ペットのワクチンはいつから打てる?動物病院でのワクチン接種時期や種類、注意点を解説

ペットのワクチンはいつから打てる?動物病院でのワクチン接種時期や種類、注意点を解説

犬や猫を飼っている場合、ワクチンの接種は欠かせません。では、生まれたばかりのペットは、いつからワクチン接種が可能なのでしょうか? また、大人の犬や猫の場合、子犬や子猫と比べて、ワクチン接種の時期は異なるのでしょうか? この記事では、動物病院でワクチン接種を受ける際のスケジュールやワクチンの種類、接種の際の注意点などをQ&A方式で解説します。現在ペットのワクチン接種を検討されている飼い主さんは、ぜひ参考にしてください。

動物病院のワクチン接種時期

動物病院のワクチン接種時期
子犬や子猫はいつ頃からワクチンを受けられますか?
生まれたばかりの子犬や子猫は、母親から初乳を通して抗体を譲り受けていることが多いといわれています。この母体から譲り受けた抗体は移行抗体といい、成長とともに消えていきます。生後あまり早い時期にワクチン接種を行うと、子犬や子猫の体に移行抗体が残った状態であることが多く、十分な免疫を獲得することができません。そのため、移行抗体が消える生後6〜8週頃からのワクチン接種が推奨されています。また犬の場合は、狂犬病予防法により、生後91日以上の犬の所有者は、飼い始めてから30日以内に狂犬病の予防接種を受け、その後も1年に1度は狂犬病ワクチンの接種をしなければなりません。
初回ワクチンの後はどのくらいの間隔をあけて接種しますか?
犬の場合、通常はまず生後6〜8週頃の混合ワクチンから接種を開始します。1回目の混合ワクチンの接種後2〜4週間ごとに追加接種を繰り返し、最後の接種は生後16週を超えるようにスケジュールを組みます。また生後91日齢以上の場合には、狂犬病の予防接種を行い、その後も年に1度は狂犬病ワクチンの接種を行うようにします。ただし、狂犬病ワクチンの接種は、混合ワクチンの接種から4週間以上間隔をあけて行うようにしましょう。猫の場合も、生後6〜8週頃から1回目のワクチン接種を行い、その2〜4週間後に2回目を接種するように計画を立てます。
大人の犬や猫の場合のワクチン接種タイミングを教えてください
大人の犬や猫のワクチン接種のタイミングは、子犬や子猫とは異なります。まず、犬の場合は、毎年4月1日〜6月30日の期間に狂犬病ワクチンを接種することが義務付けられています。また、混合ワクチンについては大人の犬や猫の場合、従来年1回の接種が望ましいとされてきました。しかし、近年では混合ワクチンの接種間隔を必要性に応じて分ける考え方が提案されています。これは、混合ワクチンを、生活環境に関わらずすべての犬が接種すべきコアワクチンと、生活環境や地域など感染リスクに応じて接種すべきノンコアワクチンの2種類に分け、コアワクチンは3年に1回、ノンコアワクチンは年に1回受けることが望ましいとする考え方です。特に高齢であったり、持病があったりする犬や猫の場合は、ワクチン接種のタイミングを慎重に見極める必要もあるため、かかりつけの獣医師とよく相談するようにしましょう。

動物病院で接種できるワクチンの種類

犬に必要なワクチンの種類を教えてください
犬を飼う場合、必ず接種しなければならないのが、狂犬病ワクチンです。狂犬病は人にも感染し、発症すると100%死亡するという恐ろしい病気です。そのため、狂犬病予防法という法律によって毎年1回の接種が義務付けられています。また、義務ではないものの推奨される混合ワクチンには、犬ジステンパーウイルス感染症、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性喉頭気管炎(犬アデノウイルス2型)、犬パラインフルエンザウイルス感染症、犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型)、犬コロナウイルス感染症、犬レプトスピラ症などの種類があります。このなかで、日本でコアワクチンとされているのは、犬ジステンパーウイルス感染症、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性喉頭気管炎、犬伝染性肝炎の4種類です。
猫に必要なワクチンにはどのような種類がありますか?
猫のワクチンには、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症に対応できる3種混合ワクチンや、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)を加えた4種混合ワクチン、さらに猫クラミジア感染症をプラスした5種混合ワクチンなどがあります。また、このほかにも7種までの混合ワクチンや単体のワクチンもあります。このなかでコアワクチンとされているものは、猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症の3種類です。なお、単体の予防接種である猫エイズワクチンに関しては、現在国内では販売されていません。
室内飼いでもワクチンは必要ですか?
ワクチンは生活環境に合わせて選ぶことが大切です。しかし、家のなかにも病気の感染源は多数存在します。例えば、飼い主や来訪者の衣服、窓の網戸越しでの他動物との接触などといった経路から病気が感染することも考えられます。室内飼いの猫であっても病気のリスクをゼロにすることは難しいため、最低限の予防接種は行うようにしましょう。完全に室内飼いの猫の場合は、3種混合ワクチンのコアワクチンで十分とされています。ただし、飼い主が野良猫や友人などほかの家の猫に触れる機会がある場合は、感染のリスクが上がるため、注意が必要です。室内飼いではなく、散歩に出かける機会の多い猫や、多頭飼いの猫の場合は、外での感染リスクを軽減させるために、クラミジア感染症の予防を含む5種混合ワクチンを受ける方がよいでしょう。なお、犬の場合は、室内飼いであっても狂犬病ワクチンは必須となります。また、コアワクチンを中心としたワクチンも病気のリスクを減らすために接種することが推奨されます。

動物病院でのワクチン接種の流れと注意点

動物病院でのワクチン接種の流れと注意点
動物病院のワクチン接種の流れを教えてください
動物病院でワクチン接種を受ける場合は、まず獣医師が診察を行います。全身の健康チェックを行い、予防接種を受けても問題がない健康状態であるかを確認します。体調が優れない場合や病気治療中の場合は、予防接種を中止したり、延期したりすることもあります。問題がなければワクチンを接種します。ワクチンを打つ位置は、犬の場合は皮が伸びる首の後ろ、肩甲骨の間やお尻の皮下、猫の場合は後ろ足であることが多いようです。接種が終わり、会計を済ませて終了です。
動物病院でワクチン接種をするときの注意点はありますか?
ワクチン接種前は、シャンプーやトリミングなど、疲労やストレスにつながる行動は控えましょう。また、予防接種の時間は、ワクチン接種によるアレルギー反応が出た場合に備えて、なるべく午前中に受けることをおすすめします。早い時間に接種を受けておけば、その後体調が悪化した場合もすぐに診察をしてもらうことが可能です。当日は、体調に問題がないことを確認したうえで接種を受けるようにしましょう。接種後は、腫れや発熱などの副反応が出る可能性があります。接種から数日間は激しい運動を控え、体調に変化がないかを見守るようにしてください。
副作用の症状が出た場合は、すぐに動物病院に連れていくべきですか?
ワクチン接種後には、腫れや発熱、元気がない、フラフラするなどの全身的な副反応が出る可能性があります。特に重篤な症状にアナフィラキシーショックがあり、倒れる、ふらつく、嘔吐、下痢、呼吸が早い、顔が腫れるなどの症状が見られた場合は、すぐに静脈点滴や薬剤の投与が必要になります。心配な副反応の症状が現れた場合は、なるべく早く動物病院へ連れていくようにしましょう。家から病院までが遠い場合は、できるだけ午前中などの早い時間に接種するようにし、その後10〜30分程は病院で待機することをおすすめします。
ワクチン接種に不安を感じる場合は打たなくてもよいですか?
ワクチン接種は副反応が出る可能性もあり、不安を感じる方も少なくないようです。しかし、ワクチンは愛犬や愛猫の命と健康を守るためには欠かせない予防手段です。ワクチンを接種せずに感染症に罹患した場合、免疫がないために症状が重篤化するリスクが高くなります。また狂犬病のように、発症すれば動物だけでなく人間すら死に至る病気もあります。こうした感染症を防ぐためにもワクチンは必ず打つようにしましょう。近年では、コアワクチンは毎年ではなく、3年に1度の接種を推奨するという考え方もあります。抗体価を調べながら接種することもできるため、接種に不安を感じている場合は、かかりつけの獣医師に相談してみることをおすすめします。

編集部まとめ

ワクチン接種は、免疫力が弱い子犬や子猫にとって、命と健康を守る大切な手段です。予防接種を適切な時期に行うことで、より効果的に免疫をつけることができ、結果的に感染症を防いだり、重症化のリスクを軽減したりすることが可能となります。予防接種のスケジュールを立てるときは、どのワクチンがどの時期に必要かを理解して、計画的に行うようにしましょう。また、不安を感じる場合は、かかりつけの獣医師に相談をすることをおすすめします。

【参考文献】