猫が足をひきずるときは受診すべき?考えられる病気と受診の目安、対処法を解説

猫が足をひきずるときは受診すべき?考えられる病気と受診の目安、対処法を解説

愛猫が突然足をひきずる様子を見たら、驚きや不安を感じるでしょう。原因として、骨折や捻挫などの外傷だけでなく、整形外科的疾患や神経障害、心理的な要因も考えられます。

この記事では、猫が足をひきずる理由や受診の目安、検査や治療法について解説します。

猫が足を引きずる原因

猫が足をひきずっているのですが、どのような病気が考えられますか?
猫が足をひきずる原因には、外傷や整形外科的疾患が主なものとして挙げられます。しかし、それ以外にも血管や神経などが影響している可能性があります。

一般的な原因として、高所からの落下や事故による骨折、捻挫、脱臼などの外傷があります。これらの場合、発症直後に強い痛みを伴い、足に力が入らなくなり、歩行が困難になります。特に骨折や脱臼は外見では判断しづらいことがあるため、獣医師の診察が必要です。

また、突然後肢の麻痺が現れる場合は、心疾患が関連する大動脈血栓塞栓症が疑われます。これは心筋症などが原因で血栓が詰まり、血流が遮断されることで発症します。この疾患では、強い痛みが生じるとともに、足を地面につけられなくなることが特徴です。

さらに、椎間板疾患や脊髄腫瘍などの神経障害によって足の動きが制限されることもあります。神経の圧迫や損傷が起こることで、正常な歩行が難しくなり、足を引きずるような歩き方になります。

足をひきずる原因は多岐にわたり、正確な診断には症状を総合的に評価することが重要です。
これらの病気で足をひきずる以外に現れる症状を教えてください
足をひきずることは目立つ症状ですが、それ以外にもさまざまな体調の変化が見られることが少なくありません。

例えば、骨折や脱臼などの外傷の場合、患部の腫れ熱感があり、強い痛みを伴います。また、痛みの影響で活動量が減り、食欲や元気がなくなることもあります。

大動脈血栓塞栓症の場合は、突然の後肢麻痺に加えて、足先が冷たくなる、呼吸が速くなるなど、全身状態の悪化が認められることがあります。これは血流障害によって末端部の組織に十分な酸素が届かなくなるためです。

さらに、神経障害の場合は、歩行時のふらつき、排尿や排便機能の異常を伴うことがあります。神経の損傷が進行すると、感覚が鈍くなったり、足を自由に動かせなくなることもあります。

猫は痛みを隠す習性があるため、軽度の変化でも注意深く観察することが重要です。
病気や怪我以外で猫が足をひきずることはありますか?
猫が足をひきずるからといって、必ずしも病気や怪我が原因とは限らず、軽度な理由でも違和感などによって足をひきずることがあります。

例えば、足先や肉球に異物が付着している場合があります。粘着テープや小さなゴミが足裏についていると、歩く際に違和感が生じ、足を地面につけたがらなくなることがあります。また、爪が長すぎたり、折れて出血している場合も、痛みを避けるために足をひきずることがあります。これらの場面では、異物を取り除くか、爪を適切な長さに整えることで改善することがほとんどです。

それ以外にも、心理的な要因が関係している場合があります。例えば、過去に足を痛めた経験がある猫は、痛みがなくなった後でも足をひきずる動作を続けることがあります。また、驚いたり強く叱られたりした過去の経験によって、痛みがない状態でも一時的に歩き方が変わることもあります。

ただし、これらの要因を考慮する際は、病気の可能性を完全に除外した後に判断することが重要です。そのため、心理的なものだから大丈夫と決めつけず、症状の変化などを慎重に観察しましょう。

猫が足をひきずる際の受診目安

猫が足をひきずっている場合にすぐに受診すべきケースを教えてください
猫が足をひきずっているときは、痛みや異常の程度によって対応が変わりますが、以下のような症状が急に現れた場合は速やかに動物病院を受診しましょう。

・足を上げたまま地面につけようとしない
・鳴き続けたり、触られるのを強く嫌がる
・足に腫れや熱感がある

これらの症状が認められた場合は、外傷や整形外科的疾患が疑われる兆候であり、骨折や脱臼を発症している可能性があります。特に骨折は外見だけでは判断がつかないことが多く、対応が遅くなると機能障害が残る可能性があるため、早めの受診が推奨されます。

また、突然後肢が動かなくなった場合には、大動脈血栓塞栓症が疑われます。

・後肢が突然麻痺する
・足先が冷たくなっている
・呼吸が荒くなる、乱れる

これらの症状が認められた場合は、大動脈血栓塞栓症を発症している可能性があります。この疾患は発症から数時間以内に適切な治療を行わないと命に関わる可能性があるため、異常を感じたらすぐに動物病院を受診しましょう。

さらに、歩き方の変化に加えて食欲低下や呼吸の異常がある場合も、内科的または神経学的な疾患の影響が考えられるため、一度診察を受けましょう。
猫が足をひきずっていても自宅で様子を見てもよいケースはありますか?
猫が足をひきずっている場合でも、すぐに受診が必要とは限りません。以下のように症状が軽度であり、改善傾向が見られる場合は、短期間であれば自宅で様子を見ても問題ありません。

・足のひきずりは軽度で、痛みを強く訴えていない
・食欲、元気、排泄が保たれている
・原因が明らかであり、症状が改善傾向にある

例えば、爪が折れて軽く出血している場合や、肉球に小さな異物が付着していた場合は、対処を行えば数日以内に回復することがほとんどです。

ただし、症状が改善しないだけでなく、次第に悪化している場合や、呼吸の乱れ、食欲不振などの症状を伴っている場合は、すぐに獣医師の診察を受けるべきです。

また、変形性関節症などの慢性疾患では初期症状が軽度な足のひきずりとして現れることもあるため、安易に問題ないと判断せず、少しでも異変を感じたら早めの相談が推奨されます。

猫が足をひきずる場合の検査・治療法

猫が足をひきずっている場合、病院ではどのような検査が行われますか?
猫が足をひきずって動物病院を受診すると、まず原因を特定するために総合的な評価が行われます。

初期診察として、視診や触診で腫れや痛みなどを確認します。次にX線検査で骨の異常を評価し、神経疾患の疑いがある場合は、必要に応じてCTやMRIを併せて行います。

また、感染症の可能性が考えられる場合には、血液検査や超音波検査を実施し、炎症や病変の有無を確認することがあります。

このように、検査は猫の症状や疑われる疾患に応じて検査を組み合わせながら行います。
猫が怪我で足をひきずっている場合の治療法を教えてください
外傷によって足をひきずる場合、治療法は損傷の程度や部位によって異なります。

軽度の打撲や捻挫であれば、安静を保ち、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することで改善が期待できます。ただし、薬の使用量や頻度によって副作用のリスクがあるため、獣医師の指示にしたがって慎重に管理しましょう。

骨折など重度の損傷がある場合は、ギプスやプレート固定による外科的治療が行われます。手術によって骨を安定させることで、適切な回復を促すことができます。

治療は猫の健康状態や怪我の種類に応じて決定されるため、獣医師と相談しながら方法を選ぶことが重要です。
足をひきずる原因となった病気を治療すれば猫は足をひきずらなくなりますか?
適切な治療を早期に行えば、多くの場合は改善が期待できます。しかし、病気の種類や進行度、治療開始のタイミングによって、回復の度合いには差があります。

例えば、単純な骨折や捻挫であれば、適切な処置を行うことで多くは改善しますが、神経疾患の場合は、後遺症として歩きにくさが残ることがあります。

また、変形性関節症のような慢性疾患では、痛みを管理しつつ機能維持を図ることが中心となるため、完全に元の状態になるとは限りません。

病気や怪我の種類によって治療後の経過が異なるため、獣医師と相談しながら長期的な対応を考えることが重要です。
猫が足をひきずっているときに飼い主が気を付けるべきことを教えてください
猫が足をひきずっている場合、飼い主は無理に動かそうとせず、状態が悪化しないよう注意深く観察することが必要です。それ以外にも次の内容を意識しましょう。

・無理に足を触ったり歩かせたりしない(骨折や神経障害の場合は特に注意)
・日常行動の変化を記録する(食欲、排泄、動作、鳴き声などを把握する)
・少しでも異変を感じたら、動物病院に相談する

猫は痛みを隠すことも少なくないため、軽症だと思っても慎重な対応が必要です。症状が改善しない、または悪化する場合は早めの受診を心がけましょう。

編集部まとめ

猫が足をひきずる原因は、外傷や疾患、心理的な要因など多岐にわたり、症状もさまざまです。

大切な愛猫の健康を守るためには、日頃から様子を観察し、わずかな異変にも気を配ることが大切です。特に急激な症状の変化が見られた場合は、迷わず動物病院へ相談し、適切な診察を受けましょう。

参考文献