犬の便が黒いときに考えられる病気は?原因や受診タイミング、治療方法を解説

犬の便が黒いときに考えられる病気は?原因や受診タイミング、治療方法を解説

愛犬のうんちが黒いと不安になりますが、食事や鉄分・薬の影響で一時的に濃く見えることもあります。一方、ねっとり真っ黒で強い悪臭を伴うタール便(メレナ)は上部消化管出血のサインで緊急性が高いことがあります。この記事では見分け方と受診目安、家庭での観察と記録のポイント、検査と治療の流れを整理し、便や写真の持参など準備の仕方まで具体的に案内します。黒い便が2日以上続く、嘔吐や食欲不振、赤い血が混じる場合は早めに動物病院へ相談してください。

犬の便が黒くなる原因

犬の便が黒くなる原因

ここでは黒い便の原因を整理し、緊急性の見極めと受診の目安、家庭での観察と記録の要点を押さえていきます。

犬の便が黒くなるのはよくあることですか?
食事やサプリ、薬の影響で一時的に便が黒く見えることはあります。一方で、ねっとりした真っ黒な便や強い悪臭を伴う便はタール便の可能性があり、上部消化管出血のサインとみなされます。まず色調と質感を確認し、光沢があり、べたつく黒い便は要注意です。形状が保たれ元気・食欲がある場合は1〜2日の様子を見ますが、便の写真や便の一部を保存し、記録をつけておきましょう。黒さが数日続く、嘔吐や食欲不振、ぐったりとする様子が同時に見られる場合は、早めに動物病院へ相談してください。
なぜ犬の便が黒くなるのですか?
便が黒く見える理由は大きく二つあります。一つ目は鉄分や活性炭、ビスマス製剤、海藻成分などの摂取で色素が便に混ざる場合です。二つ目は出血した血液が胃や十二指腸で消化され、ヘモグロビンが酸化して黒色化し、ねっとりしたタール状の便として出る場合です。後者は食道から小腸上部の出血や潰瘍、腫瘍、薬剤性びらんなどが背景にあることがあります。便の悪臭、べたつき、犬の元気・食欲の変化、急性か慢性かを見極め、迷う場合は便の写真と経過を持って受診します。
フード以外で便の色が変わる要因があれば教えてください
フード以外の要因として、鉄剤や整腸薬のビスマス製剤(胃腸薬の成分)、活性炭、サプリの鉄分や海藻成分が挙げられます。
フードによる要因としては、濃色のジャーキーやレバーのおやつ、血合いの多い魚肉も一時的に便を黒く見せます。
誤食した土や泥、木炭、燃えかす、墨汁様の物質も便を暗色化させます。鼻出血や口腔内の出血を飲み込むと上部消化管で消化され、黒い便として出ることがあります。
服薬歴、与えたおやつ、拾い食いの可能性を思い出し、受診時に必ず伝えて原因の切り分けに役立ててください。
黒い便が出る場合、どのような病気が考えられますか?
黒い便が出る病気としては次のような病気が考えられます。
胃炎・胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃腫瘍、消化管ポリープ、食道や胃のびらん、食道潰瘍、出血性腸炎の上部病変、ステロイドやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)による薬剤性潰瘍、強いストレスや異物による粘膜損傷、重度の寄生虫症が挙げられます。口腔や咽頭の出血を飲み込む場合もタール便の原因になります。嘔吐や腹痛、貧血のサイン(歯茎が白い、息切れ)があるときは重症の可能性があるため、早めの受診が大切です。
胃腸以外の病気でも便が黒くなることはありますか?
胃腸以外の病気で便が黒くなる場合もあります。凝固異常や血小板減少、ワルファリン系殺鼠剤の中毒、DIC(播種性血管内凝固)などの出血傾向は、小さな潰瘍やびらんでもタール便を引き起こします。肝不全や重度の腎不全では粘膜防御が低下し潰瘍が生じやすく、黒い便の原因になります。副腎皮質機能低下症、重度の膵炎、重症感染症、敗血症でも上部消化管出血を伴うことがあります。また鼻出血や口腔内出血、肺出血を飲み込むケースもあります。全身状態の変化を伴う黒い便は緊急度が上がるため、早めに受診してください。

犬の便が黒いときに動物病院を受診する際のポイント

ここでは受診の判断基準、持参物や獣医師への情報伝達といった受診の要点を整理します。緊急度に応じて迷わずに受診できる準備を整えます。

犬が黒い便をした場合は、すぐに動物病院を受診すべきですか?
受診の前に、まず便を観察し、全身の状態を確認します。
光沢がありねっとりした真っ黒の便(タール便)、強い悪臭、嘔吐や食欲低下、ぐったりするなどの様子がある、歯茎が白い、呼吸が苦しいなどの症状が見られる場合は、当日受診または電話相談をお勧めします。一方、元気や食欲が保たれ、色がやや濃いだけの場合は写真と便を保存して1〜2日様子を観察します。症状が続いたり、悪化や赤い血や黒い嘔吐物が出る場合は早めに受診します。服薬歴や与えたおやつ、誤食の有無などの情報も重要です。(文章がおかしいです)
子犬やシニア犬、基礎疾患がある場合は軽症でも判断を急ぎ、夜間は救急対応できる動物病院を確認します。
黒い便は動物病院に持っていくべきですか?
気になる黒い便は乾燥する前に採取して持参しましょう。乾燥すると所見が変わるため、密閉袋や清潔な容器に入れ、すぐに持参できない場合には冷蔵庫で保存します。

複数回出た場合は一番黒いものと通常色のものを少量ずつ採取します。便以外の異物は混ざらないようにし、採取時刻と食事内容、服薬歴、異変の前後の出来事を記録します。写真や動画、トイレシートの実物も判断材料になります。採取する量は大さじ一杯程度で十分で、匂い漏れ防止に二重包装にするとよいでしょう。
便以外にどのような症状があれば緊急受診が必要か教えてください
次のいずれかがあれば、緊急受診を検討します。
①呼吸・意識:呼吸が苦しい、歯茎や舌が白い、あるいは紫色である、ぐったりする、失神する、高熱が続く。
②消化器症状:持続する嘔吐、血を吐く、コーヒー残渣様の嘔吐(黒い粒状)、強い腹痛、赤い血混じりの下痢、黒い便が複数回見られる。
③服薬・基礎疾患:抗炎症薬・ステロイド・抗凝固薬・鉄剤を使用している。殺鼠剤誤食の可能性がある。
④全般症状:急な体重減少や貧血の兆候(疲れやすい、脈が速い)

なお、高齢や基礎疾患がある場合は受診の目安を下げて対応することが望ましいです。
夜間は救急病院の連絡先を確認し、発生時の動画と記録を用意して受診しましょう。
動物病院の受診前に飼い主ができることはありますか?
便を採取し、色・質感・光沢・におい・量・混入物、採取時刻と直前の食事内容、服薬歴、サプリ、誤食の可能性、旅行やストレスイベントを記録します。
体温・安静時呼吸数・飲水量・食欲・嘔吐回数を控え、写真や動画を撮影して獣医師に見せられるようにしておくとより正確な情報を伝えられます。
可能なら動物病院に受診予約を入れ、保険証や予防歴、既往歴の資料、服薬中の薬とラベル、いつも食べているフードを持参します。必要なら絶食の指示を仰ぎ、脱水が疑われる場合は水分補給を工夫します。便は密閉容器で3〜6時間以内であれば常温で提出し、それ以上時間が経過する場合には冷蔵保存して提出しましょう。

犬の便が黒いときの検査方法と治療方法

犬の便が黒いときの検査方法と治療方法

黒い便の原因を見極める検査の進め方と、結果に応じた治療の選択肢・期間の見通しを整理し全体像をつかみます。

便が黒い原因を調べるためにどのような検査を行いますか?
検査は問診と身体検査から始め、発症時期・食事・服薬・誤食・基礎疾患の情報を整理します。便検査で寄生虫・潜血・消化状態を確認し、血液検査で貧血、炎症、凝固異常、内臓機能を評価します。腹部X線(レントゲン)や超音波(エコー)で潰瘍や腫瘍、出血源の手がかりを探り、必要に応じて内視鏡で胃十二指腸を観察し組織検査を行います。鼻出血や口腔出血の有無、殺鼠剤やNSAIDsの使用も確認し、全身所見と合わせて原因を特定します。必要に応じて胸部画像や心機能も併せて確認します。飼い主さんは便自体や写真を持参すると獣医師の判断の一助になります。
便が黒いときに考えられる治療方法を教えてください
治療は次の主な原因別に行います。
①胃炎・潰瘍やびらん場合:胃酸分泌抑制薬や粘膜保護剤、制吐薬を用い、必要に応じて補液と安静、消化に優しい食事に切り替え
②薬剤の要因が疑わしい場合:NSAIDsやステロイドなど薬の服用を中止
③寄生虫の場合:駆虫薬の使用
④凝固異常や殺鼠剤中毒の場合:ビタミンK投与、催吐処理、胃洗浄、輸血など
⑤重度出血や貧血の場合:入院管理や輸血
⑥腫瘍やポリープの場合:外科・内視鏡での処置
獣医師の診察・診断を経ながら、改善に向けた治療方法が選択されます。
治療にかかる期間はどのくらいですか?
期間は原因と重症度で異なります。軽度の胃炎や一過性の食餌性黒い便は数日~1、2週間で改善する可能性が高いです。薬剤性潰瘍や出血を伴うびらんは、数週間の内服や食事管理で状態を見ながら、治療の段階的調整が必要になります。凝固異常や殺鼠剤中毒は、ビタミンK投与を数週間継続し、凝固能の正常化を確認します。腫瘍や重度潰瘍、基礎疾患がある場合は長期管理になります。便色が戻っても原因治療の完遂と再発予防の見直しを続けます。再診間隔は数日~1週間を基本に、症状と検査値によって調整していくことになります。

編集部まとめ

黒い便は、フードや鉄分・薬で一時的に濃く見える場合もありますが、光沢がありねっとりしたタール便(メレナ)は上部消化管出血のサインです。写真と現物、採取時刻や食事・服薬の記録を持参しましょう。元気・食欲の低下、持続する嘔吐、ぐったりするなどといった様子、歯茎が白い状態などは緊急受診の目安です。自己判断で薬を中断せず、原因に合わせた治療と再診で再発を防ぎます。軽症で元気が保たれる場合でも1〜2日の経過を記録し、悪化や反復があれば早めに相談してください。

【参考文献】