犬の毛をきれいに整えたいけれど、トリミングサロンに通うのは大変という方におすすめなのが、自宅でのトリミングです。適切な道具と正しい方法を知っていれば、愛犬の健康と清潔を保ちながら、自宅で手軽にケアが行えます。
本記事では自宅でのトリミングのやり方について以下の点を中心にご紹介します。
- トリミングとは?
- 自宅でトリミングを行う前に知っておきたいこと
- 自宅でのトリミングのやり方
自宅でのトリミングのやり方について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
トリミングの概要

トリミングとは、具体的にどのようなケアを指すのでしょうか?ここでは、トリミングの基本からその重要性までを解説します。
トリミングとは
トリミングとは、犬の被毛をカットして整えることを指します。また、この作業を専門に行う職業の方をトリマーと呼びます。トリマーは、ハサミやバリカンなどの道具を使いながら、犬の毛をカットし、必要に応じて指やトリミングナイフを使用して毛を抜いたり形を整えたりします。
トリミングとグルーミングの違い
犬の被毛のお手入れにはトリミングとグルーミングがあり、それぞれ目的や内容が異なります。どちらも犬の健康を維持するために重要なケアです。
【トリミングについて】
トリミングは、ハサミやバリカンを使用して犬の被毛を整えることを指します。これは単に見た目を美しくするだけでなく、犬の健康管理にも役立ちます。
定期的にトリミングをしないと、被毛が伸びすぎて毛玉ができやすくなったり、不衛生な状態になりやすかったりして、皮膚炎などのトラブルを引き起こす可能性があります。また、目の周りの毛が視界を妨げてぶつかりやすくなったり、足裏の毛が伸びすぎると滑ってケガをするリスクもあります。
【グルーミングについて】
一方グルーミングは、犬の体全体のお手入れを指します。これは被毛のタイプや長さに関係なく、すべての犬が定期的に行うべきケアです。
グルーミングの内容には以下のようなものがあります。
・ブラッシング:抜け毛の除去や毛玉の防止
・シャンプー:皮膚や被毛を清潔に保つ
・足裏カット:滑りにくくするための毛のカット
・爪切り:伸びすぎによる歩行の影響を防ぐ
・耳掃除:耳の汚れや炎症を防ぐ
・肛門腺絞り:臭いや炎症を予防
グルーミングは、犬の健康チェックの意味もあり、皮膚の異常やケガ、感染症などの早期発見につながる大切な習慣です。
トリミングはすべての犬に必要?

トリミングはすべての犬に必要なのでしょうか?以下で詳しく解説します。
トリミングが必要な犬種
トリミングが必要な犬種として、被毛が長く量が多い犬が挙げられます。トリミングが必要な犬種は以下のとおりです。
- プードル
- ヨークシャー・テリア
- マルチーズ
- チワワ
- ポメラニアン
プードルやヨークシャー・テリア、マルチーズのようなシングルコートの犬は、年間を通じて少しずつ毛が生え変わります。放置すると毛が絡まりやすくなるため、定期的なトリミングが欠かせません。
また、チワワ、ポメラニアンなどのダブルコートの犬もトリミングが必要です。ダブルコートの犬は、冬場に保温性を高めるためにアンダーコート(下毛)が増え、夏になると通気性を良くするために自然に抜け落ちます。
しかし、放っておくと被毛の状態が悪化することもあるため、適度なカットでケアすることが大切です。
トリミングが不要な犬種
短毛の犬種は、被毛が伸びることがないため、定期的なカットは必要ありません。以下の犬種は毛質の特徴上、トリミングを行う必要がありません。
- フレンチ・ブルドッグ
- パグ
- スムースコートチワワ
- 短毛のダックスフンド
フレンチ・ブルドッグやパグは、もともと毛が短く、トリミングでカットする程伸びることがないため、トリミングサロンに通う必要はありません。
また、スムースコートと呼ばれる短毛タイプの犬種も、基本的にトリミング不要です。同じ犬種でも、毛の長さによってトリミングの必要性が異なります。例えば、チワワのなかでも、スムースコートチワワは短毛のため、被毛の長さを整える必要がありません。
自宅でトリミングはできる?

自身で犬のお手入れをしたいと考える飼い主さんは多いようですが、場合によってはトリミングサロンや動物病院に任せた方がよいこともあります。以下のケースに当てはまる場合は、プロに依頼することをおすすめします。
- トリミング初心者による全身カット
初めての飼い主さんがいきなり全身カットを行うと、犬がストレスを感じ、トリミングを嫌がるようになることがあります。 - 暴れやすい犬のトリミング
興奮しやすい犬の場合、逃げ出そうとしたり暴れたりすることがあり、安全に作業を進めるのが難しくなります。 - 子犬やシニア犬の冬のシャンプー
家庭用のドライヤーでは乾かすのに時間がかかり、濡れたままの時間が長くなることで体に負担がかかる可能性があります。 - 耳掃除
耳の中の掃除は、誤って鼓膜を傷つけたり、汚れを奥に押し込んでしまうリスクがあるため、動物病院で行うのがおすすめです。 - シニア犬の肛門腺絞り
シニア犬の皮膚は薄くなり傷つきやすいため、適切な力加減で行う必要があります。トリマーや獣医師に任せるのが無難です。
自宅でトリミングを行う前に

自宅でトリミングを行う前に知っておきたいことを以下で詳しく解説します。
トリミングを安全に行うために
トリミングを安全に行うためには以下のことに気をつけましょう。
- 犬の健康状態をチェックする
トリミングを始める前に、まずは犬の健康状態を確認することが重要です。皮膚の赤みや傷、腫れ、湿疹、乾燥などの異常がないかを丁寧に観察しましょう。また、耳の状態や体の各部位、手足、関節に違和感がないかもチェックし、触られるのを嫌がったり、痛がったりする箇所がないか確認してください。また、食後すぐのトリミングは消化の負担になるため避け、犬が落ち着いているタイミングで行うことが大切です。もし気になる症状がある場合は、無理にトリミングをせず、事前に動物病院で診察を受けることをおすすめします。
- 被毛の状態を確認
汚れがひどい場合や絡まり・もつれがある場合は、しっかりとブラッシングを行ってからカットをするようにしましょう。
- 適切なトリミング環境を整える
トリミングを行う場所は、屋外ではなく、掃除しやすい室内のスペース(洗面所やバスルーム、玄関など)を選ぶのが理想的です。室内で行う場合、床にビニールシートや新聞紙を敷いておくと、後片付けが楽になります。また、犬がリラックスできる環境を整えることも重要です。周囲に子どもやほかの動物がいると興奮しやすいため、静かで落ち着いた空間でトリミングを行いましょう。サロンのように台の上で作業をする場合は、壁や部屋の角を活用するなど、犬が落下しないよう安全対策を施すことが必要です。
必要な道具の準備
自宅で安全にトリミングを行うためには、適切な道具を準備することが大切です。スムーズに作業が進められるよう、以下のアイテムを揃えておきましょう。
- ブラシ類
まず用意したいのが、スリッカーブラシや天然毛ブラシ(獣毛ブラシ)です。これらはトリミングのときだけでなく、日常的な毛玉取りや抜け毛対策にも役立ちます。シャンプーやカットの前にしっかりブラッシングを行うことで、毛のもつれを防ぎ、バリカンが引っかかるのを防ぎます。
- 爪切り&止血剤
犬の爪を整えるためには、爪切りが必要です。爪切りにはいくつかの種類があり、以下のように用途が異なります。
・ギロチンタイプ(初心者向け、扱いやすい)
・ニッパータイプ(力を入れやすく、しっかり切れる)
・ハサミタイプ(小型犬向け、細かい調整がしやすい)
初めての方には、扱いやすいギロチンタイプがおすすめです。また、犬の爪には血管や神経が通っているため、切りすぎると出血することがあります。万が一に備えて、止血剤を用意しておきましょう。
- バリカン
バリカンを使えば、ハサミよりも短時間で安全に毛をカットできます。足裏や耳周りの毛を整える際には、小回りの利くミニバリカンが便利です。
- ハサミ&コーム
トリミングを行う際には、用途に応じて以下のように複数のハサミを使い分けます。
・カット用ハサミ(全体の毛を整えるのに使用)
・梳きバサミ(毛量を調整し、自然な仕上がりにする)
・ミニハサミ(顔周りや足先、肛門周りの細かい部分に合った小型のハサミ)
ハサミを使用する際は、刃先を犬の体に向けないようにし、皮膚から少し離してカットしましょう。また、コーム(櫛)を使って毛を整えながらカットすると、仕上がりがより美しくなります。
自宅でのトリミングのやり方

自宅でのトリミングのやり方は以下のとおりです。
爪切り
犬の爪を適切な長さに保つことは、健康的な歩行を維持するためにとても重要です。爪が伸びすぎると、肉球が地面にしっかり接地できず、歩行時のバランスが崩れたり、関節に負担がかかったりすることがあります。
犬の爪は散歩などで地面に触れることで自然と削れるものの、すべての爪が均等に短くなるわけではありません。運動量が少ない犬や高齢犬は爪が伸びやすいため、定期的なチェックが必要です。
また、地面に接しない狼爪(ろうそう)と呼ばれる親指の爪は、自然に削れることがないため、こまめにカットする必要があります。前述したように、爪には血管と神経が通っているため、深く切りすぎると出血してしまうことがあるので、慎重に行いましょう。
足裏の毛のカット
足裏の毛を整える際は、ハサミではなくペット専用のバリカンを使用し、安全にカットすることが大切です。怪我を防ぐためにも、肉球を傷つけないよう慎重に作業しましょう。
カットする際は、指を1本ずつ広げながら、肉球からはみ出している余分な毛を少しずつ削るようにカットします。無理に一度に刈ろうとせず、ゆっくり丁寧に進めることがポイントです。肉球がしっかりと見える状態になれば、足裏の毛のカットは完了です。
肛門腺絞り
肛門腺とは、肛門の左右にある小さな袋(肛門嚢)に溜まる分泌物のことを指します。この分泌物は本来、犬が臭いをつけるために役立つものですが、放置すると悪臭の原因となることがあります。
個体差によって自然に排出される犬もいれば、溜まりやすく排出しにくい犬もいるため、定期的なケアが必要です。目安として、月に1回程度の頻度で絞るとよいでしょう。
シャンプー・ブロー
プードルやパピヨンなどの毛の長い犬種は、シャンプー前にしっかりブラッシングをしておくことで、毛がほぐれ、シャンプーがなじみやすくなります。シャワーで体を濡らす際は、お湯の温度に注意しながら、犬が驚かないように優しく声をかけてあげましょう。水をかける順番は、体の後ろから前へと進めるのがポイントです。
シャンプー時には、肛門腺絞りも一緒に行い、そのままきれいに洗い流すと清潔を保ちやすくなります。シャワーが苦手な犬には、シャワーヘッドを皮膚に密着させることで水の衝撃を和らげたり、スポンジにお湯を含ませて優しく流すなど、工夫することでストレスを軽減できます。
自宅でのトリミングの注意点

自宅でトリミングする際は、以下の点に注意しましょう。
台から落ちないように目を離さない
テーブルやトリミング台などの高い場所でトリミングを行う場合は、安全のためにも目を離さないことが大切です。リードで固定していたとしても、手を添えたままにして離さないようにしましょう。
無理をしない
犬がトリミングを嫌がる理由はさまざまです。自宅でトリミングに挑戦しようと道具を揃えていたとしても、どうしても嫌がってしまう場合は、無理をせずトリマーに任せましょう。
ブラシやハサミでケガをさせない
自宅で犬のトリミングを行う際は、安全面に十分配慮することが大切です。犬は慣れた自宅というリラックスできる環境で、信頼する飼い主に手入れされていることで、つい我慢できずに動き回ったり、逃げたり、暴れたりすることがあります。
そのため、セルフトリミングにはさまざまなリスクが伴うことを理解して注意しながら慎重に行いましょう。
落ち着いた環境で行う
作業中は犬に優しく声をかけることを大切にしましょう。
トリミングの作業に集中していると忘れがちですが、アイコンタクトを取ったり、優しく声をかけたりすることで、犬もリラックスした気持ちになれます。
また、犬の様子をよく観察することで苦手な作業が何かを把握できるようになり、嫌がる場面では注意をそらすなどの工夫ができるようになるでしょう。
トリミングサロンや動物病院を上手に活用しよう

犬のトリミングを自宅で行うには、事前の準備をしっかり整え、時間をかけて少しずつ慣れさせることが大切です。
自宅でのトリミングは、愛犬がリラックスできたり、費用が抑えられたりとメリットがあるものです。しかし、特にトイプードルやシュナウザーなどカットの技術が必要な犬種や、中型犬以上の犬種では時間がかかり、それなりの経験やテクニックが必要になるため難しいこともあります。全身のカットなどは無理をせず、動物病院やトリミングサロンに任せたほうがスムーズな場合も少なくありません。自宅では部分的なカットやケアから始めてみることをおすすめします。
最初からすべてをご自身でやろうとすると、犬にとって大きな負担になってしまうこともあります。無理をせず、トリミングサロンや動物病院を上手に活用しながら、快適でリラックスできる時間になるよう工夫していきましょう。
まとめ

ここまで自宅でのトリミングのやり方についてお伝えしてきました。自宅でのトリミングのやり方についての要点をまとめると以下のとおりです。
- トリミングとは、犬の被毛をカットして整えることを指す
- 自宅でトリミングを安全に行うためには、犬の健康状態をチェックしたりトリミング環境を整えたりすることが大切であり、場合によってはトリミングサロンや動物病院に任せるのがおすすめ
- 自宅でトリミングを行う際は、安全面に十分注意して、台から落ちないように目を離さないことや無理をしないこと、体調面にも気を配ることが重要
トリミングは、愛犬の健康や清潔を保つうえでとても大切なケアです。適切な道具を使い、犬種ごとの特徴に合わせた方法で行うことで、負担を抑えながら快適なセルフトリミングができます。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。