自宅にペットを迎えると、予防接種や定期健診のために動物病院を受診する必要があります。しかし動物病院を選ぶ際に何を基準にしたらよいか、迷うことも少なくありません。
動物病院にどのような診療科目があるかを知らなければ、適切な病院を選ぶことはできません。
この記事では、動物病院の診療科目について紹介します。診療体制や費用相場といった情報だけでなく、動物病院の選定方法や実際に診療を受けるまでの流れについても触れています。
すでに動物病院を利用している方だけでなく、これから利用が必要になる方にも参考になれば幸いです。
動物病院の診療科目とは
自宅にペットを迎えた場合、最初に考えないといけないのが予防接種や健康診断でどの動物病院を受診するかという点です。
しかし動物病院を検索すると、具体的な診療科が明示されていないこともあるため、戸惑う方も少なくありません。
動物病院にはどのような診療科があるのでしょうか。診療科の記載されていない動物病院では具体的にどのような診療を行っているのでしょうか。
まずは動物病院の診療体制について紹介します。
動物病院の診療体制の特徴
農林水産省による都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況をみると、令和6年12月31日時点で産業動物を取り扱っている動物病院以外の医院数は約12,800か所あります。人間の診療を行う医療機関の数が約180,000施設あることを鑑みると、かなり少ない数といえるでしょう。
このように施設数が少ないことから、動物病院の多くは専門の診療科を設けず、総合診療を実施しています。
また動物病院を受診するペットは言葉を話すことができず、コミュニケーションが取りづらいです。そのためペットの体調の異変には気付けるものの、具体的に不調をきたしている箇所や原因を特定することは困難といえるでしょう。
このような場合に専門分野以外の診療科目への対応が求められるケースも少なくないため、総合診療を採用している動物病院が多いのです。
総合診療と専門診療の違い
ペットの不調が判明した際、最初に総合診療の動物病院を利用する飼い主は多いでしょう。総合診療を行っている動物病院は、ペットを飼う方にとって身近な存在です。
予防接種や定期健診でかかりつけの動物病院となっていることが少なくなく、ペットの体調不良に気付いた際には、いつも受診している動物病院を受診することになるためです。
動物病院のなかには病気の内容やその治療方法に応じて、専門的な治療を行っている病院があります。
専門診療を行う動物病院は、かかりつけの総合診療を行う動物病院から紹介を受けて受診するケースも少なくありません。
専門診療を行う動物病院は、アメリカをはじめとする欧米では一般的です。日本でも徐々に増えてきているため、かかりつけの獣医師から紹介された場合や、病名がはっきりしている場合には活用してみるとよいでしょう。
診療科目によって費用相場は変動する?
日本ではペットをはじめとする動物の公的医療保険という制度はありません。
人間の場合には、公的医療保険の対象となる診療にはすべて診療報酬が定められています。そのためどの病院で治療を受けても、公的医療保険の適用となる治療であれば支払う金額は同じです。
動物病院はそのような制度がないため、すべて動物病院ごとに診療費を定めています。人間でいう自由診療と同じ形態です。
そのため診療科目だけでなく、治療内容や動物病院ごとに費用が異なる点に注意が必要です。さらに夜間診療や休日診療で通常の診療報酬に費用が加算されるケースもあるため、念頭に置くとよいでしょう。
診療科目でも専門的な治療を必要とする場合には、通常の予防接種や定期健診と比較して費用が高額になる場合があります。
動物病院で一般的な診療科目
日本に約12,800か所ある動物病院のうち、約8,000か所は、獣医師が1人で診療を行っています。
このような病院は規模が小さく、地域に根づいたかかりつけのクリニックとして総合診療を中心とした治療を行うケースが少なくありません。
ほかに専門診療を行う場合にはどのようなケースがあるのかを含め、動物病院の診療科目を紹介します。
内科
内科は人間同様、体の内部の異常を発見し治療を行う診療科です。また原因がよくわからない体調の悪化にも対応しています。
内科ではこれらの異常に対応できるよう、幅広い疾患に対応しています。例えば以下のような診療に対応しているケースが多いでしょう。
- 循環器
- 消化器
- 腎泌尿器
動物は自分で病院を受診できず、言葉で症状を伝えることもできません。
そのためペットの場合は飼い主が、日頃と比べて元気がなかったり発熱していたりといった異常に気付いて動物病院を受診することが多いです。
外科
外科のなかでイメージしやすいのは手術に関連する治療でしょう。体を動かすために必要な骨や関節、筋肉といった運動器に関連する異常に対しての治療を行う整形外科と循環器や泌尿器、消化器の病気、腫瘍性疾患に対して手術による治療を行う軟部外科に分かれ、外科の取り扱う治療範囲は多岐にわたります。
皮膚科
人間同様、皮膚に関する疾患を専門に取り扱う診療科です。人間と異なり、動物の多くは体毛で皮膚が覆われています。そのためかゆみや赤みといった皮膚そのものの症状として現れるケースだけでなく、脱毛などの体毛に関連する症状から疾患の発見につながるケースも少なくありません。
全身に関わる治療を行う診療科であり、専門知識が必要なため、病気によって受診が必要になることもあります。
整形外科
外科のなかでも整形外科分野に特化している診療科です。骨や関節、筋肉といった組織の異常に対応しています。
整形外科の疾患では、痛みや元気の低下に飼い主が気付き、受診することが少なくありません。まずはX線検査やエコー検査で、体のどの部分にどのような異常が起きているのかを判断し、治療を行います。
また先天的な異常に対して対応を行う場合もあります。
小動物や特殊な部位での骨折には専門的な知識や経験が求められるケースもあるため、専門診療を行う病院を利用するとよいでしょう。
さらに術後にはリハビリテーションが必要になるケースもあることから、多岐にわたる診療が求められます。
眼科
動物にとって目は、周囲の情報を得るうえで重要な器官の一つです。一方で人間同様、加齢に伴って目が見えにくくなるケースも少なくありません。
眼科を専門とする動物病院では、目に関する検査や治療を行っています。
普段の様子を観察するなかで目の機能に異常を感じるケースだけでなく、目の痛み、涙や目やにといった症状が出ている場合にも、眼科の受診を必要とすることがあります。
致命的な病気を目に発症するケースは決して多くはありませんが、やはり目の痛みが続いたり、見えづらいなかでは動物もストレスを感じることがあるため、早期の発見が重要です。
歯科
人間と同様に、動物の歯科も存在します。動物の口腔内の環境は、人間と異なることをご存じでしょうか。
例えば犬の場合、口腔内は人間よりもアルカリ性に保たれていることから、むし歯になる可能性はずっと少ないといえます。
一方で歯垢が歯石として口腔内で残る可能性が高い特徴もあるため、動物病院における歯科では、歯石の除去も治療として幅広く取り扱っているケースが多いです。
また人間と異なり、歯科治療の間ずっとお口を開けていてくれるわけではありません。
そのため抜歯などの歯科処置や歯石の除去を行う場合でも全身麻酔が必要で、人間よりも大がかりな処置になる特徴があります。
このように動物病院のなかでも歯科治療は、人間と異なる面の多い治療分野といえるでしょう。
ワクチンや予防に関する診療科目
ワクチンや予防を目的とした受診を希望する場合、具体的な診療科目はあるのでしょうか。
受診を検討している動物病院にもよりますが、総合診療を行っている動物病院、いわゆる町の動物病院がこれらの目的での受診には適切です。
犬や猫にとってワクチンは、病気や感染症を予防するうえで欠かせません。子犬や子猫と呼ばれる生後16週頃までは、さまざまなワクチンを定期的に接種する必要があります。
またその後も必要に応じて追加接種が推奨されていることから、人間よりも頻繁に動物病院を訪れる機会があるといえるでしょう。
また動物は体調不良を言葉にして伝えることができません。それだけでなく本能的に隠そうとしてしまいます。
そのため、病気の予防や検診を兼ねて定期的に病院を受診するほうが望ましいとされています。立地や診療時間といった観点からも通いやすい動物病院を探しておくとよいでしょう。
専門の診療科目がある病院を探す方法
もしもペットの病状がよくならない場合、その専門的な治療を行う診療科があるのであれば、受診したいと考える方は少なくないでしょう。
ではどのようにして専門の診療科目がある病院を探したらよいのでしょうか。
具体的に専門診療を行っている動物病院を探し、受診する方法を紹介します。
また実際にかかりつけの動物病院から紹介を受けている場合にも、流れを確認してみるとよいでしょう。
かかりつけ医からの紹介を受ける
動物の異変に気付くことはできても、その詳細な原因まではわからないケースが少なくありません。
このようなケースでは、まずは総合診療を受けられるかかりつけの動物病院で診察を受け、必要に応じて専門の診療科目を取り扱う動物病院を紹介してもらうことがあります。
かかりつけ医で病状が良くならず別の病院を紹介される場合もあれば、高度な医療を受けるために専門の動物病院を紹介されるケースもあります。
このようにかかりつけ医からほかの動物病院を紹介された場合には、前向きに診察を検討してみるとよいでしょう。
また診療科目を限定している動物病院のなかには、かかりつけの動物病院からの紹介による二次診療のみを実施している施設もあるため、注意が必要です。
かかりつけの動物病院を持つ重要性
動物病院を受診するときは、かかりつけ医を決めておくことをおすすめします。その理由は複数ありますが、動物は本能的に病気やケガを隠す傾向にあるため、慣れている獣医師でないと異変に気付けないといった理由が代表的です。
また動物の種類や個体によっては受診できる病院が限られるケースもあるため、異変に気付いてから対応できる動物病院を探しても間に合わない可能性がある点も考慮すべきでしょう。
さらに犬や猫は、固有の病気や寄生虫から体を守るため、定期的な予防接種や検診を必要とします。そのため、日々通い慣れているかかりつけの獣医師と関係を築くことが重要です。
まとめ
動物病院の診療科目について紹介してきました。
前提として人間の受診するクリニックとは異なり、幅広い診療を行う総合診療を中心としたクリニックが多く存在している特徴があります。
またこれらの総合診療を行っている動物病院は、かかりつけとして日頃から受診しておくほうがよいでしょう。コミュニケーションをうまくとれない動物がいきなり馴染みのない病院で診察を受けると必要な検査をスムーズに行えません。また、所見からの診断が難しくなってしまうこともあります。
そのうえで専門治療を必要とする場合は、診断された疾患やケガに対応できる病院を選ぶことが重要です。その際にはクリニックからの紹介や、その疾患の治療を得意とする動物病院への受診を活用することができます。
ペットを飼っている方にとっては身近でもある動物病院ですが、どの病院を受診すべきか、正しい知識を持っておくことが重要です。
参考文献