薬の種類を変えるなど、個別に対応を検討していきます。

粘膜の色や便の状態を観察し、内出血のサインがないか常に注視しましょう。

感染症

カテーテルの挿入部位は、外界と血管内が直接つながっている状態です。カテーテル感染で細菌が挿入部から体内に入ると、血液を通じて全身に回る敗血症を招きかねません。

腎不全で免疫力が低下している動物にとって、細菌は大きな脅威です。カテーテルの出口部が赤く腫れたり、膿が出たりしないか毎日の確認が大切です。

包帯を清潔に保ち、過度な汚れが付かないよう細心の注意を払います。

予防的に抗生物質を投与し、感染の芽を早期に摘み取る管理が欠かせません。高熱が出た際は、ただちにカテーテルを抜去する迅速な判断も必要です。

透析治療ができる動物病院の探し方

犬と獣医師

日本全国で見ても、血液透析を完璧に行える施設は決して多くありません。いざというときに慌てないよう、探し方のポイントを押さえておきましょう。

まずはかかりつけ医に相談し、専門の施設を紹介してもらいます。

近隣で透析設備を持つ病院を、地域獣医師会の連携ネットワークを活用し、適切な二次診療施設を特定します。検査データの共有と、紹介状の作成を依頼しましょう。

また大学病院や高度医療センターも、有力な候補です。新しい装置と専門チームを備えており、24時間の管理が可能です。

これらの施設は紹介状が必要な場合があるため、まずは電話で確認します。

インターネットで地域の専門病院を検索するのも、有効な手段です。腎臓病を専門にしている医師がいる病院なら、より高度なアドバイスを受けられます。

「地域名 動物病院 血液透析」のキーワード検索により、治療実績を有する施設を確認できます。

まとめ

ペットを大事にする獣医師

動物の透析治療は、命の危機を救う有効な手段です。

特に急性腎不全では劇的な回復が望める例も多く、装置の進歩により小型のペットでも治療が可能となりました。

腎機能が回復するまで人工的に体内を清浄に保つ透析治療は、早期の決断が救命率を左右します。

高度医療の選択は、愛犬や愛猫との未来をつなぐための、後悔なき決断の一助となります。専門家とともに、健やかな日々を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。

参考文献