犬の膿皮症とはどんな病気?治療法や予防方法についても解説

犬の膿皮症とはどんな病気?治療法や予防方法についても解説

犬の健康管理において、膿皮症は身近な問題です。この病気は、皮膚の表面に炎症を引き起こし、膿やかさぶたを形成します。原因はさまざまで、アレルギーや細菌感染、皮膚の摩擦などがあります。犬種や生活環境によってリスクが異なりますが、適切な治療法と予防策を知ることが重要です。この記事では、犬の膿皮症の症状、診断方法、治療法、および予防方法について詳しく解説します。

犬の膿皮症とは?

犬の膿皮症とは?

犬の膿皮症は、皮膚の炎症を特徴とする身近な犬の病気です。まずは犬の膿皮症について、その概要を解説します。

膿皮症の原因

犬の膿皮症のほとんどが、「ブドウ球菌」と呼ばれる細菌が原因菌となって発症します。ブドウ球菌は、皮膚トラブルの有無に関係なく、犬の皮膚表面に存在している常在菌のひとつです。このため、膿皮症は犬同士の感染によって発症するのではなく、皮膚免疫の異常によって、皮膚に常在しているブドウ球菌が過剰に増えることで発症します。

ブドウ球菌が過剰に増える要因はさまざまで、アレルギー疾患や副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患が主な要因です。また、ブドウ球菌以外にも原因となる菌はあり、深在性膿皮症は、シュードモナス菌、大腸菌、プロテウス菌などが引き起こすことがあります。多剤耐性菌ができると治療が非常に難しくなる点にも注意する必要があります。

さらに、皮膚の摩擦や外傷、高温多湿の環境なども要因となります。犬の個体差や生活環境によっても原因は異なりますが、これらの要因が複合的に作用して犬の膿皮症は発症するといわれています。なお、自己判断で治療を止めると症状が悪化してしまうことがあるので、獣医師の指示に従って治療を受けるようにしましょう。

膿皮症の症状

膿皮症の症状は患部によって、主に3種類に分類されます。それぞれを解説します。

表面性膿皮症

表面性膿皮症は、皮膚の表面だけで細菌が増殖し、皮膚が赤くなる症状が見られる軽度の皮膚炎です。犬がかいたり、舐めたりすることで、皮膚がさらに傷つき悪化を招く可能性があります。

表在性膿皮症

表在性膿皮症は、皮膚の表皮と毛包に細菌が増殖して発症する皮膚炎です。皮膚の湿疹(丘疹)、ニキビのようなでき物(膿疱)、かゆみ、脱毛などの症状が現れます。症状が長く続くと、皮膚の色が黒っぽくなることもあります。

深在性膿皮症

深在性膿皮症は、犬の皮膚の深層にある真皮と皮下組織に起こる皮膚炎です。表在性膿皮症よりも深部組織が影響を受け、かゆみといった炎症でよく見られる症状だけでなく、痛みを伴う腫れや膿の症状も見られ、時には発熱も伴うこともあります。

犬の膿皮症にかかりやすい犬種

犬の膿皮症にかかりやすい犬種

犬の膿皮症は、あらゆる犬種で発生する可能性がありますが、特定の犬種は特にこの病気にかかりやすいとされています。

例えば、アレルギー疾患が膿皮症の主な原因の一つであるため、アレルギーに対する遺伝的な傾向が強い犬種は膿皮症にかかりやすいといわれています。そのような犬種には、シーズーやパグ、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ビーグル、ダルメシアン、ボクサーなどが挙げられます。

また、長毛種や被毛の密度が高い犬種も膿皮症にかかりやすいとされています。例えば、シェットランド・シープドッグ、ポメラニアン、コッカースパニエル、シュナウザーなどがその一例です。

さらに、皮脂分泌量が多い犬種や、皮膚のしわが多い犬種も膿皮症にかかりやすい傾向があります。ただし、個々の犬によってもリスクは異なるため、適切なケアや定期的な健康チェックが重要です。

犬の膿皮症の診断方法

犬の膿皮症の診断方法

犬の膿皮症を診断するためには、獣医師による慎重な診断と適切な検査が必要です。

まず、獣医師は皮膚の状態を観察し、犬の皮膚や被毛の状態を評価します。膿やかさぶたが見られるか、皮膚が赤く腫れているか、かゆみや不快感を示しているかなどを確認します。

次に、獣医師は皮膚サンプルを採取して、顕微鏡で細菌検査を行うことが多いです。検査によって、皮膚に感染があるかどうかや感染の種類を特定します。
さらに、アレルギー疾患による膿皮症の疑いがある場合は、アレルギー検査が行われることもあります。診断には時間がかかる場合もありますが、正確な診断には必要なことですので、犬の健康管理のためにも適切な診断を受けましょう。

犬の膿皮症の治療方法

犬の膿皮症の治療方法

犬の膿皮症の治療方法は、症状の重症度や原因に応じて異なります。一般的な治療法には以下のようなものがあります。

軽度な症状の場合:外用薬や消毒薬での治療

軽度な犬の膿皮症の場合、外用薬や消毒薬を用いた治療が効果的です。外用薬としては、抗生物質や抗真菌薬が一般的に使用されます。これらの薬は、犬の皮膚に塗り、感染の広がりを抑え、炎症を軽減します。一般的な外用薬には、塗り薬のほかにスプレー、シャンプーなどもあります。

また、消毒薬を用いて皮膚を清潔に保つことも重要です。消毒薬は、皮膚の表面に存在する細菌や真菌を殺菌し、感染を予防します。獣医師が推奨する消毒薬を使い、皮膚を定期的に清潔に保つことで、膿皮症の症状を軽減することができます。

外用薬や消毒薬だけでなく、犬の膿皮症は栄養不足やアレルギー反応によって引き起こされることがあるため、適切な栄養管理も重要です。獣医師が推奨する食事療法やサプリメントを与えることで、膿皮症の症状を軽減することができます。

症状が進行している場合:検査をして投薬治療

症状が進行している場合の犬の膿皮症の治療には、検査を行って原因を特定し、適切な投薬治療を行うことが重要です。

まず、獣医師は皮膚サンプルを採取し、細菌や真菌の感染の有無を確認するために検査を行います。皮膚サンプルの検査結果に基づいて、適切な抗生物質や抗真菌薬を処方します。これらの薬物は、感染の広がりを抑え、皮膚の炎症を軽減します。

また、症状の重症度や原因に応じて、抗ヒスタミン薬やステロイドなどの抗アレルギー薬や抗炎症薬も処方される場合があります。これらの薬物は、かゆみや炎症を抑えるのに役立ちます。

さらに、獣医師は食事の栄養管理や皮膚ケアの指示を行うことがあります。適切な栄養補給や皮膚を清潔に保つことで、治療効果を高めることができます。

症状が進行している場合、早めの治療が重要となってきます。獣医師の指示に従い、適切な治療を行って症状が悪化しないようにしましょう。

犬の膿皮症の治療費

犬の膿皮症の治療費

犬の膿皮症の治療費は、治療方法や症状の重症度によって異なります。一般的に、軽度の膿皮症の場合、外用薬や消毒薬の処方が主な治療となります。この場合、診察料や薬の費用がかかりますが、比較的低コストで済む場合があります。

軽度な症状の治療費例

  • 診察料 1,000円
  • 処方(外用薬) 2,000円
  • 薬用シャンプー 2,000円

一方で、症状が進行している場合や感染が深部に及んでいる場合は、内服薬や抗生物質の処方が必要となります。また、検査や診断のために血液検査や皮膚サンプルの採取、細菌検査などの追加費用がかかる場合もあります。

さらに、治療期間や獣医師の診察回数、処方される薬の種類によっても費用は変動します。

犬の膿皮症の治療費は個々のケースによって異なるため、獣医師との相談や見積もりを受けることが重要です。また、犬の健康保険に加入している場合は、治療費の一部がカバーされることもありますので、保険の内容を確認することも大切です。

犬の膿皮症の予防方法

犬の膿皮症の予防方法

犬の膿皮症の予防方法を解説します。

皮膚を清潔に保つ

犬の膿皮症を予防するためには、皮膚を清潔に保つことが非常に重要です。清潔な皮膚は細菌や真菌の繁殖を抑え、膿皮症の発症を予防します。以下に、皮膚を清潔に保つための方法をいくつか紹介します。

1. 定期的な入浴:犬を定期的に入浴させることで、皮膚の汚れや皮脂を洗い流すことができます。適切なシャンプーや皮膚ケア製品を使用し、獣医師の指示に従って入浴させることが重要です。

2. ブラッシング:犬の被毛を定期的にブラッシングすることで、皮膚の表面に付着した汚れや毛穴の詰まりを取り除くことができます。特に長毛種の犬や被毛の密度が高い犬は、毎日のブラッシングが推奨されます。

3. 皮膚の保湿:犬を入浴させた後は、十分に皮膚を保湿することが重要です。犬の皮膚が乾燥していないか、気を配るようにしましょう。

4. 適切な食事:犬に適切な栄養を与えることで、健康な皮膚を維持することができます。バランスの取れた食事や栄養補給は、皮膚の健康維持に役立ちます。

5. 皮膚検査:定期的に犬の皮膚をチェックし、異常が見られる場合は早めに獣医師に相談します。皮膚の異常や症状が早期に発見されれば、適切な処置を行うことで膿皮症の予防につながります。

高温多湿な環境を避ける

犬の膿皮症を予防するためには、高温多湿な環境を避けることが重要です。高温多湿な環境は、細菌や真菌の繁殖を促進し、皮膚感染のリスクを高める可能性があります。以下に、高温多湿な環境を避けるための方法をいくつか紹介します。

1. 適切な換気:室内の換気を良くし、湿気をこもらせないようにします。特に洗濯や調理を行う場合は、換気扇や窓を開けて湿気を外に出しましょう。

2. クーラーの利用:室内を涼しく保つために、クーラーを使用しましょう。特に夏場や高温多湿な地域では、犬が涼しい場所で過ごせるように心掛けましょう。

3. 適切な散歩の時間帯:特に夏場や日中の高温多湿な時間帯は避け、朝早くや夕方など気温が低い時間帯の散歩が推奨されます。

4. 被毛の管理:長毛種の犬は特に被毛の管理に注意します。毛が長い部分や密度が高い部分は湿気がこもりやすいため、こまめなブラッシングやトリミングを行い、皮膚を通気させましょう。

まとめ

まとめ

犬の膿皮症は、皮膚の感染や炎症を特徴とする疾患であり、原因は細菌や真菌の感染、アレルギー反応などさまざまです。治療法は薬物療法や外部治療、栄養療法などがあり、症状の進行度によって異なります。予防には皮膚の清潔維持や高温多湿な環境を避けることが重要です。早期発見と適切な治療、そして予防策の実施が、犬の膿皮症の管理と再発予防に不可欠です。本記事の内容を、愛犬の健康維持のためにお役立ていただけたら嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献