急な海外出張や長期の旅行が決まったとき、ペットのお世話をどうするかは悩みの種です。
「そもそもペットホテルに1ヶ月も預けられるの?」「費用はいくらかかるのか」「ほかの子と喧嘩せず、ストレスなく過ごせる?」など、不安はつきません。
この記事では、ペットホテルでの1ヶ月以上にわたる長期滞在は可能なのかや、ペットホテル選びの具体的なチェックポイント、必要な事前準備、注意点まで解説します。
今後、長期間の出張や旅行で家を空ける可能性がある方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
ペットホテルに犬・猫を1ヶ月以上預けられるか

1ヶ月以上の長期預かりに対応するペットホテルはあります。ただし、日本では1週間程度までの短期滞在に対応しているペットホテルが多く、1ヶ月以上の預かりはあまり一般的ではありません。
ペットにとって長期間にわたる環境の変化は大きなストレスとなり、体調を崩すリスクもあるため、きめ細かなケアや健康管理が必要です。また、長期預かりを口実にしたペット遺棄の事例もあるため、ホテル側は信頼できる飼い主かを見極めようとします。場合によっては、ただ見極めるだけでなく、万が一に備えた代理人の手配などを求められることもあります。
安心してペットホテルに1ヶ月以上預けられるかどうかを判断するポイントは慣らし利用です。
まずは事前に一度短時間預けてみて、その際の様子を確認します。もし体調などに問題がなければ、徐々にそのペットホテルで数回お泊まりさせてみます。そうしているうちに、ペットは普段から来ている場所と認識し始めるため、長期のお泊まりの際、ペットのストレスもやわらぎ、ホテル側も性格や体調に合わせたケアがしやすくなります。
ペットとスタッフ間だけではなく、飼い主さんとスタッフ間の信頼関係の構築もスムーズに長期預かりをお願いできる工夫の一つです。
ペットを1ヶ月以上預けたい場合のホテル選びのポイント

急な出張や留学などで、1ヶ月以上ペットを預けるときは、どのペットホテルを選ぶかがとても大切です。
選ぶペットホテルによって、ペットの暮らしの快適さや安心感は大きく変わります。
長い間預けるなら、大切な家族が安全に、そして安心して過ごせる場所を選ばなければなりません。
以下では、長期間預けるペットホテルを選ぶ際のポイントを解説します。
宿泊スペースは個室タイプか
ペットホテルの宿泊スペースは、大きく金網のケージタイプ、壁で仕切られた個室タイプ、ほかのペットと自由に過ごすフリースペースタイプに分けられます。
以下のような性格のペットには、プライバシーが確保された静かな個室タイプの施設が適切です。
- 環境の変化に敏感な子
- ほかの動物との接触がストレスになる子
- 静かに自分のペースで休みたい子など
ケージが並ぶだけの施設と異なり、しっかりとした壁で仕切られた個室は、ほかのペットの視線や物音を遮断し、ペットが安心して休息できる空間を提供します。
見学の際には、部屋の広さや清潔さはもちろん、冷暖房や換気設備が整っているか、床材は滑りにくいかなどまで確認しましょう。
獣医師が24時間常駐しているか
長期預かりでは、環境の変化によるストレスが引き金となり、ペットが予期せぬ体調不良を起こすリスクが高まります。万が一のため、体調の急変に迅速かつ的確に対応できる医療体制の確認は、特に重要なチェック項目のひとつです。
日中はスタッフがいても、夜間は無人になり、監視カメラの映像を時折チェックするだけの施設も少なくありません。夜間に容態が急変した場合、すぐに対応してもらえる24時間スタッフ常駐の体制が整っているかは、ペットの命に関わる重要な確認項目です。
1日のスケジュールにお散歩や遊ぶ時間が設定されているか
ケージや個室にいる時間が大半を占めるような生活は、ペット、特に猫にとって大きなストレスとなり、問題行動や体調不良の原因になります。
ペットがストレスを溜めずに過ごせるよう、1日のスケジュールのなかに、お散歩やスタッフと遊ぶ時間などが確保されているかを確認しましょう。
滞在中の様子を写真や動画で報告してくれるサービスがあれば、ペットが楽しく過ごしているかを確認でき、飼い主の安心にもつながります。
事故や病気への対策が講じられているか
とても人気なペットホテルであっても、万が一の事態が起こる可能性はゼロではありません。預かり中にペットが病気になったり、ほかのペットとのトラブルで怪我をしたりした場合に備えたホテル側の対策を確認しておくことも重要です。
まず、施設がペット事業者向けの保険に加入しているか、必ず確認しましょう。
ペットシッター・ペットホテル賠償責任保険は、施設の過失によってペットに損害が生じた場合に備えるための保険です。
また、体調不良が発生した際のために、以下のような点も確認しておくと安心です。
- 具体的な対応フロー
- 施設の過失によって体調不良が起こってしまった場合の治療費の負担はどう定められているか
- かかりつけの動物病院へ連れて行ってもらえるか
さらに、飼い主本人と連絡が取れない場合に備え、代理で意思決定をしてくれる家族や友人の連絡先を複数伝えておくことも、万全の対策として重要です。
ペットホテルに1ヶ月預ける前に準備しておきたいこと

ペットホテルに1ヶ月など長く預ける前には、入念な事前準備が大切です。
直前になって慌てないように、以下では長期で預ける前の準備を紹介します。
ワクチンを事前に接種する
ペットホテルは預かるペット同士で病気がうつるのを防ぐために、年に1回の混合ワクチンや狂犬病ワクチンの接種を必須条件にする施設がほとんどです。1年以内に発行された接種証明書の提示を求められるため、必要なワクチンを接種し、証明書を提示できるように準備しておきましょう。
ノミ・ダニ予防をする
ワクチン接種と同様に、ノミやダニの予防・駆除も、ほかの利用者への配慮と自身のペットを守るための必須マナーです。多くのペットが共同で生活する環境では、一匹でも寄生虫がいると、すぐに感染が広がってしまう可能性があります。
予防は市販品ではなく、動物病院の薬を使いましょう。
ホテルによっては、どのような薬剤をいつ投与したかを申告する必要がある場合もあります。
いつも使っている首輪やリードを用意する
お散歩サービスのあるペットホテルを利用する場合は、いつも使っている首輪やハーネス、リードを持っていくのがおすすめです。ホテルに備品があっても、自分の匂いや使い慣れた感触のものの方が、ペットも安心して散歩ができます。
ただし、持ち込み禁止の施設や、壊れた際の補償がない施設もあります。
事前にホテルのルールをよく確認し、念のため予備の首輪やリードも用意しておくと安心です。
愛用のおもちゃやブランケットを用意する
自宅とは違う場所や匂い、音のなかで過ごすことは、ペットにとってとても不安なことです。不安をやわらげるために、いつも使っているおもちゃや、自分や飼い主さんの匂いがついたブランケットやタオル、Tシャツなどを持っていきましょう。
なじみのある匂いは、ペットが安心できる大きなポイントです。
特に、いつも決まったおもちゃで遊んでいたり、決まったベッドで寝ていたりする子は、お気に入りの物がそばにあると気持ちが落ち着きます。ただし、小さすぎるおもちゃや、すぐ壊れてしまうものは、誤って飲み込む危険があるので注意しましょう。何を持ち込めるかは、事前にホテルに確認しておくと安心です。
普段のフードを1ヶ月分購入する
ペットホテルでの長期滞在において、食事はペットの健康を維持するためのもっとも重要なものの一つです。環境の変化でナーバスになり、食欲が落ちてしまうペットも少なくありません。
普段から食べ慣れているフードやおやつを、滞在日数分よりも少し多めに用意して持参しましょう。
ホテルで準備した急なフードの変更は、食いつきが悪くなるだけでなく、消化不良や下痢を引き起こすこともあります。
アレルギー食や治療用のフードを食べている場合は、その旨を明確に記したメモを添付し、切らさないよう十分な量を用意してください。
すべての持ち物に名前を記載する
ペットホテルでは、多くのペットの持ち物を同時に管理します。フードの袋、おもちゃ、ブランケット、食器、リード、キャリーケースなど、ほかの子のものと取り違えが起こらないよう、持参するすべての私物にはっきりと名前を記載しましょう。
油性のマジックで直接書く、剥がれにくい布製の名前シールを貼る、タグをつけるなど、洗濯しても消えない方法を選ぶのがおすすめです。
預ける予定のペットホテルに慣らすために何度か利用する
いきなり1ヶ月も預けるのは、ペットにも飼い主さんにも大きな不安や負担があります。
本格的に預ける前に、日帰りや一泊二日のような短期間の”慣らし利用”を、複数回行うのがおすすめです。
環境に慣れてくると、ペットが「この場所は安全な場所で飼い主さんはちゃんと迎えに来てくれる」と安心できるようになります。また、スタッフやほかのペット、環境にも少しずつ慣れれば、安心して過ごせる環境になることでしょう。
スタッフとペットの相性を確認する
ペットホテルでの生活の質は、施設の設備だけでなく、スタッフとの相性にも大きく左右されます。特に、人見知りや犬見知りをする内向的なペットの場合、スタッフとのコミュニケーションが過度なストレスにならないか、事前に確認が必要です。慣らし利用などの機会を活用し、以下のような点を確認しておきましょう。
- スタッフが自分のペットにどう接しているか
- スタッフの声かけや触れ方に対してペットがストレスを感じてないか
- 動物看護師やドッグトレーナーなど資格の有無
- スタッフがその子の性格を理解しているか
ただ相性を確認するだけではなく、トラブルを未然に防ぐための環境が整っているかどうかも、安心して預けるための重要なポイントです。
ペットホテルで長期間の宿泊を断られる可能性があるケース

万全の準備を整えても、ペットの健康状態や状況によっては、安全管理上の理由から長期の宿泊を断られてしまう可能性があります。
決して意地悪ではなく、ホテル側がほかの預かっているペットへの感染リスクや、予期せぬ事故を防ぐための責任ある判断です。
以下では、長期間の宿泊が断られる可能性があるケースを解説します。
持病がある
ほとんどのペットホテルは病院ではないため、治療や特別なケアが必要なペットの預かりは難しいと判断されやすいです。例えば、てんかんの発作があったり、心臓病や腎臓病、糖尿病などで急に体調が悪くなるおそれがあったりする場合は、断られる場合があります。ペットホテルに預ける前は必ずかかりつけの獣医師に、ペットの現在の状態でホテル利用が可能かどうかを確認しておきましょう。
高齢である
犬や猫もシニア期に入ると、体力や免疫力が低下し、環境の変化のような大きなストレスに適応する力が弱まります。
体調も急変しやすいため、多くのペットホテルでは10歳以下や12歳以下のような年齢制限を設けています。もちろん、年齢だけで一律に判断されるわけではありません。
しかし、寝たきりの状態であったり、認知症による夜鳴きや徘徊が見られたりするなど、常時つきっきりの介護が必要な場合は、専門の老犬・老猫ホームなどを検討するのが現実的です。
初めてペットホテルを利用する
初めて利用するペットホテルにいきなり「1ヶ月預かってほしい」とお願いしても、断られてしまうケースは珍しくありません。
スタッフがペットの性格や環境への慣れ方が把握できておらず、ホテル側のリスクが高いのが理由のひとつです。
また、「ペットを捨てるつもりではないか」と心配されるケースもあり、飼い主さんの身元をしっかり確認するホテルもあります。
こうした問題を防ぐためにも、やはり慣らし利用がとても大切です。
ペットホテルに1ヶ月以上宿泊する際の注意点と心構え

ペットホテルに1ヶ月以上預けることは、ペットにとって大きな環境の変化です。人間だけではなく、ペットも普段と異なる環境にはストレスを感じます。
ペットが少しずつペットホテルで安心できるよう、慣らし利用として数時間や1日だけなどの利用から始めましょう。また、ペットを長期間預ける施設を検討する際は、料金や設備のチェックも大事ですが、スタッフとペット間での相性や環境の見極めも重要です。
長期預かりに伴ってペットが感じるストレスや預けるリスクを理解し、ペットホテルのスタッフとしっかり連携してよい関係を築く必要があります。
まとめ

長期預かりに対応しているペットホテルはありますが、ペットのストレス軽減と安全確保のためには、慎重な施設選びと事前の準備が欠かせません。
選び方のポイントとしては、以下のような点を確認しましょう。
- 個室の有無
- 24時間管理体制や獣医師の常駐
- 充実した散歩や遊びの時間の確保
- 万が一の事故や病気への具体的な対応策が講じられているか
特にホテルに慣らすための慣らし利用は、ペットと飼い主さん双方にとって、安心につながる大切なステップです。大切な家族が安心して過ごせるよう、その子に合った適切なペットホテルを見つけましょう。
参考文献