犬の歯茎が白いのは危険?チェック方法や受診の目安、対処法を解説

犬の歯茎が白いのは危険?チェック方法や受診の目安、対処法を解説

犬の歯茎は、愛犬の体調や口腔内の状態による変化が目立ちやすく、人間にとっても観察がしやすい部位の一つです。普段はきれいなピンク色の歯茎が白くなっていたら、それは愛犬が何らかの病気を抱えているサインかもしれません。この記事では、犬の歯茎が白くなる原因から受診の目安、日常のケアのポイントを解説します。

犬の歯茎が白くなる原因

犬の健康な歯茎はどのような色ですか?
健康的な犬の歯茎はきれいなピンク色をしています。歯茎の色は末梢血管の血流状態を反映しています。これにより適切な酸素供給があり、血液が良好に循環していることがわかります。触ると適度な弾力があり、やや湿っている状態が正常です。
犬の歯茎が白いときどのような原因が考えられますか?
犬の歯茎の全体が白くなっている場合は、貧血を起こしている可能性があります。貧血というのは、血液中のヘモグロビンが低下している状態を指します。血液中のヘモグロビンが低下すると、全身への酸素運搬能力が低下し、末梢血管まで十分な酸素が行き渡らず、歯茎の健康的なピンク色を保てなくなります。
犬の歯茎が白い場合どのような病気が疑われるのか教えてください。
犬の歯茎は、貧血に陥ると白くなりますが、貧血に陥る原因は多岐に渡ります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

・外傷や臓器からの出血
・自己免疫により赤血球が破壊される溶血性貧血
・臓器からのホルモン分泌異常により体内の酸素需要低下に伴う貧血
・腎臓からの造血ホルモン低下により骨髄からの赤血球の生成能力低下に伴う貧血
・タマネギ中毒や感染症により赤血球が破壊されることによる貧血

上記に挙げたような多様な原因によって貧血は引き起こされます。貧血の初期段階では、愛犬の活気や食欲の低下といった症状が出現しますが、これだけで貧血を疑うのは難しいでしょう。愛犬の体調に異変を感じた際は、口腔内のチェックも行い、歯茎の色調の変化を確認することも大切です。ときには動物病院を受診し、診察・検査を行うことが重要です。
歯茎の変色が出血や貧血に関係していることはありますか?
はい。前述のとおり、歯茎が白くなっている場合、出血や貧血により歯茎部分の血管に十分な酸素が供給されず、結果として白色に見えることがあります。
しかし、歯茎の色は色素沈着による変色やほかの疾患により黒っぽく変色することもあります。したがって、歯茎の変色が必ずしもすべて出血や貧血に関係しているということではありません。

犬の歯茎が白いときに自宅で確認すべきことと受診の目安

犬の歯茎が白くなっていても元気があるときは自宅で様子を見てよいですか?
犬の歯茎が白くなっている場合、貧血の進行が急性であるか慢性であるか、またその原因が何かにより、適切な対応が異なります。いずれにしろ、正常な歯茎はきれいなピンク色ですので、何らかの異変を感じた際は、貧血の有無を確認し、もし貧血があるとしたら、その原因の精査や重症度を調べることが優先になります。したがって、自宅で様子を見るのではなく動物病院に行くことが望ましいです。
歯茎の色以外にチェックすべき症状を教えてください。
外傷による明らかな出血の有無、あるいは血便や吐血といった症状の確認は、外傷や内臓からの出血を発見するうえで重要な手がかりとなります。加えて、歯茎などの粘膜の色が白くなるのは貧血がある程度進行した状態で現れることが多いため、全身状態として活気や食欲の低下、普段よりも動くことを嫌がったりしていないかをチェックすることも重要です。
どのタイミングで動物病院に連れて行くべきですか?
外傷や臓器からの多量出血が考えられる場合、急激な貧血の進行の恐れがありますので、速やかに動物病院に連れて行くべきでしょう。
また、全身状態の悪化が見られる場合も速やかに動物病院に連れて行き、精査をする必要があります。
仮に貧血があるとしても軽度の場合でも、今後貧血が進行する場合がありますので、異変を感じた際は動物病院を受診し診察を受けることをすすめます。

動物病院での診察内容と検査

動物病院ではどのような検査が行われますか?
まずは、貧血の状態を確認するための基本となる血液検査や、腎臓や骨髄を原因とする造血不良を調べるために尿検査や骨髄検査を行います。
その他、ショック状態などほかの循環器系の障害を引き起こしている可能性が考えられる場合は、原因精査のため必要に応じて、レントゲン検査やエコー検査、CT検査などを追加で行うこともあります。
検査をしたらその場で原因がわかりますか?
発生頻度の高い疾患であったり、前述のような一般的な検査内容で特定できる原因であればその場で判明することもありますが、中毒や感染症、あるいはまれな疾患といった場合その場では特定までは難しいことがあります。
命に関わる可能性がある場合や病気の場合に、動物病院で受けられる治療を教えてください。
重症の貧血に陥っている場合は、輸血を行います。また。重篤な循環障害が見られる場合には、点滴による輸液や薬剤の投与が実施されます。ショック状態に陥り循環不全により歯茎が白くなっている場合は、呼吸管理や集中治療の必要も出てきます。原因が判明した場合は並行して根本的な治療も行っていきます。

早期発見のために飼い主ができること

普段からどのように歯茎をチェックすればよいですか?
口腔ケアを日常的に行う習慣をつけることで、自然と歯茎の状態を確認することができます。歯ブラシや歯磨きシートを使って歯を磨く際に、歯茎の腫れや色、出血の有無などを確認しましょう。口腔ケアは歯周病や齲歯を予防するためにも重要ですので、ぜひ日々のケアの一環として歯茎の状態もチェックするようにしましょう。
定期検診では歯茎も診てもらえますか?
はい。多くの動物病院で行われている定期検診には、歯科検診が含まれていることが多く、歯茎の状態も診てもらうことができます。健康な歯茎の色は、末梢血管の血液循環を反映し、きれいなピンク色ですが、歯茎にもメラニン色素が存在するため、色素沈着により黒っぽくなることや、口腔内に悪性黒色腫といった腫瘍が発生し、その影響で黒くなることもあります。定期検診の際には、普段気になっていることや、些細なことでも疑問があれば獣医師に相談するとよいでしょう。
日常生活で注意すべきポイントがあれば教えてください
愛犬に与えているフードの種類や内容によっては血液を作るために必要な栄養素が不足し、貧血を引き起こす可能性があります。そのため、適切なフード選びも健康維持には重要です。また、日々のなかで、愛犬の身体に外傷がないか、便に血が混じっていないか、尿の色は正常かなどを観察することは、さまざまな疾患の早期発見につながるため大切です。
定期的な健康診断を受診することも病気の早期発見・早期治療にとっては重要でしょう。

編集部まとめ

愛犬の歯茎が白くなっていることに気がついたときは驚くかもしれませんが、まずは慌てずに愛犬の全身の状態を観察することが重要です。元気や食欲はあるか、普段と比べて動きたくない様子はないかといった部分を確認しましょう。

犬の歯茎が白くなる主な原因は血が原因のことが多いですが、貧血の原因は、出血や外傷、ホルモン異常とさまざまです。異変があるときは、自己判断で様子を見るのではなく、動物病院で診察を受け、適切な検査・治療を行いましょう。そして、日々愛犬の様子を観察することや、口腔ケアも早期発見につながり、またほかの疾患の予防にもなりますので、ぜひ意識して取り組んでください。

参考文献