トリミング後の犬を見て、普段と様子が違うと、心配になる方もいるでしょう。その普段と違う様子は、トリミングによる疲れのサインかもしれません。
トリミングは、犬にとってストレス負荷が大きいため、施術後は疲れによってさまざまな症状が現れることがあります。犬が疲れる原因や、どのような症状が現れるのかを理解しておくことが大切です。
この記事では、犬がトリミングで疲れたときにみられる症状と、疲れを和らげる方法を解説します。犬が元気に過ごせるように、トリミング後の注意点も確認しておきましょう。
犬はトリミングされると疲れる?
犬はトリミング中、初対面のスタッフとの接触や慣れない環境にいることで、ストレスを感じやすくなります。犬の衛生や健康状態を維持するためにも必要なトリミングですが、この作業は犬にとって嫌悪刺激となることがほとんどです。
トリミングは長時間にわたって行われるため、犬の筋肉が緊張状態になりエネルギーの消費量が増加します。また、シャンプーをすることで身体が濡れ、体温の変化が激しくなることもストレス要因の一つです。
このように、トリミングでは複数のストレス要因が重なることで犬が疲れて、普段とは違う様子を見せることがあります。
トリミング後は、犬の体調に注意しながら、落ち着ける環境で休ませてあげることが大切です。
トリミング後に見られる犬の疲れのサイン
衛生や健康状態を維持するためにも必要なトリミングですが、犬にとっては大きなストレスとなっている可能性があります。トリミング後に、以下のような症状がみられたら犬が疲れているサインかもしれません。
- 元気がない
- 食欲の低下
- そわそわしている
具体的な症状を理解して、適切な対応ができるようにしておきましょう。
元気がなく、ぐったりしている
トリミング後にみられる犬の疲れのサインとして、元気がなくぐったりしていることが挙げられます。特に、長時間にわたるトリミングは犬にとって大きな負担となるため、普段は活発な犬でもぐったりと横になり動きたがらないケースも少なくありません。
犬の負担を減らすためには、経験豊富なトリマーさんにお願いしたり、トリミング時間をできるだけ短くしてもらったりするなどの工夫が必要です。
食欲がない、ご飯を食べたがらない
食欲の低下や水を飲む量が減っている状態は、犬のストレスサインの一つです。特に、トリミング後に食欲がなくご飯を食べたがらない場合は、トリミングに疲れている可能性があります。
1日程度でもとに戻ることがほとんどですが、数日経っても戻らない場合は注意が必要です。ストレス以外の要因が隠れている可能性があるため、長く続く場合はかかりつけの動物病院に相談するようにしましょう。
そわそわして落ち着かない
シャンプーやカットを行うトリミングは、犬にとってストレスの要因となる作業です。特に、毛が短くなることによる身体の感触の変化やシャンプーの匂いがつくことは、犬にとって違和感がありそわそわして落ち着かないことがあります。
このような症状がみられる場合は、できるだけいつもと同じような環境で、犬が落ち着いて過ごせる場所を確保してあげることが大切です。十分な休息をとることで、徐々に症状も落ち着いてくるでしょう。
犬がトリミングで疲れてしまう原因
犬がトリミングで疲れてしまうのには、いくつかの原因があります。どのような原因があるのかを知ることで、適切な対処法が見つかるかもしれません。
ここでは、犬がトリミングで疲れてしまう四つの原因を解説します。疲れの原因を探り、適切な対策がとれるようにしておきましょう。
慣れない環境で落ち着かない
トリミングは、犬にとってストレス負荷が大きいと考えられています。その理由として挙げられるのが、普段と違う環境になることです。
犬は、慣れない環境になると警戒心を抱き、落ち着きなくなることがあります。これは不安を感じているサインでもあるため、トリミングサロンやスタッフに慣れさせて、ストレス負荷を軽減させる工夫が必要です。
長時間の施術が負担になる
シャンプーやカットを行うトリミングは、身体の動きを制御されることもあり、犬にとって大きな負担になります。施術が長時間になればなるほどストレス負荷が大きくなる傾向があるため、できるだけ短時間で施術を行い、ストレス負荷を軽減させることが大切です。
そのためには、普段から身体を触られることに慣れさせておき、トリマーがスムーズに作業を行えるようにしておくとよいでしょう。また、経験豊富なトリマーに担当してもらうのもおすすめです。
カット・シャンプー・ドライヤーの振動や音による刺激が苦手である
犬は人間よりも聴覚が優れていることもあり、トリミングで使用するドライヤーやシャワーの音が苦手な傾向があります。具体的には、人間が聞こえる周波数が12Hz〜23,000Hzで、犬が聞こえる周波数が15Hz〜60,000Hzです。
人間よりも周波数の高い音を聞き取れるため、ドライヤーのファンの音やカットの際に聞こえるハサミの音などが、不快に感じる犬も少なくありません。この苦手な音を長時間聞き続けるトリミングは、ストレス負荷が大きく、疲れてしまう原因になるのです。
ほかの犬との接触がストレスになる
トリミングサロンでは、複数の犬を同じ空間で施術するケースも少なくありません。この場合、犬同士のコミュニケーションに慣れていないと、ストレス負荷がより大きくなる可能性があります。
犬にとって負担の大きいトリミングだからこそ、性格にあった環境を整えることが大切です。犬同士のコミュニケーションが苦手な場合は、個人のトリミングサロンや別室で施術をしてもらえるサロンを探すのもよいでしょう。
トリミングによる犬の疲れを和らげるポイント
トリミングによる犬の疲れを和らげるには、以下の四つのポイントをおさえておきましょう。
- 静かに過ごせる環境を整える
- アロマや音楽でリラックスさせる
- 優しく声かけをする
- 施術時間を短くする
具体的な方法を確認し、犬の性格にあった方法を取り入れるのがおすすめです。
自宅で静かに過ごせるよう環境を整える
トリミング後は、できるだけいつもと同じ環境で静かに過ごせるようにしてあげましょう。トリミング後の犬は、慣れない環境で長時間過ごしたことによって大きなストレスを抱え、疲れている状態です。
慣れている自宅で静かに過ごすことで、ストレスが軽減され、疲れも癒されていくでしょう。また、普段よく遊ぶおもちゃや、お気に入りのタオルなどを用意してあげるのもおすすめです。
リラックスできるアロマや音楽を取り入れる
アロマと聞くと、人間用のアロマを使っても大丈夫なのか、と不安になる方もいるでしょう。実は、ペットのケアを目的に作られているペットアロマというものがあります。
リラックス効果やストレス軽減の効果が期待できるとされているため、トリミング後に活用するのもおすすめです。ただし、ペットアロマの使用には十分な注意が必要なため、あらかじめ使用方法や注意点をしっかりと確認しておきましょう。
また、自宅の静かな空間で犬が落ち着ける音楽を流すことも、犬の疲れを和らげるのに効果的です。
飼い主による優しい声かけで落ち着かせる
犬の聴覚は人間よりも優れており、普段からよく聞く飼い主の声がわかるといわれています。そのため、飼い主が優しく声かけをすることで、犬が落ち着きを取り戻す可能性が高いといえるでしょう。
ただし、過剰に構いすぎると興奮して落ち着かなくなることがあります。トリミング後は、犬が自ら甘えてきたら優しく撫でたり声かけをしたりするようにして、過剰なスキンシップは控えるようにしましょう。
一度の施術時間をできるだけ短くする
トリミングが長時間になればなるほど犬のストレス負荷が大きくなるため、一度の施術時間をできるだけ短くするようにしましょう。
トリミングが長時間になる原因として、毛玉ができてカットがしづらいことと、身体を触られることに慣れていないことが挙げられます。これらは、日頃から自宅でお手入れをすることで予防ができ、継続すれば改善も目指せるでしょう。
全身のお手入れが難しい場合は、目元だけ、足だけなど部位を限定して行うのもおすすめです。継続して行うことで、毛玉ができにくくなり、犬は徐々に身体を触られることに慣れてくるでしょう。
結果的にトリミングの作業が楽になり、施術時間の短縮につながります。
犬の疲れを軽減させるためのトリミングサロンの選び方
トリミング後の犬の疲れを軽減させるには、適切なトリミングサロンを選ぶことが大切です。ここでは、適切なトリミングサロンの選び方を具体的に解説します。ポイントをおさえて、よりよいトリミングサロンを選択しましょう。
トリマーやスタッフの接し方や声かけが丁寧か
トリミングでは、飼い主以外に触られることで、犬のストレス負荷が大きくなります。このストレス負荷を少しでも軽減させるために、トリマーやスタッフの接し方、声かけの方法などをチェックしましょう。
スタッフとコミュニケーションをとることでサロンの雰囲気がわかり、犬にあったトリミングサロンかを判断できるようになります。また、初めて利用する場合は、事前に見学をするのもおすすめです。
犬に優しいシャンプーやケア用品を使っているか
犬には犬専用のシャンプーやケア用品があり、適切なガイドラインに基づいて多数の商品が取り揃えられています。種類が豊富なこともあり、トリミングサロンによって使用しているシャンプーやケア用品はさまざまです。
適切なシャンプーやケア用品を使用することで、健康的できれいな毛並みを保つことができるため、施術前にシャンプーの種類やケア用品について相談しておくとよいでしょう。
特に、アレルギーや乾燥肌が気になる場合は、予約前に相談するのがおすすめです。
動物病院と連携・併設されているか
トリミングサロンを選ぶ際は、動物病院と連携または併設しているのかを確認しておきましょう。
トリミングでは、体調が急変したり犬が暴れてけがをしてしまったりする可能性があります。また、施術による事故が起こるケースがあるのも事実です。
動物病院と連携または併設していれば、もしものときに迅速な対応が期待できるでしょう。
ペットのストレスを和らげる工夫がされているか
トリミングの施設内が、犬にとってストレス負荷が少ない環境であるかどうかも重要なポイントです。犬のストレス軽減のためにも、以下の3点を確認しておきましょう。
- 施設内の清潔さ
- 室温管理
- 周辺や施設内の音の大きさ
特に、室温管理がしっかりとされていないと、犬の生死に関わる可能性があります。夏場であれば、エアコンが24度〜25度程度に設定されているか、犬が快適に過ごせる温度設定かどうかの確認が必要です。
犬が元気に過ごせるようにトリミング後に注意したいこと
トリミング後は、食欲や体調の変化、普段との行動の違いなどを注意深く確認するようにしましょう。もしも異変を感じた場合は、かかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。
食欲や排泄など体調に変化がないか
犬のストレスサインの一つとして、一時的な食欲低下や体調の変化が現れることがあります。落ち着ける場所で静かに過ごすことでもとに戻ることがほとんどですが、数日経っても戻らない場合は注意が必要です。
日頃から食事の量や排泄の頻度、身体の状態などをしっかりと把握しておき、トリミング後に大きな変化がないか確認するようにしましょう。
普段と違う行動が見られないか
トリミング後のストレスによって、そわそわして落ち着かない様子がみられることがあります。例えば、前脚の同じ場所を舐め続ける、飼い主の姿が見えなくなると吠えるなどです。
これらはストレスが原因でよくみられる症状のため、普段している遊びやトレーニングをして、不安を和らげてあげましょう。
異変を感じたら、かかりつけの動物病院へ相談を
トリミングは、犬にとってストレスの原因となる作業です。そのため、トリミング後は疲れのサインとしてさまざまな症状が現れます。
トリミング後は十分な休息時間を与えることが大切ですが、犬の様子に異変を感じた場合は、早めにかかりつけの動物病院に相談するようにしましょう。
トリミングによる疲れ以外の原因が隠れている可能性もあります。トリミング後は、皮膚の状態や排泄、身体を触って嫌がる箇所はないかなどの確認が大切です。
まとめ
犬が長く元気に過ごすためには、定期的なトリミングが欠かせません。しかし、トリミングは犬にとってストレス負荷が大きく、疲れの原因となる作業です。
トリミングによる疲れのサインとして、食欲低下や元気がなく動きたがらない、そわそわして落ち着かないなどが挙げられます。
この症状を和らげるためには、自宅の落ち着く空間で、静かに休める環境を整えてあげることが大切です。飼い主は過剰に構いすぎず、犬が甘えてきたら優しく撫でたり声かけをしたりしてあげましょう。
トリミング後の犬の症状は、疲れによるものなのか、それ以外に原因があるのかの見極めが難しいかもしれません。犬の様子に違和感がある場合は、かかりつけの動物病院に相談するとよいでしょう。
犬と長く一緒に過ごすためにも、普段の犬の様子を把握し、トリミング後の様子と比べられるようにしておくことが大切です。
参考文献