腎不全とは、何らかの原因によって腎臓の機能が働かなくなる状態です。慢性腎臓病とも呼ばれる腎不全は多くの猫が罹る病気であり、15歳以上の高齢猫の81%以上が罹患しているというデータもあります。猫の宿命とも言える腎不全とはどのような病気なのでしょうか。猫の腎不全の症状や治療方法、予防について解説します。猫の腎不全はうまく付き合っていくことがポイントです。正しく腎不全を知って、愛猫が長く健康的な生活を送れるようにサポートしてあげましょう。
猫の腎不全(慢性腎臓病)とは
猫の腎臓病には、急性腎臓病と慢性腎臓病の2つがあります。急性腎臓病は中毒や感染症によって起き、慢性腎臓病は長い年月をかけて次第に腎臓機能が低下していくものです。ここでは、慢性腎臓病である猫の腎不全について解説します。
- 猫の腎不全とはどのような疾患ですか?
- 腎臓は、不要になった老廃物や毒素を排出する浄化機能、血液中の水分やミネラルバランスを調整する機能、ホルモンを調整する機能を持つ器官です。これらの機能が正常に働かなくなった状態が腎不全です。慢性腎臓病の場合は、長い年月をかけて徐々に腎臓機能が低下していきます。一般的に、構造異常や機能低下が3ヶ月以上持続した場合は慢性腎臓病だと診断されます。
慢性腎臓病の場合、失われた腎機能は治療しても回復することはありません。ただし、症状の進行を抑制することはできるので、病状を抑える治療やケアをしつつ長く付き合っていく必要があります。
- 猫の腎不全の症状を教えてください。
- 猫の腎不全の症状としては、水をよく飲む、トイレの回数が増える、色が薄い尿を大量にする、口内炎や胃炎が起きる、食欲がなくなる、嘔吐、貧血、毛艶が悪くなるなどが挙げられます。猫の腎不全は初期症状が見られないのが特徴であり、これらの症状が出た時点ではかなり病状が進行しているケースが多くあります。症状として現れていない初期段階の腎不全を発見するには、病院での検査が有効です。早期発見するためにも、定期的な健康診断を受けることをおすすめします。
- 猫の腎不全のステージ分類とはなんですか?
- 猫の腎不全はIRIS推奨の「IRIS腎臓病ステージング」によって、血液検査によるクレアチニンやSDMA値、尿の状態、血圧の数値などを参考に4つのステージに分類されます。
最も軽度なステージ1は、血液検査では異常が見られず、尿検査で尿比重の低下、蛋白尿、腎臓の形状の異常が認められるケースがあります。ステージ1では、症状は現れません。
ステージ2は、腎臓機能の低下によって尿が濃縮できず、薄い尿を大量に出すようになるため、水分不足によって水を多く飲むようになります。ほとんどの場合は元気で食欲低下も見られないため、一見何ともないように見えますが、この段階では腎臓機能は4分の1程度まで低下しています。
ステージ3は、老廃物などの有害物質を十分に排出できなくなるため、血液中の有害物質能動が高くなり尿毒症を発症するようになります。口や胃の粘膜が荒れてしまい、口内炎や胃炎が起きやすくなるのも特徴です。この段階では食欲低下や嘔吐、貧血の症状が現れ始めます。
ステージ4は慢性腎臓病の最終段階であり、重篤な臨床症状が見られます。尿毒症が進行してしまい、積極的な治療をしなければ死に至ってしまいます。
猫の腎不全(慢性腎臓病)の原因
多くの猫が罹患してしまう腎不全(慢性腎臓病)は、どうして起こるのでしょうか。猫の腎不全の原因やなりやすい猫の特徴を見ていきましょう。
- 猫の腎不全の原因を教えてください。
- 猫の腎不全(慢性腎臓病)は、加齢によるダメージの蓄積、細菌や猫伝染性腹膜炎といったウイルス感染による腎炎、外傷、薬物などによる中毒、心筋症やショックなどによる腎血流量の低下、免疫疾患による腎炎、結晶や結石による尿路閉塞などが原因と考えられています。ただし、猫の腎不全については原因がはっきりとわかっているものではありません。腎不全と診断された時点では原因不明とされることが多い病気です。
- 腎不全になりやすいのはどのような猫ですか?
- 腎不全はすべての猫が罹患リスクのある病気です。その中でも、ヒマラヤンやペルシャ猫、アメリカン・ショートヘアは多発性嚢胞腎になりやすい遺伝子を持つ場合があるので注意が必要です。また、高齢の猫も腎不全に罹りやすいので、日頃から気を付けて様子を見ておくようにしましょう。
猫の腎不全(慢性腎臓病)の治療と予防
猫が腎不全となった場合にはどのような治療が行われるのでしょうか。代表的な治療方法をご紹介します。また、腎不全を予防するための方法についても知っておきましょう。
- 猫の腎不全の治療方法を教えてください。
- 猫の腎不全の治療方法としては、食事療法、投薬療法があります。タンパク質やミネラルが調整された療法食を与えたり、猫の状態に合わせた治療薬を与えたりすることで、症状の進行や機能低下の抑制を図ります。
ステージ2とステージ3の場合は、再生医療を行う場合があります。再生医療とは幹細胞治療のことであり、点滴や注射で細胞を投与することで、腎機能低下の抑制やQOLを長く維持する効果が期待されます。
- 猫の腎不全の予防方法はありますか?
- 猫の腎不全予防としては、水をたくさん飲ませることです。尿路結石や膀胱炎が腎臓病の原因になってしまうこともあります。尿路結石や膀胱炎予防のためにも、猫には水分をたっぷり取らせましょう。ミネラルが多いと尿路結石の原因になるため、ミネラルが少ない軟水がおすすめです。また、水分が多いウェットフードを与えるのも良いでしょう。
食事に気を遣うことも、腎不全の予防になります。特に高齢猫の場合は、タンパク質が多すぎる食事は体に負担がかかってしまうので、良質なタンパク質が過不足なく含まれるフードを与えると良いでしょう。
日頃からストレスを溜めない生活を送らせることも大切です。猫のストレスになる要素はできるだけ取り除きましょう。お気に入りの場所や隠れる場所があるか、仲が悪い同居猫や犬はいないか、室内の自由度は十分か、トイレは清潔かなどを確認し、快適に過ごせる環境を整えてあげてください。また、意識して遊ぶ時間を作ってやることも良いでしょう。
腎不全は早期発見と早期治療が重要です。特に気になる症状がなくても、1年または半年に1回は、血液検査や尿検査を含めた健康診断を受けるようにしましょう。また、愛猫の様子を観察しておくことも早期発見に繋がります。尿の様子や食欲など、猫の様子に変化がないかを日頃からよく見ておきましょう。
- 猫が腎不全の場合、気をつけるべきことを教えてください。
- 腎不全によって腎臓機能が働かなくなると、治療を行っても機能が回復することはありません。愛猫が腎不全と診断されたらショックを受けるのは当然です。ただし、適切な治療を行うことで、残った腎機能を長持ちさせて病気の進行を遅らせることはできます。早めに治療を行えば、健康的に長生きできる可能性も十分あります。
猫の腎不全は、気を付けていても罹患してしまうことが多い病気です。腎不全と診断されたとしても自分自身を責めず、慌てずに最善の治療を行うようにしましょう。
編集部まとめ
猫の腎不全(慢性腎臓病)は腎臓の機能が徐々に低下していく病気であり、高齢猫の大半が患っているとも言われています。初期段階では無症状ですが、症状が進行すると多飲多尿、尿毒症などが現れ、最終的には治療無しでは生命維持が困難になります。しかし、早期に治療を行えば症状の進行を遅らせることも可能です。愛猫に長く健康でいてもらうためにも、定期的な検診や日頃から健康的な生活を送らせることを心がけましょう。