動物病院の皮膚科とは?診療する症状・受診目安・診療の流れなども解説

動物病院の皮膚科とは?診療する症状・受診目安・診療の流れなども解説

動物病院の皮膚科ではどのような診察をするのでしょうか。

人間の皮膚病と同様、動物たちの皮膚病もその原因の特定が困難なことが少なくありません。動物病院の皮膚科の診療を受ける際には、飼い主さんとして事前に認知しておくべきことがあります。

この記事では動物病院の皮膚科で診療する病状や、その診察の特徴について解説します。

動物病院の皮膚科とは?

カゴに入った猫

動物病院のなかには複数の診療科があり、そのなかには皮膚科もあります。しかし動物病院の皮膚科という言葉から、その診療内容はイメージしにくいかもしれません。

動物病院の皮膚科とは具体的にどのような診療を行っているのでしょうか。この記事で詳しく解説します。

動物病院の皮膚科で診療する症状

寝ている猫

動物病院の皮膚科について知るためには、まずは診療している症状を解説するとわかりやすいかもしれません。

動物病院の皮膚科で診療を受け付けているのは、以下のような症状です。

皮膚炎

動物病院の皮膚科で診療する症状として、まずは皮膚炎があります。動物たちの皮膚炎は、周囲に存在する雑菌やほかの物質が肌にかゆみを与える症状です。

皮膚炎の発生箇所は、肌の表面に発生するもの・深層部に発生するもの・身体の一部分に発生するもの・全身に発生するものなど多岐に渡ります。

アトピー性皮膚炎は皮膚の免疫機能が低下する症状です。脂漏症では油脂の分泌箇所に湿疹ができます。

クッシング症候群は、腎臓の上にある副腎からの分泌物によって起こる病気です。甲状腺機能低下症では甲状腺が正常に働かなくなることにより、肌にむくみが出ます。

動物たちの皮膚炎の代表的な原因としてはニキビダニが挙げられるでしょう。ニキビダニは健康な動物たちの皮膚にも生息しています。

しかし免疫機能の低下のような皮膚の症状と重なる場合、皮膚炎につながることがあります。

脱毛症

寝る猫

動物たちの脱毛症は犬や猫に発症することが少なくない症状です。犬の脱毛症はオスに発症するケースが多く、3歳までの発症が頻繁に見られます。

犬種としてはポメラニアン・ミニチュアプードル・チャウチャウ・シベリアンハスキーなどに見られる症状です。脱毛は陰部もしくは首から左右対称に始まることが多く、症状は広がっていきます。去勢あるいは副腎の治療によって回復する場合があります。

左右対称の症状は猫の脱毛症でもよく見られる現象です。猫の脱毛症では、股や腹部からの発症が多くなっています。猫の脱毛の原因はアトピー・アレルギー・寄生虫などによるかゆみです。

かゆみが起こることにより、猫はその箇所を掻きむしったりなめたりします。猫のこういった行動により体毛が抜けるといった症状が起きるのです。

疥癬

動物病院の皮膚科で治療される症状としては疥癬も挙げられます。疥癬はヒゼンダニというダニが原因となり、皮膚にかゆみを引き起こす病状です。

疥癬は犬・猫・ウサギを始めとするさまざまな動物たちに発生します。疥癬が発症する主な原因は不衛生な環境での動物たちの飼育です。

疥癬を発症してかゆみを感じた動物たちは、ヒゼンダニに寄生された箇所を掻いたりなめたりします。疥癬の発症が疑われる場合には、動物病院の皮膚科にて寄生虫の検査を行います。

イベルメクチンの注射のほかにスポット剤の使用もメジャーです。年齢と状態によって用途を選択します。

疥癬のもう一つの特徴としては、人間にも感染することが挙げられるでしょう。

また疥癬に人間が感染した場合、人間同士の感染も起こります。そのため、動物たちの疥癬の発症が疑われるときには、動物病院の皮膚科への速やかな診療が推奨されます。

食物アレルギー

餌を食べる犬

食物アレルギーは動物たちにも発症することがあります。動物たちの食物アレルギーのアレルゲンは多様です。

犬猫ともに各種肉類・魚・卵・小麦・オートミールがアレルゲンとなる代表的食物です。アレルゲンは、ペットフードの味付けや着色料の可能性もあるので、特定がむずかしいことが少なくありません。

食物アレルギーの症状として皮膚に表れる代表的な症状はかゆみです。皮膚の症状以外には、下痢や発作が起こるケースもあります。

動物たちの食物アレルギーが疑われる場合、皮膚科ではまずアレルゲンの特定が行われます。アレルゲンの特定は血液検査が代表的な方法といえるでしょう。

アレルギーが疑われる食品を食べさせることによって、アレルゲンの特定が行われる場合もあります。アレルゲンが特定されると、皮膚科から動物たちの食生活の指導が行われることになります。

表在性膿皮症

表在性膿皮症も、動物病院の皮膚科が診療する症状の一つです。表在性膿皮症とは動物たちの皮膚の浅い箇所で発症する細菌感染のことで、膿を伴うニキビを発症する特徴からこう呼ばれています。表在性膿皮症の症状としてはニキビ跡・フケ・赤み・かゆみ・かさぶたなどが挙げられるでしょう。

猫においては、ほかの猫との喧嘩が表在性膿皮症の主な原因として挙げられます。喧嘩で掻き傷を作ることにより、その傷から細菌に感染するのです。

猫同士の喧嘩でよく傷付けられる手足や背中に発症することが少なくありません。気性が荒くなりがちな未去勢のオスに発症することもあります。

表在性膿皮症の治療は、速やかに皮膚科を診療することによって簡単な治療で終わることが少なくありません。しかし膿がこぶ状に溜まる膿瘍を起こしてしまうと、切開や消毒が必要な場合もあります。

動物病院の皮膚科を受診する目安

ワクチン

動物病院の皮膚科で診療可能な症状について解説しました。ここで、動物病院の皮膚科を受診するための目安について解説します。

動物たちの発症を確認するためには、病状を確認できる目安を知っておかなければなりません。動物病院の皮膚科を訪れるべき目安となる症状には次のようなものがあります。

かゆがっている

診察

動物たちがかゆがっている場合、動物病院の皮膚科を受診する必要があります。皮膚科で診断する症状として挙げた皮膚炎・疥癬・食物アレルギー・表在性膿皮症において、動物たちがかゆがる症状が起こります。脱毛症はかゆみで身体を引っ掻いたりなめたりした結果としても起こるでしょう。

動物たちがかゆみをアピールする動作としては身体を引っ掻いたりなめたりするといった動作が挙げられます。身体を引っ掻いている場合は、かさぶたができたり脱毛があったりするので判断しやすいかもしれません。

しかし身体をなめる動作がかゆがっているサインだとはなかなか気付きにくいでしょう。

動物たちが身体をなめたことによって炎症や脱毛が起こるケースもあるので、こういった症状もサインとなります。

しかし動物たちが身体をなめたり引っ掻いたりするのにはストレスといった別の要因も挙げられます。そのため症状の原因を特定するためにも皮膚科の診療が必要となるでしょう。

毛が抜けている

動物たちの毛が抜ける症状は、動物病院の皮膚科を診療するための目安となります。脱毛は脱毛症の結果として起こるケースに加え、皮膚炎・疥癬・食物アレルギー・表在性膿皮症の結果としても起こります。かゆみから身体を引っ掻いたりなめたりするからです。

またそれ以外の原因で、動物たちの毛が抜けることもあります。犬や猫は元々、身体のサイクルとして毛が抜けます。

年間を通じて多くの犬で見られるのは、身体のサイクルとしての脱毛です。ラブラドールやハスキーでは春が脱毛のシーズンです。猫の身体のサイクルにおいては、季節の変わり目に毛が抜けることが少なくありません。

また脱毛は動物たちの心理的なストレスが要因であるケースもあるでしょう。このように動物たちの毛が抜ける原因は複数ありますので、脱毛に気付いたら皮膚科の診療を受けることをおすすめします。

皮膚の赤み・発疹がある

ペキニーズ

皮膚の赤みや発疹は動物たちの皮膚病によく見られる症状です。犬の発疹としてはまず、細菌やウイルスによる皮膚炎が挙げられます。食物アレルギーも発疹の原因になります。

精神的なストレスが原因となるかもしれません。先天的に発疹があるケースもあります。ほかにはホルモンバランスの異常・腫瘍・免疫機能の疾患が発疹の原因となります。

猫において発疹の原因となるのはまず、身体をなめたことによる脱毛です。足で引っ掻いたことにより、頭や首に発疹が起こる場合もあります。

粟粒性皮膚炎は粟に似た発疹ができる症状です。腹部・上唇部・大腿部に発疹が起こる好酸球性皮膚炎という皮膚炎もあります。

発疹は、人間と同じく動物たちにとっても不快な症状となるでしょう。動物たちの発疹は皮膚科の診療が必要となるサインです。

皮膚のべたつき・かさつきがある

皮膚のべたつき・かさつきも動物病院の皮膚科を診療すべきサインとなります。人間と同様に犬猫も、冬場の肌のかさつきが発生します。

部屋の暖房が動物たちの肌の乾燥の原因となることもあるでしょう。過剰なシャンプーやドライヤーがかさかさの原因になることもあります。

肌のべたつきは犬猫ともに夏場によく見られる症状です。犬の肌のべたつきは、特に皮膚のひだ状の部分から発生することが少なくありません。

次第にフケが発生するようになり、におう場合もあります。外耳炎は犬の肌のべたつきとともに表れる症状です。カビや細菌の感染によって、皮膚が黒色や赤色に変色することもあります。

犬猫の皮膚のべたつき改善には入浴方法の改善・毛刈り・抗生物質投与といった方法があります。知識が必要となるので、まずは皮膚科を受診するとよいでしょう。

動物病院の皮膚科で行う検査・診療の流れ

獣医と飼い主

動物病院の皮膚科で診療を受ける場合、まずは問診が行われます。ここで医師は飼い主さんに、動物の病状や生活環境について詳しく尋ねます。

動物の皮膚病はその原因を特定することが困難なことも少なくありません。この問診が重要となるので、話すべきことをあらかじめメモしておくとよいでしょう。

問診で動物の病状を把握したうえで、医師は検査を始めます。行われる検査の種類は血液検査・拡大鏡による検査・皮膚のサンプル採取など、動物の病状によってさまざまです。

検査によって動物の病状が特定できると、次に治療に移ります。治療はシャンプー洗浄・投薬・注射など、こちらも動物の病状によって判断されます。食事制限や生活環境の改善などのアドバイスを受けることがあるかもしれません。

初診で行われた治療は、再診でその結果が確認されることがあります。また動物の皮膚の症状は原因が特定しにくいため、通院することによってその原因を突き止めていくケースもあります。

動物病院の皮膚科に通院する際のポイント

白い花とダックスフント

動物病院の皮膚科に通院する際には、留意しておくべきポイントがあります。それは以下のような事項です。

処方された対症療法を行う

動物病院の皮膚科に通院する際に、処方された対処療法を行うことが重要です。動物たちの皮膚病は、アレルギーという体質の問題に関わることが少なくありません。

人間でもアレルギー症状が深刻な事態を招くことがあります。動物たちにもこういった事態がありうるので、医師の指示を守ることが大切です。

内服薬のなかでも特にステロイドは、副作用がある薬として知られています。治療のためにステロイドが必要だと判断する医師もいるでしょう。こういった薬物は服用方法を守らないことにより不測の事態を招くかもしれません。

塗り薬やシャンプーも予期せぬ副作用の原因となる場合があります。また塗り薬は、動物たちがなめることによって体内に摂取してしまう可能性があります。使用法について確認しておくことが必要といえるでしょう。

皮膚病の原因が食物アレルギーであれば、特に食事に気を付けなければなりません。アレルゲンとなる物質は食材や香辛料など意外なものである可能性があります。こちらも医師に詳しく確認をする必要があるでしょう。

通院が必要な症状もある

動物たちの皮膚病の大きな特徴としては、病状が特定しにくいということが挙げられるでしょう。病状が特定しにくいケースでは、初診での治療を経過観察することによって病状を特定していくこともあります。こういった場合、複数回の通院をしていくことが治療の前提となるでしょう。

動物たちの皮膚病では、病状が特定できてもその原因がわからない場合も少なくありません。皮膚病は、生活環境や食事などがその原因であることもあります。生活環境や食事などは医師が診断できないため、飼い主さんからの問診が頼りとなります。

しかしその原因が意外なことである場合は、飼い主さんもその原因が把握できないこともあるでしょう。こういった場合にも、食事やおやつの変更、シャンプーの変更、食欲・飲水量・排泄の異変・お散歩コースの変更・来客などのメモを付けておくと改善の近道になるのでおすすめします。

まとめ

犬の散歩

動物病院の皮膚科の診察内容やその流れについて解説しました。

動物たちの皮膚病には、その原因が特定しにくいケースが少なくありません。動物病院の皮膚科では通院による治療になることもあります。

飼い主さんは初診の際に、動物の症状の原因についてあらかじめ探っておくことが必要でしょう。想定される原因を初診前にリストアップしておくとよいかもしれません。

また動物たちの皮膚病はアレルギーであることも多く、デリケートな治療が必要となります。飼い主さんは独自の判断はせず、医師の指示に正確に従うことが大切です。

参考文献