犬は家族の大切な一員です。すべての飼い主が、「元気に楽しく過ごしてほしい」と願っているでしょう。しかし一方で、犬はとてもストレスを感じやすい動物でもあります。愛犬が健やかに暮らしていくためには、そのサインを見逃さないことが重要です。この記事では、犬がストレスを感じている特徴やその原因、ストレス発散の方法などを解説します。ちょっとした工夫と気配りで愛犬の健康を守ることができるので、ぜひチェックしてみてください。
犬のストレスとなる要因
ここではまず、犬のストレスとなる要因を大きく3つに分けて説明します。
環境が生むストレス
犬は慣れない環境にストレスを感じやすい生き物です。例えば引越しや新しいペットがやってくる、家族構成が変わるなどの環境変化は、犬にとって大きなストレスとなります。これらの変化が犬の生活に大きな影響を与え、特に敏感な犬にとってはかなりのストレスとなることがあります。
例えば引越しの際、犬は徐々に変わる家具の配置や増えていく段ボールに不安を感じ、突然新しい環境に連れ出されることで一層のストレスを感じることがあります。
また、新しい赤ちゃんが家庭に加わる場合も、犬がこれまで自由に動き回っていたスペースが制限されたり、家族との時間が減ったりするとストレスを感じることがあります。
社会的要因が生むストレス
犬は社会性を持つ動物であり、さまざまな音や場所、人やほかの犬に慣れさせることが重要です。社会化が不十分だと、初めての経験や知らない人に対して強い恐怖心や警戒心を抱くことがあります。これが続くと、犬にも飼い主にもストレスを引き起こします。
子犬の時期にトレーニングを行い、社会性を養うことが重要ですが、成犬でも社会性を向上させることは可能です。
例えば、散歩中にほかの犬や人に対しての反応を観察し、少しずつ慣れさせるようにしましょう。分離不安も同様に、社会化不足から引き起こされることが多いです。これにより、犬が留守番できない、ペットホテルに預けられないなどの問題が生じることがあります。
健康問題が引き起こすストレス
犬のストレスが長期にわたって続くと、体調不良や病気の原因となることがあります。
例えば、ストレスが原因で皮膚炎や脱毛が起こることがあります。犬が同じ場所を長時間舐めたり噛んだりする行動は、ストレスによる脱毛の典型的な例です。
また、食欲不振や嘔吐、下痢などの症状もストレスから引き起こされることがあります。
ストレスを感じている犬の特徴
ストレスを感じている犬には、いくつかの共通点が見られます。ここではその特徴をお伝えします。
行動の変化
・あくびをする
犬はストレスを感じると、リラックスしようとしてあくびをすることがあります。スキンシップ中や、いたずらをして飼い主に叱られているときにあくびをする場合は、何かしらのストレスを感じているサインです。
・身体を掻いたり皮膚をかきむしる
犬は不安や緊張を感じると、身体を掻くことがあります。たとえば、いたずらをして飼い主に叱られているときや、トレーニングやお手入れの最中、多くの犬がいるドッグランに行ったとき、あるいは苦手な動物病院にいるときなどに、後ろ足で首や耳の後ろ、脇を激しく掻く行動が見られた場合、それはストレスの兆候かもしれません。
・身体を執拗に舐める
犬はストレスを感じると、特定の部位を執拗に舐めることがあります。たとえば、お留守番中に退屈を紛らわそうとして前足をずっと舐め続けることがよく見られます。
・手足や尻尾を噛む
犬はストレスの影響で、尻尾や身体の一部を噛む自傷行為をすることがあります。これを防ぐためには、運動を増やしてストレスを軽減することが効果的です。愛犬の生活環境を見直し、スキンシップと運動の時間を増やすようにしましょう。
気分の変化
・活動量の低下
犬がストレスを感じると、活動量が大幅に減少することがあります。普段より元気がなく、尻尾を垂らして覇気のない表情をしている場合は、ストレスが原因かもしれません。動物病院で異常が見つからない場合でも、ストレスがこれらの症状の原因となることがあります。飼い主が帰宅しても体を起こして迎えに来ない、声をかけても反応しないなど、無気力な態度や行動が見られることがあります。
・睡眠時間が増える
ストレスを感じると、犬の睡眠時間が増えることがあります。通常、成犬は1日約14時間眠りますが、ストレスが原因で1日の大半、20時間以上眠ることがあります。これは、人間でいう引きこもりのような状態で、活動量の著しい低下を示しています。ストレスが原因で睡眠時間が増えている場合、飼い主が声をかけても反応せず、近寄って来ないなど無気力な態度が見られることがあります。
ただし、甲状腺機能低下症などの病気の可能性もあるため、睡眠時間が増えたことをすぐにストレスと断定することはできません。普段の睡眠時間を把握しておくことで、異変に気づくことが重要です。明らかに以前より睡眠時間が増えた場合は、一度動物病院を受診することをおすすめします。
身体的な症状
・食欲の低下・飲水量の増加
犬はストレスがたまると、食欲が減り、水を飲む量が増えることがあります。犬は普段フードを一気に食べることが多いため、食欲の低下には比較的気付きやすいですが、飲水量の増加は日常的にチェックしていなければ見落としやすいです。気温が高くないのに以前よりも大量に水を飲むようになった場合は、注意が必要です。飲水量の増加はストレスだけでなく、腎臓病や糖尿病などの病気の可能性もあります。日頃から飲水量を把握し、いつもと違う様子に気付くことが大切です。
・嘔吐や血尿
人間がストレスで胃痛を感じるように、犬もストレスにより自律神経が乱れ、消化器系に不調をきたすことがあります。その結果、嘔吐することもあります。季節の変わり目や、病院の後、または知らない人が来た後に嘔吐する場合、ストレスが原因である可能性が高いです。しかし、一日に頻繁に嘔吐し、ぐったりしている場合は、他の病気の可能性も考えられるため、早急に動物病院を受診しましょう。
寂しがり屋や神経質な犬は、ストレスから膀胱炎を引き起こし、血尿が見られることがあります。特に神経質な犬は、生活環境の小さな変化がストレスとなり、それが膀胱炎を引き起こすこともあります。飼い主が旅行でペットホテルに預けた際、血尿が出ることもあるため、注意が必要です。
飼い主ができる犬のストレス管理
人間と同様に、犬にとってもストレスはさまざまな病気の原因となります。病気にならないためにも犬が快適に過ごせる環境を整えることが大切です。ここでは、飼い主ができる犬のストレス管理の方法を紹介します。
コミュニケーションを取る
犬にとって飼い主に体をなでられることは、とても癒やされる時間です。優しくゆっくりと毛の流れに沿ってなでることで、犬はリラックスできます。
特に首や耳の後ろ、頬、胸からお腹、後ろ足の付け根など、心地よい部分をなでてあげましょう。逆に、毛を逆立てるように速くなでると興奮しやすくなるため、遊びの時間には適していますが、リラックスさせるには不向きです。
ツボマッサージやリンパマッサージにもリラックス効果があり、血行を促進し老廃物の排出を助けます。マッサージを行う際は、落ち着いた環境を整え、犬の反応を見ながら強さや場所などを調整しましょう。
また、「Tタッチ」という特別なタッチ技法も効果的です。Tタッチは、皮膚のすぐ下の層にアプローチし、脳に刺激を与えてストレス軽減効果のあるホルモンを分泌させます。
特に臆病で神経質な犬や、緊張しやすい犬に有効で、問題行動の減少が期待できます。Tタッチは、トラウマを抱える犬や保護犬のケアにも役立つとされており、飼い主がこの方法を学び取り入れることで、犬との絆も深まります。
適切な食事を与える
犬の健康とストレス管理には、適切な食事が欠かせません。バランスのとれた栄養を与えることで犬の体調を整え、ストレスに対する抵抗力を高めることができます。まずは、高品質のドッグフードを選ぶことが重要です。添加物や保存料が少なく、天然の成分を使用しているものを選びましょう。
さらに、犬のライフステージや体調に合わせた食事の提供も大切です。子犬、成犬、高齢犬それぞれに適した栄養バランスを考え、必要なビタミンやミネラルを補うようにしましょう。また、アレルギーや特定の健康問題を抱えている犬には、専門的なドッグフードを選ぶことが必要です。
食事の時間や量も、犬のストレス管理に影響を与えます。規則正しい食事時間を設け、適量を与えることで、犬の生活リズムを安定させ、ストレスを軽減できます。また、食事の際には静かで落ち着いた環境を整えることが大切です。急な環境の変化や騒音は、犬の食欲や消化に影響を与えることがあります。
健康管理をする
定期的な健康チェックと適切な医療ケアも、犬のストレス管理には欠かせません。定期的に獣医師の診察を受け、健康状態を把握しておくことで、早期に問題を発見し、適切な対処を行うことができます。特に歯科ケアや予防接種、寄生虫予防は重要です。
犬は痛みや不快感を感じていても、それを隠すことがあります。そのため、飼い主は日常的に犬の体調を観察し、異変に気づけるようにしておきましょう。食欲の変化、元気の低下、皮膚の状態などに注意を払い、異常が見られた場合は早めに獣医師に相談することをおすすめします。
犬のストレスを軽減する方法
ここでは、犬のストレス発散方法をいくつか紹介します。
遊びや散歩の時間を増やす
犬にとって遊びや散歩はストレスを発散する重要な手段です。散歩中に新しい匂いを嗅ぐことや、公園でのボール遊びは、犬の本能を刺激し、心身の健康に良い影響を与えます。
散歩の速度やコースを変えることで、日常に変化をもたらし、それが犬にとって新しい経験となります。天候が悪い日でも、>家のなかでフードやおやつを隠して探させるノーズワークや、おもちゃを使った遊びで運動不足を防ぐのもおすすめです。
犬用ガムや噛むおもちゃを与える
犬は噛む行動によってストレスを発散します。家庭内でのいたずらを防ぐためにも、犬用のデンタル商品や噛むおもちゃ、ガムを与えるのも良いです。
ただしこれらを与える際には、犬が安全に使えるか事前の確認が重要です。硬すぎるおもちゃは歯が欠けてしまう恐れがあるため、適切な硬さのものを選びましょう。また、犬用のガムやおもちゃは犬によって好みがあるので、愛犬が喜んで使うものを見つけてあげることが大切です。
デンタル商品やガムを噛むことは、歯周病の予防にもつながります。噛む行動を促すことで、犬の口腔内の健康を維持できます。
環境を整える
犬がリラックスできる環境を整えることも、ストレス軽減に効果的です。犬は静かで落ち着ける場所を好むため、家庭内に安心できるスペースを用意しましょう。
適度に運動する
適度な運動は、犬のストレスを軽減するために不可欠です。散歩でにおいを嗅ぐことを楽しんだり公園でボール投げをしたりと、犬の本能を最大限に活用できる動きや遊びを増やすことで、犬のストレスは軽減されます。
社会性がある犬なら、ドッグランでほかの犬と遊ぶのも良いでしょう。しかし、成犬になるとほかの犬との相性が出てくるため、飼い主は犬同士のコミュニケーションを見守り、安全に楽しく遊べるようサポートすることが大切です。
編集部まとめ
犬のストレスを軽減するためには、日常のケアと環境整備が欠かせません。適切な食事と健康管理、コミュニケーションの取り方、運動の重要性を理解し、実践すると犬のストレスは大幅に軽減されます。
また、スキンシップや遊びの時間を増やすことで、犬の心身の健康を促進することができます。愛犬がリラックスできる環境を整え、日々の観察とケアを怠らず、犬との絆を深めながら健やかな生活をサポートしましょう。