「犬が抱えるジアルジア症について詳しく知りたい」
「犬が抱えるジアルジア症の原因や治療法について知りたい」
犬を飼っている方のなかには、このような疑問や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では犬のジアルジア症について以下の点を中心にご紹介します。
- 犬が抱えるジアルジア症の症状
- 犬が抱えるジアルジア症の原因
- 犬が抱えるジアルジア症の治療法や予防法
犬のジアルジア症について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
犬が抱えるジアルジア症とは?
まずはじめに、犬が抱えるジアルジア症の概要をご紹介します。
ジアルジア症とは、ジアルジアと呼ばれる寄生虫が犬の小腸に寄生することによって起こる病気です。
別名ランブル鞭毛虫とも呼ばれているジアルジアは、長径10〜15μm程度の大きさであり、目視で確認するには顕微鏡が必要となる程の大きさです。
ジアルジアは、小腸に寄生する寄生虫ですが、便と一緒に排出され、ほかの犬の口に触れてしまうことで感染します。
犬がジアルジア症に感染した場合、無症状の場合もありますが、下痢や食欲不振などの症状が見られる場合があります。
また、ジアルジア症は人間にも感染する病気で、日本人のなかでは特に発展途上国などから帰国した方に多いとされています。
人間が抱えるジアルジア症も、飲食物によって体内にジアルジアが入ってしまうことで発症すると言われています。
犬が抱えるジアルジア症が、人間に感染することもあるので、飼っているペットにジアルジア症の症状が確認できた場合は、注意する必要があるでしょう。
ジアルジア症の特徴
本項目では、犬が抱える犬が抱えるジアルジア症の特徴を、以下の4つのテーマに分けてご紹介します。
- ジアルジア症の症状
- ジアルジア症の原因
- ジアルジア症にかかりやすい犬の特徴
- ジアルジア症による痛み
ジアルジア症の症状
犬が抱えるジアルジア症の症状をご紹介します。
前述したとおり、ジアルジア症は必ずしも症状を引き起こす訳ではなく、感染しても体調不良や痛みをまったく感じないケースもあります。
とはいえ、放置しておくと症状が徐々に悪化していくため、そのような場合には以下のような症状が現れる場合があります。
- 下痢(悪臭を伴う場合もある)
- 食欲不振
- 嘔吐
- 腹痛
- 体重の減少
- 脱水症状
ジアルジアが寄生する小腸は、胃などで消化された食べ物をさらに分解し、栄養素を吸収する役割を担っています。そのため、ジアルジアが小腸に寄生すると、食欲不振が起こり、結果として体重の減少につながってしまいます。
また、小腸は栄養素を吸収する以外にも、水分を吸収する役目も果たしているため、ジアルジア症の症状が悪化すると脱水症状にもつながってしまいます。
上記の症状が必ずしもジアルジア症につながる訳ではありませんが、予兆が見られた際には、すぐに獣医師に相談することをお勧めします。
ジアルジア症の原因
次に、ジアルジア症の原因をご紹介します。
前述したように、ジアルジア症は、ジアルジア(ランブル鞭毛虫)と呼ばれる寄生虫が小腸に寄生すると発症します。
ジアルジア症は、すでに感染した犬の糞便に口などが触れることで感染する(経口感染)ことが多く、排泄物に含まれた感染可能な状態のジアルジアを、シストと呼びます。
犬の糞便に触れること以外にも、シストが溶けた土壌や水を口に運んでしまうことでも感染する可能性があるため、ほかの犬の排泄物に触れないようにするだけでなく、散歩中の水たまりやゴミなどにも注意する必要があります。
また、複数匹の犬や猫を飼っている場合は、飼い主の目が届かない場面で排泄物に触れてしまう可能性もあります。
そのため、飼っているペットがジアルジア症を発症してしまった場合は、ほかのペットに感染しないよう、細心の注意を払う必要があるでしょう。
小腸に寄生したジアルジアは生存力も高く、経口感染したジアルジア症を緩和させるには薬を使用して治療する必要があります。
犬が抱えるジアルジア症の治療方法は、後程あらためてご紹介します。
ジアルジア症にかかりやすい犬の特徴
次に、ジアルジア症にかかりやすい犬の特徴をご紹介します。
結論から述べると、犬種や犬の性別によって感染のリスクが異なることはありません。
しかし、ジアルジア症は小腸に感染する病気であるため、犬の免疫状態が発症のリスクを左右し、免疫力が弱い子犬や免疫不全の犬により多く見られる傾向にあります。
また、複数匹のペットを飼っている家庭や、ペットショップで一定期間を過ごした犬などは、環境によって感染のリスクが高い状態といえます。
そのため、新しくペットとして子犬を迎え入れた際などは、仮に症状が見られなくても、一度動物病院で糞便検査などを受け、健康状態を確認しておくとよいでしょう。
ジアルジア症による痛み
ジアルジア症による痛みをご紹介します。
結論から述べると、ジアルジア症によって犬に痛みが直接もたらされることはありません。
しかし、ジアルジア症によって引き起こされる症状が、犬に不快感や間接的な痛みをもたらす可能性はあります。
具体例として慢性的な下痢による腹部の不快感や痛みや、小腸の炎症に伴う腹痛や腹部の不快感などが挙げられます。
また、痛みとは少し異なりますが、嘔吐や食欲不振などの症状も、症状として現れる体調不良の一種であるため、不快感をもたらす原因となるでしょう。
とはいえ、ジアルジア症による不快感や痛みには個人差があり、軽度の感染ではほとんど症状を示さない犬もいれば、重度の感染で顕著な不快感を示す犬もいます。
いずれにせよ、上記のような症状が少しでも見られた場合には、獣医に相談することをおすすめします。
ジアルジア症は人間にも感染する?
前述したように、ジアルジア症は犬から人に感染する可能性があり、人間がジアルジア症を発症した例も確認されています。
しかし、犬と人間が感染するジアルジア症の種類が異なることから、犬から人間への直接的な感染リスクは低いとされています。
とはいえ、その可能性はゼロではなく、犬から人間への感染は、主に感染した犬の糞便を介して起こります。
例えば、感染した犬の糞便を処理した後に適切な手洗いを行わなかった場合や、糞便に触れた後に口に手を運んだ場合などのケースです。
そんな人獣共通感染症でもあるジアルジア症は、犬から人に感染するだけでなく、発展途上国などの衛生環境が整っていない地域の食事や飲み物が原因で感染することもあります。
発展途上国などの地域でなくても、不衛生な環境下で保管された食材や飲み物、その他口に運ぶものには十分に注意する必要があります。
不衛生な環境下で保管された飲食物は、ジアルジア症だけでなく、その他の感染症や病気を引き起こす可能性も十分に秘めています。
ジアルジア症の予防と治療
本項目では、犬が抱えるジアルジア症の予防策や治療法を以下の3つに分けてご紹介します。
- ジアルジア症の予防方法
- ジアルジア症の診断方法
- ジアルジア症の治療方法
ジアルジア症の予防方法
経口感染によって発症するジアルジア症の予防では、ペットの口に触れるようなものに注意することがポイントです。散歩中に不衛生なものに口が触れるようなことは避け、水たまりや土などの汚れに触れるような場所も積極的に避けるようにすることです。
また、ドッグランやペットホテルなど、ほかの犬と触れ合うような場所では、特に衛生面に注意する必要があります。排泄物はすぐに処理するよう心がけ、排泄物が触れた床や壁などはしっかりと消毒するよう意識するとよいでしょう。
もしも複数のペットを飼っているなかで一匹でもジアルジア症に感染してしまった場合は、ほかの犬の検査をしっかりと行い、家庭内の衛生管理も徹底することが重要です。
ジアルジア症の診断方法
ジアルジア症は、獣医師の診断と検査によって発見されます。
ジアルジア症の検査では、血液検査や検便が行われることが多く、糞便をジアルジアの検査キットで採取して検査することで、糞便に含まれたジアルジアの存在を確認します。
糞便から採取されたジアルジアは、体外に出てしまうことで死滅してしまうことが多く、一回の検査で診断することが難しい場合もあります。
また、より的確な検査を必要とする場合は、PCR検査によってDNAを検出する方法を用いて診断されるケースもあります。
ジアルジア症の治療方法
犬のジアルジア症の治療では、主に抗生物質による治療、水分補給、栄養補給の3つの方法が用いられます。抗生物質による治療では、主にメトロニダゾールなどの抗原虫薬が使用され、小腸に寄生したジアルジア原虫を駆除することで回復を促します。
また、症状が重い場合には、抗生物質と並行して下痢止めや点滴なども併用されることがあります。
抗生物質の投与により一時的に症状が改善することがありますが、再発を防ぐためには獣医師の指示にしたがって治療を終えることが重要です。
水分補給は、下痢や嘔吐によって失われた体液を取り戻すために行われます。犬の状態が改善すれば自力で水分を摂取できますが、体力が低下している場合は静脈点滴や皮下点滴(皮下補液でも可)によって水分を補給させます。
栄養補給も、ジアルジア症の回復において欠かせない治療の一部です。感染によって食欲不振に陥り、さらに免疫力が低下するという悪循環を断ち切るために、栄養補給剤や特別食が処方されることがあります。
これらの栄養食は、消化吸収に特化しており、必要な栄養素をバランスよく含んでいるため、弱っている犬であっても適切に栄養を補給できるようになります。
これら3つの治療法を適切に組み合わせることで、ジアルジア症からの回復を促し、再発のリスクを低減できます。ただし、個々の犬の状態や症状の程度によって適切な治療法は異なるため、獣医師との密接な連携のもとで治療を進めることが重要です。
また、治療中および治療後も、犬の様子を注意深く観察し、異常が見られた場合は速やかに獣医師に相談することが大切です。
ジアルジア症になってしまったときにできること
最後に、ペットがジアルジア症になってしまった場合の行動手順をご紹介します。
飼っている犬がジアルジア症になってしまったと感じた場合は、まず獣医師に相談し、診断/検査してもらうことが重要です。
ジアルジア症の検査は、検便や血液検査によって行われます。検便検査では、排泄してすぐの便を検査する方法と、直腸から直接便を採取して検査する方法があります。
しかし、いずれにしても体外に取り出されたジアルジアはすぐに死滅してしまうことが多いため、症状が出ているのにも関わらず検出されない場合は、繰り返し同じ検査が行われる場合もあります。
また、実際に犬のジアルジア症が確認された場合は、過去に犬が使用していた玩具や布、食器などをしっかりと洗い、徹底的に消毒する必要があります。
犬が普段歩いている床や触れている壁なども、熱湯で消毒しその後水分をよく拭き取る必要があります。
犬が普段から使用している物や場所を清掃/消毒する際は手袋を着用し、作業の後はしっかりと手を洗うことが重要です。
まとめ
ここまで犬のジアルジア症についてお伝えしてきました。記事の要点をまとめると以下のとおりです。
- 犬のジアルジア症では、初めは無症状の犬も多いが、症状が悪化すると小腸の違和感や下痢、食欲不振などの症状が現れる
- 犬のジアルジア症の原因は、排泄物に含まれるジアルジアと呼ばれる寄生虫であり、水たまりや土に溶け込んだ排泄物に口などが触れてしまうこと(経口感染)
- 犬が抱えるジアルジア症の治療法には、抗生物質の投与が行われ、症状がひどい場合は入院させる場合もある
この記事を読んで、犬のジアルジア症について参考にしていただけると幸いです。