犬の前庭疾患とは?気になる症状のサインも徹底解説!

犬の前庭疾患とは?気になる症状のサインも徹底解説!

愛犬の急にふらつきや、立てなくなった場合飼い主さんはとても驚き不安を感じてしまいます。その症状、前庭疾患が原因かもしれません!

本記事では、犬の前庭疾患について以下の点を中心にご紹介します。

  • 犬の前庭疾患とは
  • 犬の前庭疾患の症状
  • 犬の前庭疾患の原因

犬の前庭疾患について理解するためにもご参考いただけたら幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

犬の前庭疾患とは

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前庭疾患とは、犬が平衡感覚を失う病気全般を指します。この疾患は内耳の前庭神経に異常が生じることで発症し、高齢犬に多く見られます。前庭神経は平衡感覚を司る三半規管と連携しており、異常が起きるとめまいやふらつきが生じます。

そのため、犬が突然真っ直ぐ歩けなくなり、首を傾けたり、目が左右に揺れたりする場合、前庭疾患の可能性があります。

また、愛犬が前庭疾患の場合は、飼い主による自宅での看護が重要で、家具の角をカバーするなどの対策が必要です。症状が悪化する場合は、脳の異常の可能性があるため注意が必要です。

犬の前庭疾患の症状

犬に前庭疾患が生じると具体的にどのような症状が現れるのでしょうか?
以下で詳しく解説します。

斜頸

斜頸(しゃけい)は、犬の前庭疾患においてよく見られる特徴的な症状です。斜頸とは、犬が首を傾ける姿勢を取ることであり、片方の耳を地面に近づけるように首をひねる状態が続きます。なかでも末梢性前庭疾患の場合、異常のある耳側が下に向く傾向にあるようです。

前庭疾患による斜頸は、軽度の場合は首を少し傾けるだけで済むため、日常の動作に大きな支障が出ないことがあり飼い主が気付かないこともあります。しかし、重度の場合には首の傾きが顕著になり、犬が立っていられずに転倒してしまうこともあります。

さらに、左右両方の平衡感覚に問題が生じると、斜頸の角度が小さくなることがあります。この状態では、首をほとんど傾けずに姿勢を保つため、一見すると正常に見えることもあります。しかし、犬自身は平衡感覚の異常により不快感や不安を感じています。

前庭疾患による斜頸が認められた場合、はやめに獣医師の診察を受けることが重要です。適切な診断と治療が行われることで、症状の改善が期待できます。また、飼い主は犬の生活環境を整え、転倒などの事故を防ぐ工夫も必要です。例えば、家具の角をカバーし、広いスペースを確保するなど、対策を講じることがおすすめです。

眼振

眼振とは、眼球が一定方向に小刻みに往復運動をする状態を指し、目が回っているような感覚を引き起こします。これは犬の平衡感覚が乱れた際に生じる典型的な症状です。

眼振にはいくつかの種類があります。地面に対して水平に目が動く水平眼振、地面に垂直に動く垂直眼振、そして振り子状に動く眼振や斜めに動く眼振などがあります。なかでも垂直眼振は中枢性前庭疾患に特有の症状であり、脳の異常を示唆します。

眼振が軽度の場合には飼い主が気づかないこともあります。例えば、捻転斜頸が起きたときに同時に発生することが多く、首を傾ける姿勢に注意が向いてしまうためです。しかし、眼振もまた前庭疾患の特徴的な症状であり、眼が一定のリズムで揺れ続けます。左右に揺れることもあれば、上下に揺れることもあります。さらに、左右上下が同時に起こる回転眼振も存在します。

眼振の向きやリズムは、前庭疾患の原因を推測するための重要な手がかりとなります。例えば、水平眼振が見られる場合は末梢性の障害が疑われ、垂直眼振が見られる場合は中枢性の問題が疑われます。

運動失調

運動失調は、体の平衡感覚が失われ、犬がまっすぐ歩くことが困難になる状態を指します。具体的には、犬は左右のどちらかに倒れこむように進んだり、重度の場合には立つことさえできなくなり、立ちたいのに立てないために一定方向に寝返りを打つようにぐるぐる回ることもあります。

運動失調の原因は、内耳の前庭神経の異常により平衡感覚が乱れることです。犬は常に目が回っているような感覚に陥り、その結果として気持ち悪さや吐き気、嘔吐、食欲不振といった二次的な症状も現れます。

飼い主さんはこのような症状に気付いた場合、犬が前庭疾患である可能性を考慮し、対応することが求められます。ただし、高齢の犬がふらつく場合、前庭疾患だけでなく脳疾患の可能性も考慮しなければなりません。

犬の前庭疾患の原因

ここでは、犬の前庭疾患の主な原因について詳しく解説します。

末梢性

末梢性前庭疾患は、犬の内耳や内耳につながる神経が障害を起こすことで発症する病気です。具体的には、中耳炎、内耳炎、外傷、異物や腫瘍、甲状腺機能低下症、聴器毒性のある薬剤による中毒、先天性の異常などが原因として挙げられます。これらの病気や状態が内耳や前庭神経に影響を与え、平衡感覚の乱れを引き起こします。

中耳炎や内耳炎は、末梢性前庭疾患の原因として多いようです。これらの炎症は多くの場合、細菌感染によるものであり、ブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌、大腸菌、プロテウス菌などが関与しています。

また、中耳炎や内耳炎が発生しても、外耳炎が見られないこともあります。これは、感染が耳の穴からではなく、鼻から耳に向かう耳管を通じて起こることがあるためです。

中枢性

中枢性前庭疾患は、犬の小脳や延髄にある前庭系の部位に障害が発生することで起こります。これらの部位は平衡感覚を司る重要な役割を果たしており、その障害によりさまざまな症状が現れます。中枢性前庭疾患の原因には、脳梗塞、脳の炎症、腫瘍、外傷、ビタミンB1欠乏症などが挙げられます。

中枢性前庭疾患は脳自体にトラブルが起きているため、緊急性が高いとされています。そのため早期発見と迅速な対応が求められ、症状が疑われる場合はただちに獣医師の診察を受けることが重要です。

老齢性・特発性

老齢性・特発性前庭疾患は、高齢の犬に多く見られる疾患で、その原因はまだ明確に解明されていませんが前庭神経の炎症が一因として考えられています。

前庭神経は、末梢神経系と中枢神経系に分かれ、内耳や耳と小脳や延髄をつなぐ前庭神経に異常がある場合を末梢神経障害と呼び、延髄や小脳に異常がある場合を中枢神経障害と呼びます。特発性前庭疾患は末梢神経障害に分類されます。

犬の前庭疾患の治療方法

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犬の前庭疾患はどのように治療するのでしょうか?
以下で詳しくみていきましょう。

対症療法

対症療法は、前庭疾患に伴う症状を緩和し、犬の快適さを保つために行われる治療法です。なかでも特発性前庭疾患においては、異常の原因が特定できないため、対症療法が主な治療方法となります。

特発性前庭疾患は、老犬に多く見られる疾患であり、具体的な治療法がないため、症状の緩和に重点が置かれます。無治療でも数日以内に症状の改善が見られることが多く、多くの場合、約数週間で自然に回復するそうです。

ただし、前庭疾患によって、犬が食欲不振や気持ち悪さ、嘔吐などの症状を示すような場合、脱水を防ぐために皮下点滴を行い、吐き気を抑える薬を使用します。

対症療法には、犬の生活環境を整え、安静に過ごせる場所を提供するなど飼い主さんの協力も欠かせません。また、症状が改善するまでの間、定期的に獣医師の診察を受けましょう。

投薬

前庭疾患の治療には、原因や症状に応じた投薬を行うこともあります。

中耳炎や内耳炎が原因の場合、感染を抑えるために抗菌薬や抗真菌薬を用います。また、診断のために耳用内視鏡であるオトスコープを使用して鼓膜を切開し、内耳の感染の検査を行うこともあります。内科的な治療で効果が見られない場合は、外科手術による治療も検討されます。

外科手術

外科手術は、特発性の前庭疾患に対してはあまり行われませんが、中枢性や末梢性の前庭疾患が原因である場合や、脳腫瘍、重度の中耳炎、外耳炎などが関与している場合には、手術が必要になることがあります。

なかでも前庭疾患の原因が腫瘍の場合、手術によって腫瘍を除去することが症状の改善につながります。しかし、腫瘍の位置や大きさによっては手術が困難な場合もあるため、手術の適応については獣医師と十分に相談することが重要です。

また、老犬の手術は麻酔のリスクが高まるため、かかりつけの獣医師とリスク管理について詳しく話し合い、選択をすることが求められます。

さらに、手術後のケアも重要で手術によって症状が改善された場合でも、リハビリテーションや日常のケアが必要となることがあります。

前庭疾患にかかりやすい犬

どのような犬が前庭疾患にかかりやすいのでしょうか?
以下で詳しく解説します。

高齢

前庭疾患は、年齢や犬種を問わず発症する可能性がある病気ですが、なかでも高齢の犬に多く見られます。

老犬は体の各機能が徐々に衰えるため、前庭神経に異常が生じやすくなります。これにより、平衡感覚の喪失やふらつき、斜頸、眼振などの症状が現れることが増えます。

また、高齢の犬は免疫力も低下しているため、感染症や腫瘍などのリスクも高まり、これが前庭疾患の発症につながることがあります。

特発性前庭疾患は、その原因は明確に解明されていないものの、神経の老化や炎症が関与していると考えられています。

飼い主さんは、犬が前庭疾患を発症した場合、早期の診断と適切なケアが重要です。定期的な健康チェックと獣医師の指導を受け、犬の生活の質を維持し、快適な老後をサポートしましょう。

柴犬

前庭疾患はさまざまな犬種に発生しますが、なかでも柴犬や柴犬ミックスに多く見られる傾向があります。そのため柴犬の飼い主さんは、日常の健康観察が欠かせません。

柴犬は体質的に内耳や前庭神経に異常をきたしやすいとされています。そのため、ふらつき、斜頸、眼振などの症状が現れた場合は、すぐに獣医師の診察を受けることが推奨されます。早期の診断と治療が、症状の進行を防ぎ、犬の生活の質を維持するために重要です。

犬が前庭疾患にかかったら

犬が前庭疾患にかかってしまったらどうすればいいのでしょうか?
以下では、家庭内での対策や日常のケアについて詳しく解説します。

家庭内でできること

前庭疾患の症状が現れた場合、動物病院を受診することが大原則です。しかし、自宅での対策も重要です。自宅での対策は、症状を治すことではなく、二次的に発生しやすい怪我の予防を目的としています。

まず、前庭疾患にかかると、犬は平衡感覚を失い、自分がまっすぐ歩いているのか、自分の体が傾いているのかさえわからなくなります。そのため、何もない場所でも転倒してしまうことがあります。転倒によって怪我をすることを防ぐために、階段やソファーなどの段差があるところには、バリケードを設置しましょう。また、家具の角にクッションやカバーをつけたり、犬が落ち着いて休める場所を作ったりすることも大切です。

日常のケア

前庭疾患の犬は、真っすぐ歩けず、ぐるぐると歩くことがあります。そのため、生活範囲を限定して歩く範囲を狭めることが大切です。

さらに転倒防止のために、お風呂マットを使って壁を作るのもよい方法です。また、頭の位置を急に変えないような抱っこの仕方を心がけ、方向転換はゆっくり行うようにしましょう。この方向転換を急に行うと眼振が悪化する恐れがあります。

獣医師への相談

マッサージなどのケアは自己判断で行わず、必ず獣医師に相談してください。適切なケアを受けることで、犬の回復をサポートできるでしょう。

以上の対策を取り入れることで、愛犬が前庭疾患にかかった際の症状の悪化を防ぐことにつながります。事前に心の準備をしておくことで、緊急時にも慌てず対応できるでしょう。

まとめ

ここまで犬の前庭疾患についてお伝えしてきました。
犬の前庭疾患の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 前庭疾患とは、犬が平衡感覚を失う病気全般を指し、内耳の前庭神経に異常が生じることで発症し、高齢犬に多く見られる
  • 前庭疾患の犬には、片方の耳を地面に近づけるように首をひねる状態が続いたり、眼球が一定方向に小刻みに往復運動をする眼振がみられたり、ふらついて真っ直ぐ歩けないなどの症状が現れる
  • 前庭疾患は、末抹消性、中枢性、老齢性・特発性に分けられ抹消性の場合は、中耳炎、内耳炎、外傷、異物や腫瘍、甲状腺機能低下症、聴器毒性のある薬剤による中毒、先天性の異常などが原因として考えられ、中枢性は、脳梗塞、脳の炎症、腫瘍、外傷、ビタミンB1欠乏症、老齢性・特発性は、その原因はまだ明確に解明されていませんが前庭神経の炎症が一因として考えられている

犬のふらつきや起立不能になった原因のすべてが前庭疾患とは限りませんが、本記事の内容と一致した症状がある場合は前庭疾患の可能性が考えられます。正しい知識を持ち、落ち着いて対応することが重要です。
愛犬の安全を確保し、慌てず動物病院を受診しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献