犬を飼うのであれば、できるだけ早いうちにしつけを行う必要があるとされています。特に柴犬の場合は、気が強く活動的な犬種であるため、しつけの必要性も高まります。しかし、家でしつけを行うことは難しいケースも少なくありません。
そこでこの記事では、しつけ教室に通うメリットやデメリットを解説します。また、さまざまなレッスンの形式や、犬に合ったしつけ教室の選び方も紹介していますので、柴犬のしつけに悩んでいる飼い主さんは、ぜひ参考にしてください。
柴犬の特性としつけについて

一般的に犬を飼い始める場合、まず環境に慣れさせるためのしつけが必要になります。具体的には、決まった場所での排泄や、食事のルール、散歩のマナーなどです。また、おすわりや待て、などの動作を覚えさせることもあります。しかし、柴犬は気が強く、神経質な性質を持っていることが少なくありません。子犬でさえも、人やほかの犬に対して激しく攻撃することがあります。そのため、できるだけ小さいうちから家族以外の人や犬と触れ合ったり、しつけのトレーニングをする必要があります。できれば自我が芽生え始める月齢6ヶ月よりも前からしつけを始めるのが理想です。
ただし、柴犬のしつけは個人ではなかなか難しいものです。子犬の時期から元気過ぎて、遊びたい気持ちからじゃれついて噛んできたりするため、うまくトレーニングができないことがあるからです。また、しつけができないまま成犬になると、吠えたり、噛みつきがひどくなったりして、手をつけられないこともあります。そこで、最近ではプロの訓練士がトレーニングを行うしつけ教室を検討する飼い主さんが増えています。
なお、しつけ教室は一般的に、狂犬病や混合ワクチンなどの予防接種を受けていることを条件としています。通い始めるのは、混合ワクチンと狂犬病ワクチンの接種が終わってからにしましょう。
柴犬をしつけ教室に通わせるメリット

自分でしつけることが難しい柴犬をしつけ教室に通わせることには、多くのメリットがあります。ここでは三つのメリットを解説します。
柴犬の特性に合わせたプロの指導が受けられる
柴犬は気が強く、人に対して神経質なことが少なくないため、家で飼い主さんがトレーニングをさせるのはとても難しいタイプの犬です。自己流でのしつけの方法は必ずしも正しいとは限らず、成果が出るまでに時間がかかるため、大変な労力が必要になります。特に初めて犬を飼う場合、必要以上に甘やかしてしまったり、反対に厳しすぎるしつけをしてしまったりすることが少なくありません。子犬の時期に甘やかしてしまうと成犬になったときにコントロールの難しい犬になってしまう可能性があります。また、厳しすぎるしつけをすると、犬がストレスを抱えてしまうことになり、よい結果とはなりません。
それに対して、プロの訓練士であれば、それぞれの犬の特性に合わせたトレーニング方法を熟知しているので、正しいしつけを効果的に身につけさせることができます。自分でしつけるよりも短期間で効率的にトレーニングでき、犬の成長を実感できることが大きな利点といえます。また、飼い主さんもプロの訓練士からコツを教わることができ、家や外出先などで犬と快適に過ごすためのアドバイスをもらうこともできます。しつけのコツやポイントなどが学べる機会にもなりますので、特に初めて犬を飼う方でしつけに不安を持っている場合は大きなメリットとなるでしょう。
グループレッスンで社会性が身に付きやすい
最近では、ペットOKのカフェやレストラン、ホテル、遊園地など、犬と一緒にお出かけできる場所も増えてきています。しかし、しつけができていない場合は、人やほかの犬に吠えたり、噛み付いたりする危険性もあるため、利用できません。しつけ教室では、ほかの犬やその飼い主さんたちと交流することができ、そのなかで関わりかたを学ぶことができるため、社会性が身につきやすく、コミュニケーション能力の向上が見込めます。プロの指導のもとに社会化トレーニングを受けることができるため、散歩やお出かけのトラブルを予防し、愛犬との外出の幅も広がります。
飼い主さんも一緒に学ぶことができる
しつけ教室は犬だけでなく、飼い主さん同士の交流の場にもなります。特に初めて犬を飼う場合は、わからないことも多く不安な面も多々あるでしょう。そんなときにしつけ教室に通っていれば、先生やほかの飼い主さんたちに相談することで、日々の生活のトラブルを防いだり、ペットとの生活のヒントを得られたりします。さらに、しつけ教室では飼い主としての心得を学ぶこともできます。犬を飼うということは、飼い主としての責任が発生します。しつけ教室に通うことで、その自覚が生まれ、愛犬との信頼関係も深めることができます。
柴犬をしつけ教室に通わせるデメリット

柴犬をしつけ教室に通わせるメリットはたくさんありますが、同時にデメリットがないわけではありません。ここでは気になるしつけ教室の欠点について考えます。
費用や通う手間がかかる
まず、しつけ教室のデメリットとして、費用がかかるという点が挙げられます。しつけ教室は単発のレッスンだけで十分なトレーニングを受けることは難しく、複数回通う必要があることがほとんどです。なかには週に1〜2回程を数ヶ月通う必要がある場合もあります。しつけ教室の費用は施設や訓練の期間、方法などによってさまざまですが、安くはないことも多く、ある程度の費用がかかることは避けられません。また、犬を連れて行くという手間もかかります。忙しい生活のなかで毎週犬を連れて出かけるのは大変だという方も少なくないことでしょう。自宅でしつけをする場合と違って、費用や手間がかかるという面は否めません。
ほかの犬や飼い主さんと合わない可能性がある
しつけ教室では、ほかにも犬や飼い主さんが大勢集まってきます。知らない犬と触れ合うのが苦手な性格の犬や、自分の飼い主さん以外の人間を好まないタイプの犬の場合、しつけ教室へ行くこと自体が犬にとってストレスになる可能性があります。また、ほとんどの犬の訓練士は、犬を第一に考えトレーニングをするプロですが、なかには自分の犬と相性の悪いトレーナーにあたってしまう場合もあるかもしれません。しつけ教室では、ほかのさまざまな犬や人間と触れ合うことになるため、社交性に乏しい性格の犬の場合は、デメリットとなることもありえます。
成果が出るまでに時間がかかることがある
しつけは短時間で身につくものではありません。ある程度の期間通わないと思ったような成果が出ないことも多く、飼い主さんにも忍耐が必要です。また、犬の性格や年齢にもよりますが、なかにはしつけ教室に通ったものの、効果がなかったということもないわけではありません。特に訓練士と犬との相性がよくない場合は、効果が薄いことが考えられます。反対に、訓練士との相性がよかった場合でも、訓練士のいうことは聞くようになった代わりに飼い主さんのいうことを聞かなくなったという例もあるようです。こうしたことを考慮に入れると、しつけ教室にデメリットがないとはいい切れないかもしれません。
継続して通えないと効果が出にくい可能性がある
しつけ教室は、ある程度継続して通わないと効果が出にくい現状があります。しかし、継続的に通うことが犬にとってはストレスとなってしまうこともあります。特に、ほかの犬や飼い主さん以外の人間と交流を持つことが苦手な犬にとっては、長期間しつけ教室に通うことは負担となってしまう場合もあります。そのような性格の犬にとっては一般的なしつけ教室に通わせることはデメリットといえるかもしれません。しつけ教室のなかには個別レッスンや自宅レッスンなどを行っているところもあるので、犬の性格に合わせて選択肢の幅を広げてみた方がいいでしょう。
【柴犬のしつけ】しつけ教室の種類

しつけ教室には、いくつかの種類があります。ここでは、グループレッスン、個別レッスン、出張トレーニング、オンラインレッスンの四種類のしつけ教室をご紹介します。
グループレッスン
グループレッスンは、ドッグトレーナーが複数の犬を指導する形のしつけ教室です。レッスンのなかで、おて、おすわり、待てといった基本的なコマンドの練習やリードを使ったウォーキングなど、日常生活に役立つスキルを身につけることができます。このタイプのしつけ教室では、正しいしつけを学べるだけでなく、ほかの犬や飼い主さんたちと交流することで、犬の社会性を養うこともできます。また、飼い主さんにとっても、ほかの飼い主さんとの交流の場ができ、情報交換ができるといったメリットがあります。ただし、ほか犬や飼い主さん以外の人間を好まない性格の犬にはストレスとなる可能性も否定できません。また、柴犬は飽きやすいため、同じことを繰り返す作業が苦手なことが多く、ほかの犬に吠えたり、噛みついたりなどの問題行動には効果が見られないケースもあります。
個別レッスン
しつけ教室には個別レッスンを受けられるところも数多く存在します。個別レッスンのメリットは、その犬の個性に合わせたオーダーメイドのトレーニングを受けることができるという点です。グループレッスンと違って、犬の特性に沿ったきめ細やかなプログラムを受けることができるうえに、犬の反応を見ながらその場で臨機応変に対応を修正することもできるため、効果的なトレーニングを行うことが可能です。特に噛みつきなどの問題行動には効果が高いとされています。また、飼い主さんも気兼ねせずにアドバイスを求めることができますので、日常生活での困りごとなどを解決しやすい点も長所といえるでしょう。デメリットとしては、グループレッスンに比べて費用が高額になりがちである点が挙げられます。また、問題行動のある犬の場合は、しつけ教室へ通うための外出も困難でなかなか継続することができないというケースも考えられます。
出張トレーニング
出張トレーニングは、自宅までトレーナーが出向いて個別のレッスンを行うしつけ教室です。ペットは家庭における日常生活でのしつけが基本なので、専門家が普段の暮らしを確認できる出張トレーニングは家庭で飼われている犬には理想的といえます。問題が多くて外出に困難を伴う犬でも、家庭で専門のトレーナーにしつけてもらうことで、日常生活に即したマナーや行動パターンを身につけることができます。また、実際の暮らしぶりを見ることで、自宅での改善点が見つかる場合もあります。犬も飼い主さんも、自宅というプライベート空間でトレーニングを受けることができ、学んだことを日常生活に活かしやすいといったメリットもあります。デメリットとしては、個別レッスンと同様に費用がかさむケースが多い点が挙げられます。また、自宅にトレーナーを呼ぶことに抵抗がある飼い主さんの場合は、教室に通うタイプの方が合っているかもしれません。
オンラインレッスン
しつけ教室のなかにはZoomなどを使ったオンラインレッスンを行っているところもあります。オンラインレッスンは、自宅や好きな場所から受講することができ、時間も融通が利くことが多いため、忙しい飼い主さんでも気軽に利用できるというメリットがあります。犬を飼い始めた日から始めることもできるため、初めての犬でどうすればわからないという飼い主さんにとっては心強いでしょう。対面式の教室に比べて費用を抑えられることも多く、これも長所といえます。デメリットとしては、実際にトレーナーが犬に直接触れて指導することができないことが挙げられます。そのため、問題行動の改善などは難しい面もあります。また、ほかの犬や人間と触れ合うことができないため、公園やドッグランなどに連れ出して、オンラインレッスン以外で社会性を身につける必要があります。その他にも、インターネットの環境が悪いとスムーズに受講できないといった、オンラインならではの問題点もあります。
【柴犬のしつけ】継続的に通えるしつけ教室の選び方

しつけ教室は単発で受講するよりも継続的に通うことでより高い効果が得られます。ここでは、継続的に通えるしつけ教室の選び方のポイントをご紹介します。
柴犬への経験豊富なトレーナーが在籍しているか
柴犬は飼い主への忠誠心が強く、学習能力が高いといわれています。その反面、飼い主以外への警戒心が強く、活発な犬種であるため、子犬の頃から社会化させることが必要です。しつけ教室を選ぶ際は、このような柴犬の特徴を理解し、経験豊富なトレーナーが在籍しているかどうかをチェックするようにしましょう。JAHA認定家庭犬しつけインストラクターや、ペットドッグトレーナーズ資格認定協会(CCPDT)が認定するドッグトレーナーズ資格(CPDT)といった資格を持っていることも指標のひとつとなります。
レッスン形式がペットの性格に合っているか
レッスンの形式がペットの性格に合っているかという点も、継続して通うためには大きなポイントです。グループレッスンや個別レッスンなどの形式が犬の性格に合っていない場合は、教室に通うこと自体がストレスとなり、継続することが難しいでしょう。さらに、レッスンの内容も重要です。例えば、すぐに問題行動が収まるなどの謳い文句を広告に載せていて、実は体罰で犬をおとなしくさせているだけというところもあります。しかし、暴力は犬に学習性無力感を与え、精神的に大きな負荷をかけることがわかっています。現在では、学習理論と行動学をベースにした褒めるしつけが常識となりつつあります。しつけの方法や指導理論がしっかりしているかどうかも見極めて、通う教室を選ぶようにしましょう。
教室の雰囲気やほかの犬との相性がよさそうか
教室の雰囲気やほかの犬との相性も継続的に通えるかどうかを左右します。社交的な犬の場合は、集団レッスンを受けることで相乗効果が生まれ、トレーニングにもよい影響が期待できますが、ほかの犬や人間を好まない犬の場合は、しつけ教室に通うこと自体がストレスとなる場合もあります。また、そのような場所に連れて行かなければいけない状況は、飼い主さんにとっても精神的な負担となります。特にほかの犬がいると吠えてしまったり、かみ癖があったりするような問題行動の多い犬の場合は、個別レッスンや出張トレーニングを検討してみた方がよいでしょう。
まとめ
柴犬のしつけは、できるだけ早い方がいいといわれています。自宅でのしつけが難しい場合は、プロのトレーナーに訓練をしてもらうのがベターでしょう。現在では、グループレッスンや個別レッスン、出張トレーニング、オンラインレッスンなどさまざまなタイプのしつけ教室があります。レッスン内容や通いやすさなどを考慮して、愛犬に合った教室を選ぶことが大切です。適切なしつけが身につけば、今以上に愛犬との関わりを深めることができるでしょう。