動物病院の1.5次診療とは、一般的なかかりつけ医では対応が難しい症状でも、大学病院に行くほどではないかもしれない。そんなときに重要な役割を果たしている診療体制のことです。本記事では、動物病院の1.5次診療とは何か、ほかの診療体制との違い、メリット・デメリット、さらに1.5次診療が適しているケースや受診方法を詳しく解説します。
動物病院の1.5次診療とは

1.5次診療とは、一般的なかかりつけ医(1次診療)としての役割を果たしながら、より専門的な検査や治療も可能な動物病院のことを指します。
1.5次診療を行う動物病院は、日常的な健康管理から予防医療まで幅広く対応しながら、CTや内視鏡、超音波診断装置などの高度な医療機器も備えています。
そのため、普段の健康相談から専門的な治療まで、一つの病院で完結できることが大きな特徴です。獣医師が複数人勤務しているような動物病院が該当します。
飼い主さんにとっては新しい病院を探す必要がなく、ペットも慣れ親しんだ環境で治療を受けられるため、ストレスを最小限に抑えることができます。必要に応じてより高次な医療機関へと連携をする橋渡しのような存在です。
1次診療と2次診療の違い

動物医療には診療レベルに応じた区分があり、それぞれ役割が異なります。この章では各診療体制の特徴と、1.5次診療との違いについて解説します。
1次診療とは
1次診療は、いわゆるかかりつけ医、ホームドクターと呼ばれる一般的な動物病院での診療を指します。ペットの健康診断や予防接種、軽い怪我や病気の治療など、日常的な健康管理を行います。
1次診療の動物病院は地域に密着しており、飼い主さんが気軽に相談できる存在です。基本的な検査機器(レントゲン、血液検査機器など)を備え、一般的な内科・外科治療に対応します。
ペットと飼い主さんの生活に寄り添い、健康状態を長期的に把握してくれる心強い存在といえるでしょう。
一生涯のうちの多くの場合は、1次診療の動物病院で対応が可能であり、人間が風邪を引いたときや軽い怪我のとき、また、継続治療を必要とする慢性的な疾患を診てもらう地域のクリニックのようなイメージです。
2次診療とは
2次診療は、大学の附属動物病院や高度医療センターなど、より専門的で高度な医療を提供する施設での診療を指します。MRIやCTスキャンなどの先進的な検査機器を完備し、複数人の獣医師による診療が行われています。
2次診療施設では、腫瘍科、循環器科、神経科、眼科など専門診療科が設けられており、難治性の疾患や複雑な手術に対応可能です。
通常は1次診療の獣医師からの紹介により受診し、高度な診断・治療を受けることができます。ただし、予約が取りにくかったり、施設に限りがあるため、アクセス面での課題があります。
1.5次診療との違い
1.5次診療の大きな違いは、かかりつけ医としての機能を維持しながら専門的な医療も提供できる点です。紹介状がなくても受診でき、普段の健康管理から専門治療まで同じ病院で継続的に診てもらえます。
また、多くの1.5次診療施設の場合、複数の獣医師が勤務しています。獣医師によって専門分野が異なることも多く、多角的な視点から検査や治療を受けることができます。
動物病院の1.5次診療を受診するメリット・デメリット

1.5次診療には多くの利点がありますが、一方で受診するにあたって考慮すべき点もあります。この章では、1.5次診療のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。
1.5次診療のメリット
1.5次診療の大きなメリットは、かかりつけ医としての役割と高度な医療を両立している点です。普段から通い慣れた病院で、必要に応じて精密検査や専門的な治療を受けることができます。
紹介状なしで受診できることも大きな利点です。症状が気になったらすぐに相談でき、必要であればその場で精密検査に進むことができます。2次診療施設は、基本的に1次診療施設や1.5次診療施設からの紹介状が受診のために必要となるため、受診までに踏まないといけないステップがあります。
また、一つの病院で診断から治療、その後のフォローアップまで完結できるため、医療の継続性が保たれます。治療経過を熟知した獣医師が一貫して急性期の治療の後の経過観察もしてくれるのは大きな利点です。
費用面でも、2次診療施設と比較して料金設定が抑えられている場合が多く、専門的な医療を受けやすい環境が整っています。日常的な健康管理や軽症な診療においては、1次診療施設と費用面で大きな差はありません。
1.5次診療のデメリット
一方で、1.5次診療にもいくつかの限界があります。まず、すべての地域に1.5次診療を行う動物病院があるわけではないため、お住まいの地域によっては選択肢が限られる場合があります。
また、高いレベルの専門性や先進的な設備という点では、やはり大学病院などの診療施設にはおよびません。特殊な疾患や、極めて高度な手術が必要な場合は、より専門的な施設への紹介が必要になることもあります。
設備面でも、すべての1.5次診療施設がMRIなどの機器を備えているわけではありません。CTや内視鏡などは多くの施設で導入されていますが、より特殊な検査機器が必要な場合は対応できないこともあります。
また、幅広い診療に対応するため、特定の専門分野に特化した2次診療施設と比べると、超専門的な知識や技術では劣る場合があります。ただし、これは一般的な症例では問題にならないことがほとんどで、必要に応じて適切な専門施設を紹介してもらえるので大きな心配はいりません。
動物病院の1.5次診療を選んだ方がよいケースとは

では、どのような場合に1.5次診療を選択すべきでしょうか。以下のようなケースでは、1.5次診療が特に適しています。
高齢のペットのかかりつけ医
幼少期から診てもらっているホームドクターがすでにいる場合は、ペットのことを一番よくわかってくれているため、必要に応じて高度医療機関へと紹介をしてもらえばよいですが、転勤などでホームドクターがいない高齢のペットを飼っている場合は、病気や急変時の対応を考えて、1.5次診療施設をホームドクターに選んでおくと安心できます。
ペットの体調不良が続いているとき
体調不良がなかなか治らないときは、血液検査のほかに、CT、MRI、内視鏡検査といった高度な画像検査を必要とすることが多くあります。そんなときに紹介状なしで受診し、すぐに検査を行うことができるのは1.5次診療施設の強みです。また、多くの場合専門性の異なる複数の獣医師が勤務していることも強みとなります。
日々の予防を含め一貫して任せたいとき
予防医療から専門治療まで一貫してお任せしたい場合も、1.5次診療が理想的です。子犬・子猫の頃からワクチン接種や健康診断で通い、成長とともに必要になる専門的な治療も同じ病院で受けられます。生涯にわたってペットの健康を見守ってもらえる、まさにホームドクター+αの存在といえるでしょう。
セカンドオピニオン
セカンドオピニオンとは、現在かかっている動物病院(この場合1次診療の動物病院)の意見方法をファーストオピニオンとして、別の獣医師に意見を求めることをいいます。
「治療法を提案されたが、ほかの治療法がないか別の獣医師に聞いてみたい」
「今受けている治療方法についてほかの獣医師の意見を聞いてみたい」
「専門とする獣医師の意見を聞いてみたい」
上記のような場合にセカンドオピニオンが有効となります。かかりつけ医のことは信頼していても、ペットの病状がかかりつけ医の専門外の可能性も有り得ます。上述したとおり、多くの1.5次診療施設では複数の獣医師が勤務しているため、よりさまざまな視点から検査・治療を検討することで、診断に結びつくケースや納得した上で治療へと進むこともできるかもしれません。セカンドオピニオンをしたからといって必ずしもかかりつけ医を変更しないといけないわけではないので、安心して納得のいく医療を受けるために利用してみてください。
動物病院の1.5次診療を受診する方法

1.5次診療を受診したいと思ったら、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。この章では、受診までの具体的な流れを説明します。
地域内の1.5次診療動物病院を探す
まずは、お住まいの地域やアクセス可能な範囲内に1.5次診療を行っている動物病院があるか調べましょう。インターネットで『地域名 動物病院 CT』『地域名 動物病院 内視鏡』などのキーワードで検索すると、設備の充実した病院が見つかりやすいです。
動物病院のWebサイトで「1.5次診療」「高度医療」「専門診療」などの記載があるか確認しましょう。設備紹介のページで、CTや超音波診断装置、内視鏡などの機器が紹介されている病院は、1.5次診療に対応している可能性が高いです。1.5次診療というのは、法律や規定によって条件が定められているわけではなく、1次診療に加えて高度な医療を提供できる施設が1.5次診療といっているため、きれいな線引きは有りませんので注意をしてください。
受診できる条件を確認する
1.5次診療の大きな特徴は、紹介状なしで受診できることです。症状が気になったらすぐに予約を取って受診できるため、早期発見・早期治療につながります。
ただし、ほかの病院の通院歴や治療歴がある場合は、初診時には今までの経過がわかる資料があると診察がスムーズです。他院での検査結果や投薬履歴があれば持参しましょう。ワクチン証明書や健康診断の結果などもあるとよいです。
診療時間や休診日の確認も大切です。1.5次診療施設は一般的な動物病院と同様の診療時間であることが多いですが、専門的な検査や手術は予約制の場合があります。急患対応の可否も含めて、事前に確認しておくと安心です。
予約する
多くの1.5次診療施設では、当日の受診が可能なことも多いですが、電話やWebで予約を受け付けている施設もあります。初診の場合は、ペットの種類や年齢、主な症状を伝えて予約を取りましょう。
「様子がおかしいけれど、どの程度急ぐべきかわからない」という場合も、遠慮なく相談してみてください。経験豊富なスタッフが適切にアドバイスしてくれます。
また、複数の獣医師が勤務していることが1.5次診療施設のメリットでもある一方で、毎回の診察で違う獣医師に診察を受けることも有り得ます。同じ獣医師に継続して診てほしい場合は、病院によっても異なりますが、獣医師を指名しての予約が必要なことも有りますので、病院受診の際はチェックするとよいでしょう。
まとめ

1.5次診療は、かかりつけ医としての役割を担いながら、専門的な検査・治療も提供できる、飼い主さんにとって心強い存在です。
紹介状なしで気軽に受診でき、普段の健康管理から高度な医療まで一つの病院で完結できるのが大きな魅力です。CTや内視鏡などの検査機器と専門知識を持つ獣医師により、幅広い症例に対応可能で、ペットの生涯にわたる健康管理をトータルでサポートしてくれます。
「専門的な検査が必要かもしれないけど、大学病院は敷居が高い」「かかりつけ医では対応が難しそう」そんなときは、1.5次診療という選択肢を思い出してください。地域に根ざしたホームドクターでありながら、いざというときは専門的な医療も提供してくれる1.5次診療は、ペットと飼い主さんの心強い味方となってくれることでしょう。
参考文献