犬の黒いできものの正体とは?悪性の見分け方や治療法について解説!

犬の黒いできものの正体とは?悪性の見分け方や治療法について解説!

愛犬の皮膚に黒いできものを見つけたら、飼い主として不安になりますよね。しかし、すべての黒いできものが悪性とは限りません。
実際、犬において黒いできものは、良性の腫瘍や皮膚の変色など、さまざまな原因で現れることがあります。例えば、老齢による色素沈着や、単なる皮膚のタグ(小さなぶら下がっている皮膚)などが考えられます。

今回は、犬の黒いできものについて焦点をあて、正体や治療法について解説します。

  • 犬の黒いできものとは
  • 犬のメラノーマについて
  • メラノーマを発症しやすい犬の特徴

愛犬の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。

犬の黒いできものとは

犬の体に現れる黒いできものは、飼い主にとって気になる存在です。黒いできものが示すものは多岐にわたり、無害なものから健康を脅かすものまでさまざまです。
以下は、犬の黒いできものの悪性の見分け方、それが示す可能性のある病状について詳しく解説します。

メラノサイトーマ(良性腫瘍)

メラノサイトーマは、犬の表皮に発生する良性の腫瘍です。
メラノサイトーマはメラニン(ヒトを含む動物、植物、原生動物、菌類、真正細菌など、さまざまな生物に存在する色素)を生成する細胞から発生し、黒または茶色をしています。

メラノサイトーマは成長が遅く、局所的に限定されているため、健康への直接的な脅威は少ないとされていますが、見た目が似ている悪性のメラノーマと区別するためには獣医師による診断が必要です。治療法としては、腫瘍の位置や大きさに応じて外科的な処置が施されます。

メラニンについて補足すると、犬と人間はどちらも哺乳類であり、皮膚や毛髪にメラニン色素を持っています。しかし、メラニンに関するいくつかの重要な点において、両者には違いがあります。
まず、犬は人間よりも体毛が多く、皮膚の大部分が毛で覆われています。そのため、犬は皮膚全体にメラニンが分布している傾向があります。一方、人間は体毛が少なく、皮膚の露出が多い部分にメラニンが集中する傾向があります。

また、犬では妊娠・出産や発情期、ストレスなどの影響でメラニン生成量が増加することがあります。人間では思春期や更年期、妊娠・出産などの影響でメラニン生成量が増加することがあります。

メラノーマ(悪性腫瘍)

悪性腫瘍は成長が早く、ほかの体の部位への転移の可能性があります。初期段階では小さな黒い斑点として現れることが多く、診断後は迅速な治療が必要とされます。治療法としては、科的な切除、放射線治療、化学療法で、早期発見と治療が犬の生存率を大きく改善する鍵となります。

犬の黒いできものの悪性の見分け方

犬の黒いできものを見つけた場合、飼い主として感じる不安は自然な反応です。しかし、すべての黒いできものが悪性であるわけではなく、中には治療可能な良性のものもあります。悪性の場合、急速に大きくなる、形や色の変化が見られる、出血や潰瘍がある、痒みや痛みを伴うなどの兆候が見られます。

主に、口腔内や爪、足の裏などは悪性腫瘍が発生しやすい部位です。また、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ビーグルなどの犬種や高齢の犬は発症リスクが高いとされており、その他の種類にもできます。

犬のメラノーマについて

メラノーマは犬に見られる悪性の皮膚腫瘍であり、メラニンを産生する細胞が制御を失い異常に増殖することで発生します。進行が早く、ほかの臓器への転移を起こすことがあり、犬の健康にとって重大な脅威となることがありますので、治療方法や予防法を理解していきましょう。

メラノーマの症状

黒または茶色の腫瘤が見られると、メラノーマが発症している可能性があります。腫瘤は速やかに大きくなる傾向があり、表面が不規則で潰瘍(皮膚や粘膜などの表面組織が炎症やそのほかの刺激によってただれ、一部が欠損した状態のこと)を伴うこともあります。

症状は腫瘤の位置によって異なり、口内に発生した場合は食事や飲水の困難が見られることがあります。
また、進行すると痛みや出血の問題を引き起こすことがあり、ほか臓器への転移が進むと全身的な健康問題をもたらす可能性があります。

メラノーマの原因

メラノーマの原因は解明されていませんが、遺伝的要因、紫外線への露出、ホルモンの影響などが関与している可能性があります。

・遺伝的要因:特定の犬種においてメラノーマが多く見られることから、遺伝的素因が関与している可能性があります。

・紫外線への露出:犬の皮膚に直接影響を与える紫外線は、皮膚の色素細胞にダメージを与えるとされており、細胞のDNAが変異し、がん化することがあります。

・ホルモンの影響:ホルモンバランスの変化がメラノーマの発生に影響を及ぼすといわれています。主に犬の性ホルモン(エストロゲンとテストステロン)が腫瘍の成長に関与していると考えられています。

また、性ホルモンは、それぞれメスとオスの犬の生殖と二次性徴(生殖成熟に伴って現れる体の変化で、二次性徴の進行は犬種や個体によって異なるため、その成長や行動の変化には個別の注意が必要)に重要な役割を果たし、犬の発情周期、繁殖行動、さらには一部の健康状態に影響を及ぼします。

メラノーマの治療方法

メラノーマの治療方法は、進行度や位置によって異なり、単独または組み合わせて行われることがあります。愛犬が長生きするために、ぜひ参考にしてください。

外科療法

外科療法は、獣医師が腫瘍とその周囲の健康な組織を含めて切除し、がん細胞の除去を目指します。初期段階でのメラノーマに対して行われ、腫瘍を取り除ければ、再発のリスクを減少させるといわれています。
しかし、腫瘍の位置や大きさによって手術の難易度が異なるため、それぞれのケースにぴったりな手術方法を獣医師が選択します。

放射線療法

放射線療法は、手術が難しい場合や腫瘍の進行を遅らせるために用いられます。放射線療法では、放射線を腫瘍に直接照射して、腫瘍細胞を破壊し、腫瘍の成長を抑制します。
治療は通常、複数回にわたって行われ、1回の治療で完了することは少ないです。また、放射線治療が可能な施設は限られており、大学病院などの専門施設への紹介が必要な場合があります。

合併症として、照射部位の皮膚が赤くなったり、かゆみや痛みが生じたりする可能性があります。そのため、治療前には獣医師と相談し、犬にとってベストな治療計画を立てることが重要です。

化学療法

化学療法は、ほかの臓器への転移がある場合や手術が難しい状況に適しています。主に使用される薬剤には免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬があります。

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫システムから逃れるのを防ぎ、体が自らがんを攻撃できるようにする薬です。一方、分子標的薬は特定の遺伝子変異が存在するがん細胞に対して良いとされていて、正常な細胞への影響を抑えるよう設計されています。

治療は、患者さんの病状やがんの特性によって選択され、しばしばほか他の治療法と組み合わせて行われることがあります。治療の経過測定は著しく、多くの患者さんにとって生存期間の延長や生活の質の向上をもたらしていますが、合併症には注意が必要です。

具体的な合併症には、疲労感、皮膚の問題、消化不良などがあり、重い場合には肝機能障害や肺炎などが起こる可能性もあります。

免疫療法

免疫療法は、転移性または再発性のメラノーマ患者さんに対して重要な役割を果たしています。
主に使われる薬剤には、ニボルマブ(オプジーボ)やペムブロリズマブ(キイトルーダ)などの抗PD-1抗体、およびイピリムマブ(ヤーボイ)といった抗CTLA-4抗体があります。がん細胞の成長を抑制し、腫瘍を縮小させるといわれています。

しかし、全ての患者さんに適応しているわけではなく、副作用としては疲労感、皮膚問題、消化器症状などが起こり得ます。
不安を解消するために、より具体的な治療計画や副作用の管理については、医師と相談することをおすすめします。

メラノーマの予防法

メラノーマの予防法には限界があるものの、早期発見につながる注意点をいくつか挙げます。メラノーマの発生しやすい場所には、皮膚、口腔内、爪の付け根などがあります。

そのため、注意深く観察しましょう。例えば、定期的にペットの口内を確認することで、変化を早期に捉えられるでしょう。また、犬の体に不審な斑点や成長する腫瘍を見つけた場合には、早めに獣医師にご相談ください。

メラノーマを発症しやすい犬の特徴

メラノーマは、特定の犬種や年齢により発症しやすい特性があります。

犬種

ミニチュア・シュナウザーやスコティッシュ・テリア、コッカー・スパニエルなど、皮膚に多くのメラニンを持つ犬種が高リスクとされています。これらの犬種はメラニン細胞の濃度が高いため、メラノーマのリスクが上がると考えられています。

主にミニチュア・ダックスフントは、リスクが高い犬種として挙げられており、彼らの口内などの黒く色素の濃い部分にメラニン細胞が多く存在するためです。

年齢

メラノーマは犬の中でも高齢の犬に発症しやすいがんであり、主特に10歳以上のシニア犬で見られることがあります。年齢が上がるにつれて犬の体内で発生する細胞の変異のリスクが増加し、メラノーマの形成に繋がる可能性があるからです。どうしても高齢犬では免疫システムの効率が低下しているため、がん細胞が抑制されにくくなりがちです。

高齢犬におけるメラノーマの診断は、通常、口腔内やほかの体表の部位に異常を発見した際に行われます。口腔内メラノーマの場合、病変はしばしば黒っぽい塊として現れ、急速に進行しやすいため、発見時にはすでに進行していることが多い傾向です。

治療方法としては、外科手術による腫瘍の切除が基本ですが、転移がある場合は放射線治療や化学療法が併用されることがあります。しかし治癒を達成するのは難しく、治療の主な目的は症状の管理と日常生活の質を維持することです。

このように、メラノーマは高齢犬に多く見られる深刻な病気であり、定期的な健康診断による早期発見が治療成功の鍵となります。年齢について補足すると、犬の10歳が人間でいうと何歳になるかは、小型犬、中型犬、大型犬によって異なります。

小型犬・中型犬の場合、2歳で人間の24歳に相当し、その後は1年ごとに4歳ずつ歳を重ねていきます。なので、10歳の場合は56歳となります。大型犬の場合、1歳で人間の12歳に相当し、その後は1年ごとに7歳ずつ歳を重ねていきます。なので、10歳の場合は75歳となります。

しかしあくまで目安であり、個体差によって異なります。例えば、小型犬でも大型犬並みの体格の犬や、大型犬でも小型犬並みの体格の犬もいます。また、飼育環境や生活習慣によっても、老化の速度は変わってきます。

まとめ

ここまで、犬の黒いできものの正体や悪性の見分け方、治療法について解説しました。要点をまとめると、以下の通りです。

  • メラノサイトーマは、犬の表皮に発生する黒または茶色の良性腫瘍で、メラニンを生成する細胞から生じる
  • メラノーマの発生しやすい場所には、皮膚、口腔内、爪の付け根などがある
  • 皮膚に多くのメラニンを持つ犬種は、メラニン細胞の濃度が高いため、メラノーマのリスクが上がると考えられている

犬にメラノーマが見つかった場合は、早めに獣医師に相談することが大切です。

また、愛犬の皮膚、口腔内、爪の付け根などの部位をチェックし、観察するように心がけましょう。この記事が変化を早期に捉えるヒントとなれば幸いです。

参考文献