犬の皮膚が黒いのは病気?皮膚が黒くなる原因や考えられる病気などを解説

犬の皮膚が黒いのは病気?皮膚が黒くなる原因や考えられる病気などを解説

ある日突然、愛犬の皮膚が黒くなっている部分を見つけて不安を感じる飼い主さんはたくさんいます。犬の皮膚変色は、生理的な変化、病気、ストレスなどさまざまな原因が考えられるため、それを特定して対症療法をすることが重要です。こちらの記事では、なぜ犬の皮膚は黒くなるのかお伝えしたうえで、原因と考えられる病気、動物病院でできることなどを解説します。

なぜ犬の皮膚は黒くなるのか

なぜ犬の皮膚は黒くなるのか

犬の皮膚が黒くなる理由には、皮膚色素の一種であるメラニン色素の増加が影響します。メラニン色素とは、紫外線や外部からの刺激、炎症などのダメージから皮膚を守るために生成される成分です。皮膚の色は犬種や身体の部位によってまちまちですが、何かしらの刺激が加わると変色します。

同じ部分に摩擦や炎症が繰り返し発生すれば、その部分の皮膚を保護しようとメラニン色素が生成されて、黒ずみになるという仕組みです。皮膚の黒ずみ=病気とは限りません。ただし、メラニン色素による皮膚の変色のほかに、痛み、かゆみ、脱毛が発生している場合、病気や怪我が根本原因となっている可能性があるため、動物病院への受診を推奨します。 

犬の皮膚が黒くなる原因

犬の皮膚が黒くなる原因

犬の皮膚が黒くなる原因はさまざまです。原因を特定することで適切な治療方法を選択できるようになります。ここでは、犬の皮膚を黒くしてしまう原因としてよくある4つを解説します。

ノミに寄生されている

ノミの糞は、犬の皮膚を黒く見せる場合があります。ブラッシングをしているとき、皮膚や毛に混ざって黒い粒のようなものが見えた場合、それはノミの糞かもしれません。これは、皮膚が黒く変色しているのではなくて、ノミの糞が付着している状態のため、取り除いてあげればきれいになります。ただし、ノミが寄生している証拠でもあるため、駆除するための治療が必要です。

ノミの糞か砂・ゴミかの判断がむずかしい場合は、ノミの糞と思われる黒い粒に水を垂らして潰してみてください。血液のように赤茶色になった際には、ノミの糞です。大量のノミに寄生されると貧血になったり、舐めたときにお口に入ると下痢や嘔吐の原因になったりするため、すぐに動物病院を受診しましょう。ノミの虫体を見つけた場合はむやみにつぶしたりしないようにしましょう。

面皰(めんぽう)・ニキビ

面皰・ニキビとは、毛穴や皮脂腺からの分泌物が蓄積されて皮膚が黒く変色したようにみえる状態です。生後6ヶ月から1年程度の成長期の犬や短毛種の犬によくみられます。放置すると、膿、細菌や真菌の二次感染による合併症のリスクが懸念されるため、早期治療が必要です。以下のような症状が起こっていないか確認しましょう。

  • 硬い毛が皮膚表面に出られずに丸まってしまった
  • 傷口から細菌が侵入して毛包炎(毛嚢炎)になった

また、状態が悪化して面皰症候群と呼ばれる面皰の病気になると、全身に面皰が発生します。面皰は破れると腫れ、傷になって感染症のリスクが高まるでしょう。面皰症候群の治療法はなく、シャンプーや保湿で皮膚と毛を保護して炎症や痒みを緩和させたり、感染の悪化を抑制するしかありません。

皮膚病

犬の皮膚病にはさまざまな種類がありますが、発症したタイミングで赤みが強く、ほとんどのケースで時間の経過とともに皮膚が黒く変色します。かゆみや脱毛、吹き出物などの症状が併発すると犬にとっても大きなストレスになります。皮膚の薄い部分は、変色するだけではなく、質感も分厚くカサカサに変化するでしょう。

ストレス

犬の皮膚が黒くなる原因には、ストレスもあります。ストレスを感じて、過度に毛をペロペロと舐めたり、自傷行為のように皮膚を掻きむしったりすることが直接原因です。同じ部分への刺激により炎症が引き起こされ、皮膚が黒ずんでしまいます。

犬の皮膚が黒いときに考えられる病気

犬の皮膚が黒いときに考えられる病気

犬の皮膚が黒くなる症状は、病気の初期症状の可能性があります。病気が原因の場合は生理現象による黒ずみとは異なり、動物病院での受診が必要です。ここでは、犬の皮膚が黒いときに考えられる病気を解説します。

犬アトピー性皮膚炎

犬アトピー性皮膚炎とは、慢性的な炎症とかゆみを引き起こす皮膚疾患の一種です。外部の刺激から皮膚を守るためのバリア機能が低下することで、さまざまなアレルゲンが皮膚から体内に侵入しやすくなり、アレルギー反応を引き起こします。アトピー性皮膚炎になりやすい犬種は、次のとおりです。

  • 柴犬
  • シー・ズー
  • フレンチブルドッグ
  • ラブラドールレトリバー
  • ウェストハイランドホワイトテリア

また、アレルギー反応が出た直後は、かゆみ、赤み、ブツブツなどの症状がみられます。慢性化すると、色素沈着、苔癬化などの症状に発展するため注意しましょう。

表在性膿皮症

膿皮症とは、ブドウ球菌による細菌感染が原因で、かゆみ、脱毛、赤み、湿疹などを発症する皮膚病の一種です。初期症状は赤いブツブツができて、細菌が増殖すると膿疱と呼ばれるニキビのような症状に変わります。さらに症状が進行して膿疱が破れると、炎症が治り色素沈着した皮膚が色素沈着によって黒く変色することがあります。

マラセチア皮膚炎(脂漏性皮膚炎)

マラセチア皮膚炎とは、皮膚の表面にある常在菌のマラセチア菌(真菌)が過剰に繁殖した際に、かゆみを引き起こす皮膚病の一種です。初期症状では皮膚に赤みが出る程度ですが、症状が進行すると、黒い皮膚に変色したり、分厚い皮膚に変わったりします。

マラセチア皮膚炎になるとターンオーバーのサイクルが短くなります。一般的に犬の皮膚は3週間ごとにターンオーバーするといわれていますが、短期間で細胞が皮膚の表面に出てくると、その細胞(フケ)を餌にするマラセチアが増殖して皮膚トラブルを引き起こすという悪循環に陥ってしまいます。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

副腎皮質機能亢進症とは、体内のステロイドが過剰になって、面皰、脱毛、皮膚が分厚くなる、石灰沈着などの症状を引き起こします。副腎から自然分泌されるステロイドによる自然発生型と、内服薬や塗り薬など外部から投与されたステロイドによる医原性型の2種類に区分されます。割合としては医原性型の方が多く、皮膚の変化のほかに多飲多尿、食欲増加、お口を開けてハアハア息をするなどの身体的な変化も目立つのが特徴的です。

ニキビダニ症

ニキビダニとは、毛穴に寄生しているダニが過剰に増殖して、黒い皮膚に変色したり脱毛が発生したりします。ほぼすべての動物がニキビダニに寄生されているといわれており、ニキビダニがいること自体は問題ではありません。ただし、過剰に増殖すると皮膚トラブルを引き起こし、細菌感染や毛包炎など二時的なトラブルも懸念されます。身体が大量増殖したニキビダニを排出しようとすると、毛穴が拡張されるため、普段よりも毛穴汚れが目立ち、黒く見える原因にもつながります。

メラノサイトーマ / メラノーマ

メラノサイトーマ / メラノーマとは、いずれもメラニン色素を生成するための細胞・メラノサイトが増殖して、皮膚が黒っぽくなる疾患です。

  • メラノサイトーマ:身体や頭部などにポツンとできる黒いしこり
  • メラノーマ:頭部、四肢、包皮に根を張るようにできる黒いしこり

メラノサイトーマは良性黒色腫で転移の頻度も低いとされていますが、メラノーマは悪性黒色腫で遠隔転移を起こす可能性があります。特に口腔内、口唇、爪の周りに発生したメラノーマは、より悪性の症状をみせることがあるので注意が必要です。

犬の皮膚が黒くなった場合に動物病院でできること

犬の皮膚が黒くなった場合に動物病院でできること

犬の皮膚が黒くなった原因を飼い主さんが特定することは難しいため、早期回復を目指すためにも動物病院への受診を推奨します。ここでは、犬の皮膚が黒くなった場合に動物病院でできることを解説します。

検査による原因究明

動物病院を受診すると、黒い皮膚になった原因を特定するためにさまざまな検査を実施します。まずは皮膚の状態の視診と触診をして、必要に応じて皮膚の一部を採取して顕微鏡で寄生虫、真菌、細菌の有無をチェックすることで検査精度を高めます。次に、ホルモン異常の可能性があれば、血液検査、超音波検査、ホルモン調査などを組み合わせて根本原因を特定します。根本原因を特定することで、皮膚トラブルの改善はもちろん、再発防止のための対策まで可能です。

対症療法

部分的に黒い皮膚がある場合は、抗菌成分を含んだシャンプーや外用薬を使って清潔感を保ちつつ、肌のバリア機能を安定させて経過観察します。それだけでは効果が薄いようであれば、内服による全身治療に移る場合もあるでしょう。再発を繰り返す場合は、皮膚トラブル以外の病気の可能性があるため、再検査をして根本原因を解決できるように治療を続けます。悪性腫瘍が見つかれば摘出手術が必要です。腫瘍が小さいうちに摘出できれば愛犬の負担も軽減できるため、黒い皮膚が目立つようになったら、早めに動物病院を受診しましょう。

犬の皮膚が黒い場合にできる対策

犬の皮膚が黒い場合にできる対策

犬の皮膚の黒ずみは、いくつかの生活習慣を見直すだけでも予防できる可能性があります。自宅でも簡単に始められる内容になっているので、できる範囲で習慣化してみてください。

ここでは、犬の皮膚が黒い場合にできる対策を4つ解説します。

シャンプーなどのケア方法を見直す

犬用シャンプーにはさまざまな種類がありますが、保湿成分の配合、低刺激であることを基準に選ぶのがおすすめです。

また、犬は人間よりも皮膚がデリケートなため、皮膚トラブルを予防するために次の適切なケア方法を実践してください。

  • シャンプーは泡立ててから塗布する
  • ゴシゴシ擦って洗わない
  • 熱湯ではなくぬるま湯を使う
  • 脇や内股など洗い残しやすい部位は念入りにすすぐ
  • タオルドライで水分を取り除いてからドライヤーをする
  • ドライヤーは30cm以上離す

特に自宅でお風呂に入れる場合は参考にしてください。

食事管理を見直す

皮膚の健康と食事は、切っても切り離せない関係性にあります。皮膚病は、免疫力の低い犬ほど発病しやすいです。犬の免疫力の70%は腸が関係しているといわれており、高タンパク質で消化機能を改善できる食材が含まれているフードを選ぶと腸内環境を整えて免疫力を高められます。

また、皮膚の色素沈着を防ぐためには、炎症を抑制する作用を持つEPA、DHA、α-リノレン酸のオメガ3必須脂肪酸が効果的です。鮭、イワシ、くるみ、アーモンドなどオメガ3脂肪酸が含まれている食材を取り入れた食事を用意してあげましょう。

衛生環境を見直す

愛犬が暮らす生活環境が不衛生である程、寄生虫や真菌などが繁殖して皮膚トラブルを引き起こしやすくなります。長毛種や大型犬であるほど抜け毛が増えるため、毎日掃除をして清潔な状態を保てるようにしましょう。寝床、クッション、ブランケットなどは、頻繁に洗うとダニ予防に効果的です。

梅雨や夏場など湿気が多くなる季節は、除湿や換気を徹底することで愛犬が汗をかく量を減らして皮膚への刺激を軽減できます。さらに散歩から帰ってくるたびに足や腹回りをきれいにブラッシングする習慣があれば、害虫や植物による刺激を避けられます。

定期的に健康チェックを行う

犬は毛で覆われているため皮膚が黒くなっていても気付きにくいため、日頃からブラッシングやスキンシップをとる際に、皮膚の状態を観察する習慣をつけましょう。皮膚の色、腫れや炎症の有無、質感などを観察すると、小さな変化を見落とさずに済みます。

ブラッシングする際には、抜け毛の量、害虫の有無、毛の質感も一緒に確認すると、より変化に気付きやすくなるでしょう。

皮膚の黒ずみが見られる部位は、摩擦や炎症が起きやすい場所に多いことが特徴です。特に脇の下やお腹、足の付け根などは要注意です。これらの部位は定期的に確認し、清潔に保つことが大切です。また、皮膚の黒ずみが急に広がったり、痒みを伴ったりする場合は、アレルギーや内分泌系の疾患の可能性もあるため、すぐに獣医師に相談しましょう。黒ずみがひどい場合は、獣医師の処方による特殊なシャンプーや軟膏が効果的なケースもあります。愛犬の健康を守るためにも、早期発見・早期対応を心がけましょう。

まとめ

まとめ

犬の皮膚が黒くなる原因には、外部からの刺激のほかに病気によるものが考えられます。ピンクや白い皮膚が黒い皮膚に変色するだけではなく、炎症、かゆみ、痛みなども発症すると、愛犬が慢性的なストレスを抱えることになります。根本原因を特定するため、早めに動物病院を受診しましょう。同時に日々の生活習慣を見直して、皮膚トラブルの予防につなげてください。

参考文献