フィラリア症と聞くと犬の病気と考える方が多いかもしれませんが、猫が感染する事例も増えています。
愛猫がフィラリア症にならないためには、病気について症状や危険性などを詳しく知っておくことが大事です。また、フィラリア症は予防できるので、予防方法・費用・投与する時期・投与する頻度などについて解説します。
フィラリア症は重症化すると危険な状態になる可能性もありますから、愛猫のためにしっかりと予防してあげましょう。
猫のフィラリア症とは
- フィラリア症とはどのような病気ですか?
- フィラリア症とは、蚊の媒介によって寄生虫が猫の体内に寄生する感染症の病気です。白く細長いそうめん状で犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)とも呼ばれている寄生虫が原因ですが、心臓の内部に寄生することが多いことから危険な病気といわれています。蚊はフィラリアに感染した犬や猫を吸血することで、体内に生息しているフィラリアの仔虫(しちゅう)のミクロフィラリアを蚊の体内に移行させます。
フィラリア症には蚊の存在が大きく関わっていて、ミクロフィラリアは蚊の体内に1度取り込まれることで成虫に成長できるのです。蚊の体内でミクロフィラリアは成長し感染力を高め、ほかの犬や猫を吸血することで犬や猫の体内にミクロフィラリアが移行し感染させてしまうのです。
猫の体内に移行したミクロフィラリアは成長し、やがて血管内に移動して主に心臓に寄生して成虫へと成長するため心臓の機能が低下してしまいます。
- フィラリア症になるとどのような症状が出ますか?
- 初期症状は無症状が多く、フィラリアの幼虫が猫の心臓に寄生して成虫になると以下のような症状が見られます。
- 心臓・肺・肝臓などの機能が低下
- 運動すると咳が出る
- 疲れやすくなる
- 腹水がたまる
- 肺から出血する
- 嗜眠(しみん):重症のため外からの刺激に対して反応ができなくなり眠ったような状態になる
- 食欲低下
- 体重の減少
- 肺の炎症や塞栓症
- 胸水がたまる
また、一般的な心臓や肺への寄生だけではなく脳内にも寄生し、数時間で重症化した事例もあります。発症した猫は昏睡状態になり、治療の改善が見られず最後は急性呼吸困難に陥ってしまいました。
- 猫がフィラリアに感染する確率を教えてください。
- 猫がフィラリアに感染する確率は、犬のフィラリア症の発生が多い地域ほど高いといわれています。なぜなら、感染する原因は犬が犬糸状虫を保虫しているため、犬がフィラリア症を発症する地域ほど猫も感染確率が高いと考えられているからです。
日本で猫のフィラリア症の感染は野良猫で0.5%〜9.5%、家猫で3.0%〜5.2%が確認されています。また、家猫の内3分の1が完全室内飼いだったという報告がありますので、室外・室内に関係なく感染してしまうことになります。
猫のフィラリア症の危険性について
- 猫がフィラリア症に感染するとどのような危険がありますか?
- フィラリアは、心臓や肺動脈に寄生することが多いので心肺機能が低下し、全身に血液を送ることができなくなり重症化する危険があります。無症状で気付かなかったり急性の呼吸困難などの症状があったりしても、慢性的な経過で診療の対象にならない可能性も多いです。
寄生虫は一般的に身体の表面に寄生するノミやダニだったり、お腹の中に寄生することを考える方が多いのではないでしょうか。しかし、フィラリア症の場合は血液中に侵入すると体内を周り心臓の内部や肺動脈に寄生してます。
さらに、フィラリアの成虫はミクロフィラリアを増やして、また蚊を媒介して感染を拡大させてしまうので危険な病気なのです。
- フィラリア症にかかった猫は治療できますか?
- フィラリア症になっても猫は無症状で、検査でも診断結果を判断するのが困難なため治療は難しいといわれています。喘息のような徴候・嘔吐・神経徴候が症状としてみられても、確定診断をするにはレントゲン検査や超音波検査を繰り返し行う必要があります。
胸水・腹水・呼吸困難などの症状が発症した事例では、心電図検査では異常がなくフィラリアの幼虫は検出されませんでした。しかし、胸部心臓超音波検査で心臓の右心房と右心室内にイコールサインが見られ、犬糸状虫抗原検査で陽性だったため外科的手術で治療しました。
イコールサインとは、心臓超音波検査で犬糸状虫が=(イコール)のように見えることです。術後の経過は順調で、確定診断が早い段階でできれば治療もできます。
- フィラリア症が原因で猫が亡くなることはありますか?
- 死滅したフィラリアが変性すると肺の炎症や塞栓症が原因となり、致命的な症状になり亡くなる可能性があります。さらに、フィラリアが心臓や肺以外に全身の動脈に寄生した場合は、容態が突然重症化して突然死することもあります。
フィラリアは猫に寄生しても幼虫から成虫に成長する速度が遅く、成虫に成長する確率も低いです。また、成虫になっても寿命は2〜3年と短いため体内にいる成虫の数は少ないです。しかし、フィラリアの場合は死滅しても身体に及ぼす悪影響は大きく、寄生虫が死滅したからといって安心はできません。
猫のフィラリア症を予防する方法
- 猫のフィラリア症の予防方法を教えてください。
- 一般的には予防薬で効果を持続させ病気にならないよう予防しますが、フィラリア症の予防薬は、効果を持続させて予防するわけではありません。フィラリア症の予防薬の目的は、フィラリアの幼虫を駆除することです。
感染してしまった猫の体内には幼虫から成虫に成長しようとしているフィラリアがいて、成虫になるまで約1ヶ月かかります。そのため、蚊が活動を始める時期より1ヶ月遅れて、まだ成虫に成長していない幼虫の段階で予防薬を投与して駆除するのです。
効果を持続させる予防薬ではなく、幼虫を駆除することから毎月の投薬が必要になります。予防薬を投薬する場合には毎年必ず血液検査をして、感染していないことを確認してから使用します。なぜなら、フィラリア症を発症している場合に予防薬を使用した場合、死につながる可能性もあるからです。
また、予防薬の種類は地域や動物病院によって扱っている予防薬が異なりますので、かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
さらに、蚊の駆除も忘れずに行うことが重要です。
- 猫のフィラリア予防にかかる費用の目安を教えてください。
- 猫のフィラリア予防にはさまざまな予防薬を使用しますが、はっきりとした料金の規定はありません。こちらで紹介するのは、フィラリアを予防するためにかかる費用の一例を紹介します。
- フィラリア抗原検査:約2,500円(税別)
- 背中に塗布するスポットタイプ:約1,700~1,900円(税別)を月1回で4~12月まで9回使用したとして約15,300~17,100円(税別)
フィラリア抗原検査と、背中に塗布するスポットタイプを4〜12月まで9回使用したとして、費用は約17,800〜19,600円(税別)が少なくともかかります。さらに、診察料なども追加されるでしょう。予防薬の種類で異なり、主な予防薬は以下のものがあります。
- 飲み薬
- 背中に塗布するスポットタイプ
- 注射
動物病院によって取り扱っている予防薬や、料金はさまざまです。また、猫の体重によって投薬量も異なるため、愛猫の体重に合った適切な予防薬を獣医師に相談することをおすすめします。
- 猫のフィラリア予防が必要な時期はいつですか?
- 猫のフィラリアを予防するには、蚊が発生する前から蚊がいなくなる期間までの実施が多いです。実際に蚊が発生する時期は地域によって異なるため、予防薬の種類と同様に、獣医師との相談が必要になります。目安としては4月から12月、または通年を予防期間としている動物病院もあります。
- 猫のフィラリア予防薬を投与する頻度を教えてください。
- 猫にフィラリアの予防薬を投与する場合は、月1回の頻度が主流となっています。また、予防が必要な期間は蚊が活動している数ヶ月間または通年になり、その期間は毎月1回の投薬の継続が必要になります。
編集部まとめ
今回は猫のフィラリアの危険性や予防法について解説しました。
猫は身体が小さいので、1匹のフィラリアだけでも寄生すれば身体に与えるダメージは大きいです。フィラリア症に感染していても無症状で気が付かないことがあり、気付いたときには重症化してしまう可能性のある危険な病気です。
普段から健康診断を受けるなどして、猫の異変に気がつくように注意しましょう。
犬だけでなく猫にも増えているフィラリア症にかからないように、毎年抗原検査を受け予防薬を投薬するようにしてフィラリア症の予防をしましょう。
参考文献