旅行や出張などで家を空けることになったとき、ペットホテルの利用を考える飼い主さんもいるでしょう。
しかし、ペットホテルに預けた後、愛犬や愛猫の様子がいつもと違うと感じた経験はありませんか。飼い主さんと離れることで分離不安を引き起こすペットは少なくありません。
分離不安を放置すると問題行動や体調不良につながることもあるため、原因や症状を知っておくことが大切です。
この記事ではペットホテル利用時に起こりやすい分離不安の原因や症状、そして具体的な対策方法を詳しく解説します。
ペットの分離不安とは

分離不安とは、犬や猫が飼い主さんと離れることで強い不安やストレスを感じ、さまざまな問題行動や体調不良を起こしてしまう状態です。
犬はもともと群れで生活する動物であり、飼い主さんを群れの一員として認識します。そのため、離れる状況に対して本能的な不安を感じやすい傾向です。猫は単独行動を好むとされますが、室内飼育で飼い主さんとの絆が深い場合、同様の症状が見られることがあります。
近年は在宅勤務の増加に伴い、飼い主さんと一緒に過ごす時間が長くなるペットも珍しくありません。その結果、外出時に強い不安を感じるケースが増えてきています。
軽度であれば落ち着きがなくなる程度で済みますが、重度になると自傷行為や破壊行動に及ぶ可能性があるため、早期対応が必要です。症状を放置すると慢性化する恐れがあるため、注意が必要です。
ペットホテルの利用で分離不安が起こる原因

ペットホテルを利用すると、飼い主さんとの別離だけでなく、環境の変化や見知らぬ動物との接触など複数のストレス要因が重なります。
ここでは、ペットホテル利用時に分離不安が起こりやすい主な原因について詳しく見ていきましょう。
飼い主と離れることによる不安
犬や猫にとって、飼い主さんは群れのリーダーであり信頼できる存在です。日常的に一緒に過ごしている飼い主さんが突然いなくなると、戻ってこないのではないかという恐怖心を抱く場合があります。
普段から飼い主さんにべったりで24時間以上離れた経験がないペットは、特にこの傾向が強いです。過去に保護施設で生活していたペットや、幼少期に親から早く離されたペットは、別離に対して敏感に反応しやすい傾向があります。
飼い主さんへの依存度が高いほど、離れたときの精神的ダメージも大きくなりがちです。
過去の経験による不安
以前のペットホテル利用時に怖い思いをした経験があると、それがトラウマとなって分離不安を引き起こすことがあります。
滞在中にほかの動物から威嚇された経験や、慣れないケージに閉じ込められた恐怖などが記憶として残っている場合があります。留守番中に大きな雷や地震があった場合は、飼い主さんがいないときに怖いことが起きると認識しやすくなるでしょう。
一度ネガティブな記憶が刻まれると、その後の分離に対して強い不安を感じるようになることも少なからずあります。こうした経験の積み重ねが症状を悪化させる要因となっています。過去に辛い経験をしたペットには、より慎重なケアが必要です。
環境の変化による不安

ペットホテルは自宅とは異なる環境であり、匂いや音、温度などあらゆるものが変わります。犬や猫は嗅覚が鋭く、見知らぬ環境の匂いに敏感に反応します。
普段使っている寝床やおもちゃがない状況は、ペットにとって大きなストレス要因です。食事や散歩の時間といった生活リズムの変化もペットの精神状態に影響を与えます。
自宅では自由に動き回れていたペットがケージ内で過ごすことになると、行動が制限されることへの不満も生じやすいです。
こうした環境の変化に順応できないことが、分離不安の症状を悪化させる要因となっています。
ほかの動物や音、匂いの刺激
ペットホテルではほかの動物が同じ空間にいることが一般的です。見知らぬ動物の鳴き声や匂いは、ペットに強い刺激を与えます。
社会化が不十分なペットや、ほかの動物との接触経験が少ないペットは、この刺激に対して強いストレスを感じやすくなります。
スタッフの足音や清掃の音、ドアの開閉音など、自宅では聞かない音も不安を増幅させる要因です。夜間に周囲の動物が鳴き出すと、つられて興奮状態になるペットもいます。
こうした複合的な刺激が、分離不安の症状を引き起こすきっかけになることもあります。個室タイプの施設を選ぶことで、刺激を軽減できるでしょう。
脳や神経の病気の可能性
分離不安と思われる症状が重度な場合、脳や神経に何らかの問題が隠れている可能性もあります。
高齢のペットでは、認知機能の低下が分離不安の症状として現れることがあります。甲状腺の異常やてんかんなどの疾患が不安行動に影響を与えているケースもあり、注意が必要です。
問題行動が突然始まった場合や対策を講じても改善が見られない場合は、動物病院で身体的な原因がないか確認することをおすすめします。
行動の変化だけでなく、食欲や排泄の様子にも異常がないか観察することが大切です。早期発見は適切な治療につながるため、気になる症状があれば専門的な検査を受けることが重要です。
分離不安があるペットに見られる症状や行動

分離不安を抱えるペットは、飼い主さんがいないときに、さまざまな症状や問題行動を示します。
ペットからのSOSサインを見逃さないためにも、どのような症状があるのか把握しておきましょう。
鳴き続ける、吠え続ける
分離不安の代表的な症状のひとつが、飼い主さんがいなくなった後に長時間鳴き続ける行動です。
犬の場合は遠吠えのような甲高い声で吠え続けることがあります。これは、群れに戻ってきてほしいという欲求から生じる行動です。猫の場合も飼い主さんの姿が見えなくなると、普段とは異なる大きな声で鳴き続けることがあります。
帰宅後に愛犬や愛猫の声が枯れていたり、ペットホテルから鳴き続けていたりしたと報告があった場合は、分離不安の可能性が高いです。
近隣への騒音問題に発展するケースもあるため、早めの対処が求められます。声が枯れるほど鳴き続けると喉を傷める恐れもあります。
破壊行動
飼い主さんがいない間に家具やドアを傷つけたり、カーペットやクッションをかじったりする破壊行動も分離不安の特徴的な症状です。
ドアや窓の周辺を引っかく行動は、飼い主さんを追いかけたい、この場所から逃げ出したいという気持ちの表れです。猫の場合は爪とぎ以外の場所で家具を傷つけることがあります。
こうした行動は単なるいたずらとは異なり、不安を紛らわせるための転位行動として現れています。ペットホテルでは備品を破損してしまい、弁償を求められるケースもあるため注意が必要です。爪や歯が折れてしまう危険性もあります。
トイレ以外での排泄

普段はきちんとトイレで排泄できるペットが、飼い主さんの不在時にトイレ以外の場所で粗相をしてしまうこともあります。
不安が高まることで排泄のコントロールができなくなったり、自分の匂いを残すことで不安を和らげようとしたりする行動の表れです。
飼い主さんのベッドや衣類など、匂いが強く残っている場所で排泄してしまうケースもあります。この症状は飼い主さんへの嫌がらせではなく、強い不安の表れと理解することが大切です。
叱責するとかえって症状が悪化することもあるため、冷静に対応する姿勢が求められます。トイレトレーニングが完了していても起こりうる症状です。
自傷行為
分離不安が重度になると、自分の手足を過剰になめたり噛んだりする自傷行為が見られることがあります。
前足をなめ続けて皮膚が炎症を起こしたり、毛が抜けてしまったりするケースもあります。猫の場合は過剰なグルーミングでお腹や内股の毛がはげてしまうこともあり、注意が必要です。
こうした行動は不安やストレスを紛らわせるための行動ですが、放置すると傷口から感染症を起こす危険性もあります。
皮膚に異常が見られた場合は、速やかに動物病院を受診することがおすすめです。早期に治療を開始することが回復を早める鍵です。エリザベスカラーの装着が必要になることもあります。
食欲不振や体調不良
分離不安によるストレスは、身体的な症状として現れることもあります。飼い主さんがいない間、ごはんを全然食べなくなったり水を飲まなくなったりするペットも少なくありません。
ストレスによって下痢や嘔吐を繰り返すこともあります。ペットホテルから戻ってきた後に体重が減っていたり元気がなかったりする場合は、滞在中に強いストレスを感じていた可能性が高いです。
数日間何も口にしない状態が続くと、脱水症状や栄養不足に陥る危険性もあります。こうした体調の変化は、見逃さないようにしましょう。
帰宅後も症状が続く場合は、獣医師への相談を検討しましょう。
呼吸の乱れやよだれの増加
強い不安を感じると、犬は口を開けてハアハアと荒い呼吸をするパンティングを見せることがあります。
暑くもないのにこうした呼吸が見られる場合は、精神的なストレスが原因の可能性があります。よだれの量が増えることも分離不安のサインのひとつです。猫の場合はよだれが増えたり過剰に毛づくろいをしたりする行動が見られます。
これらの症状は自律神経の乱れによるもので、強い不安やストレスを受けている証拠です。症状が長引く場合は、獣医師に相談しましょう。心臓や呼吸器に問題がないか確認することも大切です。
分離不安があるペットはペットホテルに預けられる?

分離不安を抱えるペットでもペットホテルに預けることは可能ですが、事前の準備と施設選びが重要です。
分離不安が軽度であれば、適切な対策を講じることでペットホテルでの滞在が可能な場合があります。
重度の分離不安がある場合は、ペットシッターに自宅で世話をしてもらうなど、環境の変化をできるだけ抑える方法を検討することも選択肢のひとつです。かかりつけの獣医師に相談しながら、愛犬や愛猫にとって負担の少ない選択をしていきましょう。
症状の程度によっては、抗不安薬やサプリメントの処方を受けられることもあります。事前に施設側へ分離不安があることを伝えておくと、スタッフも配慮した対応をしてくれる場合があります。
どうしても預けなければならない状況であれば、できるだけ短期間に抑えることも検討すべき点です。
分離不安に配慮したペットホテルの選び方

分離不安を抱えやすいペットを預ける場合、施設選びはとても重要です。まずはスタッフが常駐しているかどうかを確認しましょう。
夜間も従業員がいる施設であれば、何かあったときにすぐに対応してもらえます。個室タイプの部屋があるかどうかも重要なポイントです。
ほかの動物との接触がストレスになるペットには、静かに過ごせる空間が適しています。事前に見学ができる施設を選び、環境やスタッフの対応を確認することがおすすめです。
動物病院が併設されている施設であれば、体調を崩した際にも迅速な対応が期待できます。滞在中の様子を写真や動画で報告してくれるサービスがあると、飼い主さんも状況を把握しやすくなります。
料金だけで判断せず、愛犬や愛猫に適した施設を見つけることが大切です。複数の施設を比較検討してみましょう。
ペットホテルに預ける前にできる分離不安対策

ペットホテルの利用が決まったら、預ける前からできる対策を始めることが大切です。
事前の準備をしっかり行うことで、ペットのストレスを軽減し、分離不安の症状を和らげることが期待できます。ここでは、飼い主さんができる具体的な対策方法をご紹介します。
短時間の慣らし預かりを行う
いきなり長期間預けるのではなく、まずは数時間から始める慣らし預かりを活用しましょう。
短時間でもペットホテルの環境やスタッフに触れることで、ここは怖い場所ではないという認識が生まれます。何度か短時間の預かりを経験させてから本番の宿泊に臨むことで、ペットの不安を大幅に軽減できます。
施設によってはお試し預かりサービスを提供しているところもあるので、積極的に利用することがおすすめです。慣らし期間は1〜2週間程度を目安に、徐々に滞在時間を延ばしていきます。焦らずペットのペースに合わせることが成功の秘訣です。
日常的に留守番の練習をする
ペットホテルに預ける前から、自宅での留守番練習を始めましょう。はじめは数分間部屋を離れることから始め、徐々に時間を延ばしていきます。
飼い主さんが離れても戻ってくることを学習させることで、分離に対する不安を軽減できます。ケージやクレートに入る練習も有効です。
ケージを落ち着ける場所として認識させておくと、ペットホテルでも自分の居場所として受け入れやすくなります。練習中はおやつやおもちゃを活用して、ひとりの時間を楽しいものとして印象づけることが効果的です。
毎日少しずつ継続することで着実に成果が現れます。
匂いのついた持ち物を持参する

ペットホテルに預ける際は、飼い主さんの匂いがついたものを持参しましょう。普段使っているタオルやブランケット、お気に入りのおもちゃなどがあると、見知らぬ環境でも落ち着きやすくなります。
飼い主さんの匂いはペットにとって心を落ち着かせる材料となります。いつも食べているフードを持参することも重要です。環境が変わっても食事だけは普段どおりにすることで、ストレスを軽減する効果が期待できます。
洗濯したての清潔なものよりも、使い込んで匂いがしっかり染み込んだアイテムのほうが効果を発揮します。持参可能なアイテムは施設ごとに異なるため、事前の確認が大切です。
預ける前後の接し方に注意する
ペットホテルに預ける直前に過度なスキンシップを取ると、離れた後の寂しさがかえって増してしまいます。出かける前は普段どおりに接し、特別なことはしないようにしましょう。
長々と別れの挨拶をしたり、お迎え時に過剰に喜んだりすると不在時と在宅時の差が大きくなり、次回のお別れがより辛くなってしまいます。
静かに出かけ、静かに戻ることを心がけましょう。飼い主さん自身が不安そうな表情を見せると、ペットにもその感情が伝染してしまいます。いつもどおりの日常を演出しながら、堂々とした態度をとることが大切です。
まとめ

ペットホテルの利用で起こる分離不安は、飼い主さんと離れることや環境の変化によって引き起こされます。
鳴き続けることや破壊行動、粗相、自傷行為などの症状が見られた場合は、分離不安のサインである可能性が高いです。
事前に慣らし預かりを行い、においのついた持ち物を持参することで、ペットの不安を軽減できます。施設選びでは夜間スタッフの常駐や個室の有無を確認し、事前見学も活用しましょう。
症状が重い場合は、動物病院で相談する必要があります。愛犬や愛猫の様子をよく観察して適切に対処していきましょう。
参考文献
