猫の脳腫瘍とは?症状や原因について解説します!

猫 脳腫瘍

猫の脳腫瘍はどのような病気なのでしょうか?

本記事では、猫の脳腫瘍について以下の点を中心にご紹介します。

  • 猫の脳腫瘍について
  • 猫が脳腫瘍になったときの治療法
  • 猫が脳腫瘍にならないための予防法

猫の脳腫瘍について理解するためにもご参考いただけると幸いです。

ぜひ最後までお読みください。

猫の脳腫瘍とは

脳腫瘍は、脳の組織に発生する腫瘍です。これには、脳自体から生じる「原発性脳腫瘍」と、ほかの場所にできた腫瘍が脳へ転移する「転移性脳腫瘍」が含まれます。
脳腫瘍は、その位置によってさまざまな症状を引き起こす可能性があり、初期段階では症状が顕著でないことが多いため、発見が遅れるケースも珍しくありません。
そのため、猫の行動に異変を感じた場合は、脳腫瘍の可能性も考慮し、早めに獣医師の診察を受けましょう。

猫の脳腫瘍について

ここでは、猫の脳腫瘍の主な症状や考えられる原因を詳しく解説します。

症状

猫が脳腫瘍を患うと、腫瘍の位置や大きさによってさまざまな症状が現れます。
主な症状としては、性格や行動の変化が挙げられ、猫が急に攻撃的になったり、臆病になったりすることがあります。身体的な変化も多く、歩行時のふらつき、歩けなくなる、斜頚(首が一方向に曲がる)、眼振(目が規則的に動く)、旋回(同じ方向にぐるぐる回る)などが見られることがあります。
また、けいれんや視覚障害、四肢の麻痺も起こり得ます。

食欲の変化も脳腫瘍の症状であり、食欲不振になることもあれば、逆に過食になることもあります。加えて、失禁や毛づくろいをしなくなるなどの行動の変化も指摘されています。猫が普段と異なる鳴き声を発することもあり得ます。
これらの症状は、脳の腫瘍が周辺の脳や神経などを圧迫することによって引き起こされます。

以上のような行動の変化は脳腫瘍の圧迫によって脳圧が上がった結果、神経の働きがスムーズにいかなくなることが原因です。めまいや頭痛といった症状が伴っている可能性がありますが、これを客観的に評価することは難しいですが、可能性はあるでしょう。
猫の行動や健康状態に異変を感じた場合は、獣医師に相談しましょう。

原因

猫の脳腫瘍の原因は、現時点で明確には分かっていません。遺伝的な要因の関与も考えられていますが、確固たる証拠はありません。
また、猫に脳腫瘍の疑いがある場合、神経症状やけいれんが現れることが多いようですが、これらの症状は脳腫瘍に限定されるわけではありません。

猫が発症しやすい脳腫瘍

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猫が発症する脳腫瘍の多くは、転移性ではなく原発性の腫瘍とされています。
また、いずれの場合も高齢猫の発症が多くなります。

以下では、そんな原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍の主な種類を解説します。

原発性の脳腫瘍:髄膜腫

髄膜腫は、脳を覆うクモ膜に発生する腫瘍で、猫の脳腫瘍全体の約60%を占めるといわれています。
多くは良性であり、病状の進行具合によっては、治療によって良好な結果を得られるとされています。

猫の髄膜腫は、腫瘍の成長によって脳に圧力をかけ、さまざまな神経症状を引き起こします。その症状は腫瘍の位置や大きさによって異なりますが、歩行障害やけいれん発作などが代表的です。
また、性格の変化や反応の鈍さ、食欲の変動、トイレの失敗なども見られることがあります。
特にけいれん発作は、進行すると発作の長さや頻度が増し、重篤な状態に陥ることもあります。

髄膜腫の診断には、MRIなどの高度な医療機器が必要となり、治療できる病院も限られています。
もし猫が上記のような症状を示した場合は、はやめに獣医師の診察を受けることが重要です。

現在のところ、猫の髄膜腫の発生原因は明確にはわかっていません。

原発性の脳腫瘍:神経膠腫(グリオーマ)

神経膠腫は、神経上皮細胞から発生する悪性の脳腫瘍の一種です。この病気は神経膠細胞に由来し、猫においても発生することが知られています。

また腫瘍が成長するにつれて、脳の周りに血流の変化や炎症が生じ、脳浮腫(脳のむくみ)を引き起こします。これにより、脳の機能に影響が及び、さまざまな神経症状が現れることがあります。

神経膠腫は、一度発症すると、進行が速く予後不良の傾向にあります。
治療法には放射線治療や抗がん剤治療がありますが、主に症状の管理や生活の質の維持に焦点を当てることが多いとされています。

転移性の脳腫瘍:リンパ腫

リンパ腫は、リンパ系細胞が異常増殖する病気です。猫の全腫瘍の約1/3が造血系腫瘍であり、その中でも約50〜90%がリンパ腫を占めているとされています。
リンパ腫はリンパ節や脾臓などのリンパ組織から発生することが多いですが、体のどの組織からも生じる可能性があります。

猫のリンパ腫は、発生部位に応じて異なるタイプに分類されます。代表的なものには前縦隔型、消化器型、多中心型、節外型などがあります。
症状としては、元気の低下、食欲不振、嘔吐、下痢などが見られます。

また、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染している猫は、リンパ腫を発症するリスクが高いとされています。

転移性の脳腫瘍:血管肉腫

血管肉腫は、がんの一種で、特に血管の内皮から発生する悪性腫瘍です。このため、血管の密集している肝臓や脾臓での発生が多く見られます。

血管肉腫の治療は困難で、治癒が難しいとされています。手術や抗がん剤治療を施しても、予後は厳しく、診断後の平均余命は約半年程度と考えられています。
早期段階では症状がほとんど現れないため、発見が困難なのが特徴の一つです。
猫では、発生率が100頭に2頭程度と低いものの、人間では100人に一人以下の発生率といわれていますので、血管肉腫の発生率は、人間より猫の方が高いといえるでしょう。

転移性の脳腫瘍:乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は、乳腺に発生する腫瘍のことで、特に早期避妊手術を受けていないメス猫に多く見られます。
また、若い猫に発生することもありますが、一般には10歳前後の猫でよく見られる腫瘍で、まれにオス猫にも発生します。

猫の乳腺は全部で8つあり、これらはそれぞれ上部と下部のリンパ節につながっています。
乳腺腫瘍はこれらのどの乳腺にも発生する可能性があり、一つだけに限らず、複数同時に発生することもあります。

猫の乳腺腫瘍の約80〜90%が悪性であり、腫瘍の大きさが3cmを超える場合、リンパ節への浸潤がある場合、高齢の猫、遠隔転移がある場合などは、特に予後が悪いとされています。

乳腺腫瘍は乳汁を分泌する乳腺組織が腫瘍化することで発生する病気です。

猫の脳腫瘍を調べるための検査

猫にけいれんや行動の変化、感覚の異常などの神経症状が見られた場合、初期段階では視診と神経学的検査が行われますが、脳腫瘍の疑いがある場合、CT検査やMRI検査による精密な検査が必要になります。

また、血液検査やX線検査は、脳腫瘍の診断には直接的ではありませんが、他の健康問題を検出するために役立ちます。

加えて、猫の免疫系の状態を確認するためにFIV(猫免疫不全ウイルス)やFeLV(猫白血病ウイルス)の検査が行われることがあります。
特に猫白血病ウイルスに感染している場合は、このウイルスが関連する腫瘍の可能性もあるので、必ず確認します。

猫が脳腫瘍になったときの治療法

猫の脳腫瘍治療はどのように行われるのでしょうか?
以下で詳しく見ていきましょう。

外科手術

猫の脳腫瘍に対する根治的な治療手段の一つが外科手術です。外科手術は、腫瘍がまだほかの組織に浸潤していない場合に推奨されます。脳腫瘍が周囲の組織に広がっていなければ、手術によって腫瘍を取り除ける場合があります。

しかし、他の臓器から転移した続発性脳腫瘍の場合、がん細胞が血液やリンパ液を介して全身に広がっているため、根治的な手術は困難です。こうした場合、症状緩和を目的とした姑息手術が行われることもありますが、多くの場合、手術は適用されません。

外科手術ができるかどうかは、CT検査やMRI検査によって腫瘍の大きさや位置が明らかになった後に判断されます。しかしながら、脳の外科手術は高度な技術を要求されるため、この手術を提供できる病院は限られています。

飼い主さんが脳腫瘍の外科的切除を希望する場合、獣医師は二次診療施設への紹介を行います。
二次診療施設では、猫の状態を再度評価し、手術の適応性、手術方法などを検討します。

放射線療法

猫の脳腫瘍治療において、猫の脳腫瘍治療に放射線療法が用いられることがあります。この方法は、放射線治療装置を用いて、体表面積によって計算された放射線量を複数回に分割して脳腫瘍に対し直接放射線を照射し、腫瘍細胞の成長を阻害することが目的です。
しかし、放射線治療は全身麻酔が必須であり、麻酔薬は猫の体に負担をかける可能性があります。特に老猫には麻酔のリスクが増大するため、治療の判断には慎重さが求められます。

また、放射線治療は被爆のリスクを伴うため、治療を繰り返すことには限界があります。
さらに、特殊な設備が必要なため、すべての病院で治療できるわけではありません。

放射線療法の効果は腫瘍の種類によって異なります。
そのため、治療を検討する際には、腫瘍の特性を詳細に理解し、適切な治療計画を立てることが重要です。

化学療法

化学療法とは、がんの進行を抑制し、症状を緩和するために用いられる治療法です。この治療では、抗がん剤と呼ばれる薬剤が主に使用されます。
化学療法は、外科手術や放射線療法と併用されることが多く、がんの種類や進行度に応じて治療法が選ばれます。

特に、髄膜腫などの特定の脳腫瘍に対しては、化学療法が効果を示すことが知られています。しかし、脳は血液脳関門という特殊な仕組みを持っており、これが抗がん剤の脳内への侵入を阻害することがあります。
そのため、脳腫瘍に対する化学療法の効果は必ずしも保証されるものではありません。

また、化学療法には副作用が伴うことがあります。
そのため、治療を行うかどうかは、猫の健康状態やがんの種類、進行度を考慮し、医師との十分な相談を経て決定されることが重要です。

投薬

脳腫瘍によって引き起こされる症状は多岐にわたり、それらを緩和するためにさまざまな薬剤が用いられます。

ステロイドは、脳腫瘍によって引き起こされる脳の腫れや圧力を減少させる働きがあります。
また、脳圧の低下を目的とした利尿剤も使用されることがあります。

けいれん症状がある場合には、抗てんかん薬の投与が行われることもあります。

これらの薬剤は症状を抑えるのには役立ちますが、あくまで対症療法であり、脳腫瘍そのものを治療するものではありません。そのため、脳腫瘍の根本的な治療には、外科手術による腫瘍の切除や放射線療法が必要となる場合が多いようです。

また、脳腫瘍のある場所や猫の健康状態に応じて、治療方法が異なります。
外科手術、放射線療法、化学療法など、複数の治療法を組み合わせて行うこともあります。

猫の脳腫瘍は予防できるの?

特に原発性の脳腫瘍は予防が難しいですが、転移性の脳腫瘍については、原因となる腫瘍を未然に防ぐことで猫の長生きにつながります。
例えば、乳腺腫瘍のリスクを減らすためには、若いうちの避妊手術が推奨され、肺がんの予防には、猫を副流煙から守るための環境づくりが大切です。

また、猫の脳腫瘍は多くが悪性であるため、早期発見と早期治療が鍵となります。
中高齢の猫が普段とは異なる様子を見せた場合、単なる老化と考えず、早目に獣医師の診察を受けましょう。日頃からの観察と、定期的な健康診断が早期発見には重要です。

さらに、脳以外の部位に腫瘍が見つかった場合は、それが脳に転移する可能性も考慮し、迅速に治療を行いましょう。
猫の脳腫瘍を予防する方法はないものの、これらの対策を通じて、猫の健康と長寿をサポートできます。

まとめ

ここまで猫の脳腫瘍についてお伝えしてきました。

猫の脳腫瘍の要点をまとめると以下の通りです。

  • 脳腫瘍には脳自体から生じる「原発性脳腫瘍」と、ほかの場所にできた腫瘍が脳へ転移する「転移性脳腫瘍」がある
  • 猫が脳腫瘍になってしまった場合の治療法としては、外科手術・放射線療法・化学療法・投薬が挙げられる。また、これらの治療法は、脳腫瘍のある場所や猫の健康状態に応じて組み合わせて行われることもある
  • 原発性の脳腫瘍の予防は難しいが、転移性の脳腫瘍については対策により防げる場合がある

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献