爬虫類を動物病院に連れて行くべき症状や注意点を解説

爬虫類を動物病院に連れて行くべき症状や注意点を解説

爬虫類は犬や猫よりも体調不良の兆候がわかりにくいため、どのような症状で動物病院に受診すべきか判断がしにくいものです。重篤な症状を見逃してしまって、手遅れになるようなことは避けたいところです。

そこで本記事では、爬虫類を動物病院に連れて行くべき症状や注意点を解説します。大切なペットの健康を守るために日常的なセルフケアのコツも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

動物病院で受診前に確認したいこと

動物病院で受診前に確認したいこと

爬虫類を動物病院に受診させる前には、以下の項目を確認しておきましょう。もしものときに備えて、症状が出ていないときから調べておくことが大切です。

  • 動物病院が爬虫類の診療対象か
  • 爬虫類専用の診療設備が整っているか

爬虫類が診療対象かどうか

受診を考えている動物病院が、爬虫類を診察できるかの事前確認は大切です。

爬虫類を診察できる動物病院は、犬や猫よりもはるかに少ないため、各病院の公式サイトや電話にて問い合わせるようにしましょう。

また、爬虫類の診療経験が豊富な獣医師が在籍しているかどうかもポイントです。

文部科学省が定めた獣医学部のカリキュラムには、爬虫類を専門とした治療に関する内容は含まれていません。獣医学部では犬や猫などの哺乳類を中心とした知識や技術を学ぶ一方で、爬虫類の診療に特化した教育は受けないのが一般的です。

そのため、実臨床において爬虫類の診療経験のある獣医師が在籍しているかが、動物病院選びで重要となります。

(参考:獣医学教育モデル・コア・カリキュラム|全国大学獣医学関係代表者協議会

爬虫類専用の診療設備が整っているかどうか

爬虫類専用の診療設備が整っているかどうかも、受診前には確認しましょう。

一般的な動物病院では、犬や猫を想定した診療設備のみであることが少なくないため、公式サイトにてどのような設備が整っているのかの確認が大切です。

爬虫類専用の診療設備には以下のようなものがあります。

  • カラードップラーエコー
  • レントゲン装置
  • 生体監視モニター
  • モノポーラ電気メス
  • ドライケム

これらの診療設備は、小さな爬虫類でも検査や処置が行えるように配慮されているものです。検討している動物病院に専用の設備が備わっているかわからない場合は、事前に問い合わせをするようにしましょう。

 爬虫類を動物病院に連れて行くべき症状

爬虫類を動物病院に連れて行くべき症状

爬虫類は犬や猫よりも体調不良の判別がつきにくいとされています。以下のような症状を判断の基準にして、動物病院の受診を検討しましょう。

  • 食欲不振や体重の急激な減少
  • 皮膚や甲羅の異常
  • 呼吸の異常
  • 便秘や下痢などの排泄トラブル

食欲不振や体重の急激な減少

食欲が落ちたり、体重が急激に減少している場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。これらの症状は、寄生虫感染やストレスなどが原因で消化不良を起こしていることが少なくありません。

餌をまったく口にしなくなった場合では、深刻な病気を患っている可能性もあるため、早急に動物病院の受診をしましょう。

また、急激な体重変化がないかの確認も大切です。

急激な体重の変化には、

  • 飼育環境の問題
  • 栄養不足
  • 消化器系の病気

これらの原因によって引き起こされている可能性があります。日々の体重測定や餌の摂取状況を丁寧に観察することが大切です。

皮膚や甲羅の異常

皮膚や甲羅の異常にも注意が必要です。爬虫類の皮膚や甲羅は健康状態をよく現しているため、色の変化や傷、腫れているところがないか観察しましょう。

感染症や寄生虫による炎症、飼育環境の不適切によるストレス。これらがあると皮膚や甲羅に早期の段階で症状が現れることがあります。症状を放置しても改善することは少ないので、早めに動物病院で診察を受けるようにしましょう。

【皮膚の異常】

  • 飼育環境や細菌感染による脱皮不全
  • 不衛生な環境やストレスによる細菌性皮膚炎
  • ケージ内の同居個体からの咬傷や裂傷

【甲羅の異常】

  • 温度管理や水質悪化、細菌による甲羅の感染症
  • 真菌感染による水カビ病
  • カルシウムなどの栄養不足による代謝性骨疾患

呼吸の異常

呼吸の異常には重篤な病気が隠れている可能性があります。呼吸器の感染症や肺炎などが疑われるため、放置をしていると命に関わる事態にもなりかねません。

  • 口を開けて呼吸をしている
  • 呼吸音が通常とは異なっている
  • 鼻水が出ている

これらの症状が見られたら、動物病院での診療が必要となります。

細菌や真菌、ウイルスや寄生虫による感染性の原因だけでなく、温度や湿度管理の不適切さによる飼育環境の問題。栄養不足やストレスによっても同様の症状が現れます。

適切な対処を行うためにも、動物病院で診断してもらうようにしましょう。

便秘・下痢などの排泄トラブル

爬虫類の健康状態は、排泄の状態にもよく現れます。便秘や下痢が続く場合は、消化器の問題や感染症の可能性が考えられます。

排泄トラブルを放置すると、脱水症状や栄養不足につながるため、早急に動物病院の受診が必要になります。

  • 床材の誤飲や大き過ぎる餌による腸閉塞
  • 水分摂取や湿度の不足による脱水症状
  • 寄生虫の腸内感染よる慢性的な下痢
  • 食べ過ぎや腐敗した餌による腸炎
  • ストレスや環境変化による下痢

爬虫類の排泄には、さまざまな原因が考えられるため、獣医師による適切な診断を受けるようにしましょう。

 爬虫類が動物病院を受診するときの注意点

 爬虫類が動物病院を受診するときの注意点

爬虫類を動物病院に連れて行くときの注意点を解説します。一般的な犬や猫と違い、爬虫類特有のポイントとして以下があげられます。

  • 爬虫類に適した温度管理にする
  • 逃げ出さない方法と移動方法に配慮する
  • 症状や異変を正確に伝える

それぞれ具体的に解説します。

爬虫類に適した温度管理にする

爬虫類は変温動物で自分では体温調整ができません。そのため、動物病院へ移動する際には、爬虫類に適した温度管理が大切です。移動中に寒すぎたり、暑すぎたりすると、さらに体調を崩してしまう恐れがあるため注意しましょう。

【冬場の保温対策】

  • カイロを使用する
  • 保温電球やヒーターを使用する
  • ケージをビニールや毛布で覆う

冬場の移動では、キャリーケースにカイロを入れて適切な温度を維持することが大切です。カイロに直接触れると低温やけどのリスクもあるので、カイロをタオルで包んでケースの外側に設置するのもよいでしょう。

長距離移動の場合は、バッテリー式の保温電球やヒーターを使用することで、一定の温度を保つことができます。ケースを毛布で覆うなど、爬虫類に適した温度管理で病院まで連れて行きましょう。

【夏場の冷却対策】

  • 保冷剤を使用する
  • 風とおりをよくする

夏場には温度が上がりすぎないための工夫が必要です。通気性のあるケースを使用して、空気を循環させるようにしましょう。凍らせたペットボトルや保冷剤をタオルで包み、ケースに設置するのも効果的です。保冷剤に直接触れないよう設置場所には注意しましょう。

逃げ出さない方法と移動方法に配慮する

爬虫類が逃げ出さないようにするにはいくつかのポイントがあります。

【逃げ出させない方法】

  • ケージの施錠を徹底する
  • 脱走経路をしっかり防ぐ
  • ケージの状態を確認する

爬虫類が逃げ出さないように、扉や蓋がしっかりと閉まるケージを使用して連れて行くようにしましょう。

力が強い種類の爬虫類を連れて行くときには、蓋に重しを置いたり、マジックテープやクリップで固定しておきます。小型の爬虫類の場合は、ケージの隙間から逃げ出さないようテープで隙間を埋めておくことも必要でしょう。

また、使い慣れているケージは壊れている部分がないかの確認もしましょう。小さな隙間でも、気付かない間に隙間が大きくなっていることもあるので、定期的にケージの状態確認は必要です。

もし、ケージから脱走してしまったときのために、脱走経路の封鎖もポイントになります。

窓や部屋の扉を閉めて、屋外への脱走を防ぐようにしましょう。車内でも同様で、脱走した場合は、窓やドアを閉めて外に逃げ出さないようにしましょう。

【移動方法】

  • 輸送用のケースを準備する
  • 寒暖差を防ぐ温度管理
  • 移動前の準備

爬虫類は、移動中の振動や音に敏感になるため、輸送用のケースにタオルや、やわらかい敷物を詰めて安定させるようにしましょう。直射日光や極端な温度変化を避けるようにするのもポイントです。ヘビなどの場合は、洗濯ネットに入れてからケースに収めることで脱走防止にもなります。 

症状や異変を正確に伝える

動物病院で診察を受ける際には、爬虫類の症状や異変を正確に伝えることが重要です。自宅で症状が現れていても、病院でも同様に観察できるとは限りません。

具体的には、以下のような項目を記録しておくとよいでしょう。

  • 症状や現れ始めてた日
  • 日常的な餌の摂取量
  • 経時的な体重の変化
  • 排泄の頻度や状態
  • 日々の行動変化

動物病院に受診する際には不安にもなり、正確に症状や異変を思い出して伝えるのは難しいものです。受診前に具体的な内容をメモしておくなど、正確に伝える工夫が大切です。

 爬虫類の異変を見逃さないためのポイント

爬虫類の異変を見逃さないためのポイント

爬虫類の健康状態の変化を見逃さないために、以下のポイントを抑えましょう。

  • 日常的な食事量や排泄物の状態確認
  • 行動の変化がないかどうか
  • 目や皮膚の状態・脱皮のチェック

それぞれ具体的に解説します。

 日常的な食事量や排泄物の状態確認

食事量や排泄物の状態は健康状態をよく現しているため、日常的に観察しておくことが大切です。いつもより餌を食べる量が少なかったり、排泄物の色や形が普段と違う場合には、体調に何らかの異変が起きている可能性があります。

  • 毎日の食事量を記録しておく
  • 食べるペースや量に変化がないか観察
  • 排泄物の色や形、硬さを確認する
  • 排泄物のなかに消化されていない餌はないか
  • 血のようなものが混じっていないか

これらのポイントを抑えて、食事量や排泄物の確認をしましょう。

 行動の変化がないかどうか

普段の行動と異なった動きをしていないかも異変を見逃さないためのポイントです。些細な行動の変化のなかにも体調不良が隠されていることは少なくありません。

  • 動きが鈍くなっている
  • いつもは活発な時間帯でも動かなくなる

これらの変化には病気やストレスが原因となって引き起こされている可能性があります。

  • 物かげなどに隠れている頻度が増えている
  • いつもより攻撃的になっている
  • 落ち着きがなく怯えている

このような行動の背景には、飼育環境の悪化やストレス、体調不良などが隠れている場合があります。小さな変化にも気付けるように普段からの観察が大切です。

 目や皮膚の状態・脱皮のチェック

爬虫類の健康状態は、目や皮膚の異変に現れます。以下のポイントを抑えながら確認をしましょう。

【目のチェックポイント】

  • 目が澄んでいて輝きがあるか
  • 目が曇っていたり腫れていたりしていないか
  • 目を頻繁に擦ったり閉じたりしていないか
  • 左右の目に違いはないか

【皮膚のチェックポイント】

  • 皮膚の色が均一で斑点や赤みがないか
  • 鱗や甲羅部分に傷や腫れがないか
  • 皮膚がかんそうしてめくれていないか
  • 寄生虫が付着していないか

【脱皮のチェックポイント】

  • 脱皮が全身から均一に行われているか
  • 指先や目の周りなどに古い皮膚が残っていないか
  • 脱皮後の鱗や甲羅に異常がないか確認

 爬虫類の健康を維持するためにできる日常ケア

爬虫類の健康を維持するためにできる日常ケア

爬虫類が病気にならないため、日頃からのセルフケアが大切です。

  • 適切な飼育環境の管理
  • 栄養バランスを考えた餌やりの工夫
  • 定期的な健康チェックを行う

これらのポイントをしっかり抑えて、病気になりにくい環境を整えるようにしましょう。

 適切な飼育環境の管理

適切な飼育環境は、爬虫類の健康維持の基本です。爬虫類が快適に過ごせるように、温度や湿度、照明の管理を徹底しましょう。

紫外線ライトを配置することでカルシウム吸収を促進させ、健康な骨格を保つことにつながります。湿度が低い場合は加湿器を用いて適切な湿度に保つようにしましょう。脱水症状や脱皮不全を防ぐことにつながります。

また、爬虫類の様子を観察しながら飼育環境を定期的に見直すことも大切です。ストレスを感じさせにくい飼育環境にこだわりましょう。

 栄養バランスを考えた餌やりの工夫

餌の与え方にも工夫を加えることで健康維持につながります。

爬虫類はカルシウム不足になりやすい動物とされています。餌にカルシウムやビタミンのサプリメントを混ぜて与えることで、栄養バランスが整いやすくなります。

また、餌の種類を変更することで偏食を防ぐこともできます。さまざまな栄養を摂取できるよう、餌の種類を定期的に見直すようにしましょう。

 定期的な健康チェックを行う

動物病院で定期的に健康チェックを受けることも大切です。飼い主のセルフチェックのみでは、気付きにくい症状や初期段階の病気を見落としてしまう可能性があります。

目や皮膚、餌の摂取量や排泄物など、少しでも気になる異変が現れた際には、早めに獣医師に相談することが大切です。

まとめ

爬虫類は犬や猫と異なり、健康状態の変化がわかりにくい動物です。そのため、飼い主による丁寧な観察が、病気を早期発見するためにはとても大切です。

また、爬虫類の診療経験が豊富な動物病院は少ないとされています。病気になってから慌てて探すのではなく、異変が起こる前からかかりつけ医を見つけることもおすすめです。

本記事で紹介した、動物病院に連れて行くべき症状と受診時の注意点が、大切なペットの健康管理に役立ててもらえれば幸いです。

参考文献