猫の中毒症状とは?猫に与えてはいけない食べ物や成分を解説

猫 中毒

中毒とは、体に入った有害物質によって病気や障害が起こることをいいます。猫の中毒は、症状や原因によってさまざまな危険性をはらんでいることをご存知ですか?
本記事では、猫の中毒について以下の点を中心にご紹介します!

  • 猫が中毒を起こしたときの症状
  • 猫が中毒を起こしたときの対処法
  • 猫が中毒を起こさないためにできること

猫の健康と幸せのためにも、ご参考いただけると幸いです。ぜひ最後までお読みください。

猫の中毒とは

猫の中毒は、有害な物質を飲み込んだり、吸い込んだり、皮膚から吸収することによって生じる反応のことです。猫は体が小さいため、少量の物質でも中毒を起こしやすいとされています。また、人間と生理機能が異なるため、人間にとって無害なものでも猫にとっては有害な場合があります。

中毒の原因は多岐にわたります。例えば、人間用の薬、キャットフードのカビ、観葉植物、ネギ類などが挙げられます。症状も原因物質によって異なり、流涎(よだれを流すこと)、縮瞳(瞳孔が縮むこと)、震え、運動失調、痙攣発作、高体温などの神経症状や、嘔吐、下痢、口腔内のただれなどの消化器症状、出血傾向や貧血症状などがあります。

猫の中毒は、さまざまな原因によって引き起こされるため、飼い主は日常的に猫の行動や環境に注意を払う必要があります。異変を感じたら、早急に獣医師の診察を受けることが重要です。

猫が中毒を起こしたときの症状

猫の中毒症状は、摂取した物質の種類や量、猫の体格や体質によって異なります。中毒が疑われる場合、特に症状が重い場合や摂取後時間が経過している場合は、迅速な治療が必要です。以下に猫の中毒症状について詳しく解説します。

下痢や嘔吐、涎

猫が中毒を起こした際の主な症状には下痢、嘔吐、そしてよだれが多くなることがあります。この症状は、猫が観葉植物や腐った食べ物など、有害な物質を摂取した結果として現れます。特に観葉植物の誤食は、下痢や嘔吐、よだれを引き起こす主な原因の一つです。また、殺鼠剤のような化学物質による中毒では、血液の凝固不全の症状が見られることもあります。

失禁や縮瞳(しゅくどう)、震えや痙攣

猫が中毒を起こした際に見られる主な症状には、失禁、縮瞳(しゅくどう)、震え、そして痙攣があります。この症状は、猫が有害な物質にさらされた結果として現れることも少なくありません。

失禁:中毒によって神経系が影響を受けると、猫は自分の排泄をコントロールできなくなることがあります。これは、特に有機リン系の強力な殺虫剤などによる中毒の場合に見られる症状です。

縮瞳(しゅくどう):猫の瞳孔が異常に縮むことも、中毒の一つの兆候です。これは、神経系に影響を与える物質によって引き起こされることがあります。

震えと痙攣:中毒によって神経系が刺激されると、猫は震えや痙攣を起こすことがあります。この症状は、特に有機リン系殺虫剤などの化学物質による中毒で見られることも少なくありません。

これらの症状は、猫が中毒状態にあることを示している可能性が高いため、兆候がある場合は、速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。

貧血症状

猫が中毒になると、さまざまな症状が現れますが、その中でも貧血は特に注意が必要な症状の一つです。貧血は、猫の体内で赤血球が破壊されたり、血液の生成が妨げられたりすることによって引き起こされます。特定の物質による中毒が原因で貧血が発生することがあります。

  • クマリン系殺鼠剤による中毒:クマリン系の殺鼠剤に含まれる成分は、猫の体内で血液の凝固を妨げます。これにより、猫は出血しやすくなり、体のいたるところからの出血が見られることがあります。重症の場合、肺出血などを引き起こし、命に関わることもあります。
  • ネギ類の摂取:人間が普段食べている野菜の中には、猫にとって有害なものが含まれています。特にネギ類(玉ねぎ、長ねぎなど)を摂取すると、猫の赤血球が破壊され、溶血性貧血を引き起こすことがあります。溶血が進むと、尿の色が赤褐色や黒色に変化することがあります。

急性腎不全

急性腎不全は、猫の腎臓が突然機能不全に陥り、体外に有害な物質を排出できなくなる状態を指します。この状態は、慢性腎不全と異なり、急激に進行し、短期間で命に関わることがあります。

急性腎不全の原因は多岐にわたりますが、中毒が一つの大きな原因です。例えば、エチレングリコール(不凍液の原料)、ブドウ、ユリ科植物、生物毒、薬など、腎臓に対して毒性を持つ物質の摂取が挙げられます。これらの物質は腎臓に直接ダメージを与え、急激な機能低下を引き起こします。

急性腎不全の症状には、急激な食欲不振、排尿の減少、元気のなさ、嘔吐、痙攣などがあります。

急性腎不全の治療には、点滴や薬物療法を用いて、腎臓の負担を軽減し、体内の毒素を排出します。急性腎不全は命に関わることもあるため、迅速な対応が必要です。

猫が中毒を起こす原因

猫が中毒を起こす原因はさまざまです。食べ物、薬品・化学物質、植物の三つに分けて以下に解説します。

食べ物

猫が中毒を起こす原因として、特定の食べ物が挙げられます。以下に、猫にとって危険な食品とその理由を解説します。

  • ネギ類(玉ねぎ、長ねぎ、にんにく、ラッキョウ、ニラ):ネギ類に含まれるアリルプロピルジスルファイドは猫の赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こします。これにより、尿の色が赤色〜茶褐色に変わり、耳の中や歯茎が白っぽくなることがあります。
  • チョコレート: 猫はチョコレートに含まれるテオブロミンを分解できないため、下痢や嘔吐などの中毒症状を引き起こします。過剰摂取すると死亡する危険もあります。
  • アボカド:アボカドに含まれるペルシンという物質は猫にとって毒性があり、痙攣や呼吸困難を引き起こすことがあります。
  • レーズン、ぶどう:これらを食べることで嘔吐や腎機能障害を引き起こす可能性があります。原因は明確にはわかっていませんが、避けるべきです。

これらの食品は、猫にとって有害であり、中毒症状を引き起こす可能性が高いため、与えないようにしましょう。この食品を猫が触れない場所に保管することも、中毒を予防するために重要です。

薬品・化学物質

猫が中毒を起こす原因として、薬品や化学物質が挙げられます。以下に、猫にとって危険な薬品や化学物質とその理由を解説します。

  • 鉛:鉛は猫の体に有害な影響を及ぼし、中毒を引き起こす可能性があります。
  • エチレングリコール(昔の保冷剤):エチレングリコールは、猫にとって非常に毒性が高く、摂取すると重篤な健康被害を引き起こすことがあります。
  • 有機リン(殺虫剤、除草剤):有機リン系の化学物質は、猫に対して強い毒性を持ち、中毒症状を引き起こすことがあります。
  • カーバメート(殺虫剤):カーバメートも猫に対して毒性があり、中毒を引き起こす可能性があります。
  • 塩素系漂白剤:塩素系漂白剤は、猫の皮膚や呼吸器に刺激を与え、中毒症状を引き起こすことがあります。
  • 除草剤:除草剤に含まれる化学物質は、猫に有害であり、中毒を引き起こすことがあります。
  • 人間の薬:人間用の薬品、特に殺鼠剤、車の不凍液、殺虫剤、解熱鎮痛剤(アスピリンやアセトアミノフェンなど)は、猫にとって非常に危険です。これらの薬品は猫の体内で代謝されず、肝炎などの重篤な症状を引き起こすことがあります。

これらの薬品や化学物質は、猫にとって有害であり、中毒症状を引き起こす可能性が高いため、与えないように注意が必要です。

植物

猫が中毒を起こす原因として、特定の植物が挙げられます。以下に、猫にとって危険な植物とその理由を解説します。

  • アサガオ(種):アサガオの種には毒性があり、猫が摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。
  • ツツジ(すべて):ツツジ全体に毒性があり、猫が摂取すると健康に害を及ぼすことがあります。
  • シクラメン(根・球根):シクラメンの根と球根には毒性があり、猫が摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。
  • ポインセチア(葉・茎):ポインセチアの葉や茎には毒性があり、猫が摂取すると中毒症状を引き起こすことがあります。
  • ユリ(すべて):ユリの全体に毒性があり、特に腎不全を引き起こす可能性が高いため、猫にとって非常に危険です。
  • チューリップ(球根):チューリップの球根には毒性があり、猫が摂取すると中毒症状を引き起こすことがあります。
  • キキョウ(根):キキョウの根にも毒性があり、猫が摂取すると健康に害を及ぼすことがあります。

猫が中毒症状が起こしたら

猫が中毒を起こした際は速やかに動物病院に連絡しましょう。その際、以下の注意点に気をつけましょう。

周辺で何か食べてしまったものはないか探す

猫が中毒症状を示した場合、まず行うべきことは、猫が何か有害なものを食べたかどうかを確認することです。以下に、その手順と注意点を解説します。

1. 周辺の確認
猫が中毒症状を示した場合、まずは猫の周囲を確認して、何か食べた形跡がないかを探します。これには、食べ物の残骸、植物の破片、薬品の容器などが含まれます。

2. 食べ物や植物の確認
猫がアクセスできる場所にある食べ物や植物を確認します。猫に有害な食べ物や植物がある場合、それが中毒の原因の可能性があります。

3. 薬品の確認
猫が薬品を口にした可能性がある場合、それが何であるかを特定し、獣医師に伝えることが重要です。薬品が体に付着している場合は、流水で洗い流し、猫が舐めないようにします。

4. 獣医師への連絡
猫が何かを食べた形跡がある場合、または中毒症状が見られる場合は、すぐに獣医師に連絡します。獣医師には、猫が食べた可能性のあるものと現在の症状を詳しく伝えます。

5. 応急処置の実施
獣医師の指示に従って、必要な応急処置をします。自己判断で吐かせるなどの処置をすることは避け、獣医師の指示に従うことが重要です。

無理に吐かせない

猫が中毒症状を示した場合、無理に吐かせることは避けるべきです。以下に、その理由と対処法を解説します。

  • 吐かせることのリスク:猫が毒物を口にした場合、飼い主さんが吐かせようとすることがありますが、リスクもあります。例えば、塩素系の洗剤やトイレ用の洗剤など強い薬品を摂取した場合、吐かせることによって逆に食道や口腔内にダメージを与える可能性があります。
  • 適切な対処法:毒物を摂取した場合の対処法は、摂取した物質によって異なります。殺虫剤などを口にした場合は早めに吐かせることが望ましい場合もありますが、自己判断せずに動物病院への相談が重要です。

猫が毒物を摂取した疑いがある場合は、まず動物病院に連絡し、獣医師の指示に従ってください。猫が何を摂取したか不明な場合でも、すぐに動物病院へ連れて行き、獣医師に相談することが重要です。

身体に薬品がついた場合

猫が中毒症状を示し、その身体に薬品が付着している場合の対処法について、以下に解説します。

  • 薬品の洗い流し:猫の体に薬品が付着している場合、まずは流水でその部分を洗い流します。これは、猫が自らその部分を舐めてさらなる中毒を引き起こすのを防ぐためです。
  • 体を舐めないようにする:薬品を洗い流した後、猫がその部分を舐めないようにするために、タオルで優しく拭き取ります。これにより、薬品が猫の口や消化器官に入るのを防ぎます。
  • 獣医師への連絡:薬品を洗い流した後、すぐに動物病院に連絡し、猫がどの薬品に触れたか、どの部分に薬品が付着したかを伝えます。獣医師からの指示に従い、必要な応急処置をします。

猫が中毒を起こさないためにできること

猫が中毒を起こさないために、飼い主はどのような工夫ができるのでしょうか。具体的に何をしたらいいのか以下で解説します。

屋外で注意すること

猫が屋外で中毒を起こさないために注意すべき点について、以下に解説します。

  • 屋外での危険物質への注意:猫が屋外に出る場合、危険な物質が使用されている場所から遠ざけることが重要です。特にゴミ箱や排水溝などは、有害な物質が捨てられている可能性があります。
  • ヒキガエルの危険性:屋外では、ヒキガエルに特に注意が必要です。ヒキガエルは耳下腺から強力な毒素を分泌し、猫がこれを舐めたり噛んだりすると、毒素が口の粘膜から吸収され、心臓に異常を引き起こすことがあります。最悪の場合、2〜3時間以内に死亡することもあります。猫がヒキガエルと遊んでいるのを見つけた場合は、すぐに猫を引き離し、口の中をよく水で洗い流してください。その後、速やかに動物病院へ連れて行くことが重要です。
  • 梅雨時期の注意:梅雨時期にはヒキガエルが多く見られるため、この時期は特に注意が必要です。冬眠に入るまで油断せず、猫を中毒から守るために警戒することが大切です。

猫を屋外に出す場合は、常に猫の周囲の環境に注意を払い、有害な物質や生物との接触を避けることが重要です。

犬や人間用のものを与えない

猫が中毒を起こさないためにできることとして、「犬や人間用のものを与えない」という点が重要です。以下に、その理由と注意点を解説します。

  • 犬用製品の使用を避ける:犬用の製品、特にノミ取り首輪などは、猫に使用すると中毒を引き起こす可能性があります。猫は犬とは異なる生理機能を持っているため、犬用の製品に含まれる成分が猫にとって有害な場合があります。
  • 人間用の薬を与えない:人間用の薬は猫にとって非常に危険です。猫は人間と異なる代謝機能を持っているため、人間用の薬を摂取すると重篤な中毒症状を引き起こすことがあります。
  • 専用の製品を使用する:猫には猫用の製品を使用することが重要です。猫用の製品は猫の生理に合わせて作られているため、中毒のリスクを減らします。

中毒物質は猫が触れない所へ保管する

猫が中毒を起こさないためにできることとして、「中毒物質は猫が触れない所へ保管する」ことも重要です。以下に、その理由と注意点を解説します。

  • 食品の管理と保管場所の見直し:猫は戸棚を開ける方法を覚えることがあるため、猫にとって危険な食べ物の保管場所には鍵をかける、チャイルドロックを取り付けるなどの工夫が必要です。また、部屋に飾る植物の種類も再度確認し、猫に有害な植物がないかをチェックしましょう。
  • 薬品や観葉植物の管理:猫は好奇心旺盛で、薬品や観葉植物など身近にあるものを摂取して中毒を起こすことがあります。特に、人間の頭痛薬に含まれるアスピリンやアセトアミノフェンは猫にとって非常に危険です。これらの薬品は猫が代謝できず、肝炎などの症状を引き起こす可能性があるため、猫の手の届かない場所に保管することが重要です。
  • 玉ねぎ類の摂取に注意:玉ねぎやそのほかのネギ類は、猫にとって有害です。これらを摂取すると、血液中の赤血球を破壊し、血色素尿や貧血の症状を引き起こすことがあります。したがって、これらの食品を猫が触れる範囲に置かないようにしましょう。

まとめ

ここまで猫の中毒についてお伝えしてきました。猫の中毒の要点をまとめると以下の通りです。

  • 猫が中毒を起こしたとき、下痢や嘔吐、涎、失禁や縮瞳(しゅくどう)、震えや痙攣、貧血や急性腎不全に関連した症状を呈する
  • 猫が中毒を起こしたとき、周辺で何か食べてしまったものはないか探し、速やかに動物病院に連絡する
  • 猫が中毒を起こさないために、屋外での危険物質に注意し、中毒物質は猫が触れない所へ保管する

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献