動物病院のインコの診療|主な病気や症状、動物病院へ連れて行くときの注意点などを解説

動物病院のインコの診療|主な病気や症状、動物病院へ連れて行くときの注意点などを解説

インコは小さくて愛らしいペットですが、体調の変化がわかりにくく、病気のサインを見逃しやすい動物です。インコが体調を崩したときにはすでに病気が進行していることも少なくありません。しかし、「どのような病気が考えられるの?」「動物病院ではどのような診療をするの?」と不安に思う方もいるでしょう。

本記事では動物病院のインコの診療について以下の点を中心にご紹介します。

  • インコの異変に気付くためには
  • インコの病気と症状
  • インコを動物病院へ連れて行くときの注意点

動物病院のインコの診療について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

インコの異変に気付くためには

インコは体調の変化を隠す習性があるため、飼い主が日頃から注意深く観察することが大切です。普段と変わらず元気に見えても、見た目の変化や行動の違いが病気のサインであることもあります。

インコの異変に気付くためには、以下のことに気をつけましょう。

  1. 見た目のチェックポイント
    ・くちばし
    異常に伸びていたり、変形していないか確認しましょう。くちばしの変形や過度な伸びは、肝臓疾患の兆候かもしれません。
    ・鼻
    汚れや変色がないかをチェックしましょう。特にオスの鼻が茶色く変色している場合は、精巣腫瘍の可能性も考えられます。
    ・羽
    換羽期以外で異常に抜けたり、血がついていたりする場合は、自咬症やウイルス性疾患(PBFD)の可能性があります。
    ・足、爪
    爪が過度に伸びていたり、出血が見られないか確認しましょう。
    ・お腹
    異常に膨らんでいる場合は、内臓の病気が疑われることがあります。
  2. 行動や健康状態のチェックポイント
    ・食欲と食事量
    毎日のフードの減り具合を確認し、急に食べなくなったり、食べる量が減っていないか注意しましょう。
    ・動きと鳴き声
    普段よりも動きが鈍い、鳴き声が小さい・弱々しいなどの変化がある場合は、体調がすぐれない可能性があります。
    ・体重の変化
    短期間での急激な体重減少は要注意です。定期的に体重を測ることで、異変に早く気付くことができます。

これらのポイントを注意深く観察し、気になる点がある場合はすぐに動物病院で診察を受けるようにしましょう。

インコの病気と症状

インコはどのような病気にかかることがあるのでしょうか?
症状と併せて詳しく解説します。

そのう炎

インコが頻繁にあくびをする、口臭が強い、嘔吐する、水を異常に多く飲むなどの症状が見られる場合、そのう炎の可能性があります。
そのう炎は、インコを含む鳥類によく見られる病気の一つで、食道と胃をつなぐ”そのう”と呼ばれる器官で細菌や真菌(カビ)、原虫などが異常に繁殖し、炎症を引き起こすことで発症します。
健康なインコのそのう内にも細菌は存在しますが、不適切な食事や不衛生な環境によって細菌のバランスが崩れると、細菌が異常に増殖し、発症リスクが高まります。
特に、人間の食べ物を与えることは細菌の繁殖を助長するため注意が必要です。

動物病院によっては、身体検査や糞便検査に加えて”そのう液検査”を行っている場合もあるため、気になる症状がある場合は獣医師に相談するとよいでしょう。

メガバクテリア症(AGY症)

嘔吐や下痢、未消化のフン、黒っぽい便などの異常が見られる場合”メガバクテリア症(AGY症)”の可能性があります。

メガバクテリア症は、”マクロラブダス”という真菌(カビ)の一種が鳥の胃に感染し、嘔吐や下痢などの胃炎症状を引き起こす病気です。

鼻炎

インコも人間と同じように”鼻炎(鼻かぜ)”にかかることがあります。
もし何度もくしゃみを繰り返し、鼻水が出るようであれば、鼻炎を発症している可能性があります。

鼻炎とは、鼻腔の粘膜が炎症を起こし、くしゃみや鼻水などの症状が現れる病気です。主な原因は、免疫力の低下による細菌感染です。ほかにも、真菌(カビ)による感染、アレルギー、乾燥、ストレスなどが影響することもあります。

治療方法は原因によって異なり、細菌感染による場合は抗生物質、真菌が原因の場合は抗真菌薬を使用して治療を行います。

卵管蓄卵材症(らんかんちくらんざいしょう)

インコの腹部が張っていたり、不自然に膨らんでいたりする場合”卵管蓄卵材症”の可能性があります。

卵管蓄卵材症とは、卵白や卵黄、卵殻膜などの卵の構成成分が卵管内に蓄積してしまう病気です。
卵材が大量に溜まると、腹部が膨張し、さらに呼吸器を圧迫することで呼吸困難を引き起こすことがあります。

詳しい発症メカニズムはまだわかっていませんが、持続的な発情が関係していると考えられています。

予防のためには、不要な発情を抑えることが重要です。また、早期発見・早期治療が大切なため、腹部の異常な膨らみが見られた場合は、速やかに動物病院を受診することをおすすめします。

疥癬症(かいせんしょう)

疥癬症(かいせんしょう)は、トリヒゼンダニの寄生によって引き起こされる皮膚病で、インコのような小鳥に多く見られます。
症状が進行すると衰弱し、命に関わることもあるため、早期発見と適切な治療が重要です。

主な症状として、まず顔や足の皮膚異常が挙げられます。顔周辺や足の皮膚が白く厚くなり、カサカサとしたうろこ状の変化(角化亢進)が見られ、進行するとさらに顕著になります。
次に、爪やくちばしの異常な伸びも特徴的な症状の一つです。角化亢進の影響で爪やくちばしが通常よりも異常に伸び、食事や日常生活に支障をきたすことがあります。

トリヒゼンダニは鳥同士の接触によって感染が広がるため、発症した鳥をほかの鳥と隔離することが感染予防には欠かせません。
宿主の体を離れると長く生存できないとされていますが、感染の疑いがある場合は早めに適切な処置を行い、ほかの鳥への影響を防ぐことが大切です。

動物病院のインコの診療について

動物病院でのインコの診療について以下で詳しく解説します。

動物病院で受けられるインコの健康診断とは

インコの健康を維持するためには、定期的な健康診断を受けることが大切です。
鳥は体調が悪くてもそれを隠す習性があるため、飼い主が気付いたときにはすでに病気が進行していることも少なくありません。健康診断を通じて早期に異常を発見し、適切なケアを行うことが重要です。

動物病院で行われるインコの健康診断には、以下のような検査があります。

  • 身体検査
    インコの全身を視診・触診し、羽毛や翼の状態、筋肉や脂肪のつき方、骨格や足・指の異常を確認します。また、体重測定や聴診も行い、呼吸音や心音の異常をチェックします。
  • 糞便検査
    インコの糞を顕微鏡で観察し、細菌や真菌(カビ)、寄生虫の有無を確認します。また、消化機能の状態も調べることができます。
  • そのう液検査
    そのうは、食道と胃の間にある食べ物を一時的に貯める器官です。そのう液を採取し、顕微鏡で細菌やカビ、寄生虫がいないかを調べます。
  • 遺伝子検査(PCR検査)
    PBFD(鳥類のウイルス性疾患)やオウム病(クラミジア感染症)などの感染症の診断を行う検査です。PBFDは同居する鳥への感染リスクがあり、オウム病は人にも感染するため、一度は検査を受けることが推奨されます。

インコの治療費の目安

インコの治療費は、病気やケガの種類、動物病院によって異なりますが、一般的な費用の目安を知っておくことが大切です。
診察費は初診料が1,000〜1,500円、再診料が500〜1,000円程度とされています。
検査費は、糞便検査やそのう検査が1,000〜1,500円、血液検査が2,000円程度とされ、遺伝子検査が必要な場合は7,000円以上かかることもあります。
治療費に関しては、お薬代が1,000〜2,000円(7日分)、注射が2,000円程度、入院費は1日あたり2,000〜5,000円ほどが一般的です。

また、手術が必要な場合は数万〜数十万円かかることもあり、特に開腹手術は1万5,000円以上とされています。
例えば、ビタミンB1欠乏症やメガバクテリア病などの治療では、診療費や投薬費に加えて入院費が必要となるケースもあるため、事前に費用を確認しておくと安心でしょう。

インコは体調の変化がわかりにくいため、定期的な健康診断を受けることも重要です。いざというときに備え、日頃から治療費の準備をしておくことをおすすめします。

インコの動物病院の選び方

鳥はストレスや寒さに敏感なため、できるだけ長時間の移動は避けたいものです。しかし、近くに動物病院があったとしても、いざ診察が必要になった際に「鳥は診察できない」と断られるケースも少なくありません。そのため、事前に鳥を診てもらえる病院を見つけておくことが重要です。

探す際には、病院のホームページで鳥の診察について具体的な記載があるか確認しましょう。不明な場合は、直接電話で診察の可否や、どのような検査ができるのか問い合わせるのがおすすめです。そのう液検査や糞便検査ができる病院であれば、診察を受けられる可能性があるでしょう。

インコを動物病院へ連れて行くときの注意点

インコを動物病院へ連れて行くときの注意点は以下のとおりです。

キャリーケースに入れる

インコを移動させる際は、専用の小さなキャリーケースに入れるのがおすすめです。注意したいのは、移動中にインコが逃げ出さないようにすることです。しっかりと蓋がロックできるタイプを選び、さらに扉部分に結束バンドやナスカンを取り付けることで、安全性を高めることができます。

温度調節をする

寒い時期は、使い捨てカイロや湯たんぽを活用して保温を行い、温度調節をしましょう。ただし、使い捨てカイロは酸素を多く消費するため、キャリーケースの外側に設置し、空気の通り道を確保することが重要です。

また、暑い時期は、キャリーケースが直射日光に当たらないように注意し、温度が上がりすぎないように対策を行いましょう。黒色や厚手のバッグは熱を吸収しやすいため、避けるのが望ましいです。

餌や水に注意する

移動の際、餌箱をキャリーケースに設置しても問題ありませんが、中身がこぼれないようにしっかりと固定することが大切です。一方で、水は入れないようにしましょう。

移動中、鳥は緊張しているためほとんど水を飲むことがありません。また、短時間であれば水がなくても問題ないとされています。

床材や止まり木に気をつける

鳥かごには、複数の止まり木を設置することが大切です。異なる太さの止まり木を選ぶことで、鳥の足への負担を分散させることができるとされています。

また、自然木を使用すると、より自然な感触を楽しむことができ、鳥自身が快適に感じる場所を見つけやすくなります。ただし、使用する木材が鳥にとって危険がないものであるか事前に確認することが重要です。

便や尿を持参する

診察時に鳥が食欲不振や発情の影響で便をしないこともあるため、自宅で採取した新鮮な便を持参すると、スムーズに検査が受けられます。
便は乾燥しないようにラップで包み、清潔な状態で持ち込みましょう。

インコのために飼い主ができること

インコが病気にならないように、飼い主としてどのようなことに気をつければよいのでしょうか。以下で解説します。

生活環境を清潔に保つ

インコの健康を維持するためには、ケージをこまめに掃除し、清潔な生活環境を整えることが大切です。

便の掃除だけでなく、餌や水を入れる容器も定期的に洗浄し、常に新鮮な食事と水を用意しましょう。これにより、病気の原因となる細菌の繁殖を防ぎ、インコが快適に過ごせる環境を保つことができます。

定期的な健康チェック

普段から体重の変化や便の状態、姿勢を注意深く観察することが大切です。
インコの様子に少しでも異変を感じたら、早めに動物病院へ相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。早期対応が、健康を守るための鍵となります。

飼育環境の保温

野生のインコは温暖な地域で暮らしているため、快適に過ごせる気温は28〜30度程度とされています。寒さには弱いため、冬場はヒーターやエアコンを活用し、一年を通して安定した温度を保つことが大切です。

栄養バランスのよい食事

インコの健康を維持するためには、栄養バランスの取れた食事を提供することが重要です。
しかし、食べ過ぎは肥満や過剰な発情を引き起こす原因となるため、適量を守りながら与えることが大切です。理想的な体重を維持できるよう、日々の食事量をしっかり管理しましょう。

適度な運動

インコの健康を維持するためには、適度な運動が重要とされています。
飼育環境では野生のように飛び回る機会が少なく、運動不足になりやすいため、放鳥の時間を設けて自由に飛べる環境を整えることが大切です。
特に、ケージ内では十分に羽ばたくことができないため、放鳥時にできるだけ広い空間で飛ぶ時間を確保することが望ましいでしょう。
また、運動不足は肥満や体調不良の原因となる可能性があるため、日頃から動きや姿勢の変化を観察し、適切な運動の機会を作ることが重要です。

コミュニケーション

インコは仲間とコミュニケーションを取る生き物であり、飼い主との交流も大切にするとされています。言葉を真似たり、さえずったりするのは、飼い主との関係を深めようとする行動の一つと思われます。
日々声をかけたり、一緒に遊ぶ時間を作ることで、インコは安心感を得られるでしょう。
また、鳴き声には感情が表れるため、日頃からインコの様子を観察し、気持ちを理解することも大切です。

発情を抑える

インコは年に2回ほど発情期を迎えますが、過度な発情を防ぐことが健康維持のために重要です。発情期以外の時期に発情を誘発しないよう注意が必要です。
飼い主との過度なスキンシップや環境の影響により、季節に関係なく発情してしまうことがあります。
例えば、背中を頻繁に撫でるなどの行為は、発情を助長する可能性があるため控えましょう。

まとめ

ここまで動物病院のインコの診療についてお伝えしてきました。動物病院のインコの診療についての要点をまとめると以下のとおりです。

  • インコの異変に気付くためには、見た目や行動の異変をチェックすることが大切である
  • 動物病院で受けられるインコの健康診断では、身体検査、糞便検査などが挙げられる
  • インコのために飼い主ができることは、生活環境を清潔に保ったり、定期的な健康チェックをしたりすることである

インコは体調の変化を隠す習性があるため、飼い主が異変に気付いたときにはすでに病気が進行していることも少なくありません。普段から健康チェックを習慣化し、少しでも異変を感じたら早めに動物病院を受診することが大切です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【参考文献】