子犬を飼うことを検討している方や初めて犬を飼う方のなかには、正しいしつけができるか不安を感じている方も多いでしょう。
しつけが不十分だと、ほかの犬や人に吠えたり噛みついたりするトラブルにつながる恐れがあります。そこで選択肢として挙げられるのが、しつけ教室です。
プロのトレーナーの方にしつけを依頼することで、犬の行動が改善されるだけでなく、飼い主自身も正しい知識を学べます。
ただし、しつけ教室にはメリットだけでなくデメリットもあるため、しつけ教室を選ぶ際のポイントとあわせて解説します。
子犬のしつけ教室は必要?
家族全員でしつけ方針を一貫して実践できるのであれば、しつけ教室は必ずしも必要ではありません。
しかし、子犬に家族のルールや社会性を身につけさせるためには、褒め方や叱り方に一貫性が必要です。
そうすることで、子犬はよい行動と悪い行動の基準を理解するようになります。しかし、家族によって褒め方や叱り方に差があると、子犬が基準を理解することが困難になります。
そのため、しつけの基礎を築く手段として、しつけ教室に活用するのも有効な方法です。
しつけ教室に行くのに適したタイミング
生後4ヶ月頃が社会性を身につけるために適しています。生まれてすぐの時期は、脳の発達が不十分なため、しつけを理解するのは難しいとされています。
そのため、生後間もなくは飼い主さんと子犬の信頼関係を築き、生後4ヶ月頃を目安にしつけ教室を検討するとよいでしょう。
ただし、人間と同様に犬にも個体差があるため、無理に時期を合わせる必要はありません。
子犬のしつけ教室の主なメニュー
主なしつけ教室のメニューは以下の5つです。
- 名前を教える
- トイレトレーニング
- 社会性訓練
- 留守番訓練
- 噛み癖や吠え癖の予防
これらは、犬と人がストレスなく安心感を持って暮らしていくための基本的なトレーニング内容です。名前を覚えることで、自分が呼ばれていることを犬が正しく認識できるようになります。
トイレを決まった場所でできないと、住宅の衛生環境に悪影響を及ぼす可能性があります。外出先でも排泄の失敗につながる可能性があるため、早期のトレーニングが大切です。
長時間のお留守番が想定される場合は、犬が過度なストレスを感じないために訓練が必要です。
散歩する際には、ほかの犬や飼い主さんと接する機会も多くなります。そのため、噛み癖や吠え癖を未然に防ぐトレーニングが重要です。
名前を教える
飼い主さんが決めた名前で子犬に呼びかけ、振り向いたタイミングでご褒美を与えることで、名前を呼ばれるとよいことがあると学習させます。
名前を覚えさせるときのコツは、呼び方を統一することです。例えば、ポンタという名前の犬に対して、ポンちゃんやポンポンと呼び方を変えると、犬が混乱する原因になります。
トイレトレーニング
トイレトレーニングには、次の2つの方法があります。1つ目は、犬がトイレのサインを出したときに、すぐにトイレシートへ誘導する方法です。
サインとしては、そわそわしたり、その場をくるくる回ったりする行動が挙げられます。そのようなタイミングで、犬をトイレシートに連れていき、排泄を促します。
ポイントは決められた場所でできなかったとしても叱らないようにすることです。怒ってしまうと、排泄自体を怖がるようになり、我慢する習慣がつくおそれがあります。
2つ目は、犬がトイレシートで排泄をするか迷っている際に、ワンツーワンツーなどリズムのある声かけをすることで排泄を促すことです。
声かけを排泄のサインとして覚えさせることで、犬はトイレのタイミングを理解しやすくなります。
社会性訓練
社会性訓練の目的は、ほかの人や犬と円滑に交流し、初めての場所にも落ち着いて適応できる力を育むことです。社会性を育むためには主に2つの方法があります。
1つ目は、日常生活で出会うさまざまな人や物に触れさせることです。
子犬のうちからご近所の方や車、お店、景色などに慣れさせることで、社会性を自然に身につけることができます。
犬が怖がっている場合は、抱っこしまま経験させても問題ありません。また、一度に多くの刺激を与えると、犬によっては過度に緊張してしまうことがあります。
2つ目は、パピーパーティと呼ばれる子犬の集会に参加することです。
本来子犬は生まれてから兄弟たちと触れ合うなかで犬同士のルールや社会性を身につけます。
こうした環境を体験できるのが、パピーパーティです。子犬の頃からさまざまな性格を持つ犬と触れ合うことで、ほかの犬と上手に関わる力を養うことができます。
留守番訓練
留守番をすることに慣れさせるための方法は主に2つあります。1つ目は犬が安心感を持つアイテムを与えることです。
お気に入りのブランケットやおもちゃなど、飼い主さんがいなくてもリラックスできるアイテムを用意するとよいでしょう。食べるのに時間がかかるおやつも犬の不安を紛らわせるのに効果的です。
2つ目は人が部屋からいなくなって戻ってを繰りかえすことです。最初は数秒程度から始め、少しずつ不在時間を延ばすことで、徐々に人がいない環境に慣れさせます。
ポイントは犬にお別れを言わないことです。お別れの言葉があると、犬は孤独を意識し不安を強く感じてしまうことがあります。
そのため何気なく部屋から出て、室内に戻ることが大切です。
噛み癖や吠え癖の予防
子犬には、噛むときの力加減を学ばせる必要があります。子犬の頃は歯の生え代わりのタイミングで歯が痒く、甘噛みをすることがあります。
しかし、力の入れ具合がわからないと成犬になってからも飼い主さんやほかの方を傷つけてしまうかもしれません。噛み癖を予防するためには2つの方法があります。
1つ目は、噛んできたときに、犬に痛いとハッキリと伝えることです。
甘噛みをされても可愛さのあまりに許してしまうと、犬は噛むことが悪いことだと認識できなくなります。
2つ目は噛むおもちゃを与えることです。噛みたいという本能を満たすために、専用のおもちゃを与えるとよいでしょう。
こうすることで、人は噛んではいけないが、おもちゃは噛んでもよいと学習させることができます。
吠え癖を予防するためには、主に次の3つの方法があります。1つ目は、ほかの犬と出会って吠える前におやつを与えることです。
吠える前に、おもわず夢中になってしまうおやつをあげることで、ほかの犬から意識をそらします。吠えずにほかの犬とすれ違えたら、たくさん褒めて強化します。
2つ目は、環境音トレーニングです。犬は玄関のチャイムや掃除機の音に恐怖や不安を感じることが少なくありません。
そのため、子犬のうちから環境音に慣れさせることがとても重要です。小さい音からスタートしていくことで環境音に恐怖感を抱かないようにしていきます。
3つ目はコマンドを与えることです。吠える前にお座りや待てのコマンドを出すことで、吠える行動を防げます。成功したときにはおやつを与え、よい行動を習慣化させます。
しつけ教室に行くメリット
しつけ教室に通うことで得られる主なメリットは、次の3つです。
- プロから正しいしつけ方法を学べる
- 犬の健康管理の方法を学べる
- 飼い主同士で悩みを共有できる
忙しい日常のなかで、しつけを継続したり家族間で方針を統一したりするのは簡単ではありません。
初めて犬を飼う場合でも、犬の性格に合わせたしつけや健康管理の方法について具体的なアドバイスが得られるのは大きなメリットです。
ほかの飼い主さんと悩みを共有することで、犬を飼うことへの不安やプレッシャーを和らげる助けになります。
プロから正しいしつけ方法を学べる
しつけは、教室だけでなく家庭でも継続して実践する必要があるため、プロのトレーナーから効果的なしつけ方法を直接学ぶことができるのもメリットの一つです。
成功や失敗の場面で、どのように褒めるか叱るかの判断基準を学べます。感情的に褒めたり叱ったりすると、社会性が育たず、飼い主さんへの過度な依存や恐怖心を抱かせてしまいます。
プロからしつけに関する知識を吸収できるのはメリットです。
犬の健康管理の方法を学べる
しつけ教室では、次のような健康管理に関する基本的な知識も学べます。
- 食べてよいものとダメなもの
- 肥満予防
犬にはチョコやぶどうなど食べさせてはいけないものが数多くあります。初めて犬を飼う方は、どの食べ物の安全性が高いのか、判断に迷うことも少なくありません。
そのような場合は、しつけ教室のトレーナーに相談することができます。
肥満になる原因は食べ過ぎと運動不足です。可愛さのあまり過剰に餌やおやつを与えることが肥満になる原因になります。
トレーナーからは、犬の体格や正確に応じた食事量や運動量を教えてもらえることが大きなメリットです。
飼い主同士で悩みを共有できる
犬を飼うなかで不安が生じると、自分だけが悩んでいるのではと孤独を感じることもあります。
そのようなときに飼い主仲間がいると、悩んでいるのは自分だけではないと安心感を持つことができます。
また、おすすめの動物病院やトリミングサロンなどの情報交換も行うことができるでしょう。
しつけ教室に行くデメリット
必ずしも、よいしつけを行うために教室に通う必要があるわけではありません。飼い主さんと犬が一緒に試行錯誤すること自体が、信頼関係を深め合うことにつながる場合もあります。
犬によってはしつけ教室に通うことに不安を感じてしまうことがあるでしょう。
グループレッスンでは、さまざまな性格の犬に出会うことが、精神的な負担になることもあります。
また、しつけ教室のトレーナーとの相性が悪ければ、しつけの効果が十分に得られないこともあるでしょう。
ペットのストレスになる
以下のような状況は、犬にとってストレスの原因になることがあります。
- 馴染みのない環境
- ほかの犬
- 飼い主さんと離れる状況
馴染みのない環境では、不安や心配から訓練に集中できず、しつけが身につかない可能性があるでしょう。
また問題行動がある場合、新しい環境や人というストレスにより、噛み癖や吠え癖が悪化する可能性もあります。
ほかの犬とのコミュニケーションに慣れていないと、委縮することで、犬同士の交流に苦手意識を持つようになることもあるでしょう。
飼い主さんと離れることを極端に嫌がり、しつけ教室に通うことを拒否する可能性もあります。
通い続けることで、環境に慣れることもありますが、犬の様子をよく観察し無理をさせないよう注意が必要です。
費用がかかる
訓練費用は1回あたり約5,000円(税込)が相場です。地域によって費用に差がある場合もあります。また、プライベート訓練かグループ訓練かでも料金体制が異なります。
月謝制の教室やオンラインでプロのトレーナーからしつけを学べるサービスなども増えてきました。
子犬のしつけ教室を選ぶポイント
しつけ教室を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
- 犬種や年齢
- しつけたい内容で選ぶ
- ドッグトレーナーの質とペットとの相性
- 飼い主への指導の有無
犬をしつけ教室に入れる前に施設や訓練の様子を見学することが大切です。
しつけ教室でどのようなトレーニングが行われているのかを見学し、トレーナーの犬への接し方を観察すれば、教室の雰囲気や方針がよくわかるでしょう。
犬の性格や育てたい方向性をトレーナーと共有することで、相性を確認できます。
犬種や年齢
教室にどの犬種が通っているかを事前に確認することで、適性を見極めやすくなるでしょう。生後6ヶ月を過ぎた犬は成犬クラスに分類され、料金が変わることがあります。
しつけたい内容
飼い主が家を留守にする時間が長い場合は、留守番の訓練を選んだり、ほかの犬と交流する機会が多くなる場合はグループレッスンを利用したりとライフスタイルにあわせて内容を選ぶとよいでしょう。
また、噛み癖や吠え癖など特定の問題行動に対応した教室を選ぶ方法もあります。
ドッグトレーナーの質とペットとの相性
トレーナーのしつけ方法が犬に合わず、効果が出にくいこともあるでしょう。
そのため、しつけ教室を見学する際は、犬がトレーナーにどのような反応を示すかを観察するとよいでしょう。
また、トレーナーが犬のしつけに関する資格を取得しているか確認することも大切です。
飼い主への指導の有無
犬のしつけは教室だけで完結するものではありません。自宅に戻ってもしつけ教室と同じように一貫性をもって犬に接する必要があります。
そのため、トレーナーから飼い主さんへのしつけに関するアドバイスが重要です。
しつけ教室に見学に行った際に、トレーナーが飼い主さんに教室での様子や自宅でのしつけ方法をアドバイスしているか確認しましょう。
まとめ
しつけ教室が必ずしも必要とは限りませんが、プロのトレーナーにしつけの方法を教えてもらうことで、飼い主さんが犬のしつけに過度に悩むことが避けられるでしょう。
子犬の頃からほかの犬と触れ合う機会を持てるため、社会性を育むことも可能になります。また、トレーナーから犬に合ったしつけをアドバイスしてもらえることも大きなメリットです。
しかし、犬がしつけ教室に通うことに不安を感じている状態で無理に通わせると、問題行動が悪化することがあります。
そのため、しつけ教室に通わさせる際は、犬に合った教室やトレーナーを時間をかけて選ぶことが大切です。
参考文献