犬が蚊に刺されると、痒みだけでなく重大な感染症を引き起こすことがあるのをご存じでしょうか。なかでも注意が必要なのがフィラリア症(犬糸状虫症)です。
本記事では、以下の点を中心にご紹介します。
- 犬が蚊に刺されたときに見られる症状や対処法
- フィラリア症の原因・症状・治療について
- フィラリア予防薬や蚊への対策方法
犬が蚊に刺されることで起こりうる健康被害や、日常でできる予防・対策方法について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
犬が蚊に刺されたら

犬が蚊に刺されると、人と同じように痒みや赤みが生じますが、それだけでは済まない場合もあります。なかでも蚊を媒介として感染するフィラリア症には注意が必要です。
ここでは、犬が蚊に刺されたときの症状と対処法について解説します。
犬が蚊に刺されたときの症状
犬が蚊に刺されると、まず皮膚の表面に赤いポツポツとした腫れや痒みがあらわれます。耳や鼻先、腹部、足の内側など毛が薄い部分は刺されやすく、掻きむしることで皮膚炎や化膿、脱毛を引き起こすことがあります。
蚊に刺された直後は小さな刺激で済んでも、アレルギー体質の犬では強いかゆみや腫れが広がり、かき壊しによる二次感染につながることもあります。
さらに怖いのは、見た目の症状が軽くても、蚊が媒介する感染症に感染している可能性がある点です。フィラリア症は、心臓や肺動脈に寄生して重篤な循環障害を起こす恐れがあり、初期にはほとんど症状がないため、感染に気付かないケースもあります。
咳や息切れ、疲れやすいなどの異変が見られたときは、早めに動物病院で検査を受けることが大切です。
犬が蚊に刺されたときの対処法
蚊に刺された部分を見つけたら、まず患部を清潔な濡れタオルやガーゼで優しく拭き取り、冷やして炎症やかゆみを和らげます。掻き壊しを防ぐためにエリザベスカラーを装着するのも効果的とされています。
もし赤みが広がったり、しきりに掻いたり、元気や食欲が落ちるなどの異常が見られる場合は、自己判断せず獣医師に相談してください。
病院では外用薬や抗ヒスタミン薬、必要に応じて抗生剤などが処方され、早期の改善が見込めます。また、蚊の刺傷がきっかけでフィラリア感染のリスクが高まるため、蚊が生じやすい季節には予防薬を継続的に投与することが重要です。
屋外での散歩時には虫よけスプレーや服の着用、室内では網戸や蚊取り器の活用など、環境面の対策もあわせて行いましょう。
日常の小さな工夫が、愛犬の健康を守る大きな一歩になるでしょう。
犬のフィラリア症(犬糸状虫症)について

フィラリア症は、蚊によって感染する寄生虫性の病気で、犬の命を脅かす恐れがある感染症です。
ここでは、フィラリア症の原因や感染経路、症状、診断、治療法について順に説明します。
フィラリア症とは
犬のフィラリア症(犬糸状虫症)は、フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が犬の心臓や肺動脈に寄生して起こる病気です。感染してもすぐに症状が現れるわけではなく、数ヶ月から半年ほどかけて虫が成長し、心臓に到達してから徐々に体調に変化が出ます。
感染が進行すると、心臓や肺、肝臓、腎臓などに負担がかかり、命に関わる重い循環障害を引き起こすこともあります。
日本では春から秋にかけて蚊が活動的になる季節に感染リスクが高まるため、毎年の予防が欠かせません。
感染サイクル
フィラリアの感染サイクルは、蚊が感染した犬の血を吸うところから始まります。感染犬の体内にはミクロフィラリアと呼ばれる幼虫が血液中に存在しており、蚊が吸血するとその幼虫が蚊の体内に取り込まれます。
蚊のなかで2週間程度かけて感染能力を持つ幼虫(感染幼虫)に成長し、次にその蚊が別の犬を刺したときに、幼虫が皮膚から侵入して感染が成立します。その後、犬の体内を移動しながら成長し、半年程度で心臓や肺動脈に寄生する成虫となります。
このように、感染は”蚊””感染犬””健康な犬”の三者によってサイクルが繰り返されます。
フィラリア症の症状
感染初期にはほとんど症状が見られないため、飼い主が気付かないことが多い傾向にある病気です。
成虫が心臓や肺に寄生し始めると、咳が増える、運動を嫌がる、疲れやすくなるなどの軽度な症状が出ます。
進行すると呼吸困難、食欲不振、体重減少、腹水の貯留、失神など重い症状が現れます。さらに重症化すると”大静脈症候群”と呼ばれる状態に陥り、急性の貧血や黄疸、尿の異常(血色素尿)を伴い、緊急の外科的処置が必要になることもあります。
症状の程度は感染虫の数や寄生場所によって異なりますが、放置すれば心臓へのダメージが進行し、命に関わることもあるため早期発見が重要です。
フィラリア症の診断
動物病院では、血液検査によってフィラリア感染の有無を確認します。主に”抗原検査”や”顕微鏡検査”が行われ、感染犬の血液中にミクロフィラリアが存在するか、成虫由来の抗原が検出されるかを調べます。
さらに、胸部レントゲンや心臓超音波検査で、心臓や肺の状態、寄生虫の数を診断することもあります。これらの検査結果を総合的に判断し、感染の進行度に応じて治療方針が決定されます。
フィラリアは早期に発見できれば内科的治療での改善が見込めるため、毎年の予防期間前に検査を受けることが推奨されています。
フィラリア症の治療
フィラリア症の治療は、感染の程度によって方法が異なります。
軽度の場合は成虫や幼虫を駆除する内科的治療が中心となり、駆虫薬を慎重に投与しながら少しずつ寄生虫を減らしていきます。ただし、駆虫によって死んだ虫が血管に詰まる危険があるため、運動制限が重要です。
重症例では、心臓や大静脈に寄生している成虫を外科的に摘出する手術が行われることもあります。治療後も心臓や肺に負担が残ることが多いとされ、長期的なケアが必要です。
フィラリア症は一度感染すると治癒までに時間がかかるため、治療よりも”予防”を徹底することが重要とされています。
犬のフィラリア予防薬について

フィラリア症は予防が何よりも重要な病気です。蚊が活動する季節に合わせて、予防薬を使用することで感染の予防が期待できます。
ここでは、予防薬の種類や検査、投与期間の目安について解説します。
フィラリア予防薬の種類
フィラリア予防薬にはいくつかのタイプがあり、犬の体質や飼育環境に合わせて選択されます。代表的なものには、経口タイプ(チュアブル・錠剤)、スポットタイプ(首筋に垂らす液体)、注射タイプ(1回で数ヶ月効果が続くもの)があります。
経口タイプは嗜好性が高く、おやつ感覚で与えられます。一方、スポットタイプは薬を飲ませるのが苦手な犬にも適しており、皮膚から吸収されて体内に作用します。
注射タイプは病院での投与が必要ですが、投薬を忘れる心配がない点が利点です。
いずれも”感染を防ぐ”というより、体内に侵入したフィラリア幼虫を駆除して感染成立を防ぐ仕組みのため、継続的な使用が欠かせません。
フィラリア抗原検査
フィラリア予防を始める前には、抗原検査を行うことが推奨されています。
これは、すでに感染していないかを確認するための大切な検査です。もし感染している状態で予防薬を投与すると、体内の成虫が急死して血管を詰まらせるなど、命に関わる副作用を起こすおそれがあります。
抗原検査は採血によって行われ、短時間で結果がわかります。動物病院では、フィラリア抗原検査に加えて血液の健康チェックを同時に行うケースもあり、健康管理の一環としても重要です。毎年、蚊の発生時期前にこの検査を受けることで、予防を始められます。
予防薬を投与する期間とタイミング
フィラリア予防薬の投与期間は、地域の気温や蚊の発生状況によって異なりますが、”蚊が出始めて1ヶ月から、いなくなって1ヶ月後まで”が目安です。大体の地域では5月から12月頃までが予防期間とされています。
これは、蚊に刺されてからフィラリア幼虫が体内で成長するまでのタイムラグがあるためで、その間に駆除することが目的です。
予防薬を1回でも忘れてしまうと、感染リスクが高まるため、毎月決まった日に与える習慣をつけましょう。カレンダーやスマートフォンのアラームを活用すると便利です。継続的な予防が、愛犬の健康を守るためにはとても重要です。
犬が蚊に刺されないための対策

フィラリア予防薬を使っても、蚊に刺されるリスクを減らすことは大切です。蚊の発生源を減らし、環境を整えることで、愛犬を守ることにつながります。
ここでは、家庭でできる具体的な蚊の対策方法を紹介します。
水たまりができないようにする
蚊は少量の水があれば繁殖できるため、庭やベランダにあるバケツ・植木鉢の受け皿・排水溝などに水がたまらないように注意が必要です。なかでも夏場は気温が高く、わずか1週間ほどで卵から成虫になることもあります。こまめに水を捨てたり、溜まりやすい場所をチェックしたりして、蚊の発生を防ぎましょう。
屋外に犬用の水皿を置く場合も、毎日水を入れ替えることでボウフラ(蚊の幼虫)の発生を防ぎます。また、雨の日の後や植木の下など、見落としがちな場所にも注意が必要です。
散歩ルートの見直し
蚊は湿気があり、日陰の場所に集まりやすい傾向があります。草むらや水辺、公園の茂みなどは蚊がたくさん潜んでいるため、散歩コースを工夫することも大切です。日中の暑い時間帯よりも、蚊が少ない朝や風のある時間帯を選ぶのも効果的とされています。
なかでも夕方は蚊の活動が活発になるため、できるだけ避けましょう。虫よけ効果のある首輪やスプレーを併用すれば、さらに安心感が増すでしょう。
洋服の着用
被毛の短い犬や皮膚がデリケートな犬は、洋服を着せることで物理的に蚊の刺咬を防げます。薄手で通気性のよい素材の服を選び、体温がこもらないように工夫しましょう。
袖付きのデザインやフード付きのタイプを使用すると、耳や首回りも保護できます。
虫よけ加工が施されたドッグウェアも市販されており、夏の散歩時に役立ちます。
犬用の虫よけグッズを使用する
犬用の虫よけスプレーや首輪、超音波タイプのデバイスなど、さまざまな蚊よけグッズがあります。市販の製品を選ぶ際は、犬専用と明記されているものを使用することが大切です。人間用の虫よけ剤には犬にとって有害な成分が含まれている場合があるため、流用しないでください。
虫よけスプレーを使用する際は、顔や粘膜を避けて全身にまんべんなく吹きかけ、散歩のたびに使うのが効果的とされています。これらの対策を組み合わせることで、蚊の被害を減らすことが期待できます。
室内飼育している場合も蚊への対策が必要

「うちは室内飼いだから大丈夫」と思われがちですが、実は安全とはいえません。蚊は人やペットの出入りの際や、窓・玄関の開閉時などに簡単に屋内へ侵入します。
夏場は、わずかな隙間からでも蚊が入り込み、室内に長時間とどまることがあります。そのため、室内飼育の犬でもフィラリア感染のリスクはゼロではありません。
室内でも蚊対策を徹底するには、まず網戸や玄関ドアの隙間を点検し、破れやゆるみがあれば早めに補修しましょう。また、網戸用の虫よけ剤や、犬にも使えるタイプの蚊取り線香・電気式虫よけ器を使用するのも効果が期待できます。
エアコンを使用する場合は、冷気で蚊の動きを鈍らせるため、室温を一定に保つのも有効とされています。
さらに、寝室やリビングなど犬が過ごす時間の長い場所には、虫よけスプレーを軽く吹きかけたり、蚊帳タイプのペット用テントを設置したりする方法もあります。なかでも夜間は蚊の活動が盛んになるため、就寝前の対策が重要です。
屋内でも”予防薬+環境対策”を組み合わせることで、安心して過ごせる空間を整えましょう。
まとめ

ここまで犬が蚊に刺されることで起こる健康被害や、フィラリア症の予防・対策についてお伝えしてきました。記事の要点をまとめると以下のとおりです。
- 犬が蚊に刺されると、痒みや皮膚炎だけでなく、命に関わるフィラリア症を媒介されることがある
- フィラリア症は蚊を介して感染し、心臓や肺に寄生して重い循環障害を引き起こすが、定期的な検査と予防薬の投与で防げるとされている
- 蚊の発生源を減らす・散歩ルートを見直す・虫よけグッズを活用するなど、日常的な蚊対策が重要
室内飼いの犬でも蚊に刺される可能性はあるため、”予防薬+環境対策”を徹底することが重要です。フィラリア症は一度感染すると治療が長期化する病気ですが、しっかりとした予防で守れます。愛犬の健康を維持するためにも、季節を問わず蚊の対策を心がけましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

