元気で走り回っていた飼い犬が突然歩くことができなくなったら、驚きと不安でいっぱいになることでしょう。苦しそうな姿に胸が痛くなる方も少なくないと思います。
犬が歩けなくなる原因はさまざまです。単に肥満で歩きにくくなったのか、あるいは重い病気にかかっているのか、普段の犬の状態から判断しなくてはいけません。
肥満の場合は、普段の運動不足が関係しているかもしれません。毎日1回以上の散歩をしているか、嫌がるので散歩をしていないのでしたら運動不足が疑われます。
散歩をしない犬も少なからずいますが、多くの犬にとって毎日の散歩は欠かせません。なかには散歩でないとウンチやおしっこをしないというケースもあります。この場合、日々のつきあいの中で犬の変化に気づきやすいものです。
犬も人間と同じで生活習慣病にかかります。運動不足のほかに食生活の乱れがないか振り返ってみましょう。ほかの病気の可能性もあるので、早めに動物病院で診察を受けてもらいましょう。
ここでは、犬が突然歩けなくなったときの原因と対処法、注意点や治療法を解説します。
犬が突然歩けない状態になる原因
犬が突然歩けなくなってしまう原因はなんですか?
人と違って四足歩行ですから、ある程度身体が重くなっても4本の足に体重が分散されるのでそれ程負荷がかかるものではありません。それでも、飼い犬の場合は食の面で満たされており、ついつい食べ過ぎによる肥満になるケースが少なくありません。重くなると、足にかかる負担も当然大きくなります。一般的に突然歩けなくなる根本原因は肥満にあると考えてよいでしょう。犬の場合は食べて散歩するのがひとつのサイクルですので、食と運動をセットに日々を過ごすことが推奨されます。後述しますが、椎間板ヘルニアなどの病気にかかるケースも少なくありません。どの犬にも起こりえる疾患ですが、遺伝的要素も高く特定の犬種に多くの発症例があります。
- 考えられる病気はなんですか?
- 肥満以外で犬が突然歩けない状態になった場合は、なにかしらの疾患にかかったと考えてよいでしょう。骨折なども考えられるので、痛む箇所を特定してできるだけ触らないようにして早急に病院に連れていくことが求められます。肥満や骨折以外で考えられるのは以下のとおりです。
- 椎間板ヘルニア
- 環椎・軸椎不安定症(亜脱臼)
- 股関節脱臼
脊髄が傷つくなど完治が難しい病気です。脱臼は骨折とは違いますが、激しい痛みに襲われて暴れることでさらに症状が悪化することが少なくないのでできるだけ早く動物病院で診てもらうようにしましょう。椎間板ヘルニアは遺伝的な要素が少なくなく、ダックスフンド・コーギー・バセットハウンド・フレンチブルドッグ・ペキニーズ・ビーグル・シーズーなどの犬種がかかりやすいとされています。突然、歩けなくなるということはありませんが、歩けなくなる病気として変性性脊髄症やウォブラー症候群も挙げられます。
犬が突然歩けない状態になった場合の対処法
突然歩けなくなったときの対処法はありますか?
突然歩けなくなった場合は、無理に動かさず安静にするのが一番です。犬用のハーネスがあれば着用しておいたほうがよいでしょう。ハーネスもファッション性の高いものがたくさん売られていますが、基本は犬の体をホールドさせるためです。抱き寄せる場合でも力を分散してくれるので抱きやすく、足の痛い部分にも負担をかけません。ハーネスは老犬の介助にも適しているので、準備しておくと、突然歩けなくなったときの対処法として重宝します。
犬が突然歩けなくなったときの注意点はありますか?
注意点として動物病院にできるだけ早く連れていくのがよいですが、深夜および休日診療を行っていない、救急診療を行っている動物病院が遠方などさまざまな理由で動物病院に連れていけない場合もあるでしょう。そのときは、無理に動かさず安静にしておくようにしましょう。犬も動けば痛いのでじっとしているはずです。痛む箇所を判断するためにあちこち触りがちですが、獣医師以外どうすることもできないので、家庭内では安静にしておきましょう。
- 歩けない状態のときに気をつけるべき症状はありますか?
- 歩けないときは犬の状態を注意深く観察するようにしましょう。以下の症状がないかチェックしてください。
- 呼吸が速い
- 体温が低い
- 熱がある
- 発作・痙攣
- 吐き気・下痢
どれも気になる症状ですが、いきなり動物病院に連れていくよりも、事前に状況を説明する電話をしておいたほうが応急処置などのアドバイスを受けることができます。症状としては、呼吸が速い・体温が低い・発作がある、などは緊急度が高いのでできるだけ早く動物病院に連れていきましょう。
突然歩けなくなったときの治療法について教えてください。
突然歩けなくなった場合、まずは動物病院で診察を受け、正確な診断が必要です。ケージレストで安静を促しつつ診察をする様にしましょう。治療方法は原因に応じて異なりますが、椎間板ヘルニアや変性性脊髄症が原因の場合は、薬物治療・リハビリ・場合によっては手術が必要です。重度の脱臼などの場合は外科手術が行われ、患部の固定や関節の安定を図ります。軽度な場合や手術をしない場合は、痛みを緩和する処方薬や適切なリハビリを取り入れ、筋力の回復と歩行機能の改善を目指すことが必要です。
犬が突然歩けない状態になった場合の治療法
突然歩けなくなったときの治療法について教えてください。
椎間板ヘルニアや変性性脊髄症、重い脱臼の場合は手術を行うケースが少なくありません。手術をしなければ歩行困難か歩けない状態で一生を送ることになるので飼い主が判断をしなくてはなりません。状況によっては手術をせずに処方やリハビリなどで機能が回復できることがあります。治療法は獣医師が適切な判断をしてくれるでしょう。
犬が突然歩けなくなったときの注意点はありますか?
患部をさらに傷めないためにも安静にしておきましょう。呼吸が速くなった、体温が低下しているといった症状ではできるだけ早く動物病院に連れていきます。呼吸や体温の問題がなければ、一刻も早くといった状況ではないので、暖かくしてできるだけ動きがとれないようにケージレストなどで固定して安静にしておきます。
手術が必要な可能性もありますか?
椎間板ヘルニアや脱臼が軽い場合はリハビリなどで済ませる場合や経過観察をするケースも少なくありません。変性性脊髄症の場合は飼い主の判断によって手術をすることになります。また、手術をしても100%歩けるようになるかは、症状が出てから24時間から48時間以内に治療が必要なケースがあったりと、症状によってもさまざまです。そのため、獣医師と術後の生活管理・投薬・リハビリなども含めてよく相談のうえ決めることが大切です。手術の場合は自費となりますが、民間の保険に加入している場合は適応になるコースもあります。疾患が発生しやすいゴールデンレトリバーなどの好発犬種は、ペット保険に加入しておくことをおすすめします。また、保険に加入している場合は内容を確認しておくとよいでしょう。
歩けなくならないようにする予防法を教えてください。
先述したように犬種による遺伝によって歩けなくなるケースもあります。それ以外では、肥満が原因となって歩けなくなるケースが多くなります。そのため、身体の大きさに対して体重が適正であるかどうかは見た目でしっかりと判断しましょう。定期的に体重を計るようにするのもおすすめです。歩けなくなる一番の要因は段差にあると考えることもできます。そのため、室内の犬の動線はできるだけフラットになるような室内環境の整備が必要です。階段やソファー・ベッドの上り下りなどにも注意を払ってください。興奮してジャンプすることもあるので、行動のコントロールと負担のかからないケアも大切です。
編集部まとめ
犬が突然歩けなくなる原因やそのサインに気づくためには、日頃からの観察が欠かせません。痛みがあるかどうかも飼い主が判断する必要があります。そのため、犬の状態を常に観察するようにして、普段と違うところがあれば犬に何かが起こっているケースが少なくないので、変化を見逃さないように気をつけましょう。
ここで紹介した原因以外にも、脊髄軟化症という病気が考えられます。椎間板ヘルニアの犬の3%から6%が発症する進行性の疾患で、呼吸をするために身体を動かす神経が麻痺します。効果的な治療法はなく、発症後早ければ2~3日、遅くても7日以内に死亡する難病です。
飼い主も普段から犬の様子をしっかりと観察して、変化に対して敏感であり続けるようにしたいものです。
大切なことは犬のかかりつけ医をもつことです。休日や時間外診療または救急診療ができるのかも確認しておきましょう。どのようなことでも相談しやすい動物病院であれば、より心強いはずです。
特に高齢の犬や持病のある犬の場合、緊急連絡先や対応方法を飼い主が把握しておくと、万が一の際にスムーズに行動できます。
飼い主として普段から健康チェックを心がけ、愛犬に適したケアやサポートを提供していきましょう。
参考文献