「愛猫の毛が抜けてきたけれど、これは普通なのだろうか」と不安を感じていませんか。
猫には夏毛と冬毛が生え変わる換毛期があり、特に長毛種は大量に脱毛します。しかし、それ以外にも猫の脱毛にはさまざまな原因が考えられ、病気の可能性もあるので早めの対策が必要です。
この記事では、猫の脱毛の原因・症状・治療法について詳しく解説し、脱毛を防ぐための対策も紹介します。愛猫の健康を守るために、脱毛の原因を理解し、適切なケアに役立てましょう。
猫の脱毛の原因
猫が突然毛を失ってしまう要因は、普段の生活のなかで気付かないうちに引き起こされるものから身体の不調や病気に関わるものまで、幅広いケースが考えられます。
猫がなぜ毛を失うのかを理解して、適切な予防や対応ができるようにしましょう。猫の毛が抜けてしまう原因として考えられるのは、次のとおりです。
- アレルギー性皮膚炎
- ストレス
- 細菌・真菌感染
- 皮膚疾患・腫瘍
- 外傷
- 寄生虫
- ホルモンバランスの異常
どのように脱毛につながるのか、詳しく見ていきましょう。
アレルギー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎は、猫が特定の物質に過敏に反応し、皮膚に炎症を起こすことで脱毛が生じる状態です。アレルゲンとなるのは、食べ物・ハウスダスト・花粉・カビなどが影響するとされています。
アレルギー反応が起きると、皮膚が赤くなったりかゆみが生じたりするため、猫がその部分を頻繁に掻いたり舐めたりして脱毛が進行します。早期に原因となるアレルゲンを特定して、悪化を防ぎましょう。
環境中のアレルゲンを排除するだけでなく、定期的な診断を受けることが、猫の健康を守るうえで重要です。原因がはっきりしない場合は、病院でアレルギー検査を受けましょう。食事管理も治療の一環として検討されることがあります。
ストレス
猫は環境の変化や新しい刺激に対して敏感で、ストレスが脱毛の原因となることがあります。
猫が不安や緊張を抱くと毛づくろいが過剰になり、特定の部位を繰り返し舐めたり引っ掻いたりすることで脱毛が発生します。引っ越しや新しいペットの加入、飼い主の生活リズムの変化などが猫にとっての大きなストレスとなることがあるので確認しましょう。
ストレスが原因で脱毛が進行している場合、またストレス性の脱毛を防ぐためにも、猫にとって安定した環境を保つことが重要です。日常的な観察を心がけ、リラックスできるスペースや遊びを提供するなど、心身のケアを行いましょう。
細菌・真菌感染
猫の皮膚が細菌や真菌(カビ)に感染すると脱毛することがあります。
特に湿度の高い環境や皮膚のバリア機能が弱まっている状態で感染しやすく、皮膚にかゆみや赤み、かさぶたなどの症状が現れます。猫が感染部位を掻いたり舐めたりすることで、さらに脱毛が悪化することが多いです。
細菌や真菌が原因の脱毛を予防するには、日頃から皮膚を清潔に保ち、換気をよくすることが大切です。感染症はほかの動物や人に感染する可能性があるため、疑わしい場合はすぐに病院を受診し、薬を処方してもらいましょう。
皮膚疾患・腫瘍
猫の皮膚には、自己免疫疾患や腫瘍が発生することがあり、これが脱毛の原因となることがあります。
自己免疫疾患とは、猫の身体が自分の皮膚組織を異物と見なして攻撃することで皮膚が損傷し、毛が抜ける病気です。自己免疫疾患の一つである天疱瘡(てんほうそう)は、皮膚にびらんや水疱ができて脱毛してしまいます。
また、皮膚に腫瘍ができると、腫れたりしこりが形成されたりして脱毛することがあります。このような疾患は早期発見が大事です。皮膚に異変が見られた場合はすぐに病院で診察を受けましょう。
外傷
家の中での事故やほかの動物とのケンカや外傷が発生すると、その周辺の毛が抜け落ちたり、傷が治る過程で一時的に脱毛したりすることもあります。ストレスや皮膚疾患が原因で、舐めたり噛んだり(過剰グルーミング)することでも脱毛してしまいます。
外傷による脱毛は通常一時的なものですが、傷口から細菌に感染するリスクがあるため早期の手当てが必要です。消毒して傷を清潔に保ち、傷が深かったり元気がなかったりしたら病院に連れていきましょう。
寄生虫
猫の身体に寄生虫がつくことも、脱毛の大きな原因の一つです。ノミやダニが皮膚に寄生すると強いかゆみが生じ、猫がその部位を掻きむしることで毛が抜けてしまいます。首や耳の周辺など、寄生虫が好んでつく部位では局所的な脱毛が見られることがあります。
寄生虫を原因とする脱毛の予防は、定期的な駆虫薬の使用です。また、室内環境を清潔に保つことで寄生虫の発生を防ぎ、再発のリスクを減らすことができます。
ホルモンバランスの異常
甲状腺や副腎の機能異常が原因によるホルモンバランスの乱れも、多くはありませんが猫の脱毛原因です。
ホルモン分泌が正常でないと毛の成長サイクルが乱れ、左右対称の脱毛が目立つようになります。ホルモン異常による脱毛は、ほかの症状が同時に現れることもあるため、総合的な健康チェックが必要です。
猫の脱毛の治療法
猫の脱毛の治療には、原因に応じた治療法を行います。
アレルギー性皮膚炎が原因の場合、症状に応じて抗ヒスタミン剤や副腎皮質ホルモン剤を投与します。アレルゲンの除去や食事の見直しも効果的です。
細菌や真菌感染が原因の場合、抗生物質や抗真菌薬による治療を行います。皮膚の感染症は放置すると悪化し、脱毛が進むため早期の診断と治療が大切です。
ストレスが原因で脱毛が生じる場合は、環境の改善が必要です。猫は環境の変化に敏感で、ストレスを感じやすいため、静かで安定した環境を整えることでストレスを軽減できます。
寄生虫による脱毛の場合は、駆虫薬の使用が効果的です。定期的に駆虫薬を使用することで、ノミやダニなどの寄生虫を予防し、脱毛を予防できます。
ホルモンバランスの異常による脱毛の場合、ホルモン療法が適用されることがあります。ホルモン分泌のバランスが整えば、毛の成長サイクルも正常化され、脱毛が改善できるでしょう。
脱毛の進行が早く、皮膚に炎症やかゆみが見られる場合は、速やかに獣医師に相談して適切な治療を受けることが重要です。
猫の脱毛があるときに生じやすい症状
猫に脱毛があるときは、単に毛が抜けるだけでなく、さまざまな症状が現れることがあります。こうした症状は脱毛の原因を知る手がかりとなり、猫の健康状態を判断できるため重要です。
猫が脱毛しているときは、以下のような症状が見られることがあります。
- かさぶたができる
- 毛が脂っぽくなる
- かゆみを訴える
- 発疹が出る
詳しく解説しましょう。
かさぶたができる
皮膚が回復する過程で、脱毛と同時に猫の皮膚にかさぶたができることがあります。猫が強く掻いたり、舐めたりすることで皮膚が傷つき、かさぶたが生じることが一般的です。
かさぶたができる原因は外傷やアレルギーのほか、感染症による皮膚炎でできるものもあります。かさぶたの色が黄色や緑色など明らかにおかしかったり、ジュクジュクと湿ったかさぶただったりする場合は、皮膚炎や感染症の可能性があります。
傷によるかさぶたで、傷の原因がわかっていれば受診の必要はありません。皮膚炎や感染症が疑われる場合は、早めに診察を受けましょう。
毛が脂っぽくなる
猫の毛が普段よりも脂っぽく感じられる場合、それは皮脂の分泌異常を起こす病気のサインかもしれません。皮脂の分泌が増えることで毛がベタつき、脱毛とともに被毛全体が脂っぽくなることがあります。
これはホルモンバランスの乱れやストレス、感染症などが原因で皮膚のバリア機能が低下している際に見られる症状です。毛が脂っぽくなっているのを発見したら、病院で診察してもらうのがおすすめです。
かゆみを訴える
猫が頻繁にかゆがってしきりに身体を掻いたり、噛んだりして脱毛している場合、皮膚に炎症が起きていることがあります。アレルギーや寄生虫、感染症などが原因となっている場合も考えられます。
猫がかゆがっていても、自己判断で薬を与えるのは避けた方がよいです。かゆみが見られる場合はさまざまな要因が考えられるため、早めに病院を受診しましょう。
発疹が出る
脱毛とともに赤い発疹が出ている場合、アレルギーや皮膚感染症、寄生虫の寄生などが原因であることが多いです。発疹は赤みを帯び、猫がその部分を気にして頻繁に舐めたり掻いたりするため、脱毛がさらに進行することがあります。
発疹が見られる際には、早めに病院で診察を受けましょう。原因を特定し、早期に対処することが大切です。
脱毛が生じやすい部位
猫に脱毛が見られる場合、以下の部位で起こりやすい傾向があります。部位ごとに脱毛の原因が異なることが多く、それぞれの要因に応じた対処が必要です。
- 首
- 腹部
- 足
- 背中
- 尻尾
首・腹部・足・背中・尻尾などが脱毛の影響を受けやすい部位としてあげられます。首回りはノミやダニなどの寄生虫が集まりやすく、かゆみのために猫が過剰に掻くことが多いため、脱毛が生じやすい箇所です。
腹部や背中では、皮膚トラブルやアレルギー反応が現れやすく、ホルモンの不調が影響する場合もあります。足や尻尾の脱毛は、ストレスによる過剰な毛づくろいや細菌・真菌感染が原因となることが一般的です。
尻尾の脱毛は、猫がストレスや不安を感じて毛づくろいを過度に行った際にも見られることがあります。また、背中や尻尾周辺の脱毛が続く場合、皮膚の感染症やアレルギーが広がっている可能性もあるため注意が必要です。
脱毛が進行していると感じた場合は、早めに病院で診察を受け、適切なケアを行うことが猫の健康を守るために重要です。
猫の脱毛を予防するための対策
脱毛はさまざまな要因で起こりますが、日々のケアでリスクを減らせます。脱毛予防に役立つポイントには次のようなものがあります。
- 寄生虫の予防をする
- 皮膚を清潔に保つ
- 毛並みを整える
詳しく解説しましょう。
寄生虫の予防をする
ノミやダニなどの寄生虫が猫の皮膚に寄生すると、かゆみが生じ、猫が身体を掻きむしることで毛が抜けてしまいます。
寄生虫による脱毛を防ぐためには、定期的な駆虫薬の使用や予防薬の投与が有効です。病院で処方してもらいましょう。外に出ることが多い猫は寄生虫がつきやすいため、住環境を清潔に保って室内で生活させるようにしましょう。
室内飼いの場合も、外部から虫を持ち込まないよう注意が必要です。
皮膚を清潔に保つ
皮膚の清潔さを保つことも、脱毛の予防に役立ちます。猫は毛づくろいだけでは十分に汚れが取れない場合もあります。特に脂性の皮膚を持つ猫や、毛が長い猫は皮膚に汚れや皮脂が溜まりやすいです。
皮膚を清潔に保つためには、定期的にブラッシングを行いましょう。必要に応じて専用のシャンプーを使うことも大切です。毛艶をよくするだけでなく、普段から猫の毛並みをチェックする機会にもなります。
皮膚の健康状態を維持することで、皮膚のバリア機能を守りましょう。
毛並みを整える
猫の毛並みを整えることは、脱毛の予防においても重要です。毛並みをきちんと整えることで、抜け毛や毛玉の発生を抑え、皮膚トラブルのリスクも軽減できます。
定期的なブラッシングは、毛の絡まりを防ぎ、皮膚の血行を促進する効果もあります。また、皮膚への刺激が減ることで猫自身の毛づくろいも適度に保たれるため、脱毛の進行を防げるでしょう。
ブラッシングは、短毛種は週に2〜3回、長毛種は1日1回がおすすめです。換毛期は、短毛種も長毛種も1日1〜2回は行いましょう。
病院を受診すべきかのチェックポイント
猫の脱毛が気になる場合、次の症状が見られたら早めに病院を受診しましょう。放置すると、さらに広範囲にわたる脱毛や皮膚の問題が進行するかもしれません。
- 毛をむしっている
- ひっかき傷がひどい
- 血が出ている
- 円形脱毛がある
- ハゲているところがある
これらの症状は、ストレス・皮膚の異常・感染症・寄生虫の影響などが起きている可能性があります。猫が強いかゆみや痛みを感じると、掻きむしったり噛んだりして自らを傷つけてしまうこともあります。
異常を感じた際には、速やかに獣医師の診断を受け、原因に応じた適切な治療を行いましょう。猫の健康維持と生活の質向上のために大切です。
まとめ
猫の脱毛には、アレルギー・ストレス・寄生虫・感染症などさまざまな原因が関係しています。それぞれの原因に応じた治療法や予防策があるため、猫の脱毛が気になる場合は、まず原因を特定しましょう。
脱毛が進行して、皮膚にかさぶた・出血・円形の脱毛斑が見られるときは、早めに獣医師に診てもらいましょう。
日頃から皮膚や毛並みを清潔に保ち、寄生虫の予防などを心がけることで、脱毛のリスクを軽減できます。猫が快適に過ごせる環境を整え、健康な被毛と皮膚を保ち、猫とともに暮らす幸せな生活を続けましょう。
参考文献